私は大学生時代に数学を専攻していたのですが、飲み会でその話をすると「『1 + 1 = 2』を証明できるんでしょ?」なんて事をよく聞かれます。まあ、相手も本気で数学的な議論をしたいわけではないのですが、あまりによく聞かれるので、ここでひとつ「1 + 1 = 2」を証明してみましょう。
ここで「証明する」とはどういうことか議論をし出すと話が長くなるため、ここでは素朴に「ある命題をより基本的な命題から導くこと」としておきましょう。
「1 + 1 = 2」とは自然数の加算についての命題ですね。
今回は自然数に 0 も含めることにします。それは単に 0 も含めたほうが記述しやすいからで、深く考えないでください。「自然数に 0 が含まれる」に違和感があるなら「非負の整数」とでも言い変えてください。
足し算は小学一年生で習う基本的な数の操作です。しかし、数学では足し算よりさらに基本的な操作を考えます。それは「次の自然数」という操作です。つまり、0には次の自然数1があり、1には次の自然数2があり、2の次は3、3の次は4。どんな自然数にも次の自然数があります。
ここではある自然数 x の次の自然数を S(x) と書くことにします。 そうすると 1, 2 は記号としては不要になります。1 は S(0)、2 はS(S(0)) と書けるからです。 つまり、件の命題は「S(0) + S(0) = S(S(0))」と書けます。
さて、証明とは「ある命題をより基本的な命題から導くこと」でした。
今回は以下の2つの基本的な命題から導出します。
- ①∀x∀y (x + S(y) = S(x + y))
- ②∀x (x + 0 = x)
すなわち、
↑これらは、普通の足し算の交換法則とか結合法則などに比べ、より基本的っぽいですし、異議を唱える方はいらっしゃらないと思います。いませんよね?
では「S(0) + S(0) = S(S(0))」を証明しましょう。
①より S(0) + S(0) = S(S(0) + 0) が成り立ちます。(a) ②より S(0) + 0 = S(0) (b) (a) (b) より S(0) + S(0) = S(S(0)) が成り立ちます。 Q.E.D.