男(娘は大学に…息子は高校に入学したし仕事頑張らないとな)
男(まぁ働けるだけマシか)
「男さ~ん、人事部から内線で~す」
男「え?人事から…?」
人事『男さんですね…今日13時頃に人事部に来て欲しいんですが』
男「え?はい…わかりました……」
男(昇格か…それとも転勤か……ハァ…今のポジションでいたいな)
人事「すいません、男さん……」
男「いえ…」
人事「男さんはこの会社の経営状況が悪い事は聞いていますよね」
男「は、はい……」
人事「そこで当社では大規模な人員整理を予定しています」
男「え」
男「そ、それって…クビって…こと……ですか?」
人事「……」
男「そんな!困ります!私には家族がいます!子供は大学と高校に入学したばかりで!家のローンも!!
人事「…退職の勧奨を受けて、自主都合退職以上の退職金を貰って辞めるか」
人事「それとも今の役職を降りて、一般職として現場に行ってもらうか」
人事「前者の場合は少しですが転職先の斡旋ができます」
人事「後者の場合は役職と総合職を降りるため給料は下がる…また支社も変わる転勤をしてもらいます」
男「」
人事「ですが、来月末までには答えを頂きたいと思っています……」
男「わ、わかりました……」
人事「では、午後もよろしくお願いします……」
男「は、はい……失礼しました……」
人事「」
同期「お、お前もお呼ばれか!」
男「…同期…久しぶりだな」
同期「俺も人事に呼ばれてな、いや~転勤かな~それとも昇進か」
同期「転勤とか面倒くさいし、責任負いたくないから昇進もしたくねぇしな~」
同期「はぁ~ナーバスになるわ」
男「」
男「……ここでは…まだ確定じゃないし」
同期「そうだな…そうだ!久しぶりに同期会でもしようぜ!40になって落ち着いたしさ!!」
男「…こ、今度…な」
同期「今度な!それじゃ!!」
男「」
男「ハァ」
男「お疲れ……」
新人「あ、男さん!稟議いっすか?」
男「あ…うん…見とくよ……」
新人「すんません!期限ギリギリで早く決裁貰いたいんで巻きでおねシャス!」
男「…新人くん…文書は早く回すようにあれほど……」
新人「サーセン!」
男「まぁいいよ…」
男(なんであいつが残って俺があんな目に……)
男(もう今年で44…正社員でまともな所の転職は厳しいだろうな)
男(会社が転職先を斡旋してくれるって言うけどどれだけしてくれるか)
男(降格になると一応しがみ付けるけど現場か……)
男(今更現場なんて絶対無理だ……しかも転勤で一般職扱いなんて地獄じゃないか……)
男「ちょっと一服してくる」
新人「あ、はい」
部下「私は外回りしてくるんでお願いします」
男「うん」
同期「いやぁ…驚いたよ…まさかリストラなんてな」スパー
男「そ、そうだな……」スパー
同期「お前どうすんの?」
男「考えてる…よ……お前は」
同期「俺は現場に戻るかな~転職とか面倒くさいし、どうせまともな所紹介されないだろうし」
同期「いやいや、俺の元部長に聞いたんだけどさやっぱロクな所紹介されないのよ」スパー
同期「高速道路の料金所のおじさんとか警備会社とか清掃会社とか印刷工場とかな」
同期「年収は下がるわ、年齢のわりにキツいわで散々な所ばっからしいぞ、しかもほとんどが契約社員と来た」スパー
男「…で、でも現場に戻るって…キツいだろ」
男「そ、そっか……」
同期「でも降格と転勤がキツイな~」
男「」
男(…それに降格になった場合色々な手当がなくなるのが…)
男(子供達も新しい学校へ入学したばかりだし、すぐに転校してくれなんて…最悪単身赴任か…)
男(いや…単身赴任で養える程の給料ないんだし難しいだろうな)
男(もう40だけど売り手市場らしいし、大手企業出身ってなればそこそこあるだろ)
男(…転職って方向で考えるか)
男「なぁ…大事な話があるんだ」
女「なに?」
男「い、言いにくいんだけどさ……会社を辞めなくちゃいけなくなってな」
女「…え?ど、どうして……」
男「リ、リストラって奴でな」
男「一応退職金は割増になるから当面はなんとかなる……はず…貯金もあるし」
男「と、とりあえずすぐに再就職先を探すから」
女「あ、当たり前でしょ!今まで私のパートとあなたの給料でなんとか生活してるんだから!!」
男「すまん、本当にすまん……」
職員「では、男さんは今までどのようなお仕事を」
男「はい、売上の管理や見積もり…商品管理、その他部署の庶務等を」
職員「事務系ですね……転職先のご希望は」
男「同じような仕事があれば…と」
職員「それはちょっと厳しいですね~事務系だと実務があっても年齢が…」
職員「男さん…今事務系は人気の割に人員を減らす方向で来てるんですよ…」
職員「いくら大企業出身とはいえ、この年齢と突出した経験も資格がない以上厳しいですね……」
男「そ、そんな……」
職員「あ、ここはありましたね…年齢制限は特に設けてないみたいですね、確認しましょうか?」
男「あ…はい、お願いします」
男(…そうか…俺の仕事って結局印鑑と打ち込みと調整という名の雑談だけだったからな……)
男(思えば窓際だったんだよな…俺……社会人としての価値を高められず大企業に寄生していただけで)
同期「おう、転職活動は順調か」スパー
男「」
同期「…斡旋先は使わないのか?」
男「あ…実はさ…他にも希望退職者がたくさんいるみたいでその斡旋先も結構な倍率みたいで……」
同期「そ、そうなのか……」
同期「お前も残るって選択肢はないのか」スパー
男「俺が現場向いていないのってお前もわかってるだろ…大井部長にあんなに詰められて鬱になりかけたんだから……」スパー
同期「でも大井はもういえねぇじゃん」
男「でも…それでも…やっぱあそこは無理だと思うんだよ……」スパー
同期「そうか」スパー
男「よし…なんとかハロワで紹介された年齢制限のない会社に入社だ!」
男「一時はどうなるかと思ったが…なんとかなったな」
男「心機一転頑張るぞ!!」
男「よろしくお願いします!」
上司「じゃあ男さん、この資料よろしくね」
男「え?いや…あのどうやって……」
上司「前任者の書類読んでやってよ、前もこういう庶務系とかやってたんでしょ?」
上司「できないの?ずっと事務系一筋でキャリアを培ったって面接で言ったんでしょ?細かいルールは違うだろうけどそこは勉強してやってくださいよ」
上司「バイトじゃないんだからさ」
男「……はい」
男(そんな…ロクに教えてくれないなんて…しかもこんな業務、あっちではやってないぞ……)
男(そろそろ定時か)
上司「男さん、タイムカード切って」
男「あ、はい!お疲れ様です」
上司「は?まだ仕事終わってないでしょ」
男「え?」
男「で、ですが…タイムカードは」
上司「うん、定時だからね、だけど仕事終わらないのは男さんが遅いからでしょ?」
男「…」
上司「前の会社は大企業だからちゃんとしてたんだろうけど、ここで残業真面目に付けたら会社潰れるんだから」
男「…わかりました」
男「終わった……もう10時か」
男「昔なら、寝始める時間だな」
男「…止めよう…前を思い出すのは」
上司「じゃあ男さん、この見積もりは大鳳物産によろしく」
上司「あと、新規の勧奨もよろしくね」
男「え?それって営業の仕事じゃ」
上司「…人いないんだよ、事務だけやってそれいいってわけないじゃん」
男「でも採用は…」
上司「あ~はいはい、大企業出身はそういう細かい所五月蠅いよねぇ」
男「」
上司「なんだったら総務で営業の辞令出すよう頼む?それに嫌なら辞めれば」
男「…申し訳ありません」
上司「本当に使えねぇな!大企業出はよぉ!!」
男「申し訳ありません!!」
上司「どうせ使えねぇからリストラされて来たってクチだろ?あそこは大規模リストラしたって噂だしなぁ!!」
男「」
上司「図星か、お前みたいな奴を社会のクズって言うんだよ!」
男「…すいません」
上司「クソッ、おい誰かこのおっさんなんとかしてくれよ」
男(…こんな年下の奴にこんな……クソクソッ)
女「はぁ?会社辞めたの!?」
男「すまん……」
女「……あなたのせいで私はフルタイムのパートになったのよ!少しはなんか思わないの!?」
男「すまん……本当にすまん………」
男「…申し訳ない………」
女「とりあえずお義父さんにこの事は相談させてもらうから」
男「っ!そ、それだけは……」
女「しょうがないでしょ!?あなたのせいなんだから」
男「………」
父「お前…自分が情けないと思わないのか?」
男「…思ってるよ」
父「女さんもパートたくさんして貰って、子供達にも働いて貰ってるのに会社すぐ辞めて……」
父「お前が独身なら俺も特に何かは言わないが、結婚している以上、責任と義務はあるんだぞ」
男「…わかってる……」
父「だが、お前はやらなきゃいけないんだよ…せめて子供達が大学出るまでは」
男「……わかって…る」
父「……とりあえず家のローンか…あれは俺が立て替えておく…」
男「でも父さん…お金……」
父「退職金の貯金を切り崩すしかないだろ…俺と母さんも年金暮らしでキツいけどそれ以上に女さんと子供達に苦労かけるわけにいかないだろ」
男「…ごめんなさい」
父「仕事見つけて、必ず返しにこい、いいな」
男「はい……」
男「行ってきます…明日の朝帰るから」
女「わかった気を付けて」
男「」バタン
男「おはようございます」
リーマン「おはようございます!」
OL「男さんおはよー」
男「おはようございます」
男「君、社員証は?」
新人「あ……すいません」ガサゴソ
男「大丈夫だよ、頑張ってね」
新人「はい!」
男「…はい」
同僚「サボるなよ」
男「わかってますよ」
男(あれ以来、就職活動をして見つけた仕事は警備会社の契約社員だ)
男(…大変だけど稼ぎはそれなりだからなんとか続けている)
男(家族のために頑張らないと……耐えないと)
「あれ?男さんっすか?」
男「え?」
男「あ~…新人くん……久しぶりに」
新人「いやぁ久しぶりっす」
男「そうだね…」
新人「あれ以来大変でしたよ~仕事わかる人みんないなくなって…でもなんとか立て直して…あ……」
男「いいよ、気にしないで」
男(〇×商事は大規模リストラで経営を立て直して増収増益となった……俺も残った方が良かったのだろうか)
男「あ~はは…頑張ってね新人くん…嫌味とかじゃないけどさ……頑張らないと俺みたいになるから……資格とか仕事とか色々とさ……」
新人「……はい」
男「」
息子「それじゃあ父さん、母さん行ってきます」
女「行ってらっしゃい」
男「行ってらっしゃい」
男(あいつもやっと就職か…本当に長かったな……)
女「それじゃあ私も行ってくるから」
男「お、おう…俺も今日は夜からだから」
男(貯金もなくなり、年金だけじゃ厳しいから60超えてもお互い働き続ける生活……)
男(あの時…仕事をもっと頑張っていれば……資格とかで自分のキャリアを高めていれば……!)
若者「仕事なんて適当でいいよ、ウェイウェイ」
若者B「そうだよな~どうせ給料なんて寸志しか上がんねぇし、正社員だからクビにならないしな」
男「き、君たち……」
若者「あ…なんすか?」
若者B「社員証ならしてますよ」
男「ま、真面目に仕事しないといつか絶対後悔するよ」
若者「…はぁ」
若者B「行こうぜ、なんだよあのおっさん…うちに使って貰ってる身分で何様だよ」
男「」
男「会社に入社してからがゴールじゃない…そこからが本当のスタートラインなんだ……」
おわり
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