iPhone 12が10月23日に発売されてから約20週間、姉妹モデル含め実際に使い込んでみたレビューを書いていきます。
結論から言ってしまえば、今年の新しいiPhoneの標準モデル「iPhone 12」は近年のiPhoneの中でも最も感心した機種であり、最も多くの人に買い替えをおすすめできる、2020年を節目とした新たな5G世代のスタンダードモデルであると感じる一台に仕上がっています。
2020年のiPhone 12シリーズは標準モデルの「iPhone 12」、基本性能をそのままに小型化した「iPhone 12 mini」、カメラを中心に強化した「iPhone 12 Pro」、それを大型化してカメラをより強化した「iPhone 12 Pro Max」の4機種展開。今回焦点を当てるのはその標準モデルの「iPhone 12」です。
2018年の「iPhone XR」「iPhone XS」から下位・上位モデルの二段構えの展開となったiPhoneですが、XRの後釜を「iPhone 11」と標準モデルに位置付けてフラッグシップを「iPhone 11 Pro」とした2019年でも、蓋を開けてみれば「iPhone 11 Pro」が主役というのが実態であり、iPhone 11はシリーズの看板を背負わされた廉価版として荷が重い状況だったように見えます。
そして2020年。満を持して看板モデルが看板モデルに相応しい中身を伴って送り出された機種がiPhone 12、というのが実際に触ってみた感想です。それでは、その感想に至った過程を順を追って取り上げていきます。
この記事の目次
まずは刷新されたデザインを確認
iPhone 12の最大のルックスの変化は、言うまでもなく大胆なフレーム形状の変更です。
iPhone 4、4S、5に続くフラットなフレームの2013年のiPhone 5sから一転、2014年のiPhone 6から始まったiPhoneの丸みを帯びたフォルムはiPhone 11シリーズまで「iPhone」を象徴する形状として引き継がれてきましたが、それも昨年のモデルで終止符。iPhone 12は印象を大きく変えたフラットなフレームに回帰しました。
iPhone 11までの丸みを帯びたフレームは手に優しく馴染む形状でしたが、iPhone 12のフレームはエッジが手に刺さるように立った反面、側面がしっかりとした面になったお陰でグリップ感が増して持ちやすくなったと個人的には感じました。
まずは、今回例年モデルよりコンパクトになったパッケージからチェックしていきます。
コンパクトになったパッケージをチェック
今回の世代のiPhoneから充電器が付属せず、USB type C – Lightningケーブルのみ付属するように。そのためパッケージが大幅にスリムになっており、薄いミニマルな箱になっています。
最近のApple製品に共通して採用されている手で剥がせる外装フィルムは健在。以前のようにカッターナイフが不要なのは嬉しいところです。
箱を開けると直でiPhone 12本体が入っており、背面から本体色を真っ先に確認することができます。
本体の下には丸角正方形のスリーブに入った冊子類と、USB type C – Lightningケーブルが同梱。このケーブルはiPhoneを30分で50%まで充電できる急速充電に対応していますが、充電器自体は付属しないのでApple純正USB-C 20W電源アダプタあるいはAnkerのUSB-C 20W充電器などサードパーティのUSB PD規格の充電に対応した充電器が必要。いずれも2,000円前後なので、手元に無い場合は一緒に購入するのがおすすめです。
本体の外観をチェック
こちらがiPhone 12本体。フレームがiPhone 11シリーズまでの丸みを帯びたものからフラットな形状に変化しています。
背面。色は「ホワイト」「ブラック」「ブルー」「グリーン」「(PRODUCT)RED」の5色展開のうち今回はブルーを選んでみましたが、色味は濃いデニムのようなダークブルーとなっています。
下部は引き続きLightning端子。歴代iPhoneではXRや11など厚みのある液晶を採用して端子の位置が寄っていた一部モデル以外上下対称でしたが、iPhone 12に関してはPro系と同様に有機ELを採用した結果、しっかりとセンターに端子位置が回帰しています。
フラットなフレームのデザインとシンメトリーな端子配置は相性が良く、見た目の「キッチリ感」があります。
左側面は例年通りのボリューム上下キーとサイレントスイッチに加え、SIMスロットが右側面からこちらに移動。なお、日本市場向けモデルは引き続き物理nano SIMスロット1つ、eSIMが1つ備わっています。
右側面はサイドボタン一つのシンプルなルックス。フレームはマットな質感で、アンテナラインもダークな同系色で目立たなくなっています。
カメラ部分は僅かに土台が出っ張っており、カメラシステムを囲う丸角四角形の部分はマットな仕上げです。
iPhone 12のスペック
iPhone 12のスペックは以下のとおり。
モデル | iPhone 12 |
---|---|
画面サイズ | 6.1インチ |
画面解像度 | 2532×1170 |
コントラスト比 | 2,000,000:1 |
最大輝度(標準) | 625ニト |
最大輝度(HDR) | 1200ニト |
重量 | 162g |
高さ | 146.7 mm |
幅 | 71.5 mm |
厚さ | 7.4 mm |
容量 | 64GB/128GB/256GB |
5G | ○ |
広角カメラ | ○ |
超広角カメラ | ○ |
望遠カメラ | – |
手ブレ補正(広角) | 光学式 |
手ブレ補正(超広角) | – |
手ブレ補正(望遠) | – |
Dolby Vision対応HDRビデオ撮影 | 最大30fps |
ナイトポートレート | – |
LiDARスキャナ | – |
プロセッサ | A14 Bionic |
ビデオ再生時間 | 最大17時間 |
Face ID | ○ |
Touch ID | – |
Ceramic Shield | ○ |
素材 | アルミニウム |
防水 | IP68等級(最大水深6メートルで最大30分間) |
ワイヤレス充電 | ○ |
MagSafe | ○ |
iPhone 12は同シリーズの中のスタンダードモデルとして、ラインナップの中では中間サイズの6.1インチ有機ELディスプレイを搭載。カメラは広角・超広角のデュアルカメラで、上位モデルに「Pro」を持つ標準モデルでありながら、新たな目玉機能であるDolby Visionの4K HDR動画撮影やMagSafeによるワイヤレス充電やアクセサリの装着、従来のガラスの画面と比べると4倍の落下耐性を実現したCeramic Shieldの採用、そして5Gによる高速通信などもしっかり盛り込まれています。
スペック的には廉価版ではなく「標準モデルのiPhone」と言っても差し支えない内容です。
iPhone 11からの進化ポイント
昨年のiPhone 11は「Pro」に搭載されていた有機ELの「Super Retina XDRディスプレイ」ではなく液晶の「Liquid Retina HDディスプレイ」を搭載していました。解像度もiPhone 11 Proの2,436×1,125、458ppiに対して1,792×828、326ppiと低く、11と11 Proの格差が大きい部分でした。
一方今年のiPhone 12は標準モデルでありながら有機ELを採用。iPhone 12とiPhone 12 Proは全く同じサイズ・解像度の「2,532×1,170、460ppi」となっており、最大輝度がProの800ニトから625ニトに抑えられているのみとなっています。
上位モデルの「Pro」とほぼ同じ画面・同じプロセッサを搭載しているため、基本的なユーザー体験はProと大きく変わらないのが今年のiPhone 12の大きな特徴となっています。
また、防水性能も昨年のiPhone 11から進化。iPhone 11では水深2メートルで30分だったものが、iPhone 12では水深6メートルで30分に大幅に強化されています。
iPhone 12とiPhone 12 Proの比較
iPhone 12とiPhone 12 Proの主な違いをまとめると以下のとおり。
- iPhone 12 Proのみ2倍望遠カメラを搭載
- 4KのDolby Vision HDR撮影が12は30fpsまで、12 Proは60fpsまで
- LiDARスキャナは12 Proのみ搭載
- ナイトポートレート(ポートレートモード+ナイトモード)は12 Proのみ対応
- 12はRAMが4GB、12 Proは6GB
- 12は画面の最大輝度が625ニト、12 Proは800ニト
- 12はアルミフレーム、12 Proはステンレススチールフレーム
- 12の重さは162g、12 Proは187g
寸法やプロセッサなどは共通の2台ですが、Proはカメラを中心に差別化を図られています。最も分かりやすいのが2倍の望遠カメラの有無。12は広角・超広角のデュアルカメラにとどまっており、Proに搭載している2倍望遠カメラは非搭載。
また、iPhone 12シリーズの目玉機能の一つである大きな明暗差を記録できるDolby Vision規格のHDR動画撮影も、4K 30fpsまでの対応。Proではこれが60fpsに引き上げられており、Proはより滑らかにDolby Vision HDR撮影する事ができます。
奥行きを検知するLiDARスキャナもProのみの装備となっており、暗所での高速フォーカス、ナイトポートレート、およびLiDARセンサーを使ったアプリの利用はProでしか利用できません。
画面の最大輝度はProの800ニトと比べて625ニトと抑えられているものの、HDR再生時は最大1200ニトの表示が可能。
RAM(メモリ)も差別化が図られており、iPhone 12が4GB、iPhone 12 Proが6GB。ゲームアプリを動かしたままブラウザで攻略情報を見てからゲームに戻るなど、マルチタスクを伴う使い方をすると裏に送ったアプリの画面の状態が保持できるかなどで差が出てくる部分です。
筐体の素材が見た目でも分かる大きな違いで、iPhone 12はアルミニウム、iPhone 12 Proはステンレススチールでフレームが作られており、本体重量にも差が出ています。iPhone 12 Proは187gのところ、iPhone 12の重さは162g。
フレームへの指紋の付着しやすさも違いがあり、やはりProのステンレスは指紋で汚くなりがち。ケース無しで使う場合ですが、アルミのiPhone 12であればそれほど指紋が気にならないというメリットがあります。
カメラや処理性能にこだわるのであればiPhone 12 Pro、防汚性、軽さを重視するのであればiPhone 12がおすすめとなってきます。
カメラを試す
iPhone 12は広角カメラ・超広角カメラのデュアルレンズ。
進化のポイントとして超広角は去年のiPhone 11では非対応だったナイトモードにも対応しており、どちらのカメラでも夜景撮影ができるようになっています。
それでは、実際撮影した作例を紹介していきます。
超広角にも対応の範囲が広がったナイトモード
近代の高性能スマホには必須機能になりつつあるナイトモード。こちらは1倍の広角カメラのナイトモードで撮影した一枚。夜間の手持ち撮影ながら、色もしっかり乗ったシャープな写真という印象を受けます。
同じ場所から0.5倍の超広角カメラでナイトモード撮影したものがこちら。通常の広角のメインカメラと比べるとやや白飛び傾向にありディテール感も劣りますが、全体的な画作りとしては同じ方向性のまま画角を広くした写真が撮れているのではないでしょうか。
夜景の被写体を撮る際に広角・超広角問わずどちらの画角でもナイトモードが選べるのは表現の選択肢が広がって大きな進化だと感じます。
こちらも超広角ナイトモードの作例。ほぼ太陽が沈んだ直後のタイミングの青い空と手前の木々の生み出す影絵が潰れず出ている一方で、キャンドルのイルミネーションも白飛びさせずに両立。SNS映えが狙いやすいと感じるナイトモードです。
風景の色味も良し
夕暮れ手前の空の風景を撮影したものがこちら。光量がやや不足してくる時間帯ですが、建築物の壁などはしっかりシャープに処理されています。
逆に海面のディテール感は喪失気味で、フルサイズのカメラと比べるとセンサーサイズの制約がある、画像処理に頼るスマートフォンで撮影した事を感じさせます。
夕日に浮かぶ富士山のシルエットを撮影。このように形状がくっきりした被写体のシャープネスは得意で、Proのように物理的な2倍の望遠レンズは非搭載ながらデジタルズームやクロップで切り抜いて「富士山が見えた!」と共有するには十分な性能を有していると感じます。
この程度のディテール感があれば、スマートフォン同士で共有して見る程度であればiPhone 12 Proにしか搭載されていない2倍望遠が無くとも実用に耐えるのではないでしょうか。
料理の色味も食欲をそそる味付け
料理を撮影したものがこちら。カルボナーラのような黄色みが絶妙に入っている料理を撮影した場合あまり彩度を強調しすぎるカメラだと食べ物らしからぬ不自然な黄色になってしまいがちですが、一部に太陽光が差し込んでいる意地悪な照明環境でも破綻せず肉眼に近い色をベースに美味しそうに撮れている印象でした。
ポートレートモードはナイト非対応&LiDAR無しでも強力
iPhone 12は上位モデルのiPhone 12 Proと比べると奥行きを判定するLiDARセンサーが非搭載のため、被写体の前後を判定してぼかし効果を付与するポートレートモードの判定精度は劣ります。ただし輪郭の判定が難しくない被写体に関しては生成される背景ボケ効果自体の品質は高く、本物のフルサイズのセンサー・明るいレンズを用いて光学的にボカした絵を上手くエミュレートしていると感じる写真が撮れます。
iPhone 12 Proに関してはこれに加えてLiDARセンサーによるより正確な輪郭判定、およびポートレートモードに重ねてナイトモードで夜景を明るく撮れるナイトポートレート機能が利用可能。
2倍望遠だけでなくポートレートモードの機能をより積極的に多用して使っていきたいのであればiPhone 12 Pro、そうでなければiPhone 12という分岐点になりそうです。
Dolby Visionの4K HDR撮影
iPhone 12シリーズはすべてのモデルでDolby Vision規格の4K HDR動画撮影が可能。ただしProでないモデルはフレームレートが30fps、Pro系は60fpsという差があります。
HDR撮影が出来ることによって従来の動画撮影よりも広いダイナミックレンジで記録できるため、太陽の明るさや影になっている部分の暗さなど明暗差があるシーンも白飛びや黒潰れを抑えて撮ることができます。
今回はiPhone 12で撮影したDolby Vision 4K HDRの動画作例をつなぎ合わせてみました。ただしYouTubeにて公開した4K HDR動画は対応したデバイスでのみ正常に再生可能なので、実際どういった迫力になるか確認するためにiPhone X以降の有機ELディスプレイ搭載iPhoneでのチェックをおすすめします。
HDR対応環境で鑑賞すると従来のSDRの4K動画と比べると圧倒的に迫力・臨場感があり、明るさの階調が全く違う事がよくわかります。
ただしHDR撮影した動画をHDRで再生できる環境は今のところ限られており、互換性を考えると現時点では有機EL搭載iPhone同士で共有して楽しむ機能にとどまっているのが実情。魅力的な機能ではありますが、従来と同じように扱いやすいフォーマットで撮影したければ設定からオフにしておくのが無難かもしれません。
5Gは差が体感できるほど速くはない
iPhone 12シリーズはすべてのモデルが次世代通信規格の5Gに対応しており、4Gより更に低遅延・高速な通信が可能。ただし日本向けモデルは5Gのうち「sub6」のみの対応にとどまっており、ミリ波には非対応。
今回ドコモの「5Gギガホ」で使ってみましたが、初期設定では「5Gオート」という、バッテリー持ち重視の設定。これを「5Gオン」に設定することでバッテリー持ちをよりも5Gを使う事を重視する設定になります。
神奈川・東京を中心に生活している中で実際にドコモSIMで数ヶ月間使ってみた感じとしては、意外と「5G表記」になるエリアは増えてきて外に出れば一日に数回は5G表記を見る程度のエリアにはなってきた印象。
スピードテストをすれば1Gbps近い下の数値が出るのは4G時代は無かった数字で面白いものの、実際使っていての体感値でそれほどの差が出るとは感じませんでした。普通に意識せずiPhoneを使っていて、気付けば5Gエリアで通信していた、という事もしばしば。日本のネットワークでは既に4Gが非常に快適な域に到達していた事もあり、都心部でも普段使いで5Gの差を感じる事は稀なのではないかと思います。
言い換えれば、5GのためにiPhone 12シリーズにするほどではないという事。5Gは繋がりますが、感動的な体感というのはまだ先になりそうです。
MagSafeは周辺機器を揃えると非常に便利
iPhone 12シリーズから新規採用された目玉機能であるMagSafe。ネーミング的にはUSB-C充電になる前のMacBookシリーズのマグネット充電器を踏襲したものですが、モノとしては完全に別。従来のQi規格のワイヤレス充電の上限を7.5Wから15Wに引き上げ、マグネットによりワイヤレス充電ではズレがちな充電器の位置を固定できる、という内容となっています。
また、このマグネットにはアクセサリを装着する事が可能。Appleからも直々にレザーウォレットなどの充電機能を持たないマグネットオンリーのアクセサリが発売されているほか、サードパーティからも多くのアクセサリが続々と登場しています。
発売までは「ただのマグネット」だと侮っていたMagSafeですが、実際に使ってみると想像より遥かに便利。毎日使う物としては、まず家ではBelkinのマグネット充電スタンドが活躍。iPhoneをさっとスタンドに乗せるだけで磁石で吸着して固定でき、15Wの急速充電が可能です。
更に外出時にはESR HaloLockで車載すれば毎回ケーブルを繋いだり、車載ホルダーのクランプを広げて挟んだりといった手間なくiPhoneをかざすだけで車載・充電が同時に可能と、毎日使う充電スタンドが全ての場所で便利になりました。
MagSafe装着できるモバイルバッテリーを使えばケーブル無しに充電しながら本体が使え、外出時だけでなく家でくつろぎなから充電することが可能に。いつでもケーブルから解放された状態で充電できるのは一度体感するとケーブルを繋ぐのが億劫になる便利さです。
充電関連以外だと、MOFT Snap-on Stand & Walletが便利。これさえポケットに忍ばせておけばどこでも即座にマグネットでスナップオンしたiPhone 12を立てて動画鑑賞が楽しめるほか、クレジットカードや交通系ICなども入るので通学・通勤定期入れとしても使えて一枚で二度美味しいアクセサリです。
MagSafeは単なる磁石のアクセサリ規格ですが、実際に使ってみると手放せない便利さである事に驚きました。
ただMagSafeは磁石を使っている特性上、対応したケースでなければMagSafeの磁力を遮ってしまってアクセサリが利用不可。故に、MagSafeの便利さのあまりiPhoneのケース選びもMagSafe対応の有無が大きなポイントとなってしまったと感じています。自分はMagSafe非対応のケースはもう使えない生活になってしまいました。
ゲーム「原神」の最高設定の60fpsでは放熱に課題
普段から3Dグラフィックのスマホゲームはよくプレイしていますが、処理性能自体で見ればApple A14チップは申し分無し。リッチな3Dグラフィックを多用した原神の最高設定も60fpsで動かす事が可能でした。
ただし、長時間のプレイに関しては放熱が不足している印象。部屋の気温、ケースの有無などで時間は前後するものの、最高設定で数十分連続でプレイしていると画面が暗くなってしまったり、時にはフレームレートがやや落ちてしまいました。
長時間連続プレイしたい場合は設定を低負荷に落としたり、ケース無しでプレイしたりといった対策がおすすめです。
総評:決して「廉価版」には収まらない、新時代の標準モデル
冒頭で語ったとおり、ここ数年のiPhoneは「iPhone XR」「iPhone 11」といった低解像度ディスプレイを搭載した低コストモデルが下位にラインナップされ続けてきました。画面周囲のベゼルも太く、有機ELではなく液晶を採用した筐体はボテっとした膨らみで、いかにも「廉価版」といった印象が拭いきれていない状態だったと感じています。
それらがiPhone 12では一転。上位モデルのiPhone 12 Proと同じサイズの筐体で、同じ解像度の有機ELディスプレイを搭載。カメラこそはデュアルカメラに省略されているものの、廉価版という印象は払拭され、れっきとしたスタンダードモデルと言い切れる内容にリニューアルされたと言えるでしょう。
iPhone 12はProより25gも軽いのも武器
iPhone 12 ProではLiDARセンサーによるポートレートモードの背景ぼかし、2倍の望遠レンズといったカメラの魅力や増量されたRAM容量などのメリットがありますが、それらの装備を持ったiPhone 12 ProはiPhone 12の162gよりも25gも重い187g。実際に持ち比べてみるとiPhone 12の軽さに驚きます。今年は「軽さでiPhone 12を選ぶ」といった選択肢もアリなのではないかと思いました。
歴代iPhoneからのネガは依然として未解消
一方、iPhoneに慣れていると忘れがちなデメリットは今年も多くが未解消。
まずFace IDはマスクをしていると反応しないためパスコードによるロック解除が必要で、今期モデルは社会情勢的にそのデメリットが目立つ形になりました。是非とも現行iPad AirのようにTouch IDの指紋認証を搭載してほしいところ。また、認証可能な画角に関しても卓上に置いていると顔を覗き込むように真上に持っていかなければ反応せず不便なため、せめてiPad ProのFace ID並には反応しやすくしてほしいです。
また画面のリフレッシュレートに関しても、多くのAndroidの上位モデルが90Hzや120Hzに対応する中iPhoneは全て60Hzどまり。Appleは120Hzに完全に無関心かと言えばそうではなく、2017年モデルのiPad Pro以降は120Hzに対応済み。iPhone用の120Hz対応パネルの供給の問題なのか、性能面での問題なのかは分かりませんが、iPad Proで一度120Hzの快適さを体験してしまっているだけにiPhoneが半分のリフレッシュレートどまりなのは落差を感じてしまうポイントです。
筐体はiPhone 11と比べて有機EL採用でだいぶ垢抜けた印象はあるものの、全てのモデルに共通して画面上部の大型の切り込みの「ノッチ」は依然として居座り続けています。縦持ちではそう気にならないものの、やはり横持ちして動画を再生したりといった際には画面端がこうも欠けてしまうのは残念。Appleのアプリのレイアウトの互換性を保ち続ける姿勢は評価できる一方で、他社がこの切り込みをいかに小さくするかを毎年試行錯誤を重ねている一方でAppleは何年も巨大なノッチを抱えているのは惜しいところ。特に今年はディスプレイが良いので、動画再生時の残念感は際立ちます。
今年は「Pro」じゃなくても良いかも。
今までの「iPhone XR」や「iPhone 11」といったシリーズの低価格モデルに関しては正直「いかにも廉価版だなぁ」と思っていたのですが、iPhone 12に関しては驚くほど印象が良くなったというのが率直な感想です。今まで触った感触で上下モデルで悩んでいた方であれば、今回は標準モデルのiPhone 12を選んでも全く問題無いのではないかと思いました。
ほとんどの人が満足できる「iPhone 12」に仕上げた上で、小型がいい人は「mini」、カメラにこだわりたい人は「Pro」、大画面が欲しい方は「Pro Max」といった形で+αのニーズで派生モデルの選択に進める起点となるのが今回のiPhone 12なのではないでしょうか。
iPhone 12の価格はApple直販サイトで税込み94,380円から。10万円を切る価格でこの満足度はここ数年のiPhoneの中でも個人的に当たりモデルで、Appleの本気を感じる一台でした。