日本語には意味が似ている言葉がたくさんありますが、「委託」と「請負」もその中の一つです。
どちらも「誰かやどこかに仕事を依頼する」ということは分かりますが、この2つには明確な違いがあります。
さらに似た言葉には「委任」もあり、実際に使うときはどれが相応しいのか迷ってしまいますね。
これらの3つの言葉には、間違えてはならないほど重要な約束事が含まれているんですよ。
そこで今回は「委託」と「請負」、そして「委任」の違いと使い方を見ていきましょう。
目次
委託とは
「委託」とは、当事者以外の人に仕事を依頼することをいいます。
この場合の「仕事」とは、事務作業や物をつくることなど幅広い種類の仕事を指します。
似た言葉である「委任」は?
「委託」に似た言葉で、「委任」があります。
「委任する」とは、第三者に仕事の実行を委ね任せるときに使います。
この場合の仕事内容は、主に「人の行為」であり、「物をつくる仕事」のときには相応しくありません。
なぜかというと「委任」の条件の中には、物を完成させることや何かに結果を出すことが含まれていないからです。
相応しい使い方は、何らかの理由で自身が行うはずの作業や手続きが出来ないときに第三者に依頼するときなどです。
仕事を「委任」するとは、依頼したことに対して適切に取り組んでもらうことをいいます。
請負とは
「請負」とは、第三者が「完成・結果を出すことを条件とした仕事」を引き受けることをいいます。
完成を条件とした仕事とは、建物や家など「形があるもの」をつくることであり、結果を出す仕事とは売上を達成させるなどです。
請負契約では、完成品を納品することや結果を出すことが目的であり、発注者は目的を達成するまでの過程に関わりません。
完成品や数字が約束どおりに達成していれば、それに携わる人数や労働時間について関与しないということです。
「請負」とは、発注者の期待どおりに仕事を完成させて結果を出すことが条件の契約です。
委任・請負・委託の違いは?
「委任」と「請負」には対照的な違いがあります。
「委任」の条件は完成することではなく、取り組んだか取り組んでいないかです。
「請負」は、完成が必須条件で、どのように取り組んだのかには関与しません。
これらに対して「委託」は、仕事を依頼すること全般を指しており、そこに「委任」と「請負」が含まれます。
つまり「委託契約」だけでは、仕事を依頼する(される)ことは分かっても、契約内容は分からないということです。
もし、業務上「委託契約」の話が出たら、「委任」か「請負」の確認をする必要があります。
金銭が絡む契約の場合
金銭が絡む契約の場合も「委任」と「請負」には違いがあります。
委任の条件は、何かを完成させるもしくは達成することではないため「委任契約」を結んだ時点で報酬が発生します。
取り組んだ仕事の結果が発注者の期待通りではなかったとしても、適切に業務が行われていれば報酬が発生するのです。
対して「請負」は、完成や達成が必須条件なので、発注者の期待通りに仕事を終えた時点で契約が成立し報酬が発生します。
「委任」と「請負」の使い分け方
対照的な「委任」と「請負」をより理解するため、例を解説と共に見ていきましょう。
委任
<例1>
社員だけではフォローできないので、派遣会社と営業代行の委任契約を結んだ。
・解説
営業の成績や売上に関係なく、契約内容通りに営業業務を行うことを依頼します。
万が一、営業売上が悪かった場合にも報酬は発生しますが、発注元の会社の規定に従い業務を遂行していくことが約束です。
<例2>
弁護士に裁判の弁護を委任する。
・解説
裁判に勝つか負けるか分からなくても弁護士に弁護を委任し、弁護士はベストを尽くして勝訴を目指します。
裁判の結果に負けたとしても、適切に裁判を行っていた弁護士に対して報酬は発生します。
請負
<例1>
社員だけではフォローできないので、派遣会社と営業代行の請負契約を結んだ。
・解説
営業の成績や売上の結果が条件に入り、報酬に関係します。例えば「報酬は売上金の何%」という契約などです。
この場合、毎日営業先へ足を運んだとしても売上がなければ報酬もありません。
<例2>
ハウスメーカーは、大工と請負契約を結び家を建てる。
・解説
ハウスメーカーは「いつまでどのような家を完成させる」のかを条件とし、大工と請負契約を結びます。
ハウスメーカーは、材料の仕入れ先や何人の大工が関わるのかなどには関与せず、契約通りに家が完成すれば報酬を支払います。
「委託」の使い方
「委託」は、契約内容に関わっていない第三者が使う言葉として自然です。
<例>
・ここのマンションは、管理会社に委託された清掃員が掃除してくれる
・スーパーで、健康食品の委託販売をしていた
まとめ
「委任」は、依頼した仕事を規定通りに行うことにより報酬が発生することで、主に人の行為に対して使われます。
「請負」は、プロセスは問わないが結果を出す・完成させることが条件で、それによって報酬が発生するため、主に何かをつくる・達成させる内容の仕事に対して使われます。
そして、仕事を依頼することをまとめて「委託」といいます
全て似た意味を持つ言葉ですが、重要な部分で違いがあるのです。