2024 年 40 巻 2 号 p. 72-80
インフルエンザ脳症は多様な病型を含んでいる.発症に関与する病態としては,代謝異常・全身性炎症反応・興奮毒性などが推定されている.画像所見はインフルエンザ脳症の診断において重要である.急性壊死性脳症では両側の視床病変が特徴である.けいれん重積型(二相性)脳症では,皮質下白質優位の拡散能低下(bright tree appearance)が特徴である.可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症では,脳梁膨大部の拡散能低下が特徴であり,深部白質に対称性の病変を伴うことがある.出血性ショック脳症症候群では,急速に進行する広範な脳浮腫が特徴である.劇症脳浮腫型脳症は近年提唱された疾患概念であり,画像所見の知見はまだ確立していない.それぞれの画像所見は特徴的であるが,診断においては臨床症状などと合わせて総合的に判断する必要がある.