新しいマーケターは「ポジションレス」であり、前例のないレベルの効率性、実行力、パーソナライゼーションを実現できる。


人工知能の研究会社であるOpenAIはChatGPTを開発し、2022年11月にこのツールを発表した。これにより、2023年は人間が生成AIの能力を理解する年となった。そして2024年は、生成AIがマーケティングオートメーションソリューションに統合される年となった。

そして2025年は、人間が生成AIをコントロールし、リアルタイムで精度の高いマーケティングメッセージを届けるという生成AIの役割を適切に果たす年になるだろう。

とはいえ、生成AIの先を見据えると、2025年は、AIをさらに取り入れたマーケティングオートメーションに、戦略と判断をもたらす人間の年になるといえる。

この自動化とイノベーションの波の中で、人間のマーケターの役割はこれまで以上に重要になっている。新しいマーケターは「ポジションレス」であり、汎用性の高いAIツールで武装し、複数の役割を果たすことができるプロフェッショナルでありながら、戦略、判断力、創造性というかけがえのない人間の特性に支えられている。

こうしたマーケターは、AIの能力を活用するだけでなく、あらゆる意思決定、キャンペーン、インタラクションが人間レベルで共鳴できるようにする。 ここでは、マーケティングの未来を形作る重要なトレンドを、人間がどのようにリードしていくかを紹介しよう。


1.ハイパーパーソナライゼーションには人間の感性が必要

AI は、データを分析してパーソナライズされたレコメンデーション(推奨事項)やコンテンツをリアルタイムで提供することに優れている。ただし、ハイパーパーソナライゼーションはアルゴリズムだけではない。顧客とのやり取りの感情的および文化的コンテキストを理解することが重要である。

●AIの貢献:予測分析と動的なコンテンツ生成により、リアルタイムの関連性が実現。

●人間の役割:マーケティング担当者は、パーソナライゼーションが押し付けがましくなく、むしろ共感的で有意義なものになるようにするために必要な感情的知性をもたらす。

マーケティング担当者は、データに基づく精度と人間のつながりのニュアンスのバランスを取る設計者である。


2.オムニチャネル統合には人間の直感が必要

消費者がオンラインでリサーチし、オフラインで購入することがますます増えているため、チャネルをまたいだシームレスなカスタマージャーニーの構築は不可欠である。AIはタッチポイントをマッピングし、エンゲージメントを最適化することができるが、ストーリーを形成するのはマーケターである。

●AIの貢献:アルゴリズムが最適なタイミングとチャネルを決定。

●人間の役割:マーケターは、すべてのタッチポイントがブランドのストーリーと価値観に合致していることを確認し、感情的にまとまった顧客体験を作り上げる。

オムニチャネル戦略では、人間が「シームレス」を「意味のある」ものにする。


3.倫理的なデータ慣行には説明責任が必要

プライバシー規制の高まりとゼロパーティデータへの移行により、ブランドは透明性と倫理的なデータ使用を優先する必要がある。テクノロジーはコンプライアンスに対応できるが、説明責任は人間の責任である。

●AIの貢献:ツールはデータの収集とセグメンテーションを効率化する。

●人間の役割:マーケティング担当者は、キャンペーンがプライバシーを尊重し、信頼を育み、倫理的にデータを使用して顧客との関係を深めることを保証する。

マーケティング担当者は倫理的な慣行の管理者であり、テクノロジーが顧客とブランドの両方に役立つようにする。


4.AI主導のクリエイティビティにはまだ人間の判断が必要

前述したように、生成AIはeメールのコピーや商品のレコメンド、さらにはダイナミックなWebサイトコンテンツを大規模に作成することができる。しかし、効果的なマーケティングに必要な戦略的先見性と感情的共鳴には欠けている。

●AIの貢献:コンテンツ作成を自動化し、実行を加速する。

●人間の役割:マーケティング担当者はAIのアウトプットを監督し、ブランド・アイデンティティや長期目標との整合性を確保する。

マーケティング担当者は、AIを代替ではなく、ツールとして使用し、あらゆるキャンペーンの背後にある創造力の源であり続ける。


5.2025年以降、先端技術にはビジョンが必要

感情認識AI、量子コンピューティング、デジタルツインテクノロジー(IoTなどのテクノロジーを活用して現実の生産設備などをデジタル上に再現したもの)といった新たなツールは、マーケティングに革命をもたらすと期待されている。しかし、その可能性はマーケティング担当者がそれらをどのように応用するかにかかっている。

●AIの貢献:ターゲティング、パーソナライゼーション、顧客体験を強化する。

●人間の役割:マーケターは、問題を解決し、エンゲージメントを高める現実世界での応用を想定している。

マーケティング担当者は、有意義なイノベーションを推進するために、テクノロジーの可能性と人間の創意工夫を組み合わせなければならない。


AI
主導の世界における人間の優位性

2025年、マーケティングの成功は、ブランドが採用するツールやテクノロジーだけに左右されるのではなく、人間がそれらをどう使いこなすかにかかっている。このシフトを体現するのは、技術的手腕と戦略的ビジョン、創造性、共感性を融合させた「ポジションレス・マーケター」になるだろう。

AIが可能性を加速させる中、マーケターは、すべてのキャンペーンが本物であると感じられ、すべてのインタラクションが共鳴し、すべてのイノベーションが目的を果たすよう、舵を取り続けなければならない。

マーケティングの未来は、テクノロジーと人間性をシームレスに統合できる人たちのものである。ポジションレス・マーケターは、AIの台頭への単なる対応策ではなく、AI の潜在能力を最大限に引き出す鍵である。

これは、人間と機械が手を取り合って卓越した体験を提供する、マーケティングの新時代である。今こそ、最善の戦略と判断力を駆使していこう。


※当記事は米国メディア「Martech」の12/9公開の記事を翻訳・補足したものです。