【AI】AIを活用した医学論文検索Ver.2.0(2023年8月7日改訂版)
※2023年8月7日改訂:新機能の追加や一部機能の有料化,新しいモード搭載等あり改訂
AIを活用した医学論文検索Ver.2.0
■これまでAI(人工知能)は医学領域も含め程度話題にはなっていたものの,そこまで盛り上がりは見せていなかった.しかし,2022年末にOpenAI社からChatGPTが登場,その後数多くのAIや拡張ツールが登場,2023年3月にはChatGPTのグレードアップしたGPT-4が登場している.特に3月中旬からの約1か月あたり1000以上の有用なツールが登場しており,まさに今年はAI革命とも言える状態になっている.今回の記事では医学領域でも使える医学論文検索のためのAI拡張ツールを紹介する.
■現在,医学論文の検索に使用できる無料の科学論文特化型AI検索ツールは以下のものが挙げられる(最近になり一部の機能が有料化しているものもある).
・Perplexity AI■また,科学論文に特化していないが汎用性の高い対話型生成AIとして,BingAIがある.さらに有料ではあるが,ChatGPT-4 browse with Bing(現在休止中),ChatGPT-4 pluginも有用である.New!!なお,以前紹介したGoogle拡張ツールのWebChatGPTはChatGPTのアップグレードについていけていないのか現在は使用できない.New!!
・Consensus
・SciSpace
・Elicit
・Connected papers
■どの検索AIが一番ということではなく,それぞれ得意とする機能や,精度,オプションが異なるため,用途や相性で使い分けを考え,あるいは組み合わせて使用するのがいいだろう(7つ全部の特徴を知って自分の目的によって使いこなせるようになった方がいい).なお,Googleが検索AIであるBardは情報ソースの提示がなく,2023年8月時点ではまだ論文検索として使えるものではない.今後段階的にグレードアップしていくとのことで,それを待ってからの方がいいだろう.
1.そもそもAI検索のメリットは?
■AIが検索エンジンと連携した拡張ツールとなれば話が変わってくるわけで,リアルタイム情報にアクセスできる他,このAIが検索の際に搭載されているか否かで出力結果は大きく違う.通常,検索エンジンでは単語を1つもしくは複数入力して検索結果を示す.しかし,AI搭載では,文章(質問)を入力してそれをAIが理解し,関連するキーワードやフレーズを抽出し,それをもとに検索することが可能であり,精度が増す.すなわち,AIは検索に関連するさまざまなタスクを効果的にサポートできるのである.
■また,AIが搭載されていることで,検索結果の要約の出力,自然言語での回答提供(質問に対して「〇〇の治療法としては,A,B,Cがあります」といった回答),パーソナライズされた提案(検索者の興味や過去の検索履歴に基づいて個別に適したアクティヴィティや情報を提案することができる),検索結果に対する質疑応答などが可能になる.つまりは,検索機能のみならず,検索結果やその論文に関するさまざまな情報を提供してくれる機能を有している.
■主要なAI拡張ツールの多くはGPTに依存しており,検索を行う上でGPTの特性を知っておく必要がある.GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略で,AIの一種である.GPTは大量のテキストデータを学習し,それをもとに自然な文章を生成する能力(例えば質問に答えたり,文章を書いた入り,対話したりすることが可能)を有するコンピュータープログラムである.OpenAIが開発したもので,バージョンがいくつか存在しており,現在の最新はGPT-4である.ただし,現時点ではGPT-4は有料(月20ドル)であり,無料のGPT-3.5が主に使用されている.
※筆者はGPT-4を使用しているが,GPT-3.5よりも格段に性能が上であり,月20ドル払う価値が十分にあると判断している.
■このGPT自体で検索することはできないわけではない.ただしこれはGPTがもともと持っている膨大なネット情報からの出力であって,ネットにアクセスして検索する機能は持っていない(自らネットアクセスする権限がない).GPTが持っている情報は2021年9月までのものであり,これ以降のリアルタイム情報は有していない.現在リアルタイムブラウジング機能を有するGPTのWait Listに登録が可能である.
■また,AIの弱点として,ハルシネーション(幻覚)を起こすことがある.ハルシネーションとは,AIが生成する情報や文章が現実とは異なる,架空のものであることを示す.これは,AIが学習データをもとにしているため,正確さや現実性が必ずしも保証されないことを意味する.例えば,AIが文章を生成する際に,実在しない研究論文について言及することがある.これは,AIが学習データに基づいて新たな文章を作成する際に,現実とは異なる情報が混ざってしまうことが原因である.また,このハルシネーションはAIが実際の論文を読み込む際にも発生することがあり,論文レイアウトが原因で読み込みのトラブルが起こったりや表などをうまく読み込めないことで発生しうる.AI検索を用いる際は,必ずソース確認は怠らないようにする必要がある.
2.医学論文検索でおすすめの検索エンジン7つ
(1)Perplexity AI(一部有料)
https://www.perplexity.ai/
・調べるものをどのように深堀りしていくか迷ったときにおすすめのAI検索.網羅的検索には不向き
・Googleの脅威と目されている新しい自然言語処理プラットフォーム
・様々なソースからの情報を要約して質問文に回答する(エビデンス要約機能)
・出典を引用することで,ユーザーが簡単にソースを確認可能
・フィルタリング機能搭載(学術,ニュース,YouTube,Reddit,Wikipediaから選択)
・日本語入力にも対応している.
・検索タスクを優先しているため,ChatGPTほど言語生成タスクに長けてはいない.
・無制限のファイルアップロード機能(テキストファイル,PDFファイル,CSVファイル,コード)が2023年8月より搭載され,ファイルに関して質問することが可能New!!
・有料プラン(月$20のサブスクリプション)のPerplexity ProではGPT-4 Enhancedモードによるより強化された回答を返す機能,より掘り下げた質問が可能なcopilot機能が搭載New!!(これらはもともと無料であったが有料化された)
(2)Consensus(一部有料)
https://consensus.app/
・質問文に対して,査読を経た論文に限定して検索を行うことができる
・デフォルトの質問を提案する機能あり
・論文の概略を知りたい場合に最も向いているAI検索で,論文を読む初心者にも向いている
・論文検索に関しては通常の検索エンジンと同様のやり方で行う(質問形式ではない)
・論文pdfファイルをアップロードすることで,その論文の内容についてチャット形式で質問-回答を行い,論文の内容読解を補助する機能
・アップロードした論文に関してデフォルトの質問を提案する機能やBrainstorm Questionsから質問を考えてもらう機能も搭載しており,質問を考えなくてもある程度論文の読解を進めることが可能
・日本語にも対応ではあるが,うまく回答できないことも多いため,英語で質問した方がよい
・検索結果の上位(5~10位)の論文から質問に対応した要約や集計などの機能は無料で利用できていたが,2023年6月から有料化したNew!!
(3)SciSpace
・特定の論文を掘り下げる機能が強いAIで,論文検索能力は低め
・日本語対応はほぼできないと考えた方がよい.
・選択した論文内容についてAIアシスタントによるチャット形式で質問が可能.表や図の読み込みも可能なのはかなりの強み
・検索上位5つの論文のエビデンス要約が可能New!!(ただし,上記の通り検索能力が低いため漏れがでる)
・選択した論文について,その論文のCitationを生成するNew!!(ただし,上記の通り検索能力が低いため漏れがでる)
・文章校正サポート搭載New!!
(4)Elicit
https://elicit.org/
・検索に重きを置いたAIで,かなり正確に実在の論文を引用して回答を生成する(検索の信頼性は最も高いと思われる).ただし,Online ahead of printの論文は検索にひっかからない.
・質問文で検索を行えるほか,単語を入力すると,その単語に関連する質問の候補を提示してくれる(Brainstorm question)
・キーワードに完全一致していない論文でも発見できる
・アブストラクトを1文に要約し,その文献が検索目的に合致しているか素早く確認可能
・上位4論文から情報を要約して提示する(エビデンス要約機能)
・論文の引用論文から関連性の高い論文を検索することが可能
・文献情報はBIBTeXファイルやCSVファイルで出力できるため,文献管理ソフトMendeleyなどにまるごとインポート可能
・論文に対する質疑応答機能やエビデンス集約機能は有していない
・日本語にはほぼ対応していない
(5)Connected papers(一部有料)
https://www.connectedpapers.com/
・関連論文を調べるのには最も有用なAI検索
・日本語対応はできないわけではないが不向きなため,英語で検索した方がよい
・検索結果から選択した論文から,引用・被引用論文をAIがネットワークグラフで視覚的にわかりやすく表示してくれる(無料では月5回まで)
・論文リストBiBTeXファイルとしてダウンロード可能で,Mendeleyなどの文献管理ソフトにまるごとインポートできる
(6)Bing AI
https://www.bing.com/?cc=jp
・論文検索に特化したものではないが,ChatGPT-4を利用したAI検索エンジンとして有用。ただし網羅的な検索はできない
・使用にはMicrosoftのウェブブラウザ「Edge」が必要(ここでダウンロード)
・会話のスタイル(独創性,バランス,厳密)を選択することで回答をある程度コントロールすることができる
・日本語に対応
・通常のChatGPTと違い,リアルタイムでの情報提示が可能
・ChatGPTよりも検索タスクに特化しているため,ChatGPT-4が搭載されているとはいえ,対話タスクに限定した使い方はほぼできないと考えた方がよい.New!!
(7)ChatGPT-4 browse with Bing(有料)New!!
・ChatGPTのうち,有料のPlus会員(月$20)限定機能
・ChatGPT-4に,ウェブアクセスでBingによる情報検索ができるリアルタイムブラウジング機能が搭載したモード
・日本語対応であるが,論文検索として使用するなら英語の方が精度が高い.
・BingAIに比して言語タスクを優先しており,学術的に使うならBingAIよりこちらの方が使いやすい.
・PubMedやGoogle scholarなど特定の論文サイトを指定しての検索が可能.その際,検索式をChatGPTに作らせることでより厳密な検索が可能となる.
・有料サイトまで情報を取得できてしまうことが判明し,調整のため現在使用ができない.再開時期未定
(8)ChatGPT-4 pluginNew!!■これら8つのAIについて以下に要点を表でまとめる.
・ChatGPTのうち,有料のPlus会員(月$20)限定機能
・ChatGPT-4に外部アプリのAPIを利用したサードパーティープラグイン機能がついたものである.
・ウェブアクセスできて検索可能なプラグインがあり,特にWebPilotがおすすめである(LinkReaderは2023年7月に突然消滅した)
・学術論文検索に特化したプラグインもあるが,医学論文検索として使いやすいものは現時点ではほぼない.
・プログラミングも可能なNoteableプラグインはPubMedのAPIを使うことで論文情報入手が可能.
Perplexity AIかConsensusでエビデンスの概略を知る■その他使い方として,ChatGPTでのPubMed検索式生成や,自分の専門分野の最新論文をチェックする方法などもあり,以下にまとめたブログ記事を提示しておく.
↓
Elicitで論文収集する
↓
各論文についてSciSpaceで深堀りして理解を深める
↓
Conected Papersで関連論文を調べる
網羅的に論文を検索するためのPubMed検索式をChatGPTに生成させる方法
https://drmagician.exblog.jp/30346272/
iPhone/iPadのショートカット機能で専門分野の最新論文を日常的にまとめてチェックする方法
https://drmagician.exblog.jp/30392415/