8. 今後への展望
低侵襲性のリアルタイム持続血糖測定装置への期待
低侵襲性のリアルタイム持続血糖測定装置への期待
第4世代といえる血糖自己測定システムは、穿刺採血を伴うことのない非侵襲的血糖測定である 6)。しかし現在まで数多くの研究がなされてきたが、残念ながら代表的な近赤外線分光法を含め実用化に至ったものはない。
これに対して皮膚より体液(組織間液)を吸引してそこに含まれるブドウ糖を持続測定するシステムの開発が進んでいる。これが低侵襲で持続的に血糖値をフォローできるリアルタイム持続血糖測定装置(Real-Time Continuous Glucose Monitoring : RT-CGM装置)である。
1) RT-CGM装置の基本原理
RT-CGM装置の基本原理は、グルコースと反応する酵素がコーティングされた細いセンサーを皮下に留置し、持続的に皮下間質液中のグルコース濃度をセンサー間に流れる電流に置き換えて一定の間隔で測定するものである。RT-CGM装置で測定されるグルコース濃度は皮下間質液(interstitial subcutaneous fluid: ISF)中のものであるが、便宜的に持続“血糖”測定(CGM)と呼ばれている。
ISF中のグルコース濃度と血液中のグルコース濃度間には数分から十数分のずれがあり、通常は血糖濃度がISFのグルコース濃度に先行する 5)。この時間的なずれは血糖値が急激に変化するときに顕著に表れるため、使用する患者や医療スタッフはそのことを理解して測定値の変化を読みとる。そして機器の校正については血糖値の変動が少ないときに行うことが要請される 6)7)。今後RT-CGM装置を用いた多くの臨床検討からISF中のグルコース測定の有用性が蓄積されることを期待したい。
2) 海外での開発・研究状況
現在海外においてはRT-CGM装置を用いた様々な臨床検討がなされている。そして既にいくつかの製品がすでに上市されている。米国においてFDAの承認を受けている主な装置はWeb上で見ることができる8)-10)。
装置のデザインや操作方法はメーカーによって異なるが、システムの構成と基本設計は類似している。主要なコンポーネントは(1) 測定センサー、(2) データ送信機器、(3) データ受信機である。
針状の測定センサーは上腕や腹部などの皮下に5〜10mmほどの深さに挿入しテープで固定する。これにデータ-送信機器となるユニットを取り付ける。測定されたグルコース濃度は1〜5分毎にデータ受信機に転送される。データ受信機は得られた測定値を表示するだけではなく低血糖および高血糖に対してアラームを発したり、後の分析のために全測定値を記録する機能 を有する。機種によっては測定値の変動傾向を矢印などで表示するとともに、その変動傾向から予測 される低血糖・高血糖に対してアラームを発するものも登場している。
おおむね1回のセンサーの挿入で3日間から5日間の持続測定が可能であり、センサーは1回装着するごとに交換となるがデータ受信機やデータ送信機は継続使用が可能である。また、装着期間中は校正のために1日1回から4回程度(機器により異なる)指先からの血糖自己測定が必要とされる。
3) わが国での導入・研究状況
RT-CGM装置のわが国における導入は他の国に比べて遅れている。現状は研究用機器として一部の施設での検討にとどまっている。このような状況の中で今後解決されねばならない課題が浮上している。それは海外では許可されている送信機から受信機へのデータの電波送信がわが国では電波法により制限を受けているという点である。このため、現在わが国に導入されているCGM装置は、海外で研究されているRT-CGM装置とは異なり、有線でセンサー・データ記録装置をつなぐという、リアルタイムでのデータ確認のできない旧式タイプのものになっている。
このためデータの解析はセンサーを取り外したあと、記録装置のデータを取り出して分析するという制約下にある。今後、海外と同じ水準でRT-CGM装置の研究を実施していくためには、この電波法の問題についての解決が必要である。
これに対して皮膚より体液(組織間液)を吸引してそこに含まれるブドウ糖を持続測定するシステムの開発が進んでいる。これが低侵襲で持続的に血糖値をフォローできるリアルタイム持続血糖測定装置(Real-Time Continuous Glucose Monitoring : RT-CGM装置)である。
1) RT-CGM装置の基本原理
RT-CGM装置の基本原理は、グルコースと反応する酵素がコーティングされた細いセンサーを皮下に留置し、持続的に皮下間質液中のグルコース濃度をセンサー間に流れる電流に置き換えて一定の間隔で測定するものである。RT-CGM装置で測定されるグルコース濃度は皮下間質液(interstitial subcutaneous fluid: ISF)中のものであるが、便宜的に持続“血糖”測定(CGM)と呼ばれている。
ISF中のグルコース濃度と血液中のグルコース濃度間には数分から十数分のずれがあり、通常は血糖濃度がISFのグルコース濃度に先行する 5)。この時間的なずれは血糖値が急激に変化するときに顕著に表れるため、使用する患者や医療スタッフはそのことを理解して測定値の変化を読みとる。そして機器の校正については血糖値の変動が少ないときに行うことが要請される 6)7)。今後RT-CGM装置を用いた多くの臨床検討からISF中のグルコース測定の有用性が蓄積されることを期待したい。
2) 海外での開発・研究状況
現在海外においてはRT-CGM装置を用いた様々な臨床検討がなされている。そして既にいくつかの製品がすでに上市されている。米国においてFDAの承認を受けている主な装置はWeb上で見ることができる8)-10)。
装置のデザインや操作方法はメーカーによって異なるが、システムの構成と基本設計は類似している。主要なコンポーネントは(1) 測定センサー、(2) データ送信機器、(3) データ受信機である。
針状の測定センサーは上腕や腹部などの皮下に5〜10mmほどの深さに挿入しテープで固定する。これにデータ-送信機器となるユニットを取り付ける。測定されたグルコース濃度は1〜5分毎にデータ受信機に転送される。データ受信機は得られた測定値を表示するだけではなく低血糖および高血糖に対してアラームを発したり、後の分析のために全測定値を記録する
おおむね1回のセンサーの挿入で3日間から5日間の持続測定が可能であり、センサーは1回装着するごとに交換となるがデータ受信機やデータ送信機は継続使用が可能である。また、装着期間中は校正のために1日1回から4回程度(機器により異なる)指先からの血糖自己測定が必要とされる。
3) わが国での導入・研究状況
RT-CGM装置のわが国における導入は他の国に比べて遅れている。現状は研究用機器として一部の施設での検討にとどまっている。このような状況の中で今後解決されねばならない課題が浮上している。それは海外では許可されている送信機から受信機へのデータの電波送信がわが国では電波法により制限を受けているという点である。このため、現在わが国に導入されているCGM装置は、海外で研究されているRT-CGM装置とは異なり、有線でセンサー・データ記録装置をつなぐという、リアルタイムでのデータ確認のできない旧式タイプのものになっている。
このためデータの解析はセンサーを取り外したあと、記録装置のデータを取り出して分析するという制約下にある。今後、海外と同じ水準でRT-CGM装置の研究を実施していくためには、この電波法の問題についての解決が必要である。
参考文献
- 池田義雄, 田嶼尚子, 横山淳一ほか:簡易血糖測定法による血糖自己測定の試み, 日本医事新報 2818号13-17, 1978.
- 池田義雄, 秋田達夫: 血糖自己測定用の機材の種類と諸問題, 綜合臨床56:115-122, 2007.
- 安部純, 小野沢しのぶ, 清水美津夫:外来糖尿病患者に対する尿糖自己測定の効果―デジタル尿糖計を用いた食後尿糖定量測定による自己管理
― . プラクティス24:451-456, 2007.
- 池田義雄, 伊藤成史, 大橋昭王ほか:生活習慣病の予防を目指して
― デジタル尿糖計によるセルフチェック.計測技術32:1-5, 2004.
- Boyne M, Silver DM, Kaplan J, et al.:Timing of changes in interstitial and venous blood glucose measured with a continuous subcutaneous glucose sensor. Diabetes 52:2790-2794, 2003.
- Evans ML, Pernet A, Lomas J, et al.:Delay in onset of awareness of acute hypoglycemia and of restoration of cognitive performance during recovery, Diabetes Care 23:893-897, 2000.
- Cheyne EH, Cavan, DA, Kerr D : Performance of a continuous glucose monitoring system during controlled hypoglycemia in healthy volunteers. Diabetes Technol Ther 4:607-613,2002.
- http://www.continuousmonitor.com/
- http://www.minimed.com/products/guardian/index.html
- http://www.dexcom.com/html/dexcom_products.html
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2008年08月
※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。