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207系

にひゃくななけい

JR西日本が導入した通勤形直流電車。
目次 [非表示]

スペック編集

営業最高速度120km/h
起動加速度2.7km/h/s(0番台登場時)→2.5km/h/s
減速度3.5km/h/s(常用最大)・4.2km/h/s(非常)
歯車比14:99=1:7.07
動力伝達方式WN平行カルダン
主電動機かご形三相誘導電動機 ※出力は1時間定格
  • WMT100(0番台・155kW)
  • WMT102(1000番台1 - 2次車・200kW)
  • WMT102A(1000番台3 - 4次車・220kW)
  • WMT102B(2000番台・220kW)
制御装置PWMインバータによるVVVF制御
  • WPC1(0番台・昇降圧単相チョッパ+3レベル電流形インバータ・1C4M相当)
  • WPC4(1000番台・2レベル電圧形インバータ・1C1M)
  • WPC13(2000番台・3レベル電圧形インバータ・1C1M・補助電源装置一体型)
台車ボルスタレス台車
  • WDT52・WTR235J(0番台・円錐積層ゴム式)
  • WDT55B・WTR239B(1000番台・円錐積層ゴム式)
  • WDT62・WTR245(2000番台・円筒積層ゴム+コイルバネ式)


概要編集

初の同社設計による通勤形電車

当時建設中であった片福連絡線JR東西線)への直通を考慮して設計が行われ、直通する学研都市線JR京都線JR神戸線JR宝塚線に導入された。


221系の4ドアロングシート版という設計コンセプトで、国鉄・JR通勤形電車では初となる幅広車体を採用した。車内を広く見せる意向から、当時の関西私鉄の通勤形同様座席端部のスタンションポールが省略されている。

妻面には開閉可能且つ換気可能な大型窓を設置した関係から車内貫通路が中心部よりずらされて設置されているという他に例を見ない構造となった。


最高速度は120km/hで、導入当時最速の通勤形電車である。非常扉設置や離線対策としてパンタグラフ2基搭載(1996年以降)を行なっている。


量産先行車を除き、3+4連で分割運用できる様になっているが、これは導入当時、学研都市線松井山手以東のホーム有効長が4連分しかなかったことによる(現在は7連に増車済)。この他、和田岬線代走時には3連で運用されることもあった。


なお、カラーリングは登場時はブルーの濃淡帯であったが、2005年平成17年)のJR福知山線脱線事故後、遺族の感情に配慮して大幅変更。現在の濃紺・オレンジ帯となった。321系も当初は207系と同じカラーで登場する予定であったが、同じ理由で濃紺・オレンジ帯となった。この塗装変更の影響は実車ばかりでなく、鉄道模型TOMIX)やゲーム(『電車でGO!』)にも及んだ(鉄道模型では旧塗装の絶版、『電車でGO!FINAL』東海道本線パートのPSP移植で影響を及ぼした)。

座席モケットも登場時は青色であったが、尼崎脱線事故後に緑色に変更された(321系も同様)。


WN平行カルダン駆動方式はJR在来線車両として初採用で、以後のJR西日本の在来線車両は一律、WN駆動が選ばれている。



歴史編集

1991年平成3年)1月、量産先行車として7連×1本が登場。各種試験後、同年4月に学研都市線で運用開始。


同年12月以降、量産車が2代目淀川電車区(現・明石支所放出派出所)に配置された。

1993年(平成5年)3月には0番台2次車が淀川電車区、新たにJR宝塚線用として宮原電車区(現・網干総合車両所宮原支所)に配置された。2次車として落成した編成はクハ206・207形の車番が130より始まっていることから区別出来る。


1994年(平成6年)度以降の増備は1000番台に移行。まず、同年3月にJR京都・神戸線用として2・6連が製造され、吹田工場高槻派出所(現・明石支所高槻派出所)に配置された。主に6両・8連で普通列車に運用されていた。

1995年(平成7年)3月には1000番台2次車が宝塚用として3・4連で製造され、宮原電車区に配置された。これ以降製造される207系は、全て3両または4両編成に(1000番台1・2次車以降ではドアガラス形態で区別が可能)。


1996年(平成8年)5月より開通を翌年3月に控えたJR東西線への直通に備え、207系全体の整理が行われた。これによる編成組み替えの途上で5両編成が見られることもあった。

  • まず、京都・神戸線用の1000番台6両編成からモハ207形・サハ207形を1両ずつ抜き取って4連化。抜き取ったサハ207は2両編成に組み込んで3両化。
  • 0番台3連は出力が低く、東西線運用に支障を来すことが懸念されたため、前述の6連より抜き取ったモハ207形よりパンタグラフ撤去・車番に+500して1500番台に改番の上で組込み、4連化した。元から組込まれていたモハ207形0番台も改造され、車番に+500されている。

それに先立ち、1996年(平成8年)3月には1000番台3次車として3・4連が少数と組込用1500番台2両が製造された。さらに、4両編成と併結する3両編成を確保するため、1996年7月から翌年1月にかけて1000番台4次車が3両編成28本と大量に製造された。この時点で、3両編成55本・4両編成58本・7両編成1本が在籍。


2002年(平成14年)より2000番台が新造された。側面に主電動機冷却風取込用ルーバーがあるのが特徴。またVVVFの素子がGTOからIGBTに変更されている。同年1月及び翌2003年(平成15年)6 - 8月の2次に渡って3連×12本・4連×11本が増備され、総勢484両が出揃っている。


福知山線脱線事故を受け、Z16・S18編成が運用離脱。2010年(平成22年)3月ダイヤ改正では片町線4連運用が消滅したため、T18編成からモハ207-1032号車を抜き3連とすることで、3・4連の編成数を揃え、一時は全ての運用が7両のみで揃えられていた。


所属・運用編集

すべての車両が網干総合車両所に所属し、明石支所に配置されている。基本的に321系と共通運用。


7連編集

  • 東海道・山陽本線(琵琶湖線JR京都線JR神戸線):野洲 - 加古川
    • 日中は京都 - 西明石間で運用。草津・加古川乗り入れは平日朝ラッシュ、野洲乗り入れは毎日最終電車のみ。普通電車として運転される。

  • 福知山線JR宝塚線):尼崎 - 篠山口
    • 日中は尼崎 - 新三田間で運用。篠山口乗り入れは朝晩のみ。基本的に大阪で折り返すか、JR京都線およびJR東西線・学研都市線と直通。普通電車・快速として運転される。
  • JR東西線・片町線(学研都市線)・関西本線大和路線):尼崎 - 京橋 - 木津 - 奈良
    • JR神戸線・JR宝塚線と直通運転するほか、学研都市線内のみの運用もあり。普通電車・区間快速・快速として運転される。早朝・深夜に限り木津 - 奈良間も走る。

6連編集

  • 和田岬線(兵庫 - 和田岬間)
    • 2022年(令和4年)12月6日、突如SNS上で明石支所構内で207系貫通6連が組成されているという情報が出た。それから約3ヶ月後、公式より和田岬線専用103系R1編成(6連)が引退するという旨の発表がされ、以降は専用のX1編成が運用に就いた。同1編成は本来は4連であったT3・T18編成(久しく使用されていなかったモハ207-1032が組込まれている)から片側の先頭車1両ずつを外し、6両に組み直したもの。
    • 余った片側の先頭車各1両は2連Y1編成を組成。現在は休車扱いを受けている。
    • T3・T18編成のそれぞれの元の併結相手であったS3・Z19編成はペアを組んで運用に就いている。
    • 103系時代は検査時代走で207系が使用されていた。付属3連を2本繋げた6連、土曜ダイヤ若しくは休日ダイヤでは3連単独。この場合は方向幕は用意されず、行先は表示されなかった。

過去の使用路線




編成・車両形式編集

  • クモハ207形
    • 京都寄り先頭に連結される制御電動車。パンタグラフ・主回路機器を搭載。0番台には存在しない。2025年(令和7年)時点で3連のクモハ207形は和田岬線での代走に充当される場合を除き、原則先頭に立つことはない。

  • モハ207形
    • 0・500番台:パンタグラフと主回路機器、空気圧縮機を搭載する中間M車。0番台は単独若しくはモハ206形とユニットを組んで使用。500番台(0番台改造)は1500番台とユニットを組んで運用される。
    • 1000・2000番台:パンタグラフと主回路機器を搭載する中間M車。単独で使用。女性専用車両。
    • 1500番台:モハ207形500番台とユニットを組んで使用される中間M車。1000番台からの改造車(改造時にパンタグラフを撤去)と当初から1500番台として製造された車両(登場時より乗降ドアに複層ガラス採用)がある。女性専用車両。

  • モハ206形
    • モハ207-0番台とユニットを組んで使用される中間電動車。モハ207形0番台からパンタグラフ・空気圧縮機・静止型インバータを省略。女性専用車両。

  • クハ207形
    • 京都寄り先頭に連結される制御車。0番台のみ存在。当初から電気連結器を装備した編成は100番台と区別されたが、後に試作編成以外の0番台にも電気連結器が装備された。1000・2000番台はクモハ207形がこの位置に連結されるため、存在しない。

  • クハ206形
    • 西明石・新三田寄りの先頭に連結される制御車。0番台は試作編成のみで、全Z・H編成は100番台が連結されている。2000番台は連結面の南側に車椅子スペースがある。2010年(平成22年)3月以降、4連のクハ206形は試運転を除き、営業運転で先頭に立つことはない。

  • サハ207形
    • 付随車。0番台は試作編成に2両のみ存在。1000・2000番台には1編成につき1両連結されている。1000番台T1 - T14編成のサハ207形は、製造当初は6連に連結されていたため、空気圧縮機付1100番台。

最盛期の組成編集

#XXX」は「XXX番台」を示す。斜字は女性専用車両。

←京都・木津・奈良(学研都市線経由) / 西明石・新三田→

←奈良(おおさか東線経由。直通快速) / 新大阪→


0番台

編成
F1クハ207-1モハ207-1モハ206-1サハ207-1サハ207-2モハ207-2クハ206-1
Z1 - Z16クハ207-#0モハ207-#0モハ206-#0クハ206-#100---
H1 - H16クハ207-#100モハ207-#500モハ206-#1500クハ206-#100---
Z17 - Z23クハ207-#100モハ207-#0モハ206-#0クハ206-#100---

※F1編成は量産先行車


  • 1000番台
編成
T1 - T14クモハ207-#1000サハ207-#1100モハ207-#1000クハ206-#1000
T15 - T19クモハ207-#1000サハ207-#1000モハ207-#1000クハ206-#1000
S1 - S55クモハ207-#1000サハ207-#1000クハ206-#1000-

※T18編成はモハ207-1032号車を抜き取り、暫定3れ㎜で運用されていた。


  • 2000番台
編成
T20 - T30クモハ207-#2000サハ207-#2000モハ207-#2000クハ206-#2000
S56・S57クモハ207-#2000サハ207-#2000クハ206-#2000


体質改善工事編集

2014年(平成26年)9月出場Z22編成を皮切りに体質改善工事が開始。


主な改造内容は以下の通り。

  • 221系同様前照灯がHIDランプに変更。一部編成はLED前照灯に変更。
  • 前面カラーデザイン変更。
  • 行先表示器フルカラーLED化及び号車表示増設。種別幕はそのまま。
  • 化粧板貼替・消火器を座席下に移動。
  • 座席バケットシート化・袖仕切り大型化。
  • 座席定員を利用実態に合わせ7→6人掛けに変更。
  • スタンションポール新設。座席間は3・4人目の間に挟んでいる肘掛状仕切板との一体構造。
  • 室内灯を蛍光灯カバー付→コイト工業製反射式LED灯に更新換。
  • 主制御器電子部品を総取換。0・500番台は三菱電機、1000・1500番台は東芝がそれぞれ担当。
  • 補助電源装置更新。
  • 主電動機を換装し、センサレス制御化(0・500番台の一部編成のみ)。
  • 運転台計器類(圧力・速度・電流・電圧)をデジタル表示山本アナログ針式に交換(2000番台は当初からアナログ針)。先頭に出る機会がほとんどない3連のクモハ207形及び4連のクハ206形は対象外。それ以外で交換されなかった先頭車も存在。

なお、量産先行車F1編成(クハ207-1 - モハ207-1 - モハ206-1 - サハ207-1 - サハ207-2 - モハ207-2 - クハ206-1)は当初から体質改善工事対象外とされており、2022年4月6日に吹田総合車両所に廃車回送された。


体質改善工事について少々こぼれ話編集

  • 体質改善工事を受けている編成はVVVFがIGBTとなっているが、T19・S39編成は未更新のまま(GTOで)出場した。また、その2編成は前面行先表示器が側面同様ある一定の速度以上で消えるといった他には見られない特徴もあった(インバータが更新されているか否かで区別するために表示器をそうしたのではという推測もあるが、詳細は不明)。現在は2編成共に更新されているため、見ることが出来ない(今後また出て来る可能性もなくはないが)。

ㅤㅤㅤ

───が、今度は別の形で特殊な更新車が出て来た。

インバータは更新されているが、車内照明がそのままというもの。そのせいで更新車でありながら車内は未更新時代の暖かみがある雰囲気が出ている。

コストカット等といわれてたりする(らしい)がこちらも詳細は不明。2025年1月時点ではまだいるが(何なら工事受けて増加していたり)、こちらもいつまでいるか分からないため、記録する方はお早めに。



第2のリニューアル?編集

2023年2月下旬に奈良支社所属221系種別幕換装が話題となったが、それから約2週間後の3月8日、207系にも種別幕LED換装車が誕生したという目撃ツイートが出た。最初の搭載車はS16+Z23編成。221系と異なり。こちらは似合ってるや違和感ないといった感じで概ね好評のようである。一方でまたJR西日本の特徴的なフォントが減って行くといった声もある。



JR福知山線脱線事故編集

2005年(平成17年)4月25日午前9:18頃、同線(JR宝塚線)塚口→尼崎間で宝塚発同志社前行上り快速5418Mが右カーブで脱線。先頭側2両が進行方向左側にあるマンションに衝突した。事故に遭ったのはZ16編成(4連)+S18編成(3両)の7両。この列車はZ16編成を先頭に学研都市線京田辺まで併結後、同駅でS18編成を分離。Z16編成が単独で同志社前まで向かう予定であった。Z16編成先頭車がマンション1Fの駐車場に横転して激突。前から2両目がマンション側壁に衝突。3・4両目も脱線し、S18編成も最後尾及び2両目の後ろの台車を除き、全車脱線した。


Z16編成4連は事故当日に車籍を抹消され、復旧の際に現場で廃車解体された。S18編成は人力で塚口に回送。DD51形ディーゼル機関車牽引で宮原総合運転所(現・網干総合車両所宮原支所)に搬入された。その後、3両が兵庫県警に押収され、前4両の台車と共に保管された。2011年(平成23年)2月1日付で神戸地方検察庁が保管していた編成をJR西日本に返還した。2018年(平成30年)11月17日、同社は解体されたZ16編成を含め、静態保存する意向を発表した。


900番台との関係編集

旧国鉄が1986年にVVVFインバータ制御試験のために試作し、常磐緩行線に投入した207系900番台とは形式が同一なだけで何の関係もない。


関連タグ編集

JR西日本

東海道本線 山陽本線 JR京都線 JR神戸線 福知山線JR宝塚線JR東西線 片町線学研都市線おおさか東線


103系 201系 205系

  • 321系:後継車両。分割運用には最初から対応していない。

207系900番台

  • 209系:本系列より少し後れて登場したJR東日本通勤車両。コンセプトは違えど、ある意味同期の様な形式で、両者を比較する特集が鉄道雑誌で組まれたことがある。

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