746: 2013/03/11(月) 21:11:01.26 ID:zk9YwO650



シリーズ
勇者募集してたから王様に会いに行った

酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった

勇者と魔王がアイを募集した【1】
勇者と魔王がアイを募集した【2】
勇者と魔王がアイを募集した【3】



161

--亜人保護団体本部--

しゅううう……

侍「タフでござるな……」

賢帝「ぬぅぅうぅう……!!」

土煙の中から傷だらけの賢帝が顔を出す。

通信師『……驚きました……まさかあれで体力を三分の一も減らせないとは……』

符術師「このリーダースキルって、1発1発が対単体攻撃魔法レベル2,5相当じゃなかったっけ……?」

しゅうぅうう

賢帝「うぐう……」

賢帝はボロボロになりながらも立っていた。

747: 2013/03/11(月) 21:11:39.40 ID:zk9YwO650
162

--亜人保護団体本部--

賢帝「あんたたちぃ……許さないわよぉ……」

めき、めききっ!!

賢帝の傷は完全に修復される。そして筋肉が肥大化を始めた。

賢帝「神であるこの私にぃたてついたことを後悔させてやるぜぇ……!!」

めきめきめきっ!!

符術師「なっ!! か、身体がどんどんでかく……三メートル以上あるぞ!?」

ゴゴゴゴゴ

医師「まさか……奥義を使うつもりですか!?」

医師は一筋の汗を流す。

748: 2013/03/11(月) 21:12:58.39 ID:zk9YwO650
163

--亜人保護団体本部--

賢帝「……ふ、ふふふ。あんたたち虫けら程度に奥義なんて使うはずが無いじゃないの……でもそうね……」

ぼっ!!

その状態で全身に炎を纏う。

ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!!!!

賢帝「あんたたちにはちょっとむかついちゃったし……いいわぁ……そこまで言うのなら、秘にして火の、究極の我が奥義を見せてアゲル」

ぼぉぉ!!

炎が竜巻のように回転し熱風が吹き荒れる。
辺り一帯を焼き付くさんとするその様は、比喩でもなんでもなく天災そのものだった。

侍「ば、ばかな!! 奥義発動前の段階でこのパワーだと!? ……し、信じられんでござる……!」

プッ
ゴゴゴゴゴ

749: 2013/03/11(月) 21:13:32.03 ID:zk9YwO650
164

--亜人保護団体本部--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

護衛姉「ちょ、ちょっと!!」

護衛妹「そんなもんぶっぱなされたら!!」

物陰から見ている護衛姉妹は慌てて身構える。



代表「あー……こりゃすごい。本部消し飛ぶね」

熊亜人「代表! 急いで避難するぐま!!」

代表「いやいや避難するにはもう遅いでしょう。あれの攻撃範囲は広いよ? 恐らく」

750: 2013/03/11(月) 21:14:12.40 ID:zk9YwO650
165

--亜人保護団体本部--

賢帝「感謝なさい。特別に強力な方にしてアゲル……これを使ったのは今までで二回しかないんだから!!」

ゴゴゴゴッッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

賭博師「まだ魔力があがるってのか!?」

大地が揺れる。

プッ

通信師『……』

大気が震える。

符術師「こんなの……勝てっこない……」

ガタガタ

気丈な符術師が震えながら涙を流す。

751: 2013/03/11(月) 21:15:47.27 ID:zk9YwO650
166

--亜人保護団体本部--

ジュッ!!

汗などは一瞬で蒸発してしまう。
それほどまでに強大なエネルギーを……賢帝は発していた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

世界の始まりと終わり。
それを可能にするだろうと思わせる破壊の力……。

それが指向性を持って、今、

賢帝「ふふふ……じゃあね、おばかさんたち。奥義いいいいいいいいいいいい!!!阿修r」



侍「はい、じゃあ奥義崩しうちまーすwww」

ズドドドッドバシャーン!!!!!!

賭博師、通信師、医師、符術師「「「ですよねーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」」」

賢帝「ごびょふっ!!!???」

賢帝が纏っていた魔力を根こそぎ粉砕し、賢帝を真っ二つに両断する侍ちゃんでした。

デデーン

752: 2013/03/11(月) 21:16:20.80 ID:zk9YwO650
167

--亜人保護団体本部--

ぷすぷす……

賭博師「いやー、あいつまじばかーwww調子にのらせたらマジ使ってやんのーwwwウケルーwww」

通信師『医師も名演技でしたよねwwwなにが、「まさか……奥義を使うつもりですか!?」キリッ よ。ぷぷーwww』

医師「正直笑いをこらえるのがやっとでしたよ。符術師なんて笑いまくって涙流してましたし」

符術師「ぎゃはははは!! だってもうみんなの演技がうまくてさwwwwし、しかもあいつすげぇかっけぇセリフばっか言いやがるからwwww」

侍「拙者笑い我慢してたせいで何度か屁がもれたでござるよ」

わははははくせーくせー

753: 2013/03/11(月) 21:16:57.64 ID:zk9YwO650
168

--亜人保護団体本部--

護衛妹「た、倒しちゃったの? あんな化け物を……」

護衛姉「はわ、はわわわ」

ガタガタガタガタ

頭を押さえて泣きじゃくってる護衛姉。

護衛妹「ね、姉さん大丈夫みたいですよ? ほらもう熱くないでしょう?」

護衛姉「はわわわ。も、もう燃えない?」

もふもふ

護衛姉は頭の上の自分の耳をもふもふ触りながら心を落ち着かせようとしている。

754: 2013/03/11(月) 21:17:43.07 ID:zk9YwO650
169

--亜人保護団体本部--

護衛妹「はい。ですからそんな隅っこに隠れてないで出てきてください」

護衛姉「……うん」

よちよち

護衛妹の服をしっかり握りしめながらフロアの様子を覗く。

護衛姉「……」



わーっはっはっはっはっ

符術師「じゃあさっさと残りをぶったおして帰ろうぜぇ」

ガシッ

医師「ん?」

医師の足首を何かが掴む。

755: 2013/03/11(月) 21:18:26.88 ID:zk9YwO650
170

--亜人保護団体本部--

賢帝「」

医師「!?」

医師の足首をつかんだのは上半身だけの賢帝だった。

符術師「な、こ、こいつまだ生きて!!」

賢帝「ごぼっ、許さない……もう絶対に許さないわっっ!!」

ガシッ

符術師「がっ!!」

賢帝は二本の腕で立ち上がると、符術師と医師の足を掴んだまま振り回した。

ブンブンブンブン!!!!

756: 2013/03/11(月) 21:19:04.27 ID:zk9YwO650
171

--亜人保護団体本部--

侍「ちぃ!」

賢帝「」

どごっ!

突っ込んできた侍に医師をぶつける。

侍「がっ!!」

医師「ぐっ!」

符術師「て、てんめぇ!!」

振り回されながら札を引こうとした符術師だったが、

賢帝「」

ブンッ!!

その前に思い切り賭博師に投げつけられた。

757: 2013/03/11(月) 21:19:37.96 ID:zk9YwO650
172

--亜人保護団体本部--

ドッ!!

賭博師「ぐほっ!!」

符術師「っ!!」

侍「……くっ!」

ガシガシガシガシ!!

四人が体勢を崩している間に、賢帝は自分の下半身の所にまでたどり着く。

賢帝「火属性回復魔法レベル4」

ぼっ……しゅううう

医師「……一瞬で上半身と下半身をくっつけるとは……」

符術師「こ、こいつ……不氏身か!?」

758: 2013/03/11(月) 21:20:16.82 ID:zk9YwO650
173

--亜人保護団体本部--

ゴゴゴゴゴ

賢帝「ふしゅーるるる……」

侍「……」

チャキっ

符術師「……ドロー」

ビッ

通信兵『気を付けて下さい……』

ザザっ

賭博師「……って言われてもなぁ」

ぼりぼり

医師「……」

六人は間合いを測っている。

759: 2013/03/11(月) 21:21:26.85 ID:zk9YwO650
174

--亜人保護団体本部--

賢帝(今すぐこいつらをブチ頃してやりたい……けど、奥義発動を無効化されて消費しちゃった魔力の量……辛いわね……)

賢帝は平静を保とうとしているが、かなり疲弊していた。

賢帝(まぁそれでもこの五人相手なら勝てると思うけど……その後が怖いわね)

賢帝はちらりと上を見る。

賢帝(というかなんであの子手を貸してくれないのかしら。私が五柱だからその戦いに水をさしちゃいけない、とかそんなロマンチックな考えを持った子じゃあないでしょう?)

賢帝は涼しい顔をしている代表と目が合った。

賢帝(……そう。やっぱり私のこともいつか出し抜くつもりだったようね……ふふふふ)

760: 2013/03/11(月) 21:22:16.52 ID:zk9YwO650
175

--亜人保護団体本部--

賢帝「……はぁ、いいわ。あんた達見逃してあげるわ」

侍「!?」

符術師「はっ!?」

通信師『!』

医師「え!!」

賭博師「……」

賢帝「私ももう若くないしね。しばらく前線から退いてたせいで鈍ってたわ……」

ごきっごき

賢帝はため息とともに肩を鳴らす。

761: 2013/03/11(月) 21:22:57.68 ID:zk9YwO650
176

--亜人保護団体本部--

侍(……こんだけ強くて鈍ってたとか言われてもござる)

符術師(まぁ……色々はっちゃけた伝説持ってるしなこの人)

医師(五柱ですしねぇ)

賢帝「だから疲れちゃったの。私帰るわ。後のことは好きにしなさい」

賭博師「あ、まじすか。じゃあ……お疲れ様です」

賢帝「うん、あんた達も気をつけるのよ」



護衛姉「ちょっと仲良くなってる!」

護衛妹「先輩後輩みたいになってる!」

762: 2013/03/11(月) 21:24:02.51 ID:zk9YwO650
177

--亜人保護団体本部--

侍「……本当にどっか行っちゃったでござる」

符術師(通信師。嘘かもしれねぇからちゃんと確認しておけよ)

通信師『もちろんです。でももう心配ないかもしれません。すでに5キロ離れちゃいましたし』

賭博師(はやっ!!)

医師(小回りはきかないみたいですが……本物の化物ですね。あれだけ強くなっちゃうと人間の座に満足できなくなるのも無理はないのかも……)

符術師(ま、いいや。それじゃあ俺らの本当の目標である代表を倒しにいくぞ)

侍(うえー。今のが前哨戦とかやってられないでござる)

賭博師(ほんとな)

763: 2013/03/11(月) 21:24:59.19 ID:zk9YwO650
178

--東草原--

ザザザザザザザ!!!!

賢帝(まぁいいわ。例え代表ちゃん達が倒されちゃったとしても、また何年かかけて……ん? この魔力……)

賢帝は前方から飛んでくる何かを感知した。

賢帝「……ちょっとちょっと……なんであんたがここにいるのよ……」

ひゅおおおおおおおおおおおおお!!

それは猛スピードで飛んできたかと思うと、空中で急ブレーキをかけた。

ふわっ

魔導長「やぁ賢帝ちゃん。お久しぶりなのっ」

賢帝「……本当そうね……」

賢帝は魔導長を見て身構える。

賢帝(ちっ……ここは東の王国領土の目と鼻の先よ。なんで魔法王国の長が……)

764: 2013/03/11(月) 21:25:44.24 ID:zk9YwO650
179

--東草原--

賢帝「あなた、一体なんでこんなところにいるの?」

魔導長「ん? 賢帝ちゃんを倒しにだよっ」

賢帝「!?」

魔導長の全身から無色の魔力があふれ出る。
それは戦闘体勢に入ったということ……。

賢帝「な、なんでなの!? なんで私があなたに倒されなくちゃならないのよ!?」

魔導長「児童誘拐」

賢帝「!?」

魔導長「人身売買、魔力強化ドラッグ・ブーストの栽培及び密売、犯罪組織との密接な関係etcetc……それと今回のはとびっきりの大重罪なのっ!!」

賢帝「!!……くっ」

魔導長「……倒される理由なんていくらでもあるんだよ」

765: 2013/03/11(月) 21:28:40.30 ID:zk9YwO650
180

--東草原--

賢帝(ま、まずいわよ……い、今の私の魔力がこの子の魔砲には……!!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

賢帝「!! う、わ……」

先ほど賢帝の奥義で使われた魔力量が可愛く見えるほどに……魔導長の魔力は遥かに凶悪だった。

ビビビビビビビビビビビ!!

魔導長「悪はすべからく倒される……」

ヴキヴキヴキヴキヴキ!!!!

賢帝「あ、あぁ……あぁああああっっっ!!」

魔導長が杖を掲げると、世界の全てから魔力を吸い上げ始めた。
そして、自らの強大な魔力にそれを上乗せする。

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!

魔導長「リミッター全解除」

賢帝「」

魔力が満たした完全無音の世界。
賢帝は、その最後の音を聞く。

魔導長「全力全開!! 奥義、星光破壊砲おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

カっ

775: 2013/03/19(火) 00:34:37.90 ID:xUhIV1iO0
181

--東草原--

しゅううううううう……

賢帝「ぎ、ぎぎ、ぎ」

魔導長「……やれやれ、初めてなの。こんなガンジョーな人間……逆に私の自信てやつがブッこわれそうなの……」

爆心地で燃えカスのようになりながらも生きている賢帝。

魔導長「さすがは落ちぶれても五柱なの。でも」

魔導長が杖を向けると賢帝の体を魔力で出来た縄が締め付ける。

賢帝「はうんっ!!」

魔導長「捕獲完了なの」

776: 2013/03/19(火) 00:35:19.43 ID:xUhIV1iO0
182

--東草原--

ぴょろろー

ばさっばさっ

魔導長「ん、伝達鳥なの?」

伝達鳥は魔導長の差し出した杖に止まると何やら喋り始めた。

伝達鳥「わたしは東の憲兵と申します。貴女様は五柱が一柱、魔導長様とお見受けいたします。今回は自国にて待機しているようにて連絡がいっていると思いますが……」

魔導長「来てたの。でもそんなこと知らないの」

伝達鳥「なっ!? こ、困ります……。貴女様のような強大な戦力を持つお方がそのような軽率な行動を取られては……」

魔導長「それは聞いていた情報だけだったらまだ納得してあげてもよかったの」

伝達鳥「……」

魔導長「五柱がこの件に絡んでいたとなっては話は別なの。五柱のことは、五柱がかたをつける」

777: 2013/03/19(火) 00:36:04.58 ID:xUhIV1iO0
183

--東草原--

伝達鳥「……」

魔導長「もう用は済んだの。ここから出て行くからいいでしょなの」

伝達鳥「……はっ」

魔導長「じゃあちょっとこの子を借りるなの」

ばち

魔導長が伝達鳥に触れるとピンク色の魔力が弾ける。

魔導長「五柱に欠員がでたの。なら次の五柱を決めなくちゃなの」

ぽう

魔導長「残りの三人に急いでこのことを伝えて欲しいの。推薦したい子がいるの」

778: 2013/03/19(火) 00:36:33.79 ID:xUhIV1iO0
184

--???--

トントントン

小気味良い包丁の音が響く。

ツインテ「と、鍋は大丈夫かな?」

ツインテはスプーンで一掬いして口に運ぶ。

ツインテ「……うん。よし」

フォーテ「お姉ちゃんっ朝ごはんまだっ!? フォーテぇ、高貴なお姉ちゃんの手で作られた手垢まみれのご飯が早く食べたいのっ!!」

ツインテ「そ、そんなに手垢……あるのかな」

しゅん

779: 2013/03/19(火) 00:37:01.64 ID:xUhIV1iO0
185

--???--

フォーテ「あ!? ごごごごめんお姉ちゃん!! 神聖で清浄なお姉ちゃんに垢なんてあるはずないのに!! 僕は一体なんてことを言っちゃったんだっ!」

ボロボロと大粒の涙を流しながらフォーテは大声で泣き出した。
そしてツインテの指をぺろぺろちゅぱちゅぱ。

ツインテ「えっ、ちょ、ちょっとフォーテちゃん」

ツインテは慌ててフォーテの頭をなでる。

ツインテ「よしよし……ボクは気にしてないから大丈夫だよ。さ、みんなで朝ごはん食べよ? お腹すいたよね?」

フォーテ「ぐすっ……うん」

ツインテ「うん。じゃあフォーテちゃんにもテーブルに運ぶの手伝ってもらうね?」

フォーテ「っ!! うん! 僕ツインテお姉ちゃんのお手伝いする!!」

ズズズ

780: 2013/03/19(火) 00:37:34.80 ID:xUhIV1iO0
186

--???--

アアアアアア

ツインテ「びくっ!?」

あああああぁああああ

ガチャガチャガチャ

フォーテは闇から氏者の腕を引きずり出し、お皿を全て持たせて走っていった。

フォーテ「それー!!」

ダダダダダダダダ

ツインテ「あ、ずるいっ……もう」

781: 2013/03/19(火) 00:38:05.72 ID:xUhIV1iO0
187

--???--

フォーテ「みんなー! ご飯だよー!!」

?「ア、ゴハンー!? マッテタヨー!!」

天井に張り付いている蜘蛛のような物体が喜びの声をあげる。

??「銀蜘蛛さんはいつもどこにご飯が入ってるんだろって、私思っちゃったりしてます」

ピンクの髪の亜人の少女はニコニコと笑っている。

???「ツインテ、作る、食事、上手い」

茶色の肌の男は片言。

????「はははいつも茶肌さんは美味しそうに食べてますからね(がっつきすぎだくそ)」

爽やかな笑顔を浮かべる美青年。

782: 2013/03/19(火) 00:38:33.70 ID:xUhIV1iO0
188

--???--

?????「……」

無言のまま椅子に座っている金髪の青年。

??????「び、美少女のご、ごはん! う、嬉しい! ひひっ」

興奮したりきょどったり忙しい小柄な少年。

???????「あー、フォーテ坊主。運ぶのは私の仕事なのにー」

制服を着ている女性は不満をもらす。

????????「はっはっはっ! 朝飯前にしっかり筋トレしてきたぞ! 俺は腹いっぱい食うぞぉ!」

上半身裸の男は汗まみれ。

魔王勇者「脳筋、汗臭い」

魔王勇者は鼻を摘まむ。

783: 2013/03/19(火) 00:39:08.38 ID:xUhIV1iO0
189

--???--

トリガー「うん……ちょっとこれたまらん臭いだよね」

トリガーは嗚咽。

Q「ピピッ。凶悪な臭気を感知ピピッ」

ロボは異常を感知して走り回る。

ツインテ「……はははっ……」

フォーテ「ほらぁ! みんなテーブルからどいてよぉっ! お皿テーブルに並べるんだからっ!!」

あああああああああああああああああああ

トリガー「……氏者の腕に運ばせるなんて衛生面的にどうなんだろう」

ああああああああああああああああああああああああああああああ!!

トリガー「あ、ごめん。怒らないでよ」

784: 2013/03/19(火) 00:39:44.68 ID:xUhIV1iO0
190

--???--

かちゃかちゃかちゃ

フォーテ「んー!! おいしいー!! やっぱりお姉ちゃんの食事は最高だよっ!!」

?「ウン! ホント、サイコウダヨー!! オイシスギテ、メカラオイルデチャウ!!」

どばー

??「わっ。食事中にオイルはちょっと、って私思っちゃったりしてます」

???「せっかくの、ツインテの、ご飯、まずく、なる」

????「ははは。(マナーってもんをしらねぇのかくそがっ!!)」

?????「……」

かちゃかちゃかちゃ

785: 2013/03/19(火) 00:40:38.15 ID:xUhIV1iO0
191

--???--

かちゃかちゃかちゃ

??????「おいしい、おいしい、ひひひっ」

???????「うん、本当に。ねぇ今度作り方教えてよツインテ坊。私も料理やってみたい」

????????「いや……お前はやめた方がいいかな……」

トリガー「うんボクもそう思う……」

Q「危険! 危険! 超危険!」

???????「なぁんですってー!?」

かちゃかちゃかちゃ

ツインテ「……」

786: 2013/03/19(火) 00:41:08.21 ID:xUhIV1iO0
192

--???--

フォーテ「? どうしたのお姉ちゃん。世界を滅ぼすほど美味しいのに全然食べてないね……はっ!? もしかしてお姉ちゃんどこか具合悪いの!? 直す!? 治す!?」

あああああああああああああああ

???????「こらフォーテ坊! 食事中にそれ出すんじゃないって言ってるだろ!?」

???「ツインテ、どこも、悪い所、ない」

?「ピピピ。ウン、サーチシタケド、イジョウハナイネ」

ツインテ「あ、具合悪いとかそういうんじゃないんです。ただ……ちょっと気になることがあって」

フォーテ「……もしかして、お姉ちゃんの従者のこと……?」

ツインテ「うん……皆さんは今ごろなにやってるんだろ、って。ボクがいなくてもちゃんとしたもの食べてるかな、って」

フォーテ「……」

ツインテを見るフォーテの瞳に光は無かった。

787: 2013/03/19(火) 00:41:42.72 ID:xUhIV1iO0
193

--妖精郷--

バクバクバク!!

ポニテ「あ! アッシュ君!! そのうん◯私のだよ!?」

アッシュ「ふん! 手の届く範囲にある◯んこは全部早い者勝ちだ!」

レン「もきゅもきゅ。このう◯こ旨いにゃ!」

ハイ「……はぁ」

788: 2013/03/19(火) 00:42:29.23 ID:xUhIV1iO0
194

--妖精郷--

ポニテ「よし、今日も一緒にお風呂入りに行こうかハイちゃんっ!」

ハイ「は、はい……」

レン「嫌なら嫌っていいにゃよハイ。ポニテはセクハラ魔神にゃ。出るとこ出たら確実に勝訴にゃ」

ポニテ「まっ、私出るとこ出てるからねっ!!」

ぷるんっ

アッシュ「……オヤジギャグ……」

ハイ「うわ……相変わらずおっきい」

レン「タンクローリーで引いて平にしてやるにゃ」

ゴゴゴゴゴゴ

789: 2013/03/19(火) 00:43:41.43 ID:xUhIV1iO0
195

--妖精郷--

かっぽーん

ポニテ「ほんとどこにでもあるねーおんせーん!」

レン「この世界は何かがおかしいにゃ」

ハイ「……」

じーっ

ハイ(ほんと……この二人スタイルいいな……)

ハイはタオルで体を隠しながら二人の裸体を観察している。

レン「む。熱い視線を感じるにゃ。もしかしてハイってそっち系なのにゃ……?」

ハイ「違います!」

ポニテ「うひひ。私は別にそれはそれでいけなくも」

涎を垂らしながらハイに近づくポニテ。

790: 2013/03/19(火) 00:44:17.23 ID:xUhIV1iO0
196

--妖精郷--

ぷるんぷるん、ぷるるーん

ハイ(お、おっきい!!)

レン「後輩いじめは止めるにゃ!」

ばちっ

レンは水でゴーレムを作り上げる。

ポニテ「!」

そしてポニテにチョップ。

ばっしゃーん!!

ポニテ「あぶぶ……ぶはっ!! こっの~やったなレンちゃん!」

レン「くっくっく」

ハイ(ダメージ無し……?)

791: 2013/03/19(火) 00:45:09.63 ID:xUhIV1iO0
197

--妖精郷--

レン「そう言えばハイはいくつなのにゃ? 小柄だから幼く見えるにゃけど」

ハイ「あ、はい。今年で27になります」

ポニテ「……」

レン「……」

ハイ「はい」

ポニテ、レン「「えええええええええええええ!? と、年上!?」」

ハイ「あ、やはりそうでしたか。そうだろうとは思ってましたが、皆さん大変若くてうらやましいです」

ポニテ「まじかにゃ……てっきり年下だと思ってたにゃ。高校一年生くらいにしか見えないにゃ」

レン「おい」

ハイ「よくそう言われます。別段何か気を付けているわけでもないんですが」

792: 2013/03/19(火) 00:45:37.92 ID:xUhIV1iO0
198

--妖精郷--

ハイ「今日を生きるためにと仕事に精を出し続けてはやウン十年……人並みの恋も、遊びも、幸せも味わうことままならず今に至ります……はぁ。青春を生きる若人、うらやましい……」

ずぅん

レン「うっ、そ、そんな落ち込んじゃだめにゃ。その、ハイ、さん」

ハイ「そんな敬語なんてよして下さい。レンさん達の方が、このパーティでは先輩であることに変わりはないんです」

ポニテ「ハイちゃん……」

ハイ「はい?」

もみゅ

ハイ「は、はいいいいいいいいいい!?」

ポニテ「はぁあああ。やっぱりおっOいいいなぁ」

もみ、もみ

ハイ「えっえっえっ!?」

ポニテ「ツインテちゃんは皆無だし、レンちゃんもあって無いのと変わらないし。パーティ内でおっOい揉めるようになって私幸せだよぉ!!」

レン「湯船からでなビXチ」

793: 2013/03/19(火) 00:46:09.42 ID:xUhIV1iO0
199

--妖精郷--

ハイ「や、やめてください、別に私の胸は立派なもんじゃないですよ……どこにでもある普通の大きさです」

ポニテ「そう普通……だがそれがいい。っていうかハイちゃんの反応がいい」

ポニテはハイの首筋を1ぺろり。

ハイ「ひゃんっ!!」

ポニテ「胸は普通、腰のくびれも普通、肉付きはむっちりはしてないしすらっともしてない。肌もツインテちゃん並にきめ細やかなわけではない……」

ハイ「ぐさっ!?」

ポニテ「だがそれがいいんだよ!!!! この素朴さがいいんだよ!!!! なんでわからないかなぁ!!!! 結局最強なのはなんに特化してるってことじゃないんだよ!!!! 普通こそ最強なんだよ!!!! 感度いいしね!!!!」

レン「黙れにゃ!!」

794: 2013/03/19(火) 00:46:41.61 ID:xUhIV1iO0
200

--妖精郷--

かぽーん

アッシュ「……」

女湯の騒いでいるのを聞きながらアッシュは一人目を瞑る。

アッシュ「……また男一人に戻っちまったか」

なぜかハーレムを喜べない男アッシュであった。

ぴっち『女湯覗きに行ってきやしょーかぴっ?』

アッシュ「いい。覗きたいのいないし。まぁいてもそいつの裸見たら頃すけどね」


--妖精郷、入口--

ぎち

アッシュ達がゆっくり温泉に浸かっている頃、何者かが妖精郷に侵入しようとしていた……。

795: 2013/03/19(火) 00:49:03.89 ID:xUhIV1iO0
えー、今回の投下でですね、Qw0独自のカウントの仕方でですね……シリーズ全部で100万字になりましたー!
やったー!目標の一つだったのですが嬉しいやら長いやら……。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

802: 2013/03/25(月) 23:06:35.90 ID:4HsaDqpI0

201

--妖精郷--

ハイ「はぁ。いいお湯でした」

湯上りぽやぽやのハイは涼んでいる。

すたすた

アッシュ「ん、お前だけかハイ」

そこにコーヒー牛乳を飲みながら現れるアッシュ。

ハイ「はい。ポニテ先輩とレン先輩はお夜食を食べに行かれました」

アッシュ「はぁ……一体あいつはどれだけ食うつもりなんだ。付き合わされるレンも不憫だな」

ハイ「あはは……」

アッシュ「じゃあお前にやるか」

ハイ「え?」

そう言ってアッシュは牛乳のビンをハイに差し出した。

803: 2013/03/25(月) 23:07:26.99 ID:4HsaDqpI0
202

--妖精郷--

ハイ「え? これを……私に、ですか?」

アッシュ「妖精のいたずらのせいで間違って買っちまったんだ、俺普通の牛乳好きじゃないのに。いらねぇか?」

ハイ「い、いえ! ありがとうございます……」

ハイはアッシュからビンを受け取る。

ハイ「……」

アッシュ「? どうした? 飲まないのか?」

ハイ「あ、いえ……男の人から何かを貰うのなんて初めてだったもので……」

アッシュ「ふーん」

ハイ「……」

804: 2013/03/25(月) 23:08:41.43 ID:4HsaDqpI0
203

--ハイ脳内--

ぽやぽやぽやぽやぽやーん

ハイ1「はーい! これよりハイちゃん脳内会議を始めまーす!」

ハイ2「おおー!!」

ハイ3「やんややんや」

ハイ1「さてアッシュ先輩から素敵な贈り物を貰ったわけですがこれをどう思いますか?」

ハイ4「うーん。間違って買っちゃったとかいかにもベタすぎます! 嘘だと思います! これは最初からハイちゃんにあげようと思って買ったんだと思います!」

ハイ5「そ、それはいくらなんでもどうなんだろう……」

ハイ6「でも好きでも何でもない女の子に贈り物なんてするだろうか……」

ハイ1「ふむふむほうほう。なるほどなるほど。それでは脳内会議の結果……」

ダカダカダカダカダン!!

ハイ3「ドキドキドキドキ」

ハイ1「アッシュ君はハイちゃんのことが好き! という方向で!!」

わー

805: 2013/03/25(月) 23:09:21.16 ID:4HsaDqpI0
204

--妖精郷--

アッシュ「おいハイ。聞いてるか?」

ハイの顔を覗き込むアッシュ。

ハイ「あひゃぁ!? な、なんでしゅか!?」

ジュル、と垂れてた涎を慌ててすするハイ。

アッシュ「いや……とっととそれ飲んで湯冷めしないうちに寝ろよ?」

ハイ「あ、はい」

アッシュ「じゃあ俺もう寝るから。また明日な」

そう言ってアッシュは自分の部屋へと戻って行く。

ハイ「……アッシュ先輩の牛乳」

顔を赤らめるハイちゃんだった。

806: 2013/03/25(月) 23:10:03.34 ID:4HsaDqpI0
205

--妖精郷--

がつがつむしゃむしゃ

料理屋「おいおいちょっと、いくらなんでも食べすぎなんじゃないのかぁ?」

ポニテ「いやいやなんの! おっちゃんおでんも美味しいね! 次がんもどきね!」

料理屋「……まぁ金払ってくれるならいいけどよ」

レン「まったく下品な食い方だにゃ」

がつがつむしゃむしゃ

料理屋「……」

レン「……?」

料理屋「見るからに……お譲ちゃん達は冒険者なんだよな?」

レン「まぁ一応そういうことになってるにゃ」

807: 2013/03/25(月) 23:10:34.80 ID:4HsaDqpI0
206

--妖精郷--

料理屋「それも魔王討伐を目的とした勇者パーティ、だったり?」

ポニテ「!?」

レン「!!」

料理屋「……みたいな雰囲気はあるけど、そんなわけないよなぁ」

ポニテ「……おっちゃん……何者?」

料理屋「何者でもないさ。ただの料理人さ」

レン「ただの人間は妖精郷には入れないにゃ」

料理屋「……」

レン「……」

料理屋「なるほどね」

808: 2013/03/25(月) 23:11:32.90 ID:4HsaDqpI0
207

--妖精郷--

ポニテとレンは心の中で戦闘へと切り替えて行く。

料理屋「いやいやまったまった、俺は君らと戦ったりしないよ。俺はただの料理人だよ。昔は東の王国の勇者候補なんてやってたけどさ」

レン「え!」

ポニテ「なぬ!? 脳内でじゃなくて?」

料理屋「ちげぇよぉちゃんとしたやつだよ」

レン「なら勇者証明書見せてみるにゃ」

料理人「だから昔の話だって。そんなもんとっくに回収されたさ」

ポニテ「……あ、そう言えば私達の勇者証明書って今どこ?」

レン「……」

809: 2013/03/25(月) 23:12:18.11 ID:4HsaDqpI0
208

--妖精郷--

ハイは一人部屋の中、布団に横たわり外の景色を見ている。

ハイ(え、え、で、でも……アッシュ君こんなおばちゃんでいいのかな)

ハイは股の間に布団を挟んでごろごろ。

ハイ「やんやんやーん///」

レン「何をしているにゃ」

ハイ「ひゃっ!?」

気配を消してこっそり近づいていたレンは耳元でぼそりと呟く。

ハイ「い、いつからいたんですか!?」

ポニテ「ど、どうしよう……こんな身体でもいいのかな……? くらいかな?」

ハイ「そんなこと言ってません!!」

ポニテ「言ってないなら言わせるまでよ……!」

ポニテはハイに飛びかかる。

810: 2013/03/25(月) 23:12:55.55 ID:4HsaDqpI0
209

--妖精郷--

ポニテ「まぁまぁ飲みねぇ飲みねぇ!!」

ポニテは手に入れて来たお酒のビンを、ハイの口に突っ込んで傾ける。

ハイ「ん、んんー!!」

ごきゅごきゅごきゅ

強引に飲ませられて苦しそうなハイ。

レン「中々いい飲みっぷりにゃ。ひっく」

ハイ「ぷぁっ!! げほっごほっ……い、いきなり何をするんです!?」

ポニテ「あははー。だってこれから女子会やるんだししらふじゃだめっしょー??」

ハイ「しょ、しょんな……ひっく。わらしおしゃけよわいにょに……ひっく」

ポニテ「はやっ!!」

811: 2013/03/25(月) 23:13:47.85 ID:4HsaDqpI0
210

--妖精郷--

ハイ「えへへへ~。気持ひぃぃ」

完全な酔っ払いと化したハイ。目はうつろで顔は真っ赤になっている。

レン「レンも弱いとは思ったけど、ハイはそれ以上にゃね……」

ポニテ「おおぉういいねいいね工口いね!!」

レン(相変わらずレアスキルのおかげで一切酔わないのにゃねポニテは)

ハイ「うぅう~!! わらひらって恋とかしたかっらんれすよぉお!!」

ポニテ「うぉう!? なんか言いだしたよレンちゃん!!」

レン「あかん匂いがするにゃ。酔わせちゃいけないタイプの人間にゃこれ」

ハイ「わらひらってー……てをつないれ、れーととかしたりー、りょこうとかいきたかったんれすよぉー」

ハイは布団にのの字を書きながら語り出す。

ポニテ「面白くなってきたー!!(゚∀゚)」

812: 2013/03/25(月) 23:14:54.00 ID:4HsaDqpI0
211

--妖精郷--

ハイ「わらひまだ、ちゅーらってしたことないのに……」

ハイは段々と涙目になっていく。

ポニテ「あははー。大丈夫だってー、ハイちゃん可愛いんだからすぐにいい人見つかるってー!」

ハイ「いいひと……?」

レン「そうにゃ。いいひとにゃ」

ハイ「けっこん、してくれるかな?」

ポニテ「いけるいける! 絶対いけるよ!!」

ハイ「ふぇ……でもわらひまだちゅーしたことない……」

ぐずりだすハイ。

ポニテ「可愛くなってきたー!!(゚//∀//゚)」

813: 2013/03/25(月) 23:16:03.41 ID:4HsaDqpI0
212

--妖精郷--

ポニテ「ハイちゃんちゅーしたいの?」

ハイ「……うん」

レン「うわなにこれちょっとっこれやだもうっ!!」

レンちゃんがにやけっぱなしになる。

ポニテ「そっかーじゃあ……お姉ちゃんとちゅーしよっか!」

レン「ポニテの方が年下じゃないかにゃ!」

ハイ「……うん、する」

ポニテ「え」

ハイは目をつぶってポニテの方を向く。

ハイ「んー……」

レン「……」

ポニテ「何この可愛いいきものーー!!(○////∀////○)」

レン「どけ、レンがするにゃ」

814: 2013/03/25(月) 23:16:59.63 ID:4HsaDqpI0
213

--妖精郷--

ポニテ「けどダメなんだよハイちゃん。私達はちゅーできないんだ」

ハイ「ふえぇ……? ちゅーしてくれないの?」

うるうる涙目になるハイ。

ポニテ「はうぅ!? ぐぅ……ツインテちゃんの時以来だよこんなに可愛いのは……。ダメなの、ハイちゃん。初めてのちゅーは好きな人としかしちゃいけないんだよ!!」

ハイ「……? わらひ、ポニテしぇんぱい、すき」

ポニテ「ぶっ」

ポニテは鼻血を噴出する。

ぼたぼたぼた

ポニテ「ち、違うんだよ、そういう好きじゃないんだよハイちゃん……。ハイちゃんにはいないの? 本当に好きな男の子とか」

ハイ「はっ……」

ハイは口を開けて何かを考える。

たらり

また涎が垂れた。

815: 2013/03/25(月) 23:17:49.09 ID:4HsaDqpI0
214

--妖精郷--

ハイ「あ……あしゅ」

ポニテ「え? 何?」

ハイ「あ、アッシュしぇんぱいが、きになりましゅ」

ポニテ「っっあの残念イケメン野郎!!」

がばっ!!

ポニテが憤怒の表情で立ち上がる。

レン「なんでにゃ。なんで怒るにゃ」

しゅるるる

レンは拘束具を錬成してポニテを縛り上げる。

ポニテ「ぐっ!! こ、こんな可愛い後輩に好かれてるだなんて!! それだけで許し難いんだよ!!」

レン「女のポニテが嫉妬かにゃ」

ポニテ「ムカつくんだよ!! 顔のいい男が!! 顔のいい男が!! 顔のいい男が!!!」

816: 2013/03/25(月) 23:19:19.55 ID:4HsaDqpI0
215

--妖精郷--

レン(しかしこれはレンとしてはチャンスかもしれないにゃ……何せあの毒坊やはツインテのことを……。しかしここでハイとくっついちゃえばツインテはレンだけのものにゃ!!)

レンはいやらしい笑みを浮かべる。

レン「ポニテ、さっき自分で言ったにゃ。初めてのちゅーは好きな人と、って。ハイが好きな人がアッシュだとするならば、その願いを叶えてやるのが先輩というものにゃ」

ポニテ「う、うぐぅ……」

ハイ「……」

ポニテ「……わ、わかった。でもハイちゃん一つ教えて……。一体どうしてアッシュ君のこが好きになったの?」

ハイ「……」

てれてれ

ハイ「さ、さいしょにあったときにね?」

レン(あの森で?)「うん」

ハイ「だっこされたの」

ポニテ「ちょろーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

817: 2013/03/25(月) 23:20:29.67 ID:4HsaDqpI0
216

--妖精郷--

レン「しかも抱っこっていうか担ぎあげられたっていうか」

ポニテ「待って待って!! え、なに、それでハイちゃんアッシュ君のこと好きになっちゃったの?!!」

ハイ「そ、それできになってて……そしたら、さっき」

レン「さっき?」

ハイ「さっき……ね?」

もじもじしているハイちゃん。

ポニテ「さっき? さっきなに?」

ハイ「……ぎゅ」

レン「ぎゅ?」

ハイ「ぎゅうにゅう……くれたの」

レン「ちょろーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

818: 2013/03/25(月) 23:21:55.60 ID:4HsaDqpI0
217

--妖精郷--

レン「もはやだからなんだというレベルにゃ……言いがかりになっちゃうにゃ」

ポニテ「男の子に優しくされたことが無いとこうなっちゃうもんなの……? 男で不自由したことないポニテちゃんわかんない!!」

レン「ほざくなにゃ」

ポニテ「でもそっか……じゃあ……夜這いしかないわな!!」

レン「っ!? いきなり何段かスッ飛ばした気がするにゃよ?」

ポニテ「いいよいいよ、なんとかなるよハイちゃん可愛いし」

レン「そっか。可愛いはジャスティスだったにゃ」

ポニテ「そうそう。じゃあ今から既成事実の作り方を教えてあげるねっ!」

レン「しかし恐ろしい正義もあったものにゃ」


819: 2013/03/25(月) 23:22:53.46 ID:4HsaDqpI0
218

--妖精郷--

ぎしっ

アッシュ(……ん?)

ぎしっ、ぎしっ

アッシュ(誰だ?)

アッシュは部屋に入って来たものを感知し、即座に忍ばせていたナイフに手を伸ばす。

ぎしっ、ぎしっ

アッシュ(音と歩幅から察するにハイか。一体何の用だ?)

すっ

ハイはアッシュの傍に来るとしゃがんだ。

アッシュ(……ポニテとレンがうるさくて眠れないからこっちに避難してきたのか……? しかし普通男の部屋に来るか? なんとも不用心なやつだな)

ハイ「……」

820: 2013/03/25(月) 23:23:37.06 ID:4HsaDqpI0
219

--妖精郷--

もぞもぞも

アッシュ(……だが近くに来すぎてやしないか? 背中に当たってるぞ)

ハイ「はぁっ……はぁ」

アッシュ(耳元に口を近づけ過ぎてやしないか? か細い息が耳に当たってるぞ)

もぞもぞ

アッシュ(はぁ……これがツインテだったらどれだけ嬉しいか……)

ハイ「アッシュ……先輩」

アッシュ(何だもう寝たのか。寝言を言いだした)

ハイ「……………………しゅき」

アッシュ(え? なんだって?)

がばっ!!

821: 2013/03/25(月) 23:24:25.68 ID:4HsaDqpI0
220

--妖精郷--

アッシュ「うおぉ!? な、なんだなんだ!?」

ハイに襲いかかられるアッシュ。

ハイ「アッシュしぇんぱいぃ……」

ハイは肌をはだけさせてアッシュにまたがった。

アッシュ「こら! 寝ぼけてんじゃねぇぞ!! 上からどけ!!」

ハイ「アッシュしぇんぱい……しゅき。はんこどこですか?」

アッシュ「え? なんだって!?」

まさかの難聴である。

アッシュ「く……一体何しに来たんだハイ。寝に来たんじゃないのか!?」

ハイ「え、えと……牛乳の……お礼に来ました」

そう言ってハイは潤んだ瞳でアッシュを見つめている。

アッシュ「…………ちょろーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」


840: 2013/04/08(月) 21:50:27.83 ID:dVibrmqT0
221

--妖精郷--

ちゅんちゅん

ハイ「……」

ハイは両手で顔を隠しながら朝の食卓についている。

ポニテ「いやぁ……昨日は楽しかったねぇ……ははっ!」

レン「うざいにゃ。ものまねやめろにゃ」

アッシュ「……」

ぱっち『なんで気まずい感じの雰囲気なのっぱ?』

ハイ「……あ、あんな姿を見られてしまうなんて……もうお嫁にいけない」

じわぁ

841: 2013/04/08(月) 21:51:01.06 ID:dVibrmqT0
222

--妖精郷--

ぴっち『そうだ四人とも、精霊様がお呼びだっぴ』

ポニテ「え? 精霊? 誰それ」

レン「妖精郷を治める王様みたいなものにゃ。いや、母と言ったほうが正しいかもにゃ」

ぱっち『そうっぱ。僕達妖精を生み出した偉大なる母にして乳だっぱ。その精霊様が四人に会いたいって言ってるっぱ』

アッシュ「……なぜ俺達なんかに?」

ハイ「確かに……そもそも精霊は人間のことが嫌いだから、妖精郷を作り出して引きこもってるっていう話を聞いたことがあります」

ぴっち『それソースあるっぴ?』

ハイ「……ソースはないですけど」

ぴっち『まぁ詳しいことはぼくたちもわからないんだけどっぴ』

アッシュ「わかんねぇのかよ」

ぱっち『でも妖精が気にいった人物なら連れてきてもいいことになってるっぱ。それに会いたいなんて言ってきたのは始めてかもしれないかもっぱ』

842: 2013/04/08(月) 21:51:31.82 ID:dVibrmqT0
223

--妖精郷--

アッシュ「まぁじゃあ折角だし会いにいってみるか」

ポニテ「人様の領土で勝手に暮らしちゃってるしねぇ」

レン「菓子折り持って行くかにゃ」

ハイ「レン先輩それうOこ……」

がたたっ

四人は立ちあがる。

ぴっち『じゃあ案内するっぴ。ついてきてくれっぴ』

843: 2013/04/08(月) 21:52:02.76 ID:dVibrmqT0
224

--亜人保護団体本部--

どかーんどかーん

団体兵「く、くそぉ!! このままでは最上階まで突破され!!」

ざしゅぃん

団体兵「ぐああああああああああ!!」

侍「ふむ、この分だと手ごたえのある奴はもういないのでござるかね」

賭博師「さぁね。いないほうが楽でいいじゃねぇか」

符術師「かーっ! 強いやつと戦いたいって気持ちがねぇのか賭博師はよぉ!」

医師「……もう十分強いやつと戦ったんだからいいじゃないかっていう」

通信師「正直奥義うってくれなかったらゲームオーバーでしたよね」

五人は快進撃を続ける。

844: 2013/04/08(月) 21:52:34.43 ID:dVibrmqT0
225

--亜人保護団体本部--

ダダダダダダ

通信師「……」

通信師はしきりに後ろに視線をやっている。

通信師「ねぇ……」

侍「わかっているでござるよ通信師。後ろの二人でござろう?」

通信師「!……さすが。気付いていたのですか。ならなぜさっさとやらないのですか?」

侍「二人とも中々機敏でござってな。一度さりげなく近づこうとしたのでござるが、速攻で離れられたでござる。あの二人を倒すにはどれだけの鬼ごっこをやらなくてはならないのかわからんでござる」

通信師「なるほど……でもずっとつけられているのも気持ちのいいものじゃないですよ?」

侍「承知。射程範囲に入ったら始末するでござる。どのみちこのまま進めば彼女らが攻めてくるのは道理」

通信師「あれ? 彼女達って、それまでわかるんですか?」

侍「おにゃのこの臭いがするの」

通信師「……うわー」


--東の王国--


東の憲兵「む!? この気配は!!」

845: 2013/04/08(月) 21:53:07.23 ID:dVibrmqT0
226

--亜人保護団体本部--

ズザザザー

賭博師「……ここが最上階か? 誰もいないぞ?」



侍「いや、いるでござる!!」

ぎゃりぃいん!!

熊亜人「ぐまっ!?」

物陰に潜んでいた熊亜人の強襲を防ぐ侍。

符術師「くっあぶねぇ!!」

とっとと

熊亜人は一瞬で距離を置き五人を見回す。

熊亜人「さすがぐま。簡単にはいかないようぐまね」

846: 2013/04/08(月) 21:53:38.12 ID:dVibrmqT0
227

--亜人保護団体本部--

通信師「どうやら彼が亜人保護団体の最高戦力のようですね。ですが」

賭博師「強いには強いんだろうけど、侍一人でどうにかなりそうだな」

医師「そうだね」

侍「え? ちょっ、いきなりそんな///拙者のことをあげあげしたってちOちんしか出ないでござるよ?」

ぽろり

符術師「ぎゃあああああああああああ!!」

賭博師「侍……お前よぉ」

通信師「全世界に配信してやろうか……」

侍「是非に」

医師「露出狂すぎる!!」

熊亜人「……」

847: 2013/04/08(月) 21:54:08.77 ID:dVibrmqT0
228

--亜人保護団体本部--

ぱちぱちぱち

符術師「ぬ」

??「相変わらずの強さだね君達は」

拍手をしながら五人の前に現れたのは、

??改め代表「やぁ久しぶり。みんな元気そうだね」

笑顔の代表。

通信師「……お久しぶりです代表。今回は随分と派手なことをやらかしてくれましたね」

符術師「だが、もう終わりだ。素直に諦めやがれ」

ざっ

代表「おや? それはなぜだい?」

848: 2013/04/08(月) 21:54:59.50 ID:dVibrmqT0
229

--亜人保護団体本部--

符術師「は?」

代表は頬をぽりぽりとかきながら余裕の表情で符術師を見ている。

符術師「……もうろくに戦えるのがいないだろうが。お前は戦闘力皆無だし、残るはそこの熊一匹だ」

熊亜人「ぐま!?」

通信師「匹カウントは亜人への差別ですよ」

侍「……」

代表「ふむ……よくわからないな。残りの戦力が熊君だけだとして、それでなぜ僕は終わりになるのかな?」

符術師「!?」

代表「例えば今ここで僕が君達全員を説き伏せる可能性とか」

通信師「残念ですが貴方のスキルへの対策はうってますよ」

代表「あ、そう? じゃあ、もっとシンプルに。例えば……熊君一人で君達全員を倒すこともありえるんじゃないかな?」

849: 2013/04/08(月) 21:56:00.38 ID:dVibrmqT0
230

--亜人保護団体本部--

符術師「ふざけんじゃねぇぞ!! お前は昔から俺らをなめすぎなんだよ!! ドロー!!」

代表「なめてなんかいないよ。熊君」

符術師「来い!! デッドアイズブラッドドラゴン〈氏眼の血竜〉召喚!!」

デッドラ「フランクさん!!(鳴き声)」

通信師「い、いきなり切り札ですか! 容赦ないですね符術師も」

ゾクッ!!

侍「!! い、いかん!! やめるでござる!!」

代表「さぁ熊君、それ被ってみちゃってくれ」

熊亜人は隠し持っていた王冠を被る。

デッドラ「ぎゃおー!!」

ずん!!

850: 2013/04/08(月) 21:56:59.63 ID:dVibrmqT0
231

--亜人保護団体本部--

びちゃ

符術師「!? で、デッドラ!?」

デッドラは熊亜人の右腕によって貫かれていた。

デッドラ「ぎゃ、ぎゃお」

ごごごごごごご

侍「なん、でござるか」

王冠を被った熊亜人の全身を黒いもやのようなものが包んでいた。

熊亜人「が、ごあい8うぇがえwrg」

熊亜人はデッドラから腕を引き抜くと頭部を踏みつけた。

がっ!!

デッドラ「ぎゃ、ぎゃおー」

代表「大丈夫だ熊君。君ならそれを扱うことができる」

代表は笑顔で熊亜人に話しかける。

熊亜人「ふー! ふー!」

賭博師「……てめぇ、まさかそれは」

代表「君ならその、魔王の骨をね」

851: 2013/04/08(月) 21:57:34.85 ID:dVibrmqT0
232

--亜人保護団体本部--

賭博師「ッ!!」

熊亜人「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

どがあああああああああああああああん!!

熊亜人の方向でフロア部屋が吹き飛びそうになる。

代表「おっとと!! ちょっと加減してくれないと困るよ熊君。まだ僕がいるんだから」

熊亜人「ぐ、GUま」

代表「じゃあ僕は先に屋上に行って船に乗ってるから。君らも終わったら来てくれ」

通信師「!! な、なんですかこれ!!」

熊亜人「グンマー!!」

ゴゴゴゴゴゴ

黒い鎧をつけた熊亜人がそこにいた。

賭博師「……こいつ、昔みたことがあるぞ。これは、魔王化か?」

852: 2013/04/08(月) 21:58:14.61 ID:dVibrmqT0
233

--亜人保護団体本部--

賭博師「全員気を引き締めろ!! こいつはさっきと状況が変わったぜ!!」

侍「承知でござる!!」

五人は熊人からの攻撃に備えて戦闘体勢にうつる。

熊亜人「が、GAぁああ!!」

ドッ!!

侍「!!」

ギィアアン!!!!

猛烈な突撃。侍はなんとか対応するが、

どがぁっ!!

侍「ッッッ!!!!」

そのまま塔の外に放り出されてしまう。

853: 2013/04/08(月) 21:59:57.90 ID:dVibrmqT0
234

--亜人保護団体本部--

符術師「しま」

追撃。

ドッ、ガっ、ずがっ、どふっ

尻尾のような黒いもやで四人はそれぞれ吹き飛ばされてしまう。

符術師「がはっ!!」

賭博師「ッ!!」

通信師「きゃぁあ!!」

医師「あぐっ!!」

どがしゃぁああん!!

熊亜人「不ー! ふー!」


854: 2013/04/08(月) 22:00:31.14 ID:dVibrmqT0
235

--亜人保護団体本部--

侍「ぐ、く……」

侍は刀を塔の壁に突き刺すことでどうにか落下せずにたえていた。

侍(やられた……いつのまに魔王の骨なんてものを手に入れていたのか。これでは)

ぐるん

侍は刀に乗り、体勢を立て直すと再び元の階へ。

どすっ

通信師「……え」

侍「」

復帰した侍の眼に映ったものは……

通信師「う、あ」

どぽ

護衛姉妹の刀によって胸部を貫かれた通信師だった。

855: 2013/04/08(月) 22:01:00.66 ID:dVibrmqT0
236

--亜人保護団体本部--

護衛姉「耳を潰せというミッション」

護衛妹「コンプリート」

ずるぅり

通信師「」

どさ

符術師「」

一同は言葉を失う。
何せ現在、回復魔法と蘇生魔法は、

賭博師「医師いいいい!! 早く治療しろおおおお!!!」

医師「わかってます!!」

封じられているのだから。

856: 2013/04/08(月) 22:01:55.63 ID:dVibrmqT0
237

--亜人保護団体本部--

侍「賭博師は運補正を!! 符術師は医療道具を出すでござる!!」

だッ!!

侍は刀を構えて駆けだした。

護衛姉「!? ひっ」

護衛妹「こ、怖いです!!」

ぉおん

熊亜人「」

どぎいいいいいいいいいいいいん!!!!

侍の全力を込めた一撃を間に入った熊亜人が爪一本で受け止める。

侍(治療の間だけでも!! この三人を止めねば!!)

ギィン!! ギギッ!! ガギィン!!

857: 2013/04/08(月) 22:02:34.74 ID:dVibrmqT0
238

--亜人保護団体本部--

通信師「げほっごほっ」

どくどくどくどく

医師(!! こ、これでは)

傷穴から大量に出血している通信師を見て医師の手が震える。

賭博師「医師! 諦めるな!! 俺の運補正で多少のことなら奇跡を起こせる!!」

医師「っぐ!! は、はい!!」

通信師「い、いいですよ、もう」

符術師「!? つ、通信師ふざけたこと言ってんじゃ」

通信師「私だって、初めて、氏ぬわけじゃないんですよ? この感覚は、ダメなやつです」

医師「」

ギィン!! ガキィン!!

858: 2013/04/08(月) 22:03:48.60 ID:dVibrmqT0
239

--亜人保護団体本部--

通信師「私より、任務のほうが、ごほっ!!……た、大切、なんです。だから……もう行ってください」

侍「うおおおおおおおおおおおお!!」

ガガガガ!!

護衛姉「こ、この人!! 眼も見えないのに」

護衛妹「私ら三人とやりあえてる!?」

しかし互角というわけではなく、一合打ち合う度に侍は大きく深い傷をつけられている。

ズシャッ!!

通信師「ほら……終わった私なんかに構ってたら、侍まで……げほげほっ!!」

賭博師「だ、だからって」

通信師「……バカばっかですね」

通信師は力なくほほ笑んだあと、

どす

隠し持っていたナイフで再び自分の胸を刺した。

859: 2013/04/08(月) 22:05:23.79 ID:dVibrmqT0
240

--亜人保護団体本部--

賭博師「!?」

通信師「本当、バカでやさしいんだから……区切りが、つけられないなら、足手まといになるくらいな、ら」

通信師は自らの手で自分に止めをさした。

     後は、まかせました

護衛姉「くっ!! 任務は成功しました!! もう下がりますよ!! 船がでちゃいます!!」

護衛妹「熊亜人さん!! 長時間の使用は危険です!!」

護衛姉妹が熊亜人からむりやり王冠を外した。

バッ!!

熊亜人「ぐ……ぬ」

侍「はぁ、はぁ……」

侍はすでに追うこともできず、振り返ることもできなかった。

侍「はぁ……はぁ……ッ」



--亜人保護団体本部、屋上--

代表「やれやれやっときましたか。遅いですよ」

熊亜人「す、すいませんぐま」

代表「……いえ、よくやってくれました。それではいきましょう。我らの宿敵を倒しに」

三人が代表とともに船に乗り込むと、それは空へととびだった。

864: 2013/04/16(火) 03:37:05.38 ID:+skP1gEa0
遅くなりました……それでは投下していきいます

865: 2013/04/16(火) 03:37:40.57 ID:+skP1gEa0
241

--飛行船--

熊亜人「はっはっはっ!」

護衛姉「だ、大丈夫」

護衛妹「ですか?」

熊亜人「これは思った以上にきついぐま……何度も使える手じゃないぐま」

熊亜人は護衛姉妹から水とタオルを渡される。

代表「うーん。各国の三強と比べて遜色の無い熊君でもきついか……困ったな。後一回いけるかい?」

熊亜人「無論ですぐま!! 我らは、そのために来たんですぐま!!」

護衛姉「こくっ」

護衛妹「こくっ」

代表「……そうだね。じゃあ今は休んでもらうよ。竜骸の渓谷まで十時間はかかるからね」

866: 2013/04/16(火) 03:38:14.08 ID:+skP1gEa0
242

--草原の宿--

賭博師「24時間だ。24時間以内にこの魔法陣を解除して通信師を蘇生させる」

侍「あぁそれしかないでござるからな」

符術師「お前ら手当は終わったな? アイテム持てるだけ持っていくぞ」

ザン!

医師「……え」

賭博師と侍と符術師はドアを開けて部屋から出て行こうとする。

医師「な、何を言ってるんです……? まさかまた彼らのところへ……?」

医師は振り向かないまま問いかける。

賭博師「あったりまえだろうが。このまま終わらせられるかっての。通信師はなんとしても生き返らせる」

医師「場所も……わからないのにですか?」

符術師「場所はわかるぞ。あの姉妹に札をつけておいたからな。転移札もつけてるが……射程距離外だろうなぁ」

医師「……さっきの戦闘力を見るに、今の私達だけではとても敵いませんよ」

侍「もう一回やってみなきゃわからないでござるよ」

医師「っ……一回でわかるでしょ。貴方達はバカですか!」

賭博師、侍、符術師「「「あん、バカだよ」」」

867: 2013/04/16(火) 03:38:44.92 ID:+skP1gEa0
243

--草原の宿--

医師は静かに立ち上がる。

医師「……そんなことは許しません。むざむざ氏ににいくような行為は。ちゃんと国に戻って援軍を申請してからでなければ行かせません」

賭博師「医師、通信師の体任せたぞ」

符術師「通信札渡しとく。まぁ魔法陣解除出来たらこっちでもわかると思うけど」

医師「や、止めて下さい!!」

突然の医師の大声に三人は眼を丸くする。

医師「すぐに解除できる保証なんて無いんですよ……それなのに……今貴方達まで無理をして氏なれるのは嫌なんですよ」

侍「……」

符術師「……時間の無駄だ。行くぞお前ら」

符術師は二人を促して部屋の外へ。

医師「ッ!! ま」

符術師「俺は通信師がいなくなる方のが嫌だ」

868: 2013/04/16(火) 03:39:17.55 ID:+skP1gEa0
244

--草原の宿--

医師「ッ……」

かつんかつんかつん

ギィ

外に出た三人。

侍「しかしそうは行ってもどうやって追いつくでござるか」

符術師「む……確かに空飛ぶ船に追いつくのは俺たちじゃ無理だな」

賭博師「……え? 何か考えがあってのあの啖呵だったんじゃないの?」

侍「拙者もてっきり符術師がなんかの手段で運んでくれるものとばかり……」

符術師「ば、ばかやろう!! いくら俺だからって何でも出来ると思うなよ!!」

その時、

ぶわぁ

風が吹いた。

?「事情は聞いてるなの。私が運んであげようかなの?」

869: 2013/04/16(火) 03:39:51.35 ID:+skP1gEa0
245

--精霊宮--

ぱっち『精霊様、人間達を連れて来ましたっぱ』

ぴっち『我らの友達ですっぴ』

土の精霊「もぐ」

妖精郷の地下世界、そこには巨大なモグラがいた。

アッシュ「でけぇ……」

ポニテ「おっきぃもぐらー!!」

レン「精霊相手に随分な態度にゃ。まぁもう相変わらずだけど」

ハイ「精霊様……初めてみました」

土の精霊「君達が魔王討伐パーティもぐ?」

アッシュ「……今は俺達どうなんだ?」

横にいるポニテに話をふるアッシュ。

ポニテ「今? 今は……レンちゃん?」

レンに話をふるポニテ。

レン「ツインテ奪還パーティにゃ」

870: 2013/04/16(火) 03:40:59.36 ID:+skP1gEa0
246

--精霊宮--

ハイ「……」

土の精霊「あれ? 魔王討伐パーティって聞いてたけど違うもぐ?」

ぴっち『あ、あれぇ? 魔王を倒すために旅をしてた勇者パーティじゃなかったでしたっけぴ?』

アッシュ「……もうこの世代の勇者は他にいるからな」

ポニテ「ま、ツインテちゃんを取り戻したらまた勇者候補パーティに戻るつもりだけどね!」

レン「もちろんにゃ。魔王討伐があくまで目標にゃ」

ハイ「え!? 私聞いてないです!?」

土の精霊「ふむ……」

土の精霊はじろじろと四人を見ている。

土の精霊「そこそこ才能はありそうもぐね」

アッシュ「そこそことはなんだそこそことは。たっぷりあるわ!」

871: 2013/04/16(火) 03:41:30.75 ID:+skP1gEa0
247

--精霊宮--

土の精霊「大抵あんまないやつほど言うことでかいもぐ」

アッシュ「なんだと!?」

ぴっち『ささささっきから無礼っぴよ!!』

ぱっち『精霊様はぱっち達の偉大なる王なんだっぱよ!?』

ポニテ「ねぇー、で、なんの用なのー? もうお腹空いちゃったんだけどー」

土の精霊「……」

土の精霊はポニテをまじまじと見ている。

ポニテ「え? どうした、の?」

土の精霊「ふぅん……なるほど。君がそうなのか」

ポニテ「え?」

872: 2013/04/16(火) 03:42:10.23 ID:+skP1gEa0
248

--精霊宮--

ポニテ「何? なんかいやらしい目しちゃって。えOち」

土の精霊「そんな目してないもぐ!! 人間にそんな感情抱かないもぐ!!」

じだんだじだんだ

アッシュ「もぐもぐもぐもぐうるせぇ奴だな。何か食べながら喋るんじゃねぇ」

土の精霊「これは語尾だもぐ!!」

ぴっち『す、すげぇ……世界を管理する精霊の一柱相手にこんな……』

ぱっち『ばかなのかすごいのか……』

レン「ばかにゃ。まちがいなく」

ハイ(恐ろしいですね……この人達は)

873: 2013/04/16(火) 03:42:40.32 ID:+skP1gEa0
249

--精霊宮--

土の精霊「まぁ……じゃいいや、ほら、そこの土属性の子。ちょっとこっちきてもぐ」

レン「? レンのことかにゃ?」

とてとて

土の精霊「確かにちょっとは見込みあるからもしかしたら魔王討伐も夢じゃないかももぐ。力貸してあげるもぐ」

レン「え」

土の精霊のひげがレンの頭を軽く叩く。

ぽわぁん

ぴっち『!? あ、あれは!!』

ぱっち『精霊の祝福!? そんな大層なものこんなやつらにはもったいないっぱ!!』

アッシュ「さっきから聞こえてんぞ妖精ども」

ポニテ「それは遠まわしに食べて♪って私に言ってるんだよね」

ぴっち、ぱっち『『ひっ!?』』

874: 2013/04/16(火) 03:43:43.71 ID:+skP1gEa0
250

--精霊宮--

ぼわぁん

レン「これ、は」

土の精霊「土属性の魔法を強化してあげたもぐ。具体的に言うと、土属性魔法の魔力消費量を五分の一、威力精度アップ、更に君の大地参照を強化してあげたモグ」

レン「!?」

アッシュ「え。またあいつだけパワーアップ? やだー」

ポニテ「レンちゃんばっかりずるいよねー」

レン「うっせ」

ハイ(あれだけ強いのにまたパワーアップとかどれだけ化物に……)

土の精霊「僕もあいつには困ってるんだもぐ。だから……」

ハイ(……? あいつ?)

ピシッ

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

土の精霊「ぬ……この気配は」

875: 2013/04/16(火) 03:44:14.63 ID:+skP1gEa0
251

--妖精郷--

ばりっばりばりばり

フランケン「お、おで」

カトブレパス「やれやれ。中々硬い結界でしたね。随分と骨が折れました。大丈夫ですかフランケン君」

フランケン「だ、だいじょうぶ」

ビッ

親指を立てるフランケン。

???「……」

その後ろに控えるは魔王軍の軍勢だった。

カトブレパス「ここの進行を私達に任せてくれた魔王勇者さんのためにも失敗はできません。わかってますね? 西の女王。いや、ケンタウロスさん?」

???改めケンタウロス「……御意」

876: 2013/04/16(火) 03:44:48.08 ID:+skP1gEa0
252

--精霊宮--

ハイ「? いきなりどうしたんですか皆さん?」

アッシュ「何かが無理やり妖精郷に入ってきやがった」

ぴっち『え!? そんなのありえないっぴ!! 妖精郷の結界はそんじょそこらの結界とはわけが違うのだっぴ!!』

ぱっち『そうっぱ! 土の精霊様自ら結界を張ってるのだっぱ!! 最高の防御力を誇る土の精霊様の結界を突破するなんて無理だっぱ!!』

土の精霊「つまりそんじょそこらのくせものじゃないってこともぐ」

ハイ「!?」

土の精霊「人間達よ。頼みがあるもぐ」

アッシュ「ふん。わかってる。そんくらいお安いご用だ」

ポニテ「かくまってくれた恩もあるしねー!」

レン「よし、行くにゃよ。敵はかなりの大所帯、油断はできないにゃ」

ざっ

ハイ(私の戦う番きちゃうのかな……)

877: 2013/04/16(火) 03:45:16.50 ID:+skP1gEa0
253

--妖精郷、川--

ザザザザザ

ゴブリン「ぐおおおおおおおおおおお!!」

妖精『も、モンスター達が攻めて来たっぴょー!!』

ドカーン!!どどーん!!

わああああああああ!!!!

ぺっち『な、なんで、なんで魔王軍が妖精郷に入ってこれるかっぺ!!』

わぁああああああああああ!!

濁流のように迫るモンスター達。

ぽっち『お、おしまいだっぽ……妖精郷はおしまいだっぽ!!』

トロール「あごごごがああああ!!」

モンスター達は妖精郷を踏み荒らし、蹂躙する。

878: 2013/04/16(火) 03:46:45.58 ID:+skP1gEa0
254

--妖精郷、川--

しゃん

トロール「」

そこに一筋の閃光が舞い降りる。

ぶしゃあああああああああああああああ

トロール「があああああああああああああああ!!」

ズズーン

血の海に沈むトロール。切り裂いたのは

アッシュ「ふん。雑魚どもめ。数だけうようよいやがって」

ぽっち『!!?? お、お前は人間!?』

ぺっち『ぼ、僕達を助けてくれるっぺ!?』

アッシュ「……ただたんに通り道なだけだ。じゃまだ、下がってろ」

アッシュはマントを翻す。

ぺっち『か、かっけぇ!!』

じゃり

カトブレパス「まさか……人間がこんな所に……」

アッシュ(!……こいつ……魔力がケタ違いだ……これが魔族というやつか?)

879: 2013/04/16(火) 03:48:39.55 ID:+skP1gEa0
255

--妖精郷、平地--

どどーん!!

フランケン「お、おでえええええええええええ!!」

フランケンは地面を抉るほどのパワーで辺りを破壊してまわる。

どかどかどか!!

フランケンが走り回るだけで世界が歪む。

どどどどどどどど!!

ぴえOち『ひ、ひええええええ!? こ、こっちにくるっぴえ!? 塔が倒されちゃうっぴぇ!!』

どどどどどどどど!!

しゃっ!

フランケン「!?」

がぎいいいいいん!!

風のように現れたポニテは、塔とフランケンの間に割って入り、その重い突撃を受け止める。

ポニテ「ッ!! すっごいパワー!! なんだか懐かしいかんっ」

フランケン「」

ポニテ「じーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

そしてブン投げた。

フランケン「お、おで!?」

880: 2013/04/16(火) 03:49:12.46 ID:+skP1gEa0
256

--妖精郷、草原--

巨大蛇「きしゃああああああ」

巨大トマト「とまああああああ」

巨大鳥「ぴよおおおおおおお」

レン「……」

レンの眼前には巨大なモンスターが三体。

レン「……ちぇ。折角強くなったから力を試してみたかったのに……ただのでかい雑魚かにゃ」

巨大蛇「雑魚? 雑魚だとぉ!?」

巨大トマト「我らはモンスター数百体からなる合成モンスター」

巨大鳥「魔族に最も近い」

どぱっ!

巨大鳥の顔面が吹き飛んだ。

レン「よわっちい……たった数百だからなんだというのにゃ」

881: 2013/04/16(火) 03:49:55.71 ID:+skP1gEa0
257

--妖精郷、砂地--

ハイ「早く逃げてくださいねー! 戦闘に巻き込まれる前に逃げてくださいー!」

ハイは妖精達を先導している。

ハイ(いやぁでもこういう役割で本当よかったです。いきなり魔族なんかと戦闘になったら)

どおおおおおおおおおおおおおおおんん!!

ハイ「……はい?」

爆炎。世界が一瞬で赤く染まる。

ゴゴゴゴゴゴゴ

ケンタウロス「やれやれ。私様がこんな下っぱみたいなことをしなきゃならないとはね」

かぽっかぽっ

ユニコーン「ひひん!」

ハイ「あ、あぁ」

かぽっかぽっ

上半身は人、下半身は馬、そして右腕はガトリングガン……そんな魔融合な生物がいた。

882: 2013/04/16(火) 03:50:51.99 ID:+skP1gEa0
258

--妖精郷、砂地--

ハイ「な、ななな!?」

ケンタウロス「人間がなんでこんなところにいるんだ? まぁ丁度いい、精霊の居場所を教えてもらおうか?」

その女はそう言って、

バルルルルルルル!!

ガトリングガンを撃ち放つ。

ハイ「ひぃ!?」

チュンチュンチュン!!

ハイの周囲を黒い弾丸が穴をあけていく。

しゅううぅうう

ハイ「こ、頃す気じゃないですかぁ。居場所を聞くんじゃないんですかぁ?」

がたがたがたがた

ケンタウロス「早く答えないからだ。ほら、生きていたいのならさっさと答えるがいい」

バルルルルル!!


883: 2013/04/16(火) 03:51:32.02 ID:+skP1gEa0
259

--妖精郷、砂地--

ハイ「ひいいい!!」

だだだだだだ

ハイは頭を抱えて逃げ惑う。

ケンタウロス「ん? ははは、なんだ、わざわざ道案内してくれるのか?」

バルルルルル!!

ハイ「ひー! ひー!」

ユニコーン「ひひん!!」

ハイ「え!? む、むりに決まってるじゃないですかぁ! あんなのに勝てませんよ!!」

ケンタウロス「はっはっはっ、逃げ惑え人間!」

バルルルルル!!

884: 2013/04/16(火) 03:53:30.18 ID:+skP1gEa0
260

--妖精郷、荒れ地--

ハイ「……」

ケンタウロス「ジグザグに走りやがって……ちゃんと私様を案内してるのか?」

バスッ

ハイ「」

ガトリングの射線がハイの左足をなぞる。それだけでハイの左足が吹き飛んだ。

ハイ「あ、ああああああああああああ!!」

どざざざざー

足を抱きしめ地面を転がるハイ。

ユニコーン「ひひーん!」

かぽっかぽっ

ケンタウロス「ほらまだ立てるだろ? 立ち上がれそして私様を精霊の元に導け」

ハイ「……」

がたがたがた

ケンタウロス「……ち。この程度で震えるのかい? 軟弱な女よ!」

ケンタウロスのガトリングがハイの顔面に迫る。

ハイ「……なんちゃって」

ケンタウロス「!?」

ばっ

ハイの衣装が瞬時に変わる。巨大な盾を持った鎧姿に。

ハイ「……ここで、そんなに走れ回れますか?」

892: 2013/04/22(月) 21:08:54.71 ID:ky/Pvi4C0
261

--妖精郷、川--

アッシュ「……」

カトブレパス「ん……中々の実力者のようですね。貴方達は相手にしなくていいです。精霊を見つけに行きなさい」

トロール「あぎゅおおお」

ドスンドスン

アッシュ「……」

カトブレパスの指示通り、アッシュの横を通り過ぎて行くモンスター達。

アッシュ「……はいそうですかと通すと思っているのか!」

びしっ

アッシュ「!?」

カトブレパス「……ふふ」

ドスンドスン

アッシュはぴくりとも動かなかった。そして目の前のカトブレパスから一瞬たりとも目を離すことができない。

アッシュ(ぐ……なんだ……頭の中で血の臭いがしやがる)

巨大な眼球を持つ魔族、カトブレパス。
ただ立っているだけなのに不穏な空気を発していた。

893: 2013/04/22(月) 21:09:38.67 ID:ky/Pvi4C0
262

--妖精郷、川--

アッシュ(ッ、敵を束縛する能力か?……ぐぐぐぐっ!!)

シャリン

アッシュは全身の力を振り絞りナイフを抜く。

カトブレパス「ん……?」

ずぱ!!

カトブレパス「」

そして次の瞬間にアッシュのナイフはカトブレパスの喉を切り裂いていた。
一瞬の斬撃。
またたく間に距離を縮め反応する間もなく切り捨てる暗殺者の刃。

アッシュ「……ッ!?」

しかしカトブレパスの傷口から血は……


カトブレパス「タイミングを破壊するスキル、ですか? 怖い怖い。用心していなければ大ダメージ必須ですね」

アッシュ「なに!?」

切り裂いたと思っていたアッシュのナイフは空を切っていた。

894: 2013/04/22(月) 21:10:50.55 ID:ky/Pvi4C0
263

--妖精郷、川--

びきびき

カトブレパス「ふふふ。苦しいかな?」

アッシュ「ぐ……」

アッシュの体が震える。

アッシュ(ぐ……完全に、動けない!?)

カトブレパス「生前僕は魔力を操作するのが得意だったんだ」

ず、ずず

カトブレパスはゆっくりとアッシュに近づいてくる。

カトブレパス「遠距離から相手の魔力にアクセスして、コントロールを不能にさせる技術。これを攻撃に転用したのが魔力暴発。非力で回復型の僕が持つ唯一の攻撃手段だったんだ」

アッシュ「……」

ギシッ

アッシュ(幻覚どころじゃない……体が本当に動かせないっ!)

カトブレパス「無駄だよ少年。僕の眼に見られてしまった時点で、君の体中の魔力細胞は僕の支配下にある。体の内側から魔力で体をがんじがらめにしているんだ」

ず、ずず

アッシュ「……」

895: 2013/04/22(月) 21:11:28.51 ID:ky/Pvi4C0
264

--妖精郷、川--

カトブレパス「僕はいたぶったりする趣味はないんだ。だから苦しむ間もなく頃してあげよう」

アッシュ「……ふ、ふふははははは」

カトブレパス「ん? 気でもふれたのかい? 体が動かないのは確かにつらいよね」

アッシュ「はははは……いやそういうんじゃないさ。俺がお前の相手でよかった。他の奴なら即ゲームオーバーだったろうよ」

アッシュは不敵に笑う。

カトブレパス「なんだって……? その状態から一体何が出来るっていうんですか……もはや指一本動かせないというのに」

アッシュ(確かに俺の体はもう動かせないが……お前がまだ見ていない俺の右目は)

ぐるん

アッシュの右目が裏返る。

アッシュ(俺のものじゃない)「スキル、人頃し!」

カトブレパス「!? そのスキルは受付さんの!?」

アッシュ「更に、スキル、反転」

ぎゅりり

カトブレパス「なっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

カトブレパスはこのとき初めて、アッシュから恐怖を感じた。

アッシュ「魔殺モード」

896: 2013/04/22(月) 21:12:16.60 ID:ky/Pvi4C0
265

--妖精郷、川--

みし、びき、びききっ!!

カトブレパス「な、なんだこれは……い、一体!?」

アッシュ「あああああああああああああああああああ!!」

ばりぃいいいん!!

アッシュはカトブレパスの呪縛を破る。

カトブレパス「まさか……視線を斬り裂いたのですか!?」

アッシュ「……」

ひゅんひゅん

軽やかにナイフを回すアッシュ。

アッシュ「今の俺は、どんな魔族にも負けねぇ」

右目は赤く燃えている。

カトブレパス(たいした使い手じゃないと思ったら!)「スキル、目光線!」

どびいいいいいいいいいいいいい!!

アッシュ「!」

897: 2013/04/22(月) 21:12:44.47 ID:ky/Pvi4C0
266

--妖精郷、平地--

ガギィイイイン!!

ポニテ「ふっ!! ……このパワー……西の王国の墓地で戦った時に似てる……!」

ギギィン!!

フランケン「お、おで!!」

ポニテの剣は硬いフランケンの肌に弾かれ、ポニテは空中に投げ出される。

フランケン「つ、土属性攻撃力上昇魔法、レベル4!!」

ビキキっ!!

フランケンの右腕に石や宝石が纏わりつく。

ポニテ「っ!」

フランケン「す、スキル、正拳!!」

ドゴオオオオオオオオオ!!

避けようの無い攻撃がポニテをとらえた。

898: 2013/04/22(月) 21:13:10.75 ID:ky/Pvi4C0
267

--妖精郷、平地--

ドガっ、ごっ、ドドーン!!

吹き飛ばされて地面を転がるポニテ。

しゅぅううう

ポニテ「い、いててー……つ、つえー!!」

しかしポニテは喜んで立ち上がる。

フランケン「! た、耐えた?」

防御に使った剣は折れてしまっていたのでポニテはそれに魔力を通す。

ポニテ「武器生成魔法、ブラッドセイバー!!」

ブォン!!

赤く光る剣が二振り出現する。

フランケン「す、スキル、空拳!!」

ぼっ!!

離れた距離から放たれた一撃を

ウォン!! どびゃあああああああ!!

ポニテの剣が弾く。

899: 2013/04/22(月) 21:14:27.42 ID:ky/Pvi4C0
268

--妖精郷、平地--

ポニテ「はあああああああ!!」

ダダダダダダ!!

フランケンに向かって走るポニテ。それをフランケンはスキルで迎撃する。

フランケン「す、スキル、振動波!!」

ドォン!!

フランケンは地面を全力で叩く。するとその振動は地面を揺らす。

ビビビビビ!!

ポニテ(! これは)

ダッ!!

振動が伝わる前にポニテは空中へと逃げる。

フランケン「! か、かわした!?」

フランケンは拳を引き迎撃態勢に移る。

900: 2013/04/22(月) 21:14:55.65 ID:ky/Pvi4C0
269

--妖精郷、平地--

が、フランケンの動きよりもポニテの攻撃の方が早かった。

ポニテ「はぁああ!!」

ウォン、オォン!!

フランケン「ぐっ!」

ドッ!!

ポニテの剣はフランケンの腕の強化を斬り裂いた。

フランケン「ッ……!」

ポニテ(いける! この剣なら切り裂ける!!)

オォン、ォォン!!

赤い閃光がフランケンを攻める。

フランケン「ぬ、ぐ!」

ポニテの攻撃を防御するも削られるフランケン。

フランケン「ぬ、ぬうぅ」

ポニテ「よし! これで!」

その時フランケンの体を緑色の魔力が覆う。

フランケン「身体強化、獣化、獅子!」

901: 2013/04/22(月) 21:15:55.03 ID:ky/Pvi4C0
270

--妖精郷、草原--

レン「……」

巨大蛇「」

巨大トマト「」

巨大鳥「」

ちーん

レン「……えー。まだ私やりたいことあったのにー」

902: 2013/04/22(月) 21:16:24.96 ID:ky/Pvi4C0
271

--妖精郷、荒れ地--

ガガガガ!! キキキキン!!

ケンタウロス「ちっ、あの盾めんどくせぇなぁ!」

ハイ「……」

ガガガガ!! キキキキン!!

ハイ(銃連射されちゃったら、動けなくしてもあんま関係ない、ですね)

ダンっ!!

ケンタウロスは地面を踏みしめる。

ケンタウロス「ちっ……地面が荒れてたって……水属性攻撃魔法、レベル4!!」

ハイ「あっ!」

どばあああああああああああああああああああああああああああああ!!

ケンタウロスが左腕に持ったランスの先から、水流が放たれる。

ハイ「ぶっ!」

ばばばああああああ!!

ハイ「ごぼっごぼぼ!!」(こんなの盾じゃ防げないです! このままじゃ流されちゃう!!)

903: 2013/04/22(月) 21:17:02.76 ID:ky/Pvi4C0
272

--妖精郷、荒れ地--

ばしゃああ、ばしゃしゃっ!!

ユニコーン「ひひん!!」

ばちゃばちゃ!!

ユニコーンはだいぶ流されているハイの元に駆け寄った。

ハイ「!! そうでした、ユニちゃん力を貸してもらいます!!」

ユニコーン「ひひん!!」

ハイの手がユニコーンの頭部に触れると眩いばかりの魔力の光が。

ぱあああああ!!

ケンタウロス「! なに……?」

ゴゴゴゴゴ

ばっしゃあああああああああああああああああああ!!

ケンタウロス「!?」

ケンタウロスの放った水が全て逆流する。

904: 2013/04/22(月) 21:17:40.99 ID:ky/Pvi4C0
273

--妖精郷、浅瀬--

ケンタウロス「がはっ!? な、なんだこりゃ!?」

どどど

ケンタウロス(こっちの攻撃が、跳ね返されてる!……!?)

ケンタウロスが見たものは、

ユニコーン『ひひん』

ハイ「よぉーしいいですよぉ。そのまま押し流しちゃってください!」

盾に変形したユニコーンの姿だった。

ケンタウロス(幻獣は……変化できるのか? ぐっ!!)

ばっしゃあああああんん!!

ハイ「やりました! ユニちゃんシールドで跳ね返せないものなんてないですからね!」

905: 2013/04/22(月) 21:18:12.42 ID:ky/Pvi4C0
274

--妖精郷、浅瀬--

ぱしゃっ

ハイ「はっ!」

ゴゴゴゴゴ

ケンタウロス「……」

ハイ(あ、あれ~? ご存命でいらっしゃる……?)

ケンタウロス「めんどくさいな……お前。吹き飛ばしてやった足もなぜかくっついてるし」

ハイ「あ、あははは」

ケンタウロス「腑抜けた顔しやがって……抹頃してやるよ!! スキル、地形効果無効」

ぶぅん

ケンタウロスの体を魔力が包み込む。

ハイ「!」

だからっだからっだからっ!!

そしてランスを構えて突進する。

ハイ「! ユニちゃん!! ルートチェンジ!!」

ユニコーン『ひひん!!』

906: 2013/04/22(月) 21:18:49.67 ID:ky/Pvi4C0
275

--妖精郷、浅瀬--

ユニコーンは元の姿に戻り、ハイは衣装が変わる。

ザンッ!!

ケンタウロス「!」

ハイ「ルートチェンジ、レベル2、騎士!!」

ハイが背中から抜き取った傘はランスとなる。

ハイ「ユニちゃん、足場は悪いけど、がんばってください。最善の道を探れる貴方ならきっと大丈夫なはずです!」

ユニコーン「ひひん!」

だからっだからっだからっ!!

ケンタウロス「……けったいな技を使いやがって!!」

ケンタウロスは全てを踏み砕く力強い走りで悪路をものともしない。

ハイ「……ユニちゃん、GO-です!!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっだからっだからっ!!!!

ハイとユニコーン、そしてケンタウロスは一直線に駆け抜ける。そして、

ガギィイイイン!!

交差し火花を散らす。

907: 2013/04/22(月) 21:19:15.56 ID:ky/Pvi4C0
276

--妖精郷、荒れ地--

ハイ「きゃあっ!!」

ケンタウロス「ぐあ!!」

ざざ、ざざざざーー!!

お互いの攻撃の衝撃で弾かれる二人と一匹。

ハイ「なんて強烈な打ち込み……ユニちゃん大丈夫ですか!?」

ユニコーン「ひひん!!」

ケンタウロス「ぐ……この威力……冗談で馬に騎乗してるわけじゃないみたい、ねっ!!」

だからっだからっ!!

一回転して再びハイに向かうケンタウロス。

ハイ「ユニちゃん!」

ケンタウロス「今度はコレも使うぜ!」

がちゃ、バルルルルルッ!!

ハイ「!」

908: 2013/04/22(月) 21:19:45.93 ID:ky/Pvi4C0
277

--妖精郷、荒れ地--

ぎぎぎきききん!!

ハイ「くっ!」(騎士の時は鎧もあるし左手の盾もあるけどこれじゃ心もとないし、なにより)

だからっだからっ!!

ハイ(攻撃に集中できない!!)

ケンタウロス「はぁあああああああああ!!」

ハイ「っ!!」

ガギィンン!!

ケンタウロスの強烈な突き刺しは、

ユニコーン「ひひーん!!」

ハイの盾と鎧をたやすく貫き、ハイをユニコーンの上から弾き飛ばした。

ハイ「ご、ごぶっ!」

909: 2013/04/22(月) 21:20:30.86 ID:ky/Pvi4C0
278

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス(胸にどでかい穴ぁ空けた。致命傷間違いなしだ!)

だからっ

ケンタウロスは走りながら後ろを振り向いた。

ハイ「」

きりもみ回転しながら血を撒き散らすハイが宙を漂う。
だが、

ハイ「ッ」

ケンタウロス「!?」

ハイの眼は氏んでいなかった。

ハイ「じょう、けん達成! レベルアップ」

ユニコーンは何を言われるでもなく変形を始める。

ぴしゅあああ

910: 2013/04/22(月) 21:21:14.56 ID:ky/Pvi4C0
279

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス「なんッ」

ハイ「レベル3、銃士!!」

パァーン!

地面に落ちようとしているハイは一瞬で衣装を変え、巨大な大砲に姿を変えたユニコーンはハイの手元に飛び込んだ。

がしぃっん!!

ハイ「食らってください、ユニコーンバスター!!」

ドッ

ケンタウロス「だとぉおお!?」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

911: 2013/04/22(月) 21:21:42.05 ID:ky/Pvi4C0
280

--妖精郷--

ズズウゥウン……

ぴっち『! 何かすごい魔力が衝突したっぴ……アッシュぴか?』

ぱっち『これだけのパワーをだせるのはきっとポニテに間違いないっぱ!』



--精霊宮--

ズズウゥウン……

土の精霊「お、おぉ。揺れる揺れるもぐ。魔法攻撃に換算すれば対単体レベル4相当……あの白い猫ちゃんの攻撃もぐか?」



--妖精郷、荒れ地--

しゅううううううう

ケンタウロス「」

ハイ「はっ、はっ、はっ……」

ぺたん

ハイ「はっ、はっ……」

動かなくなったケンタウロス。

ハイ「……勝利っ、ですっ! ぶい!」

921: 2013/05/06(月) 20:50:42.23 ID:1jqZR7Mj0
281

--妖精郷、荒れ地--

しゅぅぅ……

ハイ「けれど今ので全魔力を出し尽くしてしまいました。皆さんの援護には向かえませんね……」

ハイは横たわるケンタウロスを見る。

ハイ「……いきなり襲ってきたから対応したけれど、これ、魔族です、よね?」

ケンタウロス「……まさか私様がこんな小娘に負けるとは」

ハイ「!?」

驚き跳ねるハイ。ケンタウロスにはまだ意識があった。

ケンタウロス「ふん……もう何も出来ないわ。心配しなくても私様の負けよ」

ハイ「え」

ケンタウロス「この分じゃ……三本角のあいつらも」

ケンタウロスは起き上がろうとするのだが、

ぶじゅぅ

ハイ「ひっ!?」

体中が腐り始めていた。

922: 2013/05/06(月) 20:51:20.84 ID:1jqZR7Mj0
282

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス「例の副作用ってやつか……人造魔族っていうのも大したことないわね」

ケンタウロスは冷静に崩れゆく自分の体を観察していた。

ハイ「な、ななななな!!」

ケンタウロス「……けれどそのおかげで、最後の最後で自我を取り戻せたわ」

ぼたっ

ケンタウロスは腕が腐り落ちたというのに、つき物でもとれたかのような表情をする。

ハイ「っ……」

じゅるじゅる

ケンタウロス「ねぇ小娘、貴女どこの国出身?」

ハイ「……わ、わかりません」

ケンタウロス「……」

ハイ「……」

923: 2013/05/06(月) 20:52:21.96 ID:1jqZR7Mj0
283

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス「ごまかしてる顔じゃないわね。そう……じゃあいいわ、貴女に覚えて欲しいことがある」

ハイ「……え?」

ケンタウロス「これからの戦い、絶対に氏んじゃだめよ」

ハイ「? あ、はい」

ケンタウロス「それと、東の王国を信用しちゃだ、め」

ぶしゅぅうううう

ハイ「んっ!」

強烈な腐臭とともにケンタウロスは消滅した。

ハイ「……一体……どういう?」

924: 2013/05/06(月) 20:53:02.53 ID:1jqZR7Mj0
284

--妖精郷、川--

きゅいん、きゅいきゅいん!!

カトブレパスは目からビームを放つも、その全てをアッシュにかわされてしまう。

カトブレパス(くっ! この子速い!!)

しゅんしゅんしゅんしゅん!!

地面を蹴るたびに加速するアッシュ。

アッシュ(いけるっ!! 俺は魔族相手にも戦える!!)

チギィアアアアアン!!

アッシュ「!」

猛攻を潜り抜けカトブレパスにナイフを振るったアッシュだったが、そのナイフは空中で弾かれる。

アッシュ(っ魔力障壁か!)

カトブレパス「止まったね? 魔力暴発、レベル3」

バグオオオン!!!!

925: 2013/05/06(月) 20:53:55.72 ID:1jqZR7Mj0
285

--妖精郷、川--

ドシャッ、ザザー!

突然カトブレパスの周囲が大爆発。

アッシュ「、っぐ……」

ぼた、ぼたたっ

カトブレパス「さすがの超反応ですね。回避と防御でダメージを最小限にしている……君を見ていると盗……ウェンディゴ君を見ているようですよ」

アッシュは左腕が出血していた。

アッシュ(ち……俺の魔力に干渉出来ないとわかるやいなや、自分の魔力障壁を爆発させやがった。しかもあの距離で魔力暴発だと? 普通なら自分にも被害が出るだろうよ)

しゅぅう……

アッシュ(障壁を二重に張ってやがったのか)

926: 2013/05/06(月) 20:54:24.37 ID:1jqZR7Mj0
286

--妖精郷、川--

きゅいんきゅーん!!

アッシュ「っ!」

照射されるビームと前転でそれを回避するアッシュ。

カトブレパス「貴方の力はかなりの脅威です。が、僕ならなんとかなりそうですね」

びぃいーー!きゅいーん!

アッシュ(硬い上に高威力の魔力攻撃……とんだ移動砲台だな!)

ぼたっぼたたっ

アッシュは大量の血を地面にたらしながら逃げている。

カトブレパス「目光線で捉えられないのは少し困りました……なら」

びぃいーーん!!

アッシュはその攻

どぐぉおおん!!

アッシュ「!? なっ」

紙一重で避けたはずのビームが爆発する。

927: 2013/05/06(月) 20:54:56.52 ID:1jqZR7Mj0
287

--妖精郷、川--

ボチャーン!

アッシュは吹き飛ばされて川に着水。

カトブレパス「僕は魔力暴発の使い手です。僕の放つ魔力攻撃は全て警戒しなくちゃいけないですよ?」

ゴゴゴゴゴ

アッシュ「ぐ……」

ばしゃっ

川の中で立ち上がるアッシュ。

びぃーーん!!

そして休むまもなく放たれるビーム。

どごおおおおん!!

928: 2013/05/06(月) 20:55:24.36 ID:1jqZR7Mj0
288

--妖精郷、川--

アッシュ「がはっ!!」

ズザザー!!

対岸に着地するアッシュ。

アッシュ「……うぐ」

カトブレパス「防御は紙ですね。そんなところまでウェンディゴ君そっくりだ」

ぽたっ

アッシュ(幻覚などの補助魔法に加え、二重の防御壁(そのうち外側の障壁は魔力暴発に使うことも出来る)、高威力高速の魔力攻撃(好きなタイミングで爆発させることが可能)……こいつは……強すぎる)

カトブレパス「生前は裏方に徹していましたが、中々楽しいものですね攻撃も」

アッシュは巨大な眼球に見つめられる前に物陰に隠れようとする。

カトブレパス「残念、僕の射程は長いんです」

びぃーん!!

アッシュ「」

どぼごおおおおおん!!

アッシュ「ちOちんはちっちゃいくせにーーーー!」

カトブレパス「!? なぜ貴方が知ってるの!?」

929: 2013/05/06(月) 20:59:10.46 ID:1jqZR7Mj0
289

--妖精郷、川--

しゅうううううぅ

カトブレパス「……また上手く致命傷は避けたみたいですね」

アッシュ「はっ、はっ、はっ……」

カトブレパス「どれ、近づいて最大威力の一撃をお見舞いしてあげますか」

ざっ

アッシュ「」

ぴたっ

カトブレパス「といきたいところなんですが、どうも臭いですね」

アッシュ「!?」

カトブレパス「貴方、逃げながら何かをしているような気がします。ウェンディゴ君に戦闘スタイルが似ているというのなら罠でもしかけている可能性が」

踏み出そうとした足を戻すカトブレパス。


930: 2013/05/06(月) 21:00:09.08 ID:1jqZR7Mj0
290

--妖精郷、川--

カトブレパス「それに僕の射程範囲からしたら」

ぎゅぎゅぎゅ

カトブレパスの眼球に魔力が集まり圧縮される。

カトブレパス「この程度じゃ減衰しないんですよ」

アッシュ「……ぐ」

カトブレパス「おさらばですよ、少年。魔族一体の戦闘能力は、勇者パーティのそれと同じと言われているのに……よく一人でがんばりました」



カトブレパス「」

発射する瞬間、カトブレパスは自分の体の違和感に気付いた。

カトブレパス(あれ、何か感覚が鈍く)

アッシュ(あの目が魔力攻撃の発射口だとするのなら、やつはビームを撃つ瞬間魔力障壁に穴を開けて撃っているはずなんだ)

ぎゅ

アッシュ「ならほんの少しの操作ミスで勝手に自爆してくれるわけだろ?」

カトブレパス「な、なぜ!?」

どっごおおおおおんん!!!!

アッシュ「……毒は触れさせなくても匂いで十分なんだよ。スキル、毒血・麻痺」

931: 2013/05/06(月) 21:00:56.96 ID:1jqZR7Mj0
291

--妖精郷、平地--

ドォン!!ドゴオォン!!

フランケン『ふーっ! ふーっ!』

ポニテ(くっ! ライオンぽくなってからめっちゃ)

フランケン『ぐおおおおおおおおおおおおお!!』

ぎぃんぎぃぎぎぎぃん!!

ポニテは両の剣で幾度も斬りつけるも、

ががおおん!!

フランケンの爪による一撃で弾かれてしまう。

ポニテ「きゃあああああああああ!!」

ずずーん!!

932: 2013/05/06(月) 21:02:13.15 ID:1jqZR7Mj0
292

--妖精郷、平地--

ぱらっ

ポニテ(おっきいしつよいしかたいし……)

ひゅん

フランケン『』

ポニテ「!!」

巨体でありながらフランケンは一瞬で距離をつめる。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

ポニテ「あぐっ!!」

そして躊躇することなく拳を振り下ろした。

ぼごごごごご!!

あっという間に巨大なクレーターが出来上がり、その中心にはボロボロになったポニテがいた。

933: 2013/05/06(月) 21:02:38.24 ID:1jqZR7Mj0
293

--妖精郷、平地--

フランケン『こ、ころしたくは、ない』

ポニテ「がふ……」

フランケン『だ、だがこれも、ゆ……まおさんのため!』

ぎりり

フランケンはポニテの細い首を巨大な指で締め上げる。

ポニテ「!? きゅっ!!」

ぎりぎりぎりぎりぎり

ポニテ「」

ぎぃん!ぎぃん!

欠けた剣でフランケンを突くが、一ミリたりとも皮膚を貫くことはできない。

934: 2013/05/06(月) 21:03:11.90 ID:1jqZR7Mj0
294

--妖精郷、平地--

ぎぃん!

ぎりぎりぎり

ぎぃん

ぎりぎりぎり

……ぎん

ぎりぎりぎり

……

ぎりぎりぎり

……

ぎりぎりぎり

……からん

935: 2013/05/06(月) 21:04:00.89 ID:1jqZR7Mj0
295

--妖精郷、平地--

ポニテ「な、んて、ね」

ぼひゅっ!!

フランケン『!?』

想像もしないことが起きる。フランケンが握っていた首は水のように一切の抵抗を無くし弾けた。

フランケン『な、なんだ!?』

くすくす

くすくすくすくす

世界が笑う。

フランケン『!? こ、これは……』

首を無くした体がいつのまにか消えていた。

くすくすくす

936: 2013/05/06(月) 21:04:54.31 ID:1jqZR7Mj0
296

--妖精郷、平地--

フランケン『はっ!?』

その時フランケンは、自分の真上に太陽がある気がした。

がばっ

ポニテ「……」

ぼっぼっぼっ

頭上には

ポニテ「……」

ぼっぼっぼっ

炎を纏ったポニテが腕を組んで浮かんでいた。

ポニテ「氏の光 炎の翼の改良型」

ぼっぼっぼっ

ポニテ「奥義、SOF<スピリットオブフレイム>」

937: 2013/05/06(月) 21:06:14.11 ID:1jqZR7Mj0
297

--妖精郷、平地--

フランケン『!』

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

地表を炎が多い尽くす。

ポニテ「ここが私とおじさんの戦場だよ。出る時はどちらかが敗北する時……」

フランケン『っ』

フランケンは話の途中で跳躍し、宙に浮かぶポニテに拳を叩き込む。

ふわっ

フランケン『!?』

しかし、その拳は何の抵抗も無く通り過ぎる。

ぼっぼっぼっぼっ

ポニテ「物理攻撃は効かないよ。なぜなら今の私は魔力体、精霊化しているからっ!」

938: 2013/05/06(月) 21:06:42.44 ID:1jqZR7Mj0
298

--妖精郷、平地--

ぼぼぼっ

ポニテ「はああああああああああああああ!!」

どがぁあああん!!

フランケン『ぐっ!?』

精霊化したポニテの蹴りがフランケンを襲う。

フランケン『ぬ、ぬ!? ぶ、ぶつりこうげきがきかないなら、そっちもできないはずじゃ!?』

ポニテ「精霊は魔力で出来てるんだよ。魔力はただのエネルギー、魔力を物理で破壊することは出来ないけれど、魔力は確かにそこにある!」

ぼぼぼ!!

ポニテの両足から火がジェットのように噴射する。

フランケン『!! っく!』

迎撃しようとフランケンは拳を突き出すが

ふわん

ポニテ「残念! 魔力体の時は引き裂かれたってへっちゃらなんだよ!!」

どががっ!!

939: 2013/05/06(月) 21:07:16.64 ID:1jqZR7Mj0
299

--妖精郷、平地--

フランケン『ッッ!!』

巨躯のフランケンが、

ぼぼっ!!

硬い外皮を持つフランケンが、

どぼぼぼぼ!!

ポニテ「あああああああああああああああああ!!」

ががががががががががががが!!!!

フランケン『ッッぐ!! がっ!!』

ポニテの乱打を受けて、甚大なダメージを受けていた。
現魔王の魔族の一体が、少女一人になすすべも無く。

ドッごおおおお!!!!

フランケン『ッ』

ずっずーん!!

嘘のように吹き飛ぶフランケン。

ポニテ「……」

あれだけの攻撃を加えたのに息一つ乱さないポニテ。それもそのはず、今のポニテに呼吸は必要ない。魔力体に疲れなど存在しない。

940: 2013/05/06(月) 21:08:34.07 ID:1jqZR7Mj0
300

--妖精郷、平地--

フランケン『……ぐ、ぐうう』

ポニテ「しぶといねおじさん。でもこれはどうかな」

ぎゅん!

ポニテは空に掌をかざす。

ぎぎ、ぎぎぎぎ!!

フランケン『!!』

すると巨大な火の塊が出現する。

ポニテ「火属性対単体攻撃魔法レベル4。おじさんは強いから……ここで完全に倒しておかないと、今後私の仲間に害をなすことになるかもしれないよね?」

フランケン『……ごく』

少女から発せられる静かな意思と強固な覚悟。

ゴゴゴゴゴ

ポニテ「……じゃあね」

短い別れの言葉と共にポニテは火球を放つ。

ドッ!!

それは大気を震わせフランケンに直進する。



しゃん



ポニテ「」

フランケン『』

トッ

……しかし突然現れた風が二人の間を通り過ぎると、火球は何事も無かったかのように消滅した。











ウェンディゴ「よっ、今度は間に合ったな」

948: 2013/05/13(月) 21:40:38.43 ID:ko1VFV9g0
こんばんは! やった……蘭子が!!

それでは投下していきますー。

949: 2013/05/13(月) 21:42:00.27 ID:ko1VFV9g0
301

--妖精郷、平地--

ざっ

ウェンディゴ「ふぅ~……あちちっ」

ウェンディゴは体についた火を手ではらう。

ポニテ「な……レベル4攻撃魔法を……消した?」

フランケン『う、ウェンディゴ……』

ウェンディゴ「おう、なんだよお前、結構苦戦してんじゃん」

姿を見せない何かが軽い口調でフランケンに話しかけている。

ポニテ「!……これ……」

フランケン『な、なんでおまえがここにいるんだ? こ、ここはおでたちがまかせられたんだぞ?』

ウェンディゴ「魔王勇者さんがやっぱり心配だから見てきてくれってよ」

フランケン『ぐ、ぐ……おでたちのこと、しんらいしてくれてないのか』

フランケンは効果が切れたのか元の姿にしぼんでいく。

ウェンディゴ「信頼がどうとかじゃなくて、心配の方が上回ったんだろ」

950: 2013/05/13(月) 21:43:07.70 ID:ko1VFV9g0
302

--妖精郷、平地--

ポニテ(姿が見えない。声も風でかすれてよく聞き取れない……でもこれは魔族がもう一体いるってことだよね)

ポニテは気を引き締めた。

フランケン「せ、せいれいは」

ウェンディゴ「あぁ、精霊は俺がもう始末しといたから」

ポニテ「!?」

あまりに軽々ととんでもないことを言うウェンディゴ。

ウェンディゴ「フランケン達が騒ぎを起こしておいてくれてたおかげで簡単だったよ。さぁ長居は無用だ、帰ろうぜ」

ポニテ「に、逃がすわけないでしょっ!!」

ぼぼぼぼっ!!

ポニテはフランケンに向かって飛翔。

フランケン「こ、このこはここでたおしておかないと、こんごきょういになるぞ!!」

ウェンディゴ「えぇー……? 正直かなり骨が折れるぞこれは。やめようぜ?」

951: 2013/05/13(月) 21:44:22.04 ID:ko1VFV9g0
303

--妖精郷、平地--

ポニテ「はぁああ!! 火属性攻撃魔法レベル3、連射!!」

ドゥン、ドドオゥン!!

ポニテはフランケン達目掛けて魔法を放つ。

ドッゴオオオン!!

フランケン「ぐ、ぐおっ!」

ウェンディゴ「!」

一発はウェンディゴが弾くのだが、フランケンは防御に失敗してしまう。

ウェンディゴ「ほれ! 今のお前じゃきついだろうが! ここは引くぞ!! いいな!?」

フランケン「ぐ、ぐぐ……!」

しゅぅううう

ウェンディゴ「ばかっ! 生き残ってなんぼだろ! 俺は誰一人として欠けて欲しくないんだよ!! 誰一人としてな!」

ウェンディゴの熱の篭った叱咤にフランケンは、折れる。

フランケン「わ、わかった、すまない……お、おでたちのひとりでもしねば、ゆ、まおうゆしゃさんはかなしむもんな」

ウェンディゴ「……あぁ」

952: 2013/05/13(月) 21:44:55.16 ID:ko1VFV9g0
304

--妖精郷、平地--

ポニテ「逃がさないって、言ってるでしょー!?」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

ウェンディゴ「!?」

フランケン「!!」

ぼおぉおぉ……

ポニテは膨大な魔力を右手と左手にそれぞれ結集、そのどちらもが先ほど放ったレベル4魔法に相当した。

ウェンディゴ「……まっず」

ポニテ「あああああああああああ!!」

ぼっ!!

ポニテが拝むようにそれらを融合させると、

フランケン「な、なんと」

ボッゴゴォオオ!!

白い太陽が産まれた。

953: 2013/05/13(月) 21:45:44.08 ID:ko1VFV9g0
305

--妖精郷、平地--

ウェンディゴ「空間設置魔法罠、ディフェンスタイプ」

ウェンディゴの宣言とともに、周囲に赤く光る道が出現する。それはここら一帯に描かれた魔方陣のように見える。

ポニテ「! どんな小細工をしたってぇえええ!!」

ギュウウイイイイイイイイイイイン!!

白い太陽が高速で回転し、けたたましい音で唸る。

フランケン「うぇ、うぇんでぃご!!」

ウェンディゴ「まぁ……なんとかなるんじゃねぇの?」

ポニテ「火属性対単体攻撃魔法、レベル、5!!」

カッ!!

ウェンディゴ「」

フランケン「」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

954: 2013/05/13(月) 21:46:43.94 ID:ko1VFV9g0
306

--妖精郷--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ぴっち『あ、あわわわわ!! 揺れる!! 揺れるっぴ!!』

ぱっち『てゆうか、こんな魔力攻撃なんかしたら妖精卿吹っ飛んじゃわないかっぱ!?』



--妖精郷、川--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

アッシュ「な、なんだこの馬鹿でかい魔力は!?……って、あいつしかいねぇか。後先考えてやれってんだまったく」

カトブレパス「……」

ずる……



--妖精郷、荒れ地--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ハイ「な、なんなんですかぁ!? 地震なんですかぁ!?」

ユニコーン「ひひぃん」



--妖精郷、草原--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

レン「……ポニテが全力で攻撃……? それほど危険な相手がいるのかにゃ?」

955: 2013/05/13(月) 21:47:49.80 ID:ko1VFV9g0
307

--妖精郷、平地--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!

空中から注がれる白い地獄の炎。ありとあらゆる生命の存在を許さぬ天からの一撃。

ウェンディゴ「……あっち」

ポニテ「ファッ!?」

しかし、ウェンディゴ達は氏滅していなかった!

ポニテ「う、うそ!? なんで!? なんでっ!?」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!

攻撃はなおも続いている。
だが、ポニテの攻撃は何かに防がれてウェンディゴ達にまで到達できずにいた。

ウェンディゴ「うし、じゃあ俺らもう行くから。じゃぁな」

フランケン「お、おで」

ポニテ「え、えぇええ!?」

しゅん

ウェンディゴ達の気配が消えた。

956: 2013/05/13(月) 21:48:22.43 ID:ko1VFV9g0
308

--???--

魔王勇者「んん……」

トントントントン

テーブルを指で叩く魔王勇者。

ツインテ「どう、したんですか? 魔王勇者さん」

ツインテは落ち着きの無い魔王勇者を見て話しかけた。

魔王勇者「!! べ、別に……なんでもないけどっ?」

魔王勇者は髪をかきあげながら窓の外に視線をやる。

ツインテ「……ふふ」

ことっ

ツインテは紅茶のカップとクッキーの乗ったお皿をテーブルに置く。

ツインテ「心配なんですね。魔族さんたちのこと」

とぽぽぽ

ツインテは魔王勇者のカップに紅茶を注ぐ。

957: 2013/05/13(月) 21:49:08.98 ID:ko1VFV9g0
309

--???--

魔王勇者「ん……ありがとツインテ」

注いでもらった紅茶を口にする。

魔王勇者「……おいしい。それにあったまる……」

ツインテ「北の王国は寒いですからね。よかったらクッキーも食べてみてくれませんか?」

ふんわり笑顔のツインテ。

かりっ

魔王勇者「……うん、紅茶によく合うわ。おいしいよ」

ツインテ「そうですか! それはよかったです!」

魔王勇者「……」

じーっとツインテの顔を見つめる魔王勇者。

ツインテ「え? ど、どうしたんですか?」

魔王勇者「はぁ……なんでもない……ありがと。少し落ち着いたわ」

958: 2013/05/13(月) 21:50:00.65 ID:ko1VFV9g0
310

--???--

ツインテ「そう言えばボク、魔王勇者さんの部下さん達を見たことが無いんですけど、どんな人たちなんですか?」

魔王勇者「へ? 会ったこと無かったっけ? あー……ここは最深部だもんね、魔族の入室は禁止だった」

コトッ

魔王勇者は飲みかけのカップをテーブルに置いた。

魔王勇者「んー、なんて言ったらいいかなぁ……頼りになる……いや、なるのかなぁ」

ツインテ「あれ?」

ツインテが思った以上に魔王勇者は考えていた。

魔王勇者「昔だって私が一人でダンジョン全部制覇したしなぁ。ほんとあの時はなんで私こんなのとパーティ組んでるんだろう、って思ったなー」

ツインテ「あ、あれれ?」

魔王勇者「そうね、一言で言えば変なやつらだね!」

ツインテ「え、えぇえー!?」

959: 2013/05/13(月) 21:51:34.44 ID:ko1VFV9g0
311

--???--

魔王勇者「草原にいた雑魚モンスターに殺される奴もいれば、いきなりパーティから離脱してすっきりして帰ってくる奴もいたし、ずっと笑ってる奴いたし、ホ〇ォいたし、女同士なのにやたら私の体を触ってくるやついたし!!」

ツインテ「あ、あはは……」

魔王勇者「お風呂覗かれるわ過去を見られるわホ〇りだすわ頼んでもいないのに勝手に盾になるわ……それで氏んじゃうわ……」

ツインテ「……」

魔王勇者「……」

魔王勇者はカップの中の紅茶を揺らす。

魔王勇者「本当どうしようもない役立たずだよ……でも……不思議と、一緒にいると心が休まった」

ツインテ「……いい人たちなんですね」

魔王勇者「い、いい人!?」

ツインテ「魔王勇者さんの表情を見てればわかりますよ!……ボクも……ボクもすごいいい人たちと旅をさせていただきました」

魔王勇者「……」

960: 2013/05/13(月) 21:52:24.52 ID:ko1VFV9g0
312

--???--

魔王勇者「今、行方不明なんだっけ?」

ツインテ「……はい。ボクを助けにあの場所まで来てくれていたんだそうです」

魔王勇者「暗黒森林の競売か……あそこで暴れたとなると指名手配されてるだろうね……」

ツインテ「っ!!……」

魔王勇者「……私も同じような目にあったよ。その時私は、助けてもらった」

ツインテ「……」

魔王勇者「大丈夫、ツインテの仲間は絶対に見つけ出して助けてみせる。あんな奴らに好き勝手させない」

ツインテ「……あの」

フォーテ「あああああああぁあああ!! お姉ちゃんみっっーけたぁあ!!」

ダダダダダダダ!!

ツインテ「! フォーテちゃん走り回ったらだめ!」

フォーテ「きゃふー!」

そのままツインテに飛びつくフォーテ。

どさーん!

961: 2013/05/13(月) 21:53:26.79 ID:ko1VFV9g0
313

--???--

魔王勇者「もうっ、大事な話をしてたのに!」

フォーテ「大事な話?? 何々っ!? フォーテも気になるっ!!」

ツインテ「んんっ……フォーテちゃんどいて、重いよぉ」

フォーテ「あ、ごめんお姉ちゃん!! 女神にも等しいお姉ちゃんの綺麗な体に覆いかぶさるだなんて僕は一体なんてことを!!」

がくがくと震えながらツインテの上からどくフォーテ。

ツインテ「お、おおげさだよ」

魔王勇者「また始まった……ほらフォーテ、その女神が作ったクッキーと紅茶があるから食べていきなさい」

フォーテ「えっ!? お姉ちゃんのクッキーと紅茶!? 食べる食べるっ!!」

わーい、と喜びながらぴょんぴょん跳ねるフォーテ。

ツインテ「こ、こらテーブル周りで飛び跳ねちゃだめだよ!」

フォーテ「えへへー! 魔王勇者お姉ちゃん、あーん!」

魔王勇者「……仕方ないなぁ」

魔王勇者はフォーテにクッキーを食べさせてあげる。

962: 2013/05/13(月) 21:53:59.51 ID:ko1VFV9g0
314

--???--

フォーテ「んん~!! おいしぃおいしい!!」

ぴょんぴょん!!

ツインテ「ちゃんと席につきなさいフォーテちゃんっ!」

フォーテ「あ、はーいっ」

ああぁあああああああ

氏人の声とともに血塗れた腕が現れてフォーテの椅子をひく。

ツインテ「あ、またっ! 腕さんもフォーテちゃんを甘やかさないで下さい!」

あぁああああぁ

手のひらを合わせてごめんのポーズの腕。

フォーテ「お姉ちゃんお姉ちゃん! 僕にも紅茶頂戴っ!!」

ツインテ「っもうっ」

あぁあああぁああ

ひらひらと手を振って腕は深淵に帰っていく。

963: 2013/05/13(月) 21:55:22.96 ID:ko1VFV9g0
315

--???--

魔王勇者「っと、そうだ。ねぇツインテ、このクッキー、下の研究室に持って行ってあげてくれない? 昨日から腹黒がずっと篭ってるのよ」

ツインテ「……そう言えば今朝の食事にもでてこられませんでしたね……わかりました、台所に残りがあるのでそれを持っていきますね」

フォーテ「んほぉっ!? ふぉっはひふふぁら、ふぉふふぉふひへふ!」

リスのように頬にいっぱい食べ物をつめたフォーテがもぐもぐ喋る。

ツインテ「食べ物を口に入れて喋っちゃだめですよ」

すたすた

フォーテ「ごっきゅっ! ぷはぁ……どっかいくなら僕もついてくっ!」

ツインテ「大丈夫ですよクッキー持って行くだけですから。フォーテちゃんはここでおやつ食べてていいんですよ?」

フォーテ「やだやだっ!! フォーテ、お姉ちゃんと一緒がいいのっ!!」

ツインテ「仕方ない子です……じゃあフォーテちゃんにも手伝ってもらいますよ?」

フォーテ「うんっ!!」

あぁあああぁあああ

ツインテ「自分の手でですっ!」

あぁああぁああ……

親指を立てたままゆっくり闇に戻っていく腕さん。

964: 2013/05/13(月) 21:55:54.55 ID:ko1VFV9g0
316

--???--

カツンカツンカツン

地下へと続く階段。そして行き着いた場所には大きなドアが。

ツインテ「腹黒さん、ツインテです。こんをつめても毒ですし、お菓子でもいかがですか?」

フォーテ「……」

鉄でできた大きなドアに話しかけるも、何もおきなかった。

ツインテ「あの、聞こえてませんか……?」

フォーテ「こらぁっ!! お姉ちゃんのことを無視するなぁっ!!」

……ぷしゅー

腹黒「すいませんツインテさん……丁度作業中だったもので気付くのが遅れました(ちっ、忙しいのになんのようだくそがっ)」

ツインテ「あの、お食事にも来られていなかったのでお腹、空いてるんじゃないかなって」

そういってツインテはバスケットを差し出す。

965: 2013/05/13(月) 21:56:20.89 ID:ko1VFV9g0
317

--???--

腹黒「あぁ……そういえば食事のことをすっかり忘れていました。これは助かります(はっ、気付くのがおせぇんだよいい子ちゃんが)」

フォーテ「ふぅ~」

フォーテは腹黒に対して敵意を向けている。

ツインテ「あの、紅茶も持ってきたので中に入ってもいいですか?」

腹黒「本当ですか? それは楽しいお茶会になりそうだ。どうぞ、汚いところで恐縮ですが(ちっ、めんどくせぇな。渡してさっさと帰れよ)」

ツインテ「おジャマします」

しゅぅうう

その部屋ありとあらゆる研究を可能とする、書物と魔法道具にあふれた部屋……。

ツインテ(う……換気が必要ですね)

フォーテ「フォーテ腹黒嫌いー」

966: 2013/05/13(月) 21:56:52.42 ID:ko1VFV9g0
318

--???--

ごぅんごぅん

腹黒「すいません、ろくに椅子もないんでこの本に腰掛けてください(はぁ、せっかくの魔道書がよぉ)」

ぬちゃ

ツインテ「ひゃっ!? ……な、なんかこの本……独特な質感、ですね」

腹黒「あぁ、それは特注品なんですよ(人間の皮で作ったな)」

フォーテ「むぅ……」



ごぅんごぅん

ツインテ「はい、どうぞ」

ツインテはカップを差し出し、それを腹黒が受け取る。
両者ともに満面の笑みである。

腹黒「ありがとうございます。いやぁ、これはおいしそうだ(ちっ、あちいだろがっ!!)」

967: 2013/05/13(月) 21:57:34.12 ID:ko1VFV9g0
319

--???--

ずず

ごぅんごぅんごぅん

ツインテ「……あの、質問させてもらってもいいですか?」

腹黒「はい、なんでしょう?(うざってぇな……いつまで居座る気だよ)」

ツインテ「ここで何をやっているんですか?」

腹黒「……」

ずずっ

腹黒は飲み干したカップをテーブルに置いた。

腹黒「そう、ですね。端的に言ってしまえば……モンスターや魔族が使用する魔法の改良、魔法薬の精製、肉体組織の研究……」

ごぽぽっ

ツインテ「ひっ!?」

水音の先にあったものはモンスターのホルマリン漬け。

腹黒「そして、人造魔族の作成ですか」

968: 2013/05/13(月) 21:59:05.03 ID:ko1VFV9g0
320

--???--

ツインテ「人造……魔族?」

腹黒「はい。魔王軍も補充していかなければ減少する一方ですから(てめぇらが不甲斐ないから余計に俺様ががんばらなきゃいけねぇんだぞ)」

ツインテ「……それは、人為的に魔族を、作り上げるってことですか?」

腹黒「そうです。あっと、私達は人ではないですから……魔造魔族と言うべきなんですかね」

ツインテ「……」

ビッビイーーー!!

その時巨大な機械音が部屋中に鳴り響いた。

ツインテ「ひっ!! な、なんです!?」

腹黒「お、さっそくもう一体完成したようですよ」

ぷしゅぅーー……

ぺたっ

フォーテ「……」

ぺたっぺたっ

ツインテ達の前に姿を現したのは、

スライム「……」

腹黒「やぁおはよう。名前なんだっけ? たしか……」

腹黒はわざとらしく考えるそぶり。

ツインテ「……あれ? この人って……」

腹黒「あぁ思い出した、斧女、だったっけ」

976: 2013/05/20(月) 23:39:01.51 ID:ddXx7gbJ0
お待たせいたしました! それではこのスレ最後の投下と行きましょう!

977: 2013/05/20(月) 23:39:29.35 ID:ddXx7gbJ0
321

--王国--

中央の王「くくく、あの小僧に投資し続けたかいがあった……くくく、笑いがとまらん! これから忙しくなるぞ……金の勘定でな、くくく」

軍師「本当にこんなことしていいのかだぜぃ。回復魔法の使用制限なんて」

中央の王「何も問題などないさ。我が国の兵士どもは使えるように設定してあるからなあ! はははは!」

軍師「……我が国だけじゃ魔王軍と戦えない気がするだぜぃ」

中央の王「なにを弱気なことを……新型人造勇者がいれば恐るるに足らず。回復魔法の利権で更に軍備を整えればよいだけではないか」

軍師「……でも何の罪もない他国の民間人の氏亡率があがるのはやるせないだぜぃ」

中央の王「ふん、我が国の民でないものは人にあらずよ。……我が国が世界を率いればよい」

軍師「……」

978: 2013/05/20(月) 23:40:14.16 ID:ddXx7gbJ0
322

--妖精郷、川--

ウェンディゴ「おっすおらウェンディゴ、助けに来たぞ」

フランケン「お、おで」

アッシュ「!?」

アッシュの戦場に魔族がいきなり二体も増えた。さすがのアッシュも驚きと焦りを隠せない。

アッシュ(ふ、ふざけやがって……!……あいつらは全員倒されたってことか?)

見えない魔族はゆっくりとカトブレパスに近づいていく。

ひゅおぉぉお

アッシュ(いる、確かにいる……風のプロテクターで見えなくしているのか?)

ウェンディゴ「ワムゥ!」

979: 2013/05/20(月) 23:40:44.84 ID:ddXx7gbJ0
323

--妖精郷、川--

ウェンディゴ「ほらカトブレパスさん、起きなよ」

ウェンディゴはカトブレパスの前にまでくるとUNKO座り。

カトブレパス「……はぁ。氏んだふりして不意打ちしようと思ってましたのに」

仕方ないとばかりにカトブレパスは立ち上がる。

ウェンディゴ「あはは、せこいよカトブレパスさん」

カトブレパス「自分、魔族ですから(キリッ」

ウェンディゴ「あははは」

アッシュ「……」

それを黙って見ているしかないアッシュ。

980: 2013/05/20(月) 23:41:26.25 ID:ddXx7gbJ0
324

--妖精郷、川--

カトブレパス「やれやれ、ウェンディゴ君がここにいるということは魔王さんのお節介ですか。……その様子だと目的は達成されたみたいですね」

ウェンディゴ「さすがカトブレパスさん察しがいい」

アッシュ(こいつら何を……?)

ウェンディゴ「つーわけで帰りましょ。用は済んだんだし」

カトブレパス「……そうですね。目的以外のことで命を危険にさらす必要はありません」

カトブレパスは大人しくウェンディゴに従い、その場から去ろうとした。

アッシュ「!? ふ、ふざけんな……! 勝手に襲ってきて勝手に帰る気か!?」

カトブレパス「……」

フランケン「……」

ウェンディゴ「うん。だって俺ら魔族だし」

981: 2013/05/20(月) 23:41:53.31 ID:ddXx7gbJ0
325

--妖精郷、川--

アッシュ「っ!」

ウェンディゴ「君の仲間と思しき女の子もそんな感じにつっかかってきたけど……やめようぜ? 今回は大人しく引くって言ってるんだし。精霊ともそんな付き合い長いわけじゃないんでしょ?」

アッシュ(話しから察するに目的は精霊のようだが……そういうことか)

カトブレパス「ですよ少年。それともまさか魔族三体を相手に戦う気なんですか?」

オォォォオオォォ

アッシュ「……」

アッシュは考える。本来魔族とは、勇者パーティの総戦力と同等の力を持つと言われている。それも経験値を積み上げ、魔王城に乗り込むレベルになった勇者パーティと同等なのである。

アッシュ「……」

それが目の前には三体。
勇者パーティに換算すれば、勇者三人とその仲間十二人。……どうあがいても勝てる力量さではない。

982: 2013/05/20(月) 23:42:28.99 ID:ddXx7gbJ0
326

--妖精郷、川--

ざっ

ウェンディゴ「ん」

だがそれでもアッシュは戦闘態勢に。

アッシュ(最悪氏ぬくらいだ。どのみち今後俺らの障害となるのなら、個々の実力を見ておく必要がある。……それに)

ぎり

ウェンディゴ「……命を捨てる気か」

アッシュ「精霊には、一宿一飯の恩があるんだよ!」

ダッ!

アッシュ「うおおぉぉ!」

ザザザザザザ!!

ウェンディゴ「……」

983: 2013/05/20(月) 23:43:00.23 ID:ddXx7gbJ0
327

--妖精郷、川--

ウェンディゴ「はぁ、バカだね」

ぱちん

ウェンディゴが指を鳴らす。すると、

ドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュドシュ!!!!!!

アッシュ「!?」

辺り一帯から飛んできた魔法の槍が数十本という単位でアッシュの肉体に刺さっていく。

アッシュ「がっ、がはっ!!」

ぼたっぼたたっ

アッシュでさえ、一体何が起こったのかわからないほどの超スピード攻撃。

ウェンディゴ「……空間設置魔法罠、カウンタータイプ」

984: 2013/05/20(月) 23:43:30.97 ID:ddXx7gbJ0
328

--妖精郷、川--

アッシュ「ぐ……ぐあっ」

生命を維持する重要な箇所は軒並み貫かれていて思考もままならない。

アッシュ「あ、ぎ……」

だがそれでも、アッシュは倒れなかった。

カトブレパス「!? そんなあれを食らってまだ立っているとは……!!」

フランケン「わ、ワーウルフすら倒したこの技を……」

ウェンディゴ「……」

アッシュ「ふー、ひゅー……」

アッシュは握り締めたナイフを構え直すが……

アッシュ「……ごぼっ」

どさっ

ついに地面に伏す。

ウェンディゴ「……罠はスピードが速いほど威力があがる……。少年、君は俺が見てきた中でも上位に食い込むほど速かったよ」

985: 2013/05/20(月) 23:44:04.12 ID:ddXx7gbJ0
329

--妖精郷、川--

どくどくどくどくっ

カトブレパス「やれやれ、おばかちゃんですねぇ」

フランケン「お、おで!」

ず、ずずずずず

ウェンディゴ「最悪氏ぬくらいだ。なんて考えてたんだろうなぁ……バカたれ……その程度じゃ終わらないのに」

カトブレパスはアッシュに向かってゆっくりと手を伸ばした。

ざり

そこに現れた。

ウェンディゴ「ん?」

仮面を被った幼児が。

?仮面「……うきゅー」

ウェンディゴ「……」

986: 2013/05/20(月) 23:44:34.46 ID:ddXx7gbJ0
330

--精霊宮--

ダダダダダダダッ!!

レン「はっ、はっ、はっ!」

ばたんっ!!

レン「!?」

ぴっち『ひっく……う、うわぁぁあぁん! レンー!』

レンが精霊宮に着いた時には、

土の精霊「」

既に精霊は事切れていた。

レン「……っく! 不覚だったにゃ……」

987: 2013/05/20(月) 23:45:06.04 ID:ddXx7gbJ0
331

--精霊宮--

ぴるるるるる

ぴっち『うぼぁあぁあぁああぁあん!!』

レンは泣きながら飛び付いてきたぴっちを優しく抱き止めた。

ぴっち『うわぁぁあぁん! うわぁぁあぁん! 精霊様が! 精霊様がぁあ!』

レン「……」

レンは朽ちて光の粒になり始めている精霊の遺体に近寄る。

ぴっち『あぁああん!! あぁあああん!!』

ぱっち『レン……精霊様が言っていたそうだっぴ。最後に君達に会えて良かった、って』

ぴっちに比べて大分落ち着いているぱっち。
それでもその表情は悲しみと悔しさから出来ている。

レン「……うん。レン達もにゃ」

988: 2013/05/20(月) 23:45:54.32 ID:ddXx7gbJ0
332

--精霊宮--

ぱっち『それと、君達ならきっとあいつを止めてあげれる、って』

レン「……あいつ? だれにゃ? ……魔王のことかにゃ? あいつって、なんでそんな親しげな……」

ぱっち『誰のことかは知らないっぱよ。でもレン達の旅の無事を祈っていたっぱ』

あぁああん ああぁああん

精霊宮にある妖精達は皆、泣いていた。

レン「……この後精霊は、どうなるにゃ?」

ぱっち『妖精と同じっぱ。氏んだらただの魔力になるっぱ』

ほろほろろ

暖かい光の粒が天に向かっている。

989: 2013/05/20(月) 23:46:22.52 ID:ddXx7gbJ0
333

--精霊宮--

缶詰め妖精『ひっく、ひっく』

風船妖精『ぐすぐす』

たくさんの妖精達が精霊の氏を悲しみ、涙を流している。

レン「誰が精霊の後を継ぐの?」

ぱっち『わからないっぱ……こんなこと初めてなのだからっぱ』

レン「……そうにゃね」

ぱっち『レン、土の管理はしばらく疎かになってしまうっぱ……土属性魔法はしばらく満足に使えないかもっぱ』

レン「……わかってるにゃ。でもかなりの痛手にゃ。こんなことを言うのも不謹慎と思われちゃうかもしれないけれど、早い所代わりを立てて欲しいにゃ」

ぱっち『うん……そうでもしないと、この妖精郷の存続も危うくなってくるっぱから』

レン「……」

990: 2013/05/20(月) 23:46:49.56 ID:ddXx7gbJ0
334

--妖精郷--

ザザザザザ!!

ウェンディゴ「い、いててて……な、なんだったんだあの幼女……」

カトブレパス「さぁ……いくら油断していたとはいえウェンディゴ君が顔を蹴られてしまうなんて」

フランケン「お、おで!」

ザザザザザ!!

ウェンディゴ達は妖精郷の出口に向かって駆けている。

ウェンディゴ「そういやケンタウロスとかモンスター達はどうしたん?」

カトブレパス「さぁ、先ほどから魔力で呼びかけていますが反応がありません。全部やられてしまったのかもしれません」

フランケン「お、おで」

ウェンディゴ「うーん、なんか役に立たないやつらばっかだなー」

991: 2013/05/20(月) 23:47:31.09 ID:ddXx7gbJ0
335

--妖精郷--

ザザザザザ!!

ウェンディゴ「ん……んんっ!?」

ウェンディゴは走りながら、一人の人間を視界に捉えた。

カトブレパス「どうしました? ウェンディゴ君」

ウェンディゴ「ちょ、ちょっと待って!! ちょっと寄らせて!!」

ウェンディゴは急遽進路を変える。

ザザザザザ!!

料理人「ん……なんか来る……んっ!? 魔族かっ!?」

しゃきぃん

料理人は料理包丁を抜いて構える。

992: 2013/05/20(月) 23:47:57.39 ID:ddXx7gbJ0
336

--妖精郷--

料理人「目がでかいのと体がでかいのと見えづらいのが一体……計三体かよ……でも向かってくるならやるしかないか」

ちゃき

料理人「……くそ、ちゃんとした所で氏にたかっ」

ウェンディゴ「おっすーーー!! 久しぶりー!! 元気してたーーー!?」

料理人「……は?」

キキキキキキィーーー

猛ブレーキをかけたウェンディゴは不可視の状態を説いた。

ウェンディゴ「俺だよ! 俺俺!!」

料理人「……俺俺詐欺?」

993: 2013/05/20(月) 23:48:36.12 ID:ddXx7gbJ0
337

--妖精郷--

ウェンディゴ「違うって俺だってば!! ほら!! 顔見てわからない!?」

料理人「いや……魔族に知り合いいないんすけど」

ウェンディゴ「あー……まぁ最後に会ったのもかなり前だもんなぁ」

残念そうにウェンディゴは頭をかく。

カトブレパス「ウェンディゴ君、そちらさまはどなた?」

フランケン「お、おでたちにもしょうかいしろ」

ウェンディゴ「あー、こいつなー、実はオナ中なんよwww」

料理人「!?」

カトブレパス「ウェンディゴ君ーー!! 漢字をちゃんと使いなさいーー!!」

フランケン「お、おな」

994: 2013/05/20(月) 23:49:11.22 ID:ddXx7gbJ0
338

--妖精郷--

料理人「いやいや、同中とか、お前になんて会ったことも……」

ウェンディゴ「えー? まだ思い出せないのかー? ほら西の王国の盗賊ギルドで……」

料理人「……」

料理人はウェンディゴに近づき顔をじっくり観察する。

料理人「……もしかしてお前……盗賊、か?」

ウェンディゴ「いえすっ!! やっと思い出したのかよ見習いA!!」

料理人「まじかーーーー!! 超久々じゃねぇかこのやろーー!! てっきり氏んだもんだと思ってたぞー!!」

ウェンディゴ「うほほー!! ばーかしなねーよーww」

二人は肩を抱き合って再開を喜び合う。

カトブレパス「……ふ、かつての友人との再会……素敵ですね。っと、いけません、最近涙腺が弱くて」

ほろり

フランケン「お、おとこどうしがスキンシップとってるのみるとむらむらしてくる」

995: 2013/05/20(月) 23:49:38.46 ID:ddXx7gbJ0
339

--妖精郷--

ウェンディゴ「なんだよお前、今料理人でもやってんの? 盗賊になるんじゃなかったのかよww」

料理人「うるせーww 俺だってあれから色々あったんだよ! 勇者になろうとしたりさ、でも結局俺に向いてるもんなんてこんくらいしかなかったんだよww」

和気藹々と喋る二人。

料理人「……っていうか、お前こそなんだよそれ、なんでお前魔族になってんだよ」

ウェンディゴ「あー……喋ると長くなるんだけどさ、こっちも色々あって人類滅ぼすことにしたんだわ」

料理人「そっかぁ。まぁこれだけ生きてると色々あるもんだよなぁ。わかるわかる」

料理人はウェンディゴの肩をぽんぽんと叩く。

料理人「……ん? 今すんげぇこと言ったような」

ウェンディゴ「ん? 大したことは言ってねぇけど」

996: 2013/05/20(月) 23:50:14.60 ID:ddXx7gbJ0
340

--???--

ツインテ「そ、そんな!! い、一体何をしてるんですか貴方は!! こ、こんなことしていいわけ……」

腹黒「……我々の道徳観と人間の道徳観は一緒じゃあありませんから(いきなりでかい声だしやがって、耳がいてーじゃねぇか)」

スライム「お久しぶりですツインテ。……かわりないようですね。この場合、喜んでいいのか悪いのか」

スライムは記憶の中のツインテと、今のツインテが全く同じことに驚きを隠せないでいる。

ツインテ「お、斧女さん……なんで」

腹黒「彼女は正々堂々魔王軍と戦い、そして敗北したんですよ。そしてその氏体を我らのために改造し、新たな生を与え、有効活用しているわけです」

ツインテ「!! ひ、ひどいです……そんなの氏者への冒涜です!!……そんなのって……」

ツインテは涙を浮かべながら訴える。

スライム「ツインテ……貴女の気持ちもわかります。そして私のことを心の底から考えてくれている……うれしく思います。でもそれは的外れな思考ですよ」

ツインテ「……え」

スライム「私は魔王軍との戦いで敗北、再生不能な状態で氏亡しました。しかし彼はその私に二度目の生を与えてくれているんです……私はこの事に対し、幸運だと思っているし、ありがたいと感謝さえしている」

ツインテ「!!??」

フォーテ「……」

スライム「人としての生は終わりました。でももう一度生きるチャンスが私にはある。それならば……例え立ち位置を魔族に変えようとも、私は甘んじて受け入れる」

997: 2013/05/20(月) 23:51:17.39 ID:ddXx7gbJ0
というわけで今回はこのへんで終わりです。
次スレ立ててきますのでお待ちください!

998: 2013/05/20(月) 23:54:32.30 ID:ddXx7gbJ0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369061520/ 次スレはここになります。

長かったこのssも大分終わりが見えてきたような見えてこないような……。
このスレではwikiも出来たり、色々新しい方も増えてくれた?ようで楽しかったです。

999: 2013/05/20(月) 23:55:47.79 ID:ddXx7gbJ0
それでは次回予告を書いて終わりにしたいとおもいます。
次スレでお会いしましょう。

1000: 2013/05/20(月) 23:56:16.37 ID:ddXx7gbJ0
生きる気力を失ったまま放浪を続けるツインテ。

たどり着いた場所が彼に希望を教える。

ついに発動する最終計画。

ファイナルバッドエンド阻止のため、最後の決戦を挑む勇者達。

空を裂くトリガー! 氏の大地を疾走する、八代目魔王+二代目魔王!

次回 シン・勇者と魔王がアイを募集した:||
 
さぁ~て、最後まで、サービス、サービスぅ!

勇者と魔王がアイを募集した【5】

引用: 勇者と魔王がアイを募集した