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2024年12月05日

ココアやチョコレートが糖尿病を改善 カカオ豆のフラバノールが血管の健康を守る ストレス対策にも

 ココアやチョコレートに含まれる「フラバノール」は、動脈硬化の進行を抑えたり、アンチエイジングの効果がある機能性成分として注目されている。

 ココアのフラバノールが、ストレスを緩和し、高脂肪食品を食べた後でも血管を守るという新しい研究が報告された。

 糖尿病の人が、フラバノールが多く含まれるココアを飲むと、血管機能が改善するという研究も発表されている。

ココアやチョコレートのフラバノールの栄養機能に注目

 「フラバノール」は、ココアやチョコレートの原料になるカカオ豆に含まれるポリフェノールのこと。緑茶の成分として知られるカテキンやエピガロカテキンなども、フラバノールに分類される。

 フラバノールは抗酸化作用があり、動脈硬化の進行を抑えたり、アンチエイジングの効果がある機能性成分として注目されている。

 ココアやチョコレートなどに含まれるフラバノールが、ストレスを緩和し、高脂肪食品を食べた後でも血管を守るという新しい研究を、英国のバーミンガム大学が発表した。

 ストレスを強く感じているときに、ポテトチップスなどのジャンクフードや、肉類や揚げものなど、脂肪の多い食べものを欲しくなるという人は多い。

 そうした高脂肪の食事は、血液中の中性脂肪や悪玉のLDLコレステロールを増やし、善玉のHDLコレステロールを減らし、肥満や2型糖尿病、脂質異常症のリスクを高める。高脂肪食は、ストレスからの血管の回復も阻害するおそれもある。

 「ストレスを感じている人は、高脂肪食品を食べたくなる傾向があることが分かっています。しかしフラバノールが多く含まれる無糖のココアを、脂肪分の多い食事と組み合わせて飲むと、高脂肪食の悪影響を部分的に相殺し、血管をストレスから守ることが示されました」と、同大学栄養科学部のカタリーナ レンデイロ氏は言う。

ココアを飲むと高脂肪食によるストレスや血管反応が良好に

 研究グループは、23人の健康な男女を対象に、精神的なストレスを受けているときに、脂肪の多いバターやチーズ、乳製品を含む食事と、高フラバノールのココアあるいは低フラバノールのココアいずれかを同時に摂取してもらう実験を行った。

 その結果、フラバノールを多く含むココア飲料を飲んだ後では、高脂肪食によるストレスと血管機能を示す血流依存性血管拡張(FMD)の反応などが良好であることが示された。そうした反応は、ストレスの多い出来事があった終でも、最大90分持続することも分かった。

 「フラバノールは健康に良いことが知られており、これまでに血圧を調節し、心臓血管の健康を守るのに有用であることが報告されています」と、レンデイロ氏は言う。

 「プレッシャーの大きい仕事に就いていたり、時間に余裕がないなど、ストレスを感じていて、ついつい甘いものに手を伸ばしたり、不健康なジャンクフードに頼ってしまうという人は多くいます」。

 「そうした場合は、より健康的な食品を選ぶ方法があります。現代の生活はストレスに満ちており、ストレスが健康に与える影響が解明されています。ストレスから自分を守る行動はプラスに働きます」としている。

 なお、ココアやチョコレートを購入するときは、糖質を加えてないものや、低カロリー甘味料を使ったもの、加工が最小限に抑えられたココアパウダーなどを選ぶことを勧めている。

 「フラバノールは、ココアやチョコレートの原料になるカカオ豆以外にも、ベリー類などの果物、野菜、緑茶などのお茶、ナッツ類などにも含まれます」と、レンデイロ氏は指摘している。

糖尿病の人がココアを飲むと血管機能が改善

 糖尿病の人が、フラバノールが多く含まれるココアを1ヵ月間飲むと、血管機能が改善するという別の研究を、米国心臓病学会(ACC)が発表している。

 研究グループは1つめの実験で、病状が安定している2型糖尿病患者10人を対象に、フラバノール含有量の異なるココア飲料を3日間飲んでもらい、心臓血管の健康への影響を調べた。

 2つめの実験では、やはり病状が安定している2型糖尿病患者41人を対象に、フラバノールの含有量の多いココアと含有量の少ないココアを、それぞれ30日間毎日3回飲んでもらい、その有効性を調べた。

 その結果、いずれもフラバノールを多く含むココア飲料を飲むと、血流依存性血管拡張(FMD)の反応が改善することが示された。

 FMDは、血管内皮の機能の指標となる。高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などがあると、血管内皮の機能が低下し、血管の広がりが悪くなり、心臓病や脳卒中、腎臓病などのリスクが上昇しやすいことが知られている。

ココアを飲む習慣は運動や薬と同じくらい効果がある?

 「さらに研究が必要ですが、ココアを飲む習慣には、運動や薬と同じくらい効果があることが示されました」と、ドイツのアーヘン大学病院およびアーヘン工科大学の心臓病学部のマルテ ケルム教授は述べている。

 「血糖値が高い状態が続くと、血管の内皮機能が低下し、動脈硬化が進み、心血管疾患などのリスクが高くなります。血管内皮機能は、食事療法、運動療法、薬物療法、禁煙などにより改善できますが、ココアやチョコレートに含まれるフラバノールも有用である可能性があります」。

 糖尿病とともに生きる人の多くは、薬物治療だけでは糖尿病合併症を予防できないことが多いため、健康的な食事や運動にも取り組む必要がある。

 「糖尿病に関連する心血管疾患などのリスクを減らすために、食事を中心とした生活スタイルの見直しなど、新しいアプローチにも目を向けるべきです」としている。

 なお、研究で使用された高フラバノールのココアは、スーパーマーケットなどで販売されているココアよりもフラバノールの含有量が多く、砂糖を入れないで飲んでもらったという。

 一般的に入手しやすいココアやチョコレートは、口当たりを良くするために糖質が加えてあり、高カロリーのものがあることに注意が必要としている。

 「今回の研究は、2型糖尿病の人がココアやチョコレートをすぐに利用することを、必ずしも勧めるものではないにしても、カカオフラバノールが血管の健康に良い影響を与えることが示されました。糖尿病とともに生きる人がより取り組みやすい、安全で効果的な方法を開発する必要があります」としている。

Cocoa could protect you from the negative effects of fatty foods during mental stress - study (バーミンガム大学 2024年11月18日)
Cocoa flavanols rescue stress-induced declines in endothelial function after a high-fat meal, but do not affect cerebral oxygenation during stress in young, healthy adults (Food & Function 2024年11月18日)
Cocoa Could Be A Healthy Treat For Diabetic Patients (米国心臓病学会 2008年5月26日)
Sustained Benefits in Vascular Function Through Flavanol-Containing Cocoa in Medicated Diabetic Patients: A Double-Masked, Randomized, Controlled Trial (Journal of the American College of Cardiology 2008年6月)
Flavanol-Rich Cocoa: A Promising New Dietary Intervention to Reduce Cardiovascular Risk in Type 2 Diabetes? (Journal of the American College of Cardiology 2008年6月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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