2016年声優楽曲ベスト50曲 その1(声優アーティスト編)
曲に触れて作品へ至るという意味も込めて、アルバムシングルその他も含めて2016年の声優楽曲50曲としました。一気に50曲だと量が多いので、その1が声優アーティスト29曲、その2がキャラクターソング21曲です。全体でベストということで順位付けはしていません。声優はよく分からない、あまり聴いていない、という方にも興味を持っていただけたなら幸いです。なお音源がリリースされていないゲーム曲なども含まれています。
その2は
2016年声優楽曲ベスト50曲 その2(キャラクターソング編)
昨年分は
(2015年声優楽曲ベスト20曲+α(シングル・EP))
(2015年の声優アルバム・キャラクターソングアルバムについて)
■Baby, My first kiss / 村川梨衣
(from SG『Sweet Sensation/Baby, My First Kiss』)
作詞・作曲・編曲:hisakuni
村川梨衣のソロデビューシングルからの一曲。今年もキラーチューンを量産した作曲家hisakuniによるニューウェービーなエレクトロファンク。ソウルシンガー顔負けの村川梨衣のパワフルなヴォーカルの爽快感とともに、 その奔放な声の魅力を活かし切った80’sニューウェーブ直系とも異なるネオシティポップ的な、華やかでファンキーなトラックメイクが素晴らしかったです。一度出来上がっていた本作のトラックを彼女の希望でアレンジし直したエピソードなど、音楽活動にかける意気込みやポテンシャルの高さも感じた曲でした。
■スパークリング・チャイナタウン / 井上ほの花
(from miniAL『 ファースト・フライト』)
作詞・作曲・編曲:無果汁団
洋楽の影響下にあった80'sアイドル歌謡曲などを「ラグジュアリー歌謡」として新たに定義し、書籍出版やイベント開催など活動してきたラグジュアリー歌謡。その一環としてレーベル活動の第一弾リリースとなる井上ほの花のデビューCDからの一曲。元blue marbleのとんCHANとショック太郎のユニット、無果汁団の信念が音に刻まれていて、メロディー・音色・ミックスなど細かい部分まで80′sアイドルソウルフレイヴァーが充満していて、華やかでメロウな味わいを堪能できます。
■スリム・ボーイ・スリム / ひょろっと男子(梅原裕一郎, 西山宏太朗)
(from SG『ひょろっとらぶ』)
作詞:松藤量平 作曲・編曲:TSUGE
試聴リンク(youtube)
人気若手声優の梅原裕一郎・西山宏太朗によるラジオ『ひょろっと男子』番組CD収録の、元LilのTSUGEによる一曲。Fatboy Slimをもじったタイトル通り、ロックなドラムループとサンプリングのピアノフレーズを中心としたビッグビートオマージュな曲で、今っぽさのあるユーモラスで強気なリリックのラップとキャッチーなメロディーのサビという二段構成になっています。彼らのキャラクター性を打ち出しながらもシリアスなクールさが強調された仕上がりになっています。
■トップランナー / 入野自由
(from AL『DARE TO DREAM』)
作詞:Mummy-D 作曲:佐伯youthK 編曲:Mr.Drunk / 佐伯youthK
試聴リンク(レコチョク)
RHYMESTERのMummy-Dが作詞と編曲として楽曲提供した入野自由の2ndフルアルバム収録の一曲。Mummy-Dの直接的な影響下にある小気味の良いリズミカルなフロウでありながら、彼らしい柔らかく伸びのある声の持ち味を発揮しています。音数の少ないストイックなトラックだからこそ、その余白で繊細な感情の機微が丁寧に表現されていて、彼の俳優・声優活動で培った技術が詰め込まれています。
■チョコレイト・ブギウギ / petit milady
(from AL『カレンダー・ガール』)
作詞・作曲・編曲:hisakuni
三作目で過去最高作のアルバムを残したpetit milady。アルバム収録のこの曲は、忙しないドラムワークとガットギターとハープの響きの中をユニゾンで歌う二人の声のパワフルさとキュートさが印象的な楽曲です。Mice paradeやDylan group等のオリエンタルなポストロックテイストを感じさせます。
■Everlasting Parade / 内田彩
(from SG『SUMILE SMILE』)
作詞:SUIMI / hisakuni 作曲・編曲:hisakuni
2ndアルバム『Blooming!』からスタートしたhisakuniとのタッグが大きな衝撃を与えた内田彩。彼とのコンビを組んだ曲は”EDM”と謳われながら、実際は王道EDMとは少しズレたBeat/Bass musicを取り入れたものばかり。この曲も「with you」「Floating Heart」の続編的な曲として2曲でも使われていたチャイムを再度導入するなどギミック満載で、2step~Vogue~Bmore~Trap~Future Bassを模したようなリズムが終始目まぐるしく展開されていきます。しかしそれでも破綻することなく歌ものエレクトロポップとして着地している驚きの一曲です。
■ CHARADE / 大橋歩夕
(from AL『FAITH -Global Edition-』)
作詞・作曲・編曲: SPOOKY ELECTRIC
大橋歩夕の4年ぶりのアルバムは、東京のサイケファンクロックバンドSPOOKY ELECTRICの全面プロデュース。Global Editonとして先行発売後の一般流通版にのみ追加されたこの曲は、Diry Mind期のPrinceの影響が色濃く感じられるニューウェーブファンクロック。大橋歩夕の清潔感ある歌声は、バンドのグルーヴのエグみを中和するような甘さで不思議な聴後感を残します。
■Day you laugh -latin style- / 豊永利行
(from mini AL『C"LR"OWN』)
作詞・作曲:T.Toyonaga 編曲:山下洋介
試聴リンク(レコチョク)
自ら作詞・作曲を手がける豊永利行のメジャー1stミニ収録の、シングル「Day you laugh」のラテンリアレンジ。原曲からテンポが落ちて、シンコペーションが効いたピアノとパーカッションのグルーヴが揺れる曲に変化しています。彼のヴォーカルも押し引きがより強調され、情熱的な仕上がりになっています。特にブリッジで展開される自由自在のフェイクは圧巻の一言です。
■おやすみ星 / 能登有沙
(from SG『おやすみ星』)
作詞:SAWA 作曲・編曲:有木竜郎
StylipSでも活動する能登有沙のインディーのシカクレコーズからの第一弾リリースとなるシングル。穏やかに流れるようなストリングスの響きと弾むようなビートが温かく染みこむフィラデルフィアソウルな一曲です。アイドル出身という優等生的な殻を破るように、これまでにあまりなかった戸惑いやためらいなどの複雑な感情を飲み込み吐き出しながらも、それでも優しく爽やかに響く作品です。
■ウイークエンド・ランデヴー / 牧野由依
(from SG『ウイークエンド・ランデヴー / What A Beautiful World』
作詞・作曲・編曲:矢野博康
試聴リンク(レコチョク)
昨年のアルバム『タビノオト』をプロデュースした矢野博康が引き続いてプロデュースしたシングル。ニューウェーブにアーバンな色合いをプラスした、これぞ2016年らしいエレクトロポップソングが届けられました。 ロマンチックなメロディーに酔いしれながら、軽やかなキック&スネアに合わせて踊ることもできるサウンドの懐の深さと、それをバランスよく統率する彼女の歌唱力の高さが光っています。
■Pencil and Eraser / 野島健児
(from AL『Between the lines』)
作詞:松井五郎 作曲・編曲:藤谷一郎
作を重ねる毎に作風がディープになり、アブストラクトな色合いを強めていく野島健児。この曲ではフィンガーピッキングのギターからはじまる音数の少ない導入部から、徐々に音数を増していき、壮大な広がりを見せる緊張感あるドラマティックな展開はU2の「With or without you」やColdplay「Viva la vida」のような神秘性を持っています。 アルバムでは荒々しいハードバップな演奏の中で埋もれそうになりながら、もがくようにリーディングする「Grey Zone」など、異色の挑戦を一人淡々と続けている彼です。
■なんとなくの話 / 井口裕香
(from SG『Lostorage』)
作詞・作曲:佐伯youthK 編曲:佐々木裕
試聴リンク(レコチョク)
毎回シングルのカップリングが充実している井口裕香。Ben Folds Fiveや初期クラムボンのようなピアノでリードしていくジャジーでファンキーなバンドグルーヴと、跳ね回るように歌う瑞々しいヴォーカルがビビットに響きます。
■Night Drivin’ / 小野賢章
(from mini AL『COLORS』)
作詞:Kanata Okajima 作曲:TAKAROT・Shoma Yamamoto
加速度的に人気が増していく小野賢章のミニアルバムのリード曲。ロックバンドグルーヴをエレクトロニックに展開するサウンドは、MGMTやPassion Pitなどの00年代のインディーエレクトロバンドを彷彿とさせます。まだ青さが残るガムシャラな彼のヴォーカルが、勢いと疾走感を曲全体に与えています。
■サンクチュアリ / 悠木碧
(from AL『トコワカノクニ』)
作詞:藤林聖子 作曲・編曲:inktrans
試聴リンク(レコチョク)
声優界の中でも自らの表現したいものを徹底的に突き詰めて音楽として提示する存在の一人である悠木碧。彼女が挑戦したのは声のみで作り上げた、声優としてある種究極の音楽表現。アルバムは”声を素材として扱ったエレクトロニカ”的な作品で、自らの声の持つ幼児性も上手く活かして、幼児が見る悪夢のような超現実の世界を展開しています。5.1chサラウンドが作品の原初の形で、2chのCDフォーマットとする際にアナログレコードにカッティングしてから、それをスピーカーから再生して音を録音するという、レコーディング・ミックス・マスタリング作業にも驚きのこだわりが施されています。
■You Only Live Once / YURI!!! on ICE feat. w.hatano
(from SG『You Only Live Once』)
作詞:西寺郷太 作曲:彦田元気 編曲:彦田元気 / 冨永恵介
beatmaniaシリーズをはじめ各種音楽ゲームにDJ GENKI名義で楽曲提供している彦田元気と、音楽プロデューサー冨永恵介の共作曲。繰り返されるミニマルなピアノフレーズが高揚感を煽りつつも、抑制の効いたリズムトラックが絶妙なバランスを見せる、トロピカルハウス的な上品な一曲。羽多野渉名義でリリースされた「You Only Live Once -everlasting-」ではシンセサイザーを大きくフィーチャーしたプログレッシブハウスになっていて、そこからも本曲がかなり抑制されたアレンジで歌ものとして聴きやすさを意識して制作されたことが窺えます。
■0+1 / 寺島拓篤
(from SG『0+1』)
作詞:寺島拓篤 作曲・編曲:Shinnosuke
今回も作詞を手がけている寺島拓篤のシングル。彼が積極的に挑戦しているエレクトロディスコサウンドが、今曲でも元SOUL’d OUTのShinnosukeとのタッグでさらに強く推し進められています。『Discovery』の頃のDaft Punkのような煌びやかでレトロフューチャーなエレクトロディスコが展開されていて、ライブでファンと一緒に踊ろうという意思を感じるアッパーな一曲です。中盤にハーフテンポに変化し、ダブステップな展開も挿入される挑発的なサウンドも、彼らしい遊び心の発露のように感じます。
■リカバーデコレーション -Hymn to the Queen Remix- / 花澤香菜
(from AL『KANAight ~花澤香菜キャラソン ハイパークロニクルミックス~』)
作詞・作曲:渡辺翔 編曲:LLLL
試聴リンク(レコチョク)
クラムボンのミトの総合プロデュースによる花澤香菜のキャラクターソングに焦点を当てたリミックス曲集の一曲。フォーエルによるBMORE、JUKE的なキックの連打を中心としたミニマルなビートがディープに繰り広げられています。ヴォーカル処理や上モノに至るまで彼らしい洗練されたフェティシュな質感が徹底されていて、ストイックな曲展開もあって高揚感よりも没入感を強く感じさせます。
■Sugar, sugar / 宮野真守
(from SG『テンペスト』)
作詞:Amon Hayashi, COMMAND FREAKS, CASPER 作曲・編曲:COMMAND FREAKS, CASPER
試聴リンク(レコチョク)
TuxidoやDam funk、Chromeoなどのポストディスコのブギーファンクなサウンドを強く意識した一曲。 宮野真守のシンガーとしての個性とアクの強さが全面に打ち出されています。緩やかに踊らせるよりも、強烈なパンチ感のあるサウンドと歌声で強いグルーヴを生み出し狂乱の渦へ叩き込む、ロック的なテンションの高さを持つ曲です。
■青い炎シンドローム / 飯田里穂
(from SG『青い炎シンドローム』)
作詞:桜井秀俊 作曲:筒美京平 編曲:soundbreakers
真心ブラザーズ桜井秀俊と筒美京平という、豪華ですが想像のつかなかった意外な組み合わせが生んだ一曲。ビビットに光り輝くシンセの響きと重いビートの上に微かにまぶされたソウルフレイヴァーが、筒美京平らしい爽やかで美しいメロディーに新しく現代的な色合いを与えています。
■タワーライト / 豊崎愛生
(from AL『all time Lovin'』)
作詞・作曲・編曲:永野亮
試聴リンク(レコチョク)
APOGEEの永野亮による、静謐なギターアルペジオから始まる幻想的なアシッド・フォーク。彼女のウィスパーヴォイスの持つ繊細さやある種の少女性は、元mumのアンナ姉妹やCat Powerとも共通するような、孤独にそっと寄り添うさり気ない温かさをまとっています。
■Secret / 早見沙織
(from mini AL『live for LIVE』 )
作詞・作曲:川崎里実 編曲:大久保薫
昨年のデビューからさらに進化を続ける早見沙織。最新作収録のこの曲はEgo-Wrappin’を思わせるような昭和歌謡的なビッグバンドジャズ。パワフルに歌い上げながらも品の良さやしなやかさを失わない、彼女の歌唱力の高さが遺憾なく発揮された一曲です。アルバムのタイトルといい、ライブCD+BDを同梱するパッケージングの打ち出し方といい、ライブを見てほしい、ライブでこそ真価を発揮できる、という彼女の自負を感じさせる、音楽への真摯な想いのこもった曲です。
■海の駅 / 上田麗奈
(from miniAL『RefRain 』)
作詞:松井洋平・上田麗奈 作曲・編曲:rionos
シンガーソングライターとしても活動するrionosが提供した上田麗奈のアーティストデビューのミニアルバムの一曲。rionosらしいビート感が希薄な幻想的サウンドで、特にグリッチノイズと緊張感あるストリングスの使い方は、坂本龍一や菅野よう子からの大きな影響を感じさせます。作詞にも参加した上田麗奈の情感豊かなヴォーカルは、感情や意思を伝えるためにとるべき自らのアクションへの理解力の高さを感じます。つまり自分で自分のことをよく分かっている人なのでしょう。
■テトリアシトリ(PARKGOLF REMIX) / 上坂すみれ
(from AL『 20世紀の逆襲 』)
作詞・作曲:桃井はるこ 編曲:PARKGOLF
上坂すみれのアルバム特典ディスクで、映像音源としてリリースされたこの曲。PARKGOLFのマッシブなBMOREビートがファンキーに響きます。なんでもあり・やりたい放題やる痛快な上坂すみれの活動の中でも特に奔放な面が反映された一曲です。
■薄ら氷心中 / 林原めぐみ
(from SG『薄ら氷心中』)
作詞・作曲・編曲:椎名林檎 木管編曲:村田陽一
アーティストデビュー25周年を迎えた林原めぐみのシングルは椎名林檎の完全プロデュース。近年の椎名林檎ソロとも近いジャズ昭和歌謡な一曲で、アコーディオンも入ったタンゴな響きが印象的です。椎名林檎の作る曲の魅力の一つである表現の過剰さも、林原めぐみが歌うと声のポップさによってキャッチーになり聴きやすくなると同時に、曲のフィクション性が増していくというのが発見できた曲でした。
■beautiful days! / Machico
(from AL『Ambitoius*』)
作詞:Machico
作曲・編曲:滝澤俊輔(TRYTONELABO)
晴れた青い空にどこまでも広がっていくような爽やかなストリングとホーンが印象的なアーバンソウルファンク。所属するホリプロの声優アーティスト部門では最年長の彼女ですが、この曲のような王道のソウル風アイドルポップスを歌わせたら中々右に出るものはいないと思わせる瑞々しい弾むような歌声。こういう曲がもっと聴きたいなと思いました。
■ヒーローインポッシボー / 花江夏樹
(from SG『青春は残酷じゃない』)
作詞・作曲・編曲:大石昌良
試聴リンク(レコチョク)
ニコニコ動画の歌い手だった彼がついにソロデビューを果たした、花江夏樹の2ndシングルのカップリング曲。大石昌良(オーイシマサヨシ)の手によるゴスペルテイストも入ったミドルテンポのR&Bファンク曲で、伸びやかでブライトな響きの歌声と優れたリズム感という彼の歌唱力の高さがよく分かる一曲です。
■like a fairy tail / 近藤孝行
(from AL『SUITE』)
作詞:近藤孝行 作曲・編曲:西岡和哉
小野大輔とのユニットD.A.Tの1stアルバム収録の近藤孝行のソロ曲。アーティストとしてはソロ活動していない彼ですが、音数の少ないトラックの中を甘く激しく歌い上げるR&Bソングで、切れ味あるラップとダンスもこなすなど、非常に才能溢れる人であることが分かります。
■In the Shadow / 山本希望, 松井恵理子
(from SG『In the shadow』)
作詞:MCのじょ a.k.a. HOPE / 作曲・編曲:島田尚(autoclef)
試聴リンク(twitter)
ラジオ「もたせろ!!ワンクール」でパーソナリティーを務める山本希望と松井恵理子の2人によるユニットのラジオ企画CD収録曲。声優界一のヒップホップ好きで知られる山本希望がリリックを書き下ろしラップしていて、松井恵理子の情念のこもった熱い歌唱とともに、二人の熱量の高さが詰まっています。R-指定やT-Pablowなどの現行の日本語ラップの流れをきちんとキャッチしている山本希望のフロウの頭韻の連続ライムに驚かされます。EDMアイドルSTEREO JAPANをプロデュースするautoclefの島田尚がサウンドプロデュース。