郊外や田舎の道路をドライブしていて「鍾乳洞」の看板を目にしたことはありませんか?
日本各地に点在するこの鍾乳洞は単なる洞窟かと思いきや、自然が創り出した美しい造形や、歴史を肌で感じることのできる巨大なモニュメントなどが間近で見学できる、とても興味深いスポットなんです。
特に「日本三大鍾乳洞」とよばれる3ヶ所は、ぜひ訪れておきたい魅力に溢れた鍾乳洞なのでご紹介します。
目次
鍾乳洞とは
まずは鍾乳洞について簡単に確認しておきましょう。
色々ある洞窟の中でも「鍾乳洞」と呼ばれるのは、鍾乳石がある洞窟のことです。
鍾乳洞というと天井からたくさんのつららのような石が吊り下がっていたり、足元から大きな竹の子みたいな石が生えている様子をイメージしますよね。あの石が鍾乳石です。
鍾乳洞は海底にできた石灰岩が地殻変動などで隆起して地上に顔を出し、それが雨水や地下水などで侵食されてできた洞窟です。
理屈はそれだけなのですが、海の中でサンゴや貝の死骸から出た炭酸カルシウムが石灰岩の地層を作り、それが地上に出て、今度は少しずつ少しずつ侵食され、気の遠くなるような年月をかけて出来上がるわけですから、人智の及ばない自然の力に圧倒されます。
鍾乳石は洞窟の天井の方で溶かされた石灰分がまた冷えて固まったものですが、それには何千年、何万年という時間がかかっています。
鍾乳洞の中はまるで太古の昔にタイムスリップしたような空間なんですね。
古くは薬ともされた鍾乳洞の石
鍾乳石には薬効があると考えられ、薬の原料として採取されていた時代もあります。
現在でも奈良の正倉院には、鍾乳石の破片である鍾乳床(しょうにゅうしょう)が保管されています。
かつては口の渇きを止める止渇薬(しかつやく)や、利尿剤として用いられていました。
また鍾乳石の独特な形から、子宝に恵まれる、その水を飲めばお乳の出がよくなるなどといった、その土地特有の信仰が伝承されていることもあるようです。
日本三大鍾乳洞
鍾乳洞は日本各地に点在していますが、その中でも特に見応えがあると人気の日本三大鍾乳洞をご紹介します。
龍泉洞【岩手県】
美しい地底湖で知られる岩手県の龍泉洞は、現在わかっているだけで総延長約4,000m、地底湖は8つあります。
そのうち700m、地底湖は3つが公開されていて中に入って見ることができます。
今なお未知の部分が多く、残り現在も調査は継続中ですが、総延長は5,000m以上あるのではないかと言われています。
龍泉洞の魅力は地底湖の美しさにあり、ドラゴンブルーと称される世界有数の透明度を誇る水は、1985年に名水百選の一つに選定されています。
5色のLEDでライトアップされた鍾乳石や地底湖の幻想的な姿に魅せられる人も多く、たくさんの恋人たちが訪れるロマンティックなスポットということで、恋人の聖地といわれているほどです。
また洞窟内にある「蝙蝠穴」にはキクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、モモジロコウモリ、ウサギコウモリ、テングコウモリの5種類のコウモリが生息していて、「岩泉湧窟及びコウモリ」名義で国の天然記念物にもなっています。
アクセス
盛岡駅発のJRバス東北「岩泉・龍泉洞線」に東口1番バス停より乗車、終点龍泉洞前バス停まで乗車時間約2時間10分。1日4本しか運行していませんのでご注意を。
自家用車では東北自動車道・盛岡インターチェンジ、または盛岡南インターチェンジから国道455号線を通り約2時間で到着します。
秋芳洞(あきよしどう)【山口県】
カルスト台地として有名な秋吉台国定公園の地下100m~200mのところにあり、総延長は国内第2位となる10.7kmもある鍾乳洞です。
そのうち1,000mが観光コースとして公開されています。
世界的に有名な石灰華段の百枚皿や、石灰華柱の黄金柱をはじめ、長淵・洞内富士・千畳敷・傘づくし・大黒柱などの名所がある他、正面入口付近にはちょっとした探検気分が味わえる「冒険コース」もあります。
また日本最大のカルスト台地の眺望を360度丸ごと見渡せる、「秋吉台カルスト展望台」にも洞内にあるエレベーターを利用して徒歩で上がることができます。
秋芳洞の名前は昭和天皇(当時は皇太子)の探勝がきっかけで付けられる
秋芳洞は昔は「滝穴(たきあな)」と呼ばれていました。
しかし大正15年(1926年)に皇太子時代の昭和天皇が行啓でこの鍾乳洞を探索され、昼食の際に名称について質問されたことがきっかけで「秋芳洞」となったという逸話が残っています。
アクセス
JR新山口駅からバスに乗車して約45分、「秋芳洞」で下車します。
自家用車の場合は、中国自動車道美祢東ジャンクションを経由して小郡萩道路の秋吉台インターチェンジで下り5分ほどで到着します。
龍河洞【高知県】
遥か昔の人々の暮らしの名残りを感じられるのが、高知県香美市にある龍河洞です。
弥生人が住んでいた痕跡が残る鍾乳洞で、中から弥生時代の土器や装身具、炉跡、木炭や獣骨などが発見されています。このことから1934年には、国の天然記念物および国の史跡に指定されました。
特に「神の壺」と命名された鍾乳石と一体化した弥生式土器は、一見の価値ありです。
4,000mあるといわれる全長のうち1,000mが観光ルートとして整備され、それとは別に約200mの冒険コースがあります。この冒険コースではつなぎ服や長靴、ヘルメットにヘッドランプという装備(レンタル可)で、本格的な洞窟探検をすることができます。
冒険コースは前日までの予約が必要ですので、ご注意くださいね。
アクセス
JR土讃線「土佐山田駅」からとさでん交通バスに乗車して約20分。
自家用車の場合は、徳島からは徳島・高知自動車道、坂出からは高松・高知自動車道、今治からは松山・高知自動車道を「南国インターチェンジ」でおり25分ほどで到着します。
他にもある鍾乳洞
日本三大鍾乳洞の他にも日本各地には名所といわれる鍾乳洞がたくさんあります。まずはお近くの鍾乳洞から探検してみるのもいいかもしれませんね。
日本一長い!龍泉洞の近くにある「安家洞(あっかどう)」【岩手県】
日本三大鍾乳洞に数えられる龍泉洞と同じ岩手県にある、もう一つの名鍾乳洞が安家洞です。
こちらは日本一長い洞窟で総延長は23,700mあり、加えて日本最古の鍾乳洞のひとつでもあります。
日本では珍しい迷宮型の鍾乳洞で分かれ道が無数にあり、まだその全貌は明かされていません。入り口は一箇所だけで公開されているのは500mのみ。
それでも迷宮に迷い込んだようなスリルや冒険気分が味わえ、洞窟本来の魅力を感じられる鍾乳洞として知られています。
東洋で最も美しい鍾乳洞とされる「玉泉洞」【沖縄県】
東洋一美しいといわれている「おきなわワールド 文化王国」の中にある玉泉洞は、鍾乳石の数が日本最多の100万本以上、総延長5,000mと国内最大級の鍾乳洞で、沖縄でも有名な観光地になっています。
890mまでが一般に公開されていますが、それ以外のエリアは研究用として保存されています。
30万年も前にできた鍾乳洞ですが、沖縄特有の気候や環境条件等から玉泉洞の鍾乳石は他の鍾乳洞と比較して成長が早く、今もまだまだ成長を続けているとても興味深い洞窟です。
美しい鍾乳石が見られる「竜ヶ岩洞(りゅうがしどう)」【静岡県】
2億5千万年前に形成され、秩父古生層と呼ばれる地層にできた鍾乳洞です。総延長1,046mのうち約400mが観光用に公開されています。
天井から流れ落ちる落差30mの「地底の大滝」や、鳳凰が羽を広げたように見える「鳳凰の間」などの名所や、「マリア観音」など数々の鍾乳石を見学できます。
まとめ
それぞれに特徴的な魅力を持つ日本国内の鍾乳洞。恋人や家族と悠久の歴史の中に身を置く経験も素敵ですね。
特に「日本三大鍾乳洞」をはじめとした観光地としても人気スポットの鍾乳洞は、観光用に整備されているとはいえ、中は夏もひんやりと肌寒い場所が多く、足元も濡れていたり上から雫がたれてくることもあります。
サンダルに軽装などは避けて、歩きやすい靴と上着を用意して楽しんでくださいね。