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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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資料公開

 ちょうど英公文書館で公開されたばかりの資料を読んでおりますが、今回公開されたのは門外不出とされる秘密情報部(MI6)のものです。既にMI5の方は90年代に資料公開に踏み切りましたが、MI6は資料公開など知らぬ存ぜぬでした。風向きが変わってきたのは2003年のイラク戦争でして、この時、MI6が情報の失敗を犯したのではないか云々と批判されましたので、組織改革として新聞広告による職員募集と公式史の編纂を発表するところまで追い込まれたわけです。その後、2010年にMI6の公式史が発表されると、MI6関連の資料公開も間近だと噂されていたのですが、ようやく色々と公開されるに至りました。日本でもロンドンの日本大使館が盗聴されていたという資料がちょっとした話題となりましたが、今回公開されたものは1930年代から1950年にかけての幅広いものでして、量もかなりのものです。恐らくこれは90年代にMI5が資料公開を行なったのと同じぐらいのインパクトがあると思います。
 公開された資料の中で個人的に興味深かったのは、第二次大戦中、MI6がドイツ軍の幹部の暗殺を計画していたという資料です。当時、英政府内でヒトラー暗殺計画というのはあったのですが、ヒトラーは軍事的才覚がないので活かしておいた方が有益、と判断されたのは有名な話です。今回の資料ではルントシュテット元帥やシュテルプナーゲル将軍、ロンメル将軍らの名前が暗殺対象として挙がっており、なかなか興味深いものであります(彼らがMI6に高く評価されていたという証左でもあります)。
 建前上、MI6は暗殺には手を染めない、ということになってはいるのですが、このように計画自体は度々練られていたようです。公式文書では暗殺と書くと生々しいのか、「排除(removal)」という表現が用いられていました。旧日本軍でも「処分」という言葉が使用されていたとの説もありますし、今のCIAでは「targeted killing」等、この辺の隠語もなかなか奥深いものがあります。
 それから本ブログで度々取り上げてきましたが、MI6長官である「C」のサインは緑のインクでされます。なぜ緑なのかというとそれが海軍由来だから、という説明しかなかったのですが、今回、資料のあちこちにサインされた「C」の文字を見てなんとなく理解できました。下の写真のように、昔のMI6は海軍に準じて青の用紙に青の文字でタイプしています。そこに黒や青のインクでサインをしても目立たないので、緑ということになったのではないでしょうか。あくまでも個人的な推測ですが(もしくはかつてのサンライズのようにたまたま緑のインクが大量にあったのか?)。

追記:合同情報委員会(JIC)の公式史を執筆されているMichael Goodman博士から伺ったのですが、公式史発売の時期がやや遅れているようで、来年初旬予定だそうです。
資料公開_e0173454_6153718.jpg

by chatnoir009 | 2013-06-22 06:17 | インテリジェンス