受け手の「認識」を一文字ずつ書き替える。最後まで読まれるボディコピーの書き方
「言語化」時代におけるコピーライティングについて考察し、実務に活かせるヒントをお届けする連載「コピー学習帳」。第9回目となる前回記事ではキャッチコピーの書き方についてお届けしました。
基礎編・第10回のテーマは「ボディコピーの書き方」についてです。
毎回、宿題(のようなもの)を出していく予定ですので、ぜひチャレンジしてみてください。
前回記事テーマであったキャッチコピーは通りすがりの生活者の興味を惹く、コミュニケーションの「掴み」の役割を担う言葉でした。ボディコピーとは掴んだ興味・関心をさらに膨らませ、認識を肉付けしていくパーツです。
キャッチコピーやスローガンに比べると文字量が多いため、苦手とする人も多いといわれます。しかし、ボディコピーが担う役割を明確に掴めば、自ずと書くべき内容は決まり、スムーズに書き進められます。今回は、ボディコピーでは何を書くべきかを明らかにした上で、具体的な書き方のコツをご紹介していきます。
ボディコピーでは何を書くべきか
キャッチコピーの補足・説明であってはいけない
よくやってしまいがちな間違いとして、キャッチコピーの説明をすることが挙げられます。これでは受け手の認識は足踏み状態で、前に展開していきません。キャッチコピーはあくまで「スタート地点」であって、ボディコピーは受け手の理解や気持ちを進展させ、さらに加速させる内容にすべきです。
また「ボディコピーなんてどうせ読まれないから」と、単なるスペックの記述に終始するケースも見受けられますが、それもNG。キャッチコピーによって発火した興味・関心の火は、慎重に育てていかないとすぐに消えてしまいます。
広告の「オチ」であるタグラインに向けて、最大限膨らませる
ボディコピーで書くべき内容は、コミュニケーションのスタート地点であるキャッチコピーと、結末のオチとなるタグラインが基点となります。
よくある三幕構成のハリウッド映画に喩えると、「ヒーローの勝利」を描いて最初に観衆を掴む30分がキャッチコピーなら、ボディコピーは後半の2幕。つまり「ヒーローが敗北」し、「最後に逆転」するシーンまでを描くのがボディコピーの役割。ラストシーンの「ヒーローの勝利宣言」がタグラインになります。単につらつらとテキストを並べるのではなく、起伏をつけて感情を揺さぶり、読み手のイメージを膨らませることがボディコピーを書くコツです。
具体例がないと分かりづらいと思いますので、私の過去事例を用いて解説します。以前の課題で「Qビーフ」として出題した「不器用な牛肉」です。この原稿では3パートに渡ってボディコピーが展開します。キャッチコピーの「淡路ビーフは不器用です」を受けて、最初の2パートはひたすら淡路ビーフの「愚痴」が続きます。
ホントは凄く良いブランド肉なのに、地元の人にもあまり伝わっていない。伝えたいことはたくさんあるけどストレートに言っても伝わらないから、開き直って受け手に愚痴ってみよう。相談されると、人は聞いてくれるもの。アレもコレもちゃんと耳を傾けて聞いてくれる人もいるだろう、という狙いです。
前段の2パートはひたすら愚痴が続きますが、最後の一段落で一転切り返します。うまく伝わってないことを伝えきったら、あとは胸を張って味覚の素晴らしさを訴えるという流れです。最後に急に胸を張った照れ隠しとして、前段で入れた「口下手」という表現を天丼として活用しています。こうしたチャーミングなくすぐりによって、ブランドパーソナリティを創っていくという狙いです。
この一連の文脈の中で「1300年の歴史を持つ但馬牛である」「A5等級(サシ)至上主義とは一線を画す味」「淡路牛と淡路ビーフは別物」「旨味と甘味のバランスを愉しむもの」などと言ったスペック情報をさりげなく絡めて伝えようとしています。
ボディコピーは「アイデアの断片」を散りばめて書く
ボディコピーの書き方のコツは実は簡単。キャッチコピーとタグラインの関係から「何を書くか」を定めたら、あとはそれらを書く時に様々な思索の中で出てきたアイデアの断片を散りばめて書くだけ。
キャッチコピーとしては弱いけど、捨てるのは惜しい……。そんなアイデアをボディコピーのスパイスとして有効活用するのです。すると単なるキャッチコピーの説明ではない、イメージを膨らませるチャーミングなボディコピーが誕生します。
言い換えれば、キャッチコピーとタグラインがキマった段階で、ボディコピーもほぼ書けているといえます。
ボディコピーは「パーセプション」を描写する
22年末に発刊されたPRストラテジスト 本田哲也 氏の「PERCEPTION 市場をつくる新発想」(日経BP刊)の影響もあり、マーケティング業界で注目されている「パーセプション(=受け手の認識)」という概念があります。ボディコピーが描写すべきことはまさに、あるべき「パーセプション」についてです。
送り手からの一方的なメッセージングではなく、それが受け手である生活者にどのように認識されているかを把握し、理想とのギャップがあればそれをボディコピー上で一文字ずつ書き替えていくこと。それがボディコピーを書く、という作業です。
宿題のようなもの ーCopy Drillsー
この連載では毎回、宿題(のようなもの)を出していますので、ぜひチャレンジしてみてください。また読者の皆さんからのコピー案も募集しています。Twitterでハッシュタグ【#ferretコピー学習帳】をつけて、投稿してみてください。優れたコピーは、次回解答例と併せてご紹介します。
今週のお題
とあるスーパーの広告案件で、後輩コピーライターから下記のようなキャッチ&ボディコピー案が上がってきました。先輩コピーライターであるあなたは、どのようなチェックバックを返しますか?
解答例は次回に!
解答例は、次回の連載(4/14(金)予定)でお伝えします。
前回のお題の解答例
前回のお題だったアウトドアグッズを自宅のインテリアに取り入れる「おうちキャンプシリーズ」のキャッチコピーの解答例はこちらです。
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後書きのようなもの
数字を介して読者と「対話」する
基本的に広告コピーはキャッチコピーやタグラインに注目が集まりがちで、どのようなボディコピーがよいのかという議論はあまりみかけない。そもそも評価がしづらいのも要因のひとつだろう。
この点は読者の反応が数値として分かるWebメディアの方が「本文(=長文)」に対する評価はしやすいのだが、Webメディア内のコンテンツ評価も往々にしてキャッチコピーにあたる「タイトル」のCTRに終始しがちである。
私はBtoC/BtoBそれぞれのメディアにおいて過去150本ほど記事広告を執筆し、タイトルではなく記事本文のCTRや読了率をつぶさに分析してきたが、長文こそ書き方次第でパフォーマンスが変わるものだと確信した。
たとえば一般的な「Webライティング」の作法で書かれた記事広告は、概ね読了率は40%、CTRは1-3%だ。離脱の要因をつぶさに分析していくと、本文書き出しのリード部分で大幅に離脱が発生(20-30%)していることがわかった。タイトルでせっかく読者が抱いた期待を、ダラダラと回りくどいリード文が裏切ってしまっていたのだ。
そこで、リード文に一番大きな「気づき」を入れることにしたところ、読了率は70-80%にハネた。最も離脱の多い場所の離脱を防ぐとともに、その記事自体への期待感を一段高めることで最後まで読み切る読者が増えたのだ。
同時に無駄な言い回しを全てカットし、記事全文が何らかの気づきやヒントを与えるテキストで構成するようにした。すると記事閲読からのアクションも5-10倍に激増し、CTR15-20%がアベレージとなった。
よくいわれる「ユーザーは長文(あるいはボディコピー)は読まない」というのは嘘で、読むべき内容が詰まっていれば読むし、当たり前の情報がつらつらと並んでいるだけだと読み飛ばす。それだけのことだ。
今Webメディアに在籍している人はボディコピーを特訓するチャンスだと思う。読了率のヒートマップやCTAごとのCTRをつぶさに分析できる今のうちに、記事「本文」の研究をしておくべきだ。
タイトルなどはある程度経験を積めば「釣りタイトル」含めていかようにもできる。しかしそれでは執筆の「腕」は上がらない。誤魔化しのきかない本文において、CTRや読了率といった「数字」を介して何万人という読者と対話をする。その積み重ねこそが、文章を磨く一番の方法だと思う。
次回は特別編「ChatGPTのコピーを添削する」です。
では、また次回の連載(4/14(金)予定)でお会いしましょう。
連載
第1回 「言語化」時代のコピーライティングとは
第2回 広告の目的は「買ってもらうこと」ではない。生活者のお買い物ポリシーを書き換える広告コピーのアプローチ
第3回 「誰も読んでくれない」という前提から発想する。広告コピーの基本スタンス
第4回 広告コピーの「秘伝の修行法」とは
第5回 どう言うか?の前に「何を言うか?」を決める
第6回 生活者とブランドの接点=ベネフィット(便益)の約束
第7回 広告のメッセージ精度を上げる「言葉のフォーメーション」
第8回 広告の「基点」愛され続けるタグラインの書き方
第9回 1/1000の狭きココロの門に入るキャッチコピーの書き方
第10回 ブランドの「認識」を醸成するボディコピーの書き方
第11回 【特別編】ChatGPTのコピーを添削する
第12回 広告コピーのトレンド変化
第13回 ブランドが紡ぐ小さな物語
第14回 アイデアの作り方 ~インプット編~
第15回 アイデアの作り方 ~アウトプット編~
第16回 顧客理解のためのヒアリング
第17回 広告企画のプレゼンテーション
第18回 X世代の心象風景:80年-95年の広告とカルチャー
第19回 ミレニアル世代(Y世代)の心象風景:95年-09年の広告とカルチャー
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- キャッチコピー
- キャッチコピーとは、商品などの宣伝の際に使用される文章のことです。 宣伝をする対象のイメージや特徴を簡潔にまとめつつ、見た人の印象に残る必要があります。一言で完結するものから数行になる文章など、実際の長さはバラつきがあります。 キャッチコピーの制作を職業とする人のことを、「コピーライター」と言います。
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- タグ
- タグとは、原義では「モノを分類するために付ける小さな札」のことです。英語の「tag」を意味するものであり、荷札、付箋といった意味を持っています。特にインターネットに関する用語としてのタグは、本文以外の情報を付与するときに用いられます。
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- テキストとは、純粋に文字のみで構成されるデータのことをいいます。 太字や斜線などの修飾情報や、埋め込まれた画像などの文字以外のデータが表現することはできませんが、テキストのみで構成されたテキストファイルであれば、どのような機種のコンピューターでも共通して利用することができます。
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- Twitterとは140文字以内の短文でコミュニケーションを取り合うコミュニティサービスです。そもそもTwitterとは、「小鳥のさえずり」を意味する単語ですが、同時に「ぺちゃくちゃと喋る」、「口数多く早口で話す」などの意味もあります。この意味のように、Twitterは利用者が思いついたことをたくさん話すことのできるサービスです。
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- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
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- コンテンツ(content)とは、日本語に直訳すると「中身」のことです。インターネットでは、ホームページ内の文章や画像、動画や音声などを指します。ホームページがメディアとして重要視されている現在、その内容やクオリティは非常に重要だと言えるでしょう。 なお、かつてはCD-ROMなどのディスクメディアに記録する内容をコンテンツと呼んでいました。
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- タイトル
- ホームページのソースに設定するタイトル(title)とは、ユーザーと検索エンジンにホームページの内容を伝えるためのものです。これを検索エンジンが認識し検索結果ページで表示されたり、ユーザーがお気に入りに保存したときに名称として使われたりするため、非常に重要なものだと考えられています。「タイトルタグ」ともいわれます。
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- BtoCとは、Business to Consumerの略で、企業と消費者間の取引のことを言います。
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- CTRとは、インターネット上の広告がクリックされた回数を表す指標です。クリックスルーレートともよばれます。この値が高いほど、ユーザーの興味・関心誘うことができている広告であると言えます。
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- ヒートマップ
- ヒートマップとは、Webマーケティングにおけるヒートマップとは、ホームページ内でのユーザーのアクションの大小を、サーモグラフィーのように表示する機能です。ユーザーがどこを一番見ているのか、マウスの動きやスクロールなどから解析し、それを色によって表します。「クリックヒートマップ」「マウスヒートマップ」「スクロールヒートマップ」「ルッキングヒートマップ」などの種類があります。
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