絶対続編出てほしい(のでみんな買ってほしい)、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』

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 ホラーとミステリをいい具合に配分した推理ADV。今年のGWのメインにと前々から楽しみにしていたゲームですが、たいへん面白かったです! 伝統的な推理サウンドノベルの仕組みを踏まえた作りだと思いますが、プレイヤーの理解度とシナリオ展開を程よくリンクさせて気持ちよく読み進められるような工夫が随所に凝らされていて、この分野の洗練を感じました。

 なるべく予備知識なく遊ぶのが面白いタイプのゲームだと思うのでお話的なところにはあまり触れません*1が、情報開示のスピードがとにかく小気味良かったです。察しのいいプレイヤーが「こういうことかな?」と仮説を組み立てたくらいの段階で早くも「正解!」と答え合わせをしてくれて、すぐさま新たな謎も提示して話を引っ張ってくれる、絶妙のテンポ感でした。「え? もうそこまで話し進めちゃうの?」と驚く場面も多々ありましたが、既に察しのついてるような話を引っ張るよりもドンドン進めてくれた方がありがたいというのもそれはそう。この展開の速さ、出し惜しみのなさは本作の大きな魅力でした。

 システム的には推理ゲームなので要所要所でプレイヤーに推理を求めてくるんですが、ヒントを分かりやすく提示してくれるので後戻りして一生懸命答えを探して回る必要は少なく、大抵は「ここまでの話、ついて来れてるよね?」とプレイヤーの理解度を確認するような出題になっていました。そんなチェックポイントを随所に置くことで、作品全体のスピード感を落とすことなく、話に置いてかれそうなプレイヤーにも考える時間を与えてくれる、いい按配の調整になっていると感じました。

 あんまり値段見てやりたいゲーム決めることは少ないんですが、それにしてもこの内容で2000円弱っていうのは驚きの値段設定ですね。たしかにボイスなし、止め絵中心の演出などコストを抑えた作りになっているのですが、そういうところも作品の長所であるテンポ感に貢献しているので物足りなさは感じません。ボリューム的にも大長編というわけではありませんが、限られた分量の中でかなり密度の高い体験が得られたので、非常に満足感がありました。本作はシリーズ化を想定した採算度外視の第一弾らしく、次が本番という構想もあるらしいので、ぜひ流行ってもらって次回に繋げていただきたいです。

*1:最近全編の動画配信が解禁になったようなので、Twitterとかでも具体的なネタバレトークが増えてきたりするのかもしれませんね。

狭間の地の記録12 - 王都攻略後

二本指様止まっちゃった……

 モーゴットと戦った部屋の奥には黄金樹へと向かう扉があったのですが、扉を封じる黄金樹の棘に拒絶されたとかで侵入は叶わず。メリナに「黄金樹を焼こう」と諭され、北の大地にあるという巨人の火を手に入れることに。久々の新フィールドですかね?

 とりあえず円卓に帰還したら、今までウゴウゴ蠢いめいていた二本指様がピタリ止まり、オババ様も狼狽気味。「黄金樹を焼くのは禁忌だが……二本指様も何も言わなくなったし状況変わったからワンチャンセーフかも?」とすごい理屈で背中を押されました。ありがたいですが、そういうのでいいんだ……。

 以前追い返された見えない壁が消えていたので、王都東の大昇降機から雪の降り積もる「禁域」とやらへ移動。いったいどんな恐ろしい敵が襲ってくるのか? と身構えてたら卑兵がペチペチ殴ってきたので、「卑兵かぁ……」となりつつ北上。薄暗く見通しの悪いマップですが、敵は大したことないので特に苦戦はしませんでした。道中、たまたま夜だったらしく夜の騎士が出ましたが、自分から勝手に地形ハメのポジションに移動していってくれたのでビームと弓矢で美味しくいただきました(自ら調べてチート使ったりはしないけど、こういう偶然の恩恵にはありがたく預かっていきます)。

 目標地点の手前で黒き剣の眷属が襲ってきて冷や汗かきましたが、例によってスルーできるタイプの格上ボスっぽかったので逃げました。そのままロルドの大昇降機に乗り込み、巨人たちの山嶺に進入。禁域とは一転して、明るく美しい開けた雪景色が広がっています。動物たちが駆け回ってますか、なぜか透明になっていて攻撃が当たりません。どういうこと?

 以前アルター高原で最期を見とった狩人ユラみたいな人が変なポーズで突っ立っていて、あれ? と思ったらユラの身体を乗っ取ったシャブリリだと自己紹介されました。シャブリリってシャブリリのブドウのあの人ですよね?(ヤベー奴じゃん)  お前は自分の野望のために娘(たぶんメリナのこと)を犠牲にしようとしている。娘を贄に捧げるのでなく己の身を焼け! 王都の地下に向かって三本指の混沌を世に齎すのだ! とかよく分からない説教をされました。前半はともかく後半の内容は支離滅裂でコワ〜ですが、発狂しながら目からビーム撃ちまくってる身としては他人事ではないのかもしれません……。

狭間の地の記録11 - 火山館到着、王都後半攻略

アルター高原から火山館へ

 アルター高原の探索がかなり中途半端になっていたので、戻ってきてもう一回りしてみました。やはりいろいろ見落としてて、雷羊師匠のローリングサンダーをゲットしたり黒き刃の刺客をしばいたり狩人ユラの最期を看取って血に狂った狩人エレオノーラを仇討ちしたり。血に狂った系のボスってハイト砦とか各種侵入イベントとかでちょろちょろ見かけますけど、ギデオンが言ってた名前の分からないデミゴッドと関連ありそうな感じですね。

 アルター高原を進むうちにゲルミア火山方面に近づいてきたので、あまり深入りしてこなかったこの地域にも改めて取り組むことにします。未攻略だったライード砦をクリアし、熊(めちゃくちゃデカい)や乙女人形(ホイールをハーレーみたいに突き出して荒れ地をギュンギュン暴走しながら羊や亜人や褪せ人を轢き殺しまくるバカのマシン)に追いかけられたりしながら賢者の村なるチェックポイントに到着。

 住人は亜人に皆殺しにされたっぽく、亜人の女王マギとやらが陣取っていたので2、3回死にながらやっつけました。この亜人、なぜかレアルカリア系のお面魔術師とつるんでて、広場で説法を受けてたりしたのが気になりました。何らかの物語がある……。

 ゴドリックの縁者らしい接ぎ木の某がうろついてたので撃退し、なんかの戦闘があったらしく同胞の死を悼んで泣いてる兵士の一団を背後から襲って皆殺しに(心が痛むんですが???)。降る星の成獣から逃げたり爛れた霊樹をヒーヒー言いながら倒したりしつつ、どうにか 火山館にたどり着くことができました。

 城主? のタニス様? に黄金樹への反逆チームに入らんかと誘われましたが、うちの褪せ人氏は敬虔な二本指の信徒なのでとりあえずお断りしました。この火山館、いわゆるレガシーダンジョンの一つなのかな〜と思ってたんですが、ほとんどの扉が閉まっているので今のところ探索はできそうにありません。その辺うずくまってる霊体に「ライカード様を殺してくれ〜〜」って懇願されてライカード身内に嫌われすぎでしょ……と思いましたが、他に行くところもあるのでちょっと様子見ですね……。

本格的に王都攻略

 そろそろメインを進めたくなり、王都へと戻ってきました。前回はローデイル騎士に負けまくって露台あたりで止まってましたが、体力とスタミナを鍛えたおかげか今回はほぼ安定して勝てるようになっていました(たまに油断して死ぬ)。

 気持ちに余裕ができると探索もしやすくなり、以前は目に入らなかった上層へのルートもあっさり見つけられました(地を這いずるように逃げ回ってたので竜の死骸に登る発想に至らなかった)。「金仮面が止まってしまった!」と嘆くコリン先生(動いてるとこ見たことないんですが?)と記念写真撮ったり、円卓と部屋割りがそっくりな建物を見つけて「どういうこと?」(狂い舌アルベリッヒの死体とかあった)と驚いたりしながらも探索はさくさく進み、ボス部屋に到着しました。

 現れたのは最初の王ゴッドフレイの金ピカに光る幻影。斧を振り回す巨大人型タイプで強敵感ありますが、ルーテルにターゲットとってもらいつつ背後から翼の鎌を振るう感じで押し切り、5回くらいのトライで勝利することができました。天使の翼、相変わらず強い……。

 その先は大した分岐もなく、遂に王都最深部へ。モーゴットどんな姿なのかなと思ったら、どう見てもマルギットですやん……。これ、マルギットご本人? 忌み鬼という概念があるみたいなので、その括りなだけかもしれませんが、褪せ人をやたら敵視してくるし同じような武器とモーションなので、よく分かんないけど他人とも思えませんね。王都外廊で遭った忌み人も人の身体を乗っ取ってた様子なので、他で遭ったのは憑依体でこっちが本体だったりするのかしら。

 モーゴット戦ですが、これまで散々マルギットで苦戦させられたこともあり、2回目のトライでなんかあっさり勝ててしまいました。応援に来てくれるメリナが強くて最後まで生き残るし、後半で遺灰からルーテルも呼んで3対1の構図に持っていけたので、1対1を強いられた外廊での戦いよりよほど楽でしたね……。

狭間の地の記録10 - ラニ様ご対面

遂にラニ様の家臣に!

 ラダーン倒したらフラグ立つかもと教えてもらったので、再びラニ様の塔に赴いたところ、遂にご本人と対面が叶いました! ていうか遺灰の使い方教えてくれた人ですやん。あの時は魔女レナと名乗ってたので、皆言ってるラニ様があの人だったとは気づきませんでした。「ラニの塔」の近くに「レナの塔」「セルブスの塔」があり、地名も「スリーシスターズ」なので、この三人が三姉妹ってことなんですかね*1。

 ロジェールから聞いた話の受け売りで「お前が陰謀の夜の黒幕なのか?」と直球で問いただしてしまう褪せ人氏。やっぱこの人天然では? ラニ様は塩対応ながら、質問に対しては意外にも明確に「イエス」の回答。二本指を奉じ黄金律を重んじるイウワァバイにとっては「敵かな? 味方かな? 普通に考えて敵では?」な状態ですが、これもロジェールの差金でラニ様に臣従し、その内情を探ることになりました。

 ラニ様の家臣仲間として、巨人の鍛冶師イジーと魔術師セルブスにお目通ししたんですが、このセルブス氏が絵に描いたような嫌な魔法使いで、性格の悪さだけなら百智卿ギデオンに比肩しそうでした。円卓のネフェル・リーに怪しい薬を飲ませるよう依頼されたので、ふざけんなとお断りします。ラダーンを倒した後に降ってきた星でリムグレイブに大穴が開き、地下に通じちゃったらしいので、そこの探索を命じられてラニ様とはいったんお別れとなりました。

永遠の都ノクローン

 リムグレイブに開いた大穴を無理矢理下って英雄の都ノクローンに侵入。四鐘楼のワープ装置でチラ見せだけしてもらったやつですね。

 はぐれメタルみたいな無機生物っぽいのがウヨウヨしており、自在に姿形を変える特性を利用して何らかの研究とかが行われていた痕跡が感じられます。こちらと同じ姿に擬態したボスも襲ってきて、これが噂に聞く「写し身」とやらのようですね。同じ性能なら流石にプレイヤースキルの方に分があったらしく、特に苦戦はしませんでした。

 シーフラ河付近のフィールドを経て水道橋の方に降りてったら坩堝の騎士がノシノシ歩いててヒッてなりましたが、遠距離攻撃しなさいという配置だったので発狂しながら目からビーム撃ちまくって撃退しました。坩堝の騎士に正々堂々勝てたことない……。奥にはなんか白っぽい人がうずくまってて、話しかけると無言で「Dの装備を渡す」選択肢が出現。以前円卓で出会ったD氏の弟だったようです。近くにあった金サインでD氏を召喚できましたが、これつまりこの先ボスがいるってことですよね? そう思って心の準備はしていたものの、気持ちだけではどうにもならず巨大ガーゴイル2体に襲われて死。何度かリトライしたものの埒が開かず、地下の探索はいったん切り上げました。シーフラ河周辺にもまだ何かありそうですがちょっと後回しにします……。

*1:後から分かりましたが、セルブスは別に三姉妹ではなかったです……。

『HiGH&LOW THE WORST X』

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 ハイアンドローザワーストクロス!(だんだん早口言葉みたいになってきた)

 ハイロー映画って毎回けっこう毛色が違いますが、今回は前作以上に不良学生バトル全振りという感じでしたね。構成は直球だし、手痛くやられて皆で反撃、仲間にはじまり仲間に終わるというところは初期ハイローへの原点回帰っぽくも感じられました。

 不意打ちでやられたとはいえ最終的にはかなり余裕を持った勝利だったので、勝負としては楓士雄が鳳仙に頭を下げた時点で決まった感ありますね(鈴蘭参戦は完全にオーバーキルだったし……)。かなり早い段階で趨勢が決してしまったので勝敗の緊迫感はありませんでしたが、それより今回は須嵜と天下井が再び仲間になれるかというところが肝だったので、これでええんちゃうかなと思います(ラストの体育館パート、構成的にはザムの琥珀さん説得パートですからね)。

 前作のザワが非常に完成された一作だったので、鑑賞前は「もう到達点を見ちゃったし、これ以上は……」という気持ちがないでもなかったのですが、やっぱり観てよかったです。これからも色々な方向への広がりのあるハイロー世界を見せてもらいたいという気持ちが再燃しましたね。ワーストも見足りないですが、その他のSWORD地区の様子も気になるし、連ドラ的なコンテンツも含めて引き続きやっていってもらいたいです。

そのほか

  • 三校連合大進撃のシーン、あそこだけなんか怪獣パニック映画みたいな撮り方してて好きです。
    • 車を捨てて逃げる人々の反応が完全に怪獣映画のモブ。
    • でもあそこに九龍の黒塗りヤクザカーがいなくて良かったですね……。
  • 天下井、悪の権力者なんだろうけど、その財力で目指すのが不良高校の頂点とかなのでやっぱり変人だと思う。
    • 真面目な話、天下井があのままイキってたらどこかで九龍に目をつけられてたと思うし、札束で叩くスタイルしかできない天下井がもっと札束持ってる九龍に勝てるわけないので、本当に天下井は須嵜に救われたと思いますよ……。
  • 清史が仲間を守るために人間ロックになるシーン、絵的に面白いし覚悟はよく伝わるけど意味わからなくて好き。
  • 江罵羅の轟絶対殺すコンビとその二人を煽るリーダー、かなり好き。
    • 面白半分に煽ってるのかと思ったら親友である二人の意思を尊重した結果だったみたいだし、「轟ともう一度やる」目的を果たせたから「負けたら連合抜ける」約束にあっさり同意したんだって気づいてこの人たちのこと大好きになっちゃった。個別エピソード見せて。
  • いきなりツーショット写真見せてきて、聞いてもいないのに「会話は全然しないけど一緒にいると楽」とか伝えてくる轟と小田島、いい加減にしてほしい(いいと思います)。
  • 轟がめちゃくちゃ強くてよかった。江罵羅を削った時点で既に一仕事終えてたから今回ここで退場かと思ったけど、そこからも大活躍だったし……。
    • 映画見たテンションで連ドラ2期の轟登場シーンを見返したんですが、個人的な万能感でイキって頂点を目指す初期轟の姿が思ってた以上に天下井の姿に重なりました。人質もとってたし……。
    • 今回は仲間を得た轟が逆の立場でかつての自分みたいな天下井のもとに乗り込む構図で、ああ……轟の物語ってここで綺麗に閉じちゃったんだな……ってなりました。

狭間の地の記録9 - 王都でもめっちゃ死ぬ

王都探索

 遂に念願の王都! 基本的には街路と建物で構成され、上下の階層移動も含めた立体構造で適度にプレイヤーを惑わし、要所要所に強モブの騎士を配置する。かなり正統派の城系ダンジョンという印象ですが、それだけに小細工も効かず、地道にちょっとずつ進まざるを得ません。フィールドで乗り回しているお馬のありがたさが身に沁みますね……。

 序盤の調香師と小姓の連携だけでも既にだいぶ死にましたが、一番辛いのはやはりこのエリアの顔、ローデイル騎士。イウワヴァイ氏の戦い方は中盾でガードしてからのガードカウンターが基本ですが、このクラスの騎士になってくると2、3回攻撃を受けただけでよろめいてしまうので、なかなか型にはめた戦い方ができません。接近戦で押し負ける以上ある程度距離をとっていかざるを得ないのですが、中距離で撃ち込んでくる落雷がまた難物。この落雷、正面から飛んでくるのではなく真上から落ちてくるので、避けるのがかなり難しいのです。撃たれる前に斬りつけようにも妙に隙が小さいし、中途半端に距離を取っていると2度、3度と連発され、何度となく餌食になりました。音や動きをよく見てタイミングを覚えれば見切れる気もするんですけど、じっくり観察してる余裕はありませんでしたね……。

 そんなこんなでかなり時間をかけましたが、西城壁や下層教会までの祝福は解放しました。井戸から地下にも進んでみましたが、マルギットみたいな大型敵がモブ徘徊してて流石に退散。エリア名も「忌み捨ての地下」に切り替わり、さらに難易度の高い領域に見えたので、しばらくは近づかん方がよさそうです。地上も分かれ道のルートが増えてわけが分からななくなりつつあったので、いったん王都を出て落ち着くことにしました……。

ラダーン祭

 ラダーンに太刀打ちもできず完敗したのはけっこう前。流石にそろそろ行けるやろと思い、お祭会場に戻ってきました。前回と比べるとHPを大幅に強化しているので、遠距離から弓矢を1発もらうだけで瀕死という状況からは抜け出し、余裕をもって戦場を駆け回ることができました。いっぱい仲間を召喚し、わちゃわちゃ集団戦をやってる内によく分からないまま勝利。前回の負けが手痛すぎて過剰に鍛えてしまったかもしれませんが、お祭ならこういうのもまあありですかね。

 戦いの後は美しい星が流れ、仲間たちも健闘をメチャクチャ労ってくれました。温かくももの寂しい別れのシーンで「え? なんかゲーム違わない?」ってなりましたが、こんなゲームだからこそほんの一時の輝ける瞬間が強烈な印象を残すんでしょうね。これだけ気持ちを一つにして頑張ったんだから赤獅子城の面々はこれからも仲良くしてくれるはず……ということは勿論なく、次行ったら普通に襲いかかってきました(知ってた)。

『キコニアのなく頃に phase1 代わりのいる君たちへ』

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 怖くて怖くて、3年くらい積んでしまっていましたが……。世の中がいよいよメチャクチャになってきてこれ以上時期を逃すとまずいと感じたので、この夏に一念発起して読み切りました(竜騎士さん関連いつもそんなこと言ってる気がするけど、私にも様々な葛藤があるので……)。

 When They Cry正式ナンバリングなだけあって、竜騎士さんの「らしさ」が詰まった作品です。今回は第三次大戦後の軍事ジュブナイルSFという大風呂敷で、前2シリーズからずいぶん舞台の雰囲気が変わりましたが、それで余計に竜騎士さんの作家性が浮き彫りとなったように見えました。陰謀論とかカタストロフとか一瞬どうしちゃったのかと思いましたが、よく考えたら初期からちらちら顔を覗かせていた定番の文脈*1ですし、遂にそっちを話の主軸に据えちゃったか……という感じですね不安はあるけど以外ではない)。

 若者たちの他愛ない連帯が環境や立場の違いに翻弄されていく様は竜騎士さんの作品にずっと通底している「いつものやつ」で、これがなければと始まらないというところがあります。今回は国家や思想をまたぐぶん話が大きくなっていますが、根本は変わりないでしょう。あともう一つ大きなところとして、「個人の中に複数のキャラクターが宿る」モチーフは過去作でも腰を据えた話を既にやっていたので、今回再びこれを取り上げ、のみならずSF的な設定を固めて専用の舞台設定まで整えてきたのにはちょっと驚きましたね。竜騎士さん、このモチーフに対してここまで執念があったんだ……。

 繊細さと粗さがちぐはぐに同居するようなところは良くも悪くも竜騎士さんの昔からの作風ですが、これも本作では際立っています。なにせ題材が題材なので、第三次世界大戦後の世界情勢と国際紛争、蒙昧な民衆を影で操る秘密結社云々みたいな話がずっと続くわけで、「大丈夫なんかな、これ」*2と終始冷や冷やしていました。今回の題材に限っては誰がやっても適正な描写なんて土台無理な話なので、細かい粗の有無を取り沙汰しても仕方ないと思うのですが、そういうところに恐れず突っ込んでいく躊躇のなさがなるほど竜騎士さんというか……。

 あと例えば、「人種や思想の垣根を越えて、お互いの背景を尊重しつつ上手い距離感を見つけていこう」と子供たちが手探りで関係を築いていくエピソードは本当によく描かれていたと思うし、そういう細やかな手つきの中で「というわけでまずは万国共通の愉快な話題、下ネタで最初のご挨拶だ!」って雑なノリをいきなり突っこんでくるのが、何で!? ってなります。色んな宗教・思想の者が集ってるって言うとったやろがい!*3 どうしても下ネタをやりたかったんだろうし、竜騎士さんってこういう人だもんな……ってむしろ安心感すらありましたが……*4。

 語り口がまた厄介の種で、竜騎士さんの地の文って作者の分身や神の視点ではなくて、エピソードごとに場面に合わせた謎の地の文人格がポップして語りだすようなところがあるんですね。本作は特にそれが顕著で、社会情勢の説明シーンなんかで特定勢力の価値観に身を置く地の文人格がほとんどプロパガンダみたいな主張を語り出す、ということが往々にしてあります。「社会はこんな仕組みで動いているのだ。愚かな民衆はそんなことを知らずにただ踊らされ……」みたいなキナ臭い話がどかどか出てくる。作者がこういうこと素で考えてたらマジ嫌だな……ってドン引きした気持ちになるんですが、これはおそらく意図的に仕組まれたプロパガンダ地の文で、でもどこまで素なのかはやっぱり分からないので本当に居心地の悪い気持ちになります。心が千々に乱れる。

 ちょっと危ない橋を渡っているという意識はあったと思うし、作品冒頭で過剰なくらい(やや皮肉まで込めて)「作品の内容は全てフィクションで作者の思想とは関係ありません」を強調していたのも、それを受けてのことなんだろうなと思います。実際に作品を読み終えても、陰謀論(に翻弄される人々)というテーマは意義深いもので、「今、こういう時代にこういう話をやる」ことへの強い意志を確かに感じました。だからこそ、2019年の作品公開後の世界情勢の劇的な変化はまさにクリーンヒットというか……元々想定していたシナリオで続編を出すわけにはいかなくなったという事情は本当によく分かります。

 この辺の流れで見かける「感染症と戦争が収まればキコニア続編を出せる」という意見はちょっと違うと思っていて、たしかに時事ネタに対する炎上リスクコントロールとしては「やり過ごす」*5も解決策になるんですが、竜騎士さんがキコニアに時代的な意義を持たせようとしているなら、陰謀論にせよ紛争にせよ、現実側での位置づけや想像のあり方が変わってしまったものをそのまま出すわけにはいかない、ということにやはりなろうと思います。本当にどうすんのこれ……と思うし、竜騎士さんが状況をしっかり受け止めていること、その上で続行の意思を表明してくれているのは救いなのですが、こればかりは頑張ってどうにかできる話ではないかもしれません。祈るしかない……。

そのほかメモ的なの

  • 御岳藤治郎、最初は「今回の富竹かー」って流しそうになったけど、世にある父親キャラの最悪面を煮詰めて培養したような極まった最悪父親概念になっていて本当に凄かった
    • でも母親の方が輪をかけてヤバそうなので慄くしかない
  • ミリタリーとか政治方面の素養は全然ないので話半分で読んでいたけど、そっちの人から見てどのくらいのものだったのかちょっと気になる。
    • こっち方面はあまり信用していないので、「かなりしっかりしてたよ」って言われたら謝らないといけない。
  • 既読者に「今回エヴァですよ」って言われて「たしかにSF的に重なってくるモチーフもあるけどそんなにエヴァかなあ……」って首を捻ってたんですが、クライマックス~エピローグの展開で完全に「エヴァじゃん!」ってなりました。
    • 竜騎士さんってよく分からんパロディを節操なく突っ込んできたりするけど、今回のこれに関してはかなり一貫してまとまりをもったエヴァをやっていて、テーマを重ね合わせて昇華していくぞという強い意志を感じましたね。
    • なんかこう、碇親子の関係性の中で、碇ユイがより能動的な自我のある黒幕としてゴリゴリ干渉してくるバリエーションというか……。
    • 調べたらファミ通のインタビューでジャンルとしてのエヴァンゲリオンをやっているような発言があった模様。そうなんだ……。

*1:ひぐらしは言わずもがな、『Rewrite』の竜騎士さん担当シナリオも終盤そういうとこありましたよね。

*2:多分何も大丈夫ではない。

*3:男女同席せずみたいな世論に晒されながらその場に立っている子もいるのに……。

*4:この手の話で一番「何で!?」ってなったのがこれですね……。もはや信念の域。

*5:いつまで待てばその時が来るのかは知らない。