釜屋すずめ
かまやすずめ
北宇治高校の女子生徒で、主人公の黄前久美子のふたつ下の代にあたる新1年生。吹奏楽部に所属し、低音パートでチューバを担当している。
角状にセットしたツインテールと大ぶりな丸眼鏡が目を引くお調子者で、いつも賑やかな振る舞いのもとに周囲を振り回している。また、彼女は高校から吹奏楽部を始めた初心者であるものの、持ち前の要領のよさと熱意を活かした成長スピードには驚くべきものがある。
もともと南中学校のバスケ部で活動していたすずめは、高校に進学した折に新たな挑戦をしてみたいと思い立ったことや、自身の姉である釜屋つばめから勧めを受けたことなどによって、親友の義井沙里や針谷佳穂、上石弥生たちを連れて吹奏楽部の見学に訪れる。そうして低音パートの新たなメンバーになって以降は、彼女はチューバ組の先輩にあたる加藤葉月や鈴木美玲、鈴木さつきたちの熱心な指導によって着実に経験と実力を積み重ねていくとともに、部長の久美子をはじめとする多くの人間を裏からかき回すトリックスターのような活躍を見せるようになる。
容姿
角状にセットしたツインテールにカラフルなヘアピンをいくつも突き刺した、目鼻立ちのはっきりとした快活な女子生徒(最終楽章前編、52ページ、146ページ、162ページ、221ページ、最終楽章後編、29ページ)。その両目を彩る大ぶりの丸眼鏡にはさまざまなバリエーションがあり、ピンクやゴールド、ホワイト、ブラックといった何種類もの眼鏡を日によってかけ替えている(最終楽章前編、136ページ、182ページ、221ページ、最終楽章後編、210ページ)。ほかにも、TVシリーズでは制服の上からカーディガンを着用しており、こちらも日によってさまざまな色合いのものを見せている。
ニカッと八重歯を見せる屈託のない笑顔や、学校指定のジャージをラフに着崩すお洒落のセンス、毎日入念にセットされているヘアスタイルなどをまとめた彼女の印象は、奇抜さとともに親近感を覚えるようなものとなっている。(最終楽章前編、52ページ、136ページ、最終楽章後編、95ページ、短編集3巻、51ページ)
性格
いつも明るく元気いっぱいなお調子者で、持ち前のノリと勢いに任せてしょっちゅう周囲を振り回している(最終楽章前編、54〜55ページ、65ページ、短編集3巻、21〜22ページ、51ページ)。彼女はしばしばしょうもない親父ギャグを思いついて繰り出したり、古典から引用した即興のネタを披露するなどしているものの、それらは彼女自身の秘める頭の回転の速さや知識の豊富さを裏づけるものとなっている。(最終楽章前編、110〜111ページ、181〜182ページ、短編集3巻、21ページ、TVアニメ版3期2話)
また、彼女は、普段は嫌なことがあると遠慮なく直言するといった好き放題な振る舞いを見せているものの、同時にそれによって他者を不用意に傷つけないようにするための配慮や、従うべきところはしっかりと見極めるような行儀のよさも備えている。それらのやんちゃかつ協調性のある特質によって、低音パートの先輩たちからは「パンダみたいな子だ」などと評されている。(最終楽章前編、164ページ、173ページ、短編集3巻、49ページ)
なお、TVシリーズですずめの声をあてている夏川椎菜は、設定資料や実際の収録を通して見たすずめの印象について、「何も考えていないようで、けっこうちゃんと考えているし、周りが見えていないようで、意外と細かいことに気づけるタイプ」と語っており、ほかの新1年生役のキャストたちもその見立てに対して「飄々(ひょうひょう)としているけれど、洞察力も高い、策士な子」というように同意を示している。また、同氏は、そのようなすずめの特質の根底には姉のつばめの面倒見のよさも影響しているのではないかと見ており、「お姉ちゃんに似ているところもあるのかな」と姉妹のつながりにも想像を巡らせている。(参考記事)
その他
- すずめは元バスケ部の出身ということもあり体力と運動神経は抜群で、バスケ部に在籍していた当時から自身の鍛えられた腹筋を誇っている。また、彼女は中学時代から弥生とともに体育の授業などで活躍していたほか、北宇治高校の吹奏楽部に入部して以降も、コンクールシーズンの厳しい練習にもくたびれることなくついていっている。(最終楽章前編、146ページ、154ページ、最終楽章後編、101ページ)
- 釜屋家は毎朝7時から家ぐるみでラジオ体操を行うことを日課としており、すずめ自身も「ラジオ体操は日本の心」と豪語するほどに慣れ親しんでいる。なお、吹奏楽部に入部して以降は、朝練習を行うためにラジオ体操を抜けている。(最終楽章前編、220ページ)
- 6月のあがた祭りにおいて、コントラバス担当の先輩である月永求が低音パートの皆とは別に副部長の塚本秀一と一緒に遊びに行くことを告げた際には、「塚本先輩? それはそれで怪しいですね」と両目を爛々(らんらん)と輝かせて興味を示している。(最終楽章前編、284〜285ページ)
すずめは高校に進学してからチューバを始めた完全な初心者であり、入部した当初は木管楽器と金管楽器の違いすらあやふやな程度の知識しか持ち合わせていなかった(最終楽章前編、73ページ)。しかしながら、実際に練習を始めてみると生まれ持った要領のよさと「お姉ちゃんに褒められたい」という執着心からくる活力を遺憾なく発揮し、目を瞠(みは)るほどの急ピッチでめきめきと実力を向上させている。(最終楽章前編、108ページ、146ページ)
もともと運動部員として良好な体躯を誇っている彼女は、優れた肺活量を存分に活かしたダイナミクス(音量)の幅広さを持ち味としている。最大音量の7割ほどでさえ、すでに葉月と美玲を合わせたそれに充分太刀打ちできるほどのパワーを有しており、全力で吹奏した際には「巨大なトラックの走行音」「地響きのような振動の塊」などと形容されるほどの圧倒的な大音量を響かせている(最終楽章前編、148ページ、154ページ、最終楽章後編、28〜29ページ、268ページ、TVアニメ版3期7話)。しかしながら、彼女は高校から楽器を始めた初心者ということもあって演奏表現のための細かなコントロールやチューニングの際の音程の高低の把握などについてはまだまだ苦手としており、これらの技術については美玲やさつきといった知識と経験のある先輩たちから教わって習得に努めている。(最終楽章前編、272ページ、最終楽章後編、28ページ)
すずめが演奏しているチューバのモデル(型番)は、YAMAHA YBB-641Ⅱ(「『響け!ユーフォニアム』×ヤマハ スペシャルサイト」内の紹介)。学校の備品であるロータリー式のチューバで、先年度の卒業生である後藤卓也と長瀬梨子が使っていたものを弥生とともに受け継いだ形となっている。
南中学校に通っていた当時のすずめはバスケ部のレギュラーメンバーとして活動するかたわら、沙里や佳穂、弥生といった異なる部活に所属する親友たちと交友を重ねていた(最終楽章前編、54ページ、146ページ、短編集3巻、50ページ)。4人そろって北宇治高校に進学したのち、彼女は姉のつばめから吹奏楽部を勧められたことや、高校では新しいことをやってみたいというチャレンジ精神に触発されたことで、「いいやんいいやん、全員で入っちゃお!」と親友の沙里たちを連れて吹奏楽部を訪れることになる。(短編集3巻、50〜51ページ)
そうして北宇治高校の吹奏楽部を訪れ、「一緒のパートメンバーになれる確率が高い」という理由から低音パートを紹介された際には、すずめは同パートのメンバーを前にして自己紹介を行ったり、パートリーダーの川島緑輝による吹奏楽部講座を受け、その結果として和気あいあいとした同パートの雰囲気を気に入る形で入部への意向を固めている。(最終楽章前編、52〜67ページ)
正式に吹奏楽部に入部し、低音パートの新たなメンバーとなったすずめは、割り当てられた楽器の音出しの時点からさっそく佳穂や弥生よりも頭ひとつ抜きん出た習熟ぶりを見せており、パートの先輩たちを驚かせている(最終楽章前編、108ページ、TVアニメ版3期2話)。その後も彼女は吹奏楽部経験者である親友の沙里とともに毎日朝早くから夜遅くまで自主練習に励んだりするなど、熱心な取り組みのもとに日々着々と腕を磨き続け、ついには初心者の1年生でありながら吹奏楽コンクールA編成部門のメンバーのひとりに選ばれるという類を見ない快挙を成し遂げるに至っている。(最終楽章前編、135ページ、162ページ、320ページ、TVアニメ版3期6話)
なお、彼女のコンクールメンバーへの選定は、結果的にさつきやユーフォニアム担当の久石奏といった経験者の先輩たちの落選と引き換えになっているものの、この人選を決めた顧問の滝昇は「バンド全体の音量のバランスをとるために、大音量が強みの彼女を優先してメンバーに選んだ」という合理的な判断に基いて行った旨を明かしている。(最終楽章前編、333~336ページ、最終楽章後編、193ページ)
釜屋つばめ
パーカッション(打楽器)パートに所属しているふたつ上の先輩。3年生。
すずめはつばめのことを「お姉ちゃん」と呼んでおり、対するつばめは「すずめ」と呼んでいる。
つばめはすずめの姉にあたり、すずめは常日頃から彼女を立派な姉として強く慕っている(最終楽章前編、64ページ、153ページ、158ページ、223ページ)。すずめはときおり、奥ゆかしく引っ込み思案なつばめのために自ら進んでひと肌脱ごうとする一幕もあり、すずめはそのたびにつばめから「もう、すずめは黙っといて」などと制止を求められているものの、「黙りませーん」としてまともに取り合う様子は見せていない。(最終楽章前編、153ページ、156ページ、TVアニメ版3期2話)
総じて、つばめに対して重度のシスコンぶりをこじらせているすずめは、大好きな姉のために暴走することもしばしばあるものの、その執着心からくる強力なエネルギーは自身の演奏力の向上をはじめとする部への貢献にもつながっている。(最終楽章前編、147ページ、154ページ、325ページ、最終楽章後編、96ページ、短編集3巻、194〜195ページ)
義井沙里
クラリネットパートに所属している同級生。新1年生。
すずめは沙里のことを「サリー」と呼んでおり、対する沙里は「すずめ」と呼んでいる。
二人は互いに保育園以来の気心の知れた仲であり(短編集3巻、49ページ)、すずめは沙里のことを得意の親父ギャグでからかったり、一緒に朝晩の自主練習に付き合うなどして賑やかに過ごしている(最終楽章前編、135ページ、146ページ、163〜164ページ、181ページ)。また、彼女の真面目すぎるがゆえにひとりで何でも抱え込んでしまう弱さや、プライドが高く権威に付き従いがちな一面をよく知っているすずめは、彼女の知らないところでさり気なくフォローに徹したり周到な手回しをすることもある。(最終楽章前編、186〜188ページ、221〜223ページ)
長年の友達同士の付き合いを通して沙里のさまざまな姿を見てきたすずめは、彼女の自意識過剰で面倒な性格を長所として捉えるとともに、「なんの欠点もない人とか、めっちゃおもんないなって思いますし。プラスとマイナスが合わさってデコボコしてる人間が好きなんです」という前向きな想いを抱くようになっている。(最終楽章前編、223ページ)
針谷佳穂
低音パートでユーフォニアムを担当している同級生。新1年生。
すずめは佳穂のことを「佳穂」と呼んでおり、対する佳穂は「すずめ」と呼んでいる。
保育園から交友のあった親友のひとりであり、当時は別々の部活に所属していたものの、高校からは同じ部活で一緒に活動することになる。すずめにとっての佳穂は、自身がたびたび繰り出すしょうもない親父ギャグをその都度笑ってくれる存在であり、沙里や弥生も含めた4人組グループの雰囲気を和らげてくれる彼女のことを大切に思っている。(最終楽章前編、111ページ、186ページ、最終楽章後編、30ページ)
また、吹奏楽部の練習がサンライズフェスティバルのパレード演奏に向けて本格化するにつれ、運動の不得意な初心者である佳穂がしょっちゅう怒られる様子を目にしていたすずめは、練習の裏で人知れず泣いていた彼女の辛さに心をいたすような様子も見せている。(最終楽章前編、186〜188ページ)
上石弥生
低音パートでチューバを担当している同級生。新1年生。
すずめは弥生のことを「弥生」と呼んでおり、対する弥生は「すずめ」と呼んでいる。
すずめと弥生もまた、沙里や佳穂と同様に保育園時代から交友のあった幼馴染であり、互いに主張の強い性格であることも相まって、小学生のころには些細なことで喧嘩をして「ゼッコーや!」と啖呵(たんか)を切るような一幕も見せている(短編集3巻、49ページ)。高校生になった現在では、彼女たちは同じ部活で一緒に活動を始めるとともに、仲良しの4人組グループのなかでボケとツッコミの役目を確立し、事あるごとに二人で漫才めいたしょうもない掛け合いを繰り広げている。(最終楽章前編、110ページ、259ページ、TVアニメ版3期2話)
また、二人は4月に行われた低音パートの歓迎会(たこ焼きパーティー)で具材にキムチやタバスコを混ぜるといったロシアンルーレットを強行したり、6月のあがた祭りでは屋台で買ったイチゴとブルーハワイのかき氷をひとつに混ぜ合わせるといった、悪ノリによる愉快な一幕も見せている。(最終楽章前編、299ページ、短編集3巻、19〜20ページ、23〜24ページ、224〜225ページ)
加藤葉月
低音パートでチューバを担当しているふたつ上の先輩。3年生。
すずめは葉月のことを「葉月先輩」と呼んでおり、対する葉月は「すずめちゃん」と呼んでいる。
低音パートのチューバ組を束ねる葉月に対して、すずめは元運動部つながりという相性のよさもあって素直に付き従っている(最終楽章前編、155ページ)。また、6月のあがた祭りではパートぐるみで遊びに出かけて祭りを満喫していたり、続くコンクールシーズンでも葉月の威勢のよさに乗っかって元気に盛り上がるような様子も登場している。(最終楽章前編、299ページ、最終楽章後編、30ページ)
鈴木美玲
低音パートでチューバを担当しているひとつ上の先輩。2年生。
すずめは美玲のことを「みっちゃん先輩」と呼んでおり、対する美玲は「釜屋さん」と呼んでいる。
高校から楽器を始めた初心者であるすずめは、パート練習において経験者の先輩である美玲から音量・音質のコントロールをはじめとするいくつかの指導を受けている(最終楽章前編、154ページ)。あわせて、すずめは美玲が自身の演奏力の向上のために日々研鑽(けんさん)を積んでいることをよく知っており、彼女からの指導に対しては姿勢を正して聞くように努めている。(最終楽章前編、274ページ、短編集3巻、20ページ)
鈴木さつき
低音パートでチューバを担当しているひとつ上の先輩。2年生。
すずめはさつきのことを「さっちゃん先輩」と呼んでおり、対するさつきは「すずめちゃん」と呼んでいる。
すずめはさつきに対しても経験者の先輩として演奏の指導を受けており、コンクールメンバー選抜のためのオーディションに向けた練習のなかでチューナーの使い方に関する手ほどきを受けるなどしている(最終楽章前編、271〜272ページ、最終楽章後編、28ページ、TVアニメ版3期6話)。また、その後の吹奏楽コンクール京都大会(府大会)では、すずめがA編成部門のメンバーでさつきがB編成部門のメンバーという複雑な関係になってしまったものの、夏合宿での練習中には互いに「Aメンバーになってほしい」という願望と「でも大事な人(つばめ・美玲)と一緒にAメンバーになりたい」という張り合いを織り交ぜた、ライバルの意識を向け合うようになっている。(最終楽章後編、94〜98ページ、TVアニメ版3期8話)
黄前久美子
低音パートでユーフォニアムを担当しているふたつ上の先輩。3年生。
すずめは久美子のことを「久美子先輩」と呼んでおり、対する久美子は「すずめちゃん」と呼んでいる。
北宇治高校の吹奏楽部への体験入部に先立ち、姉のつばめからあらかじめ話を聞いていたすずめは、実際に吹奏楽部の部長である久美子と初めて顔を合わせた際に、姉の言葉どおりの優しい人であったと喜びを覚えている(最終楽章前編、64ページ)。すずめはその後も吹奏楽部の活動に取り組むなかで、姉のつばめのパレード演奏における配役に不満を示すために久美子に直談判を持ちかけるなど、持ち前の行動力のもとに積極的に顔を突き合わせている。(最終楽章前編、151〜158ページ)
また、パレード演奏に向けた練習が次第に強度を増していくなか、自身の親友である沙里や佳穂が辛い思いをしている様子を目の当たりにした際には、部長である久美子が沙里たちに働きかけるように裏で手を回すという策略じみた一幕も見せている。もっとも、これは親友である沙里たちを助けたいという純粋な想いが行動の根底にあり、すべてが解決したのちには久美子に対して深く頭を下げながら感謝をしている。(最終楽章前編、186〜188ページ、220〜223ページ、TVアニメ版3期3話)
釜屋つばめ - パーカッション(打楽器)を担当しているふたつ上の先輩。自身の姉である3年生。
義井沙里 - クラリネットを担当している同級生。しっかり者の新1年生。
針谷佳穂 - ユーフォニアムを担当している同級生。笑い上戸な新1年生。
上石弥生 - チューバを担当している同級生。バンダナが特徴的な新1年生。
加藤葉月 - チューバを担当しているふたつ上の先輩。副パートリーダーの3年生。
鈴木美玲 - チューバを担当しているひとつ上の先輩。クールで長身な2年生。
鈴木さつき - チューバを担当しているひとつ上の先輩。小柄で明るい2年生。
黄前久美子 - ユーフォニアムを担当しているふたつ上の先輩。吹奏楽部の部長を務める3年生。
田中あすか - かつてユーフォニアムを担当していた4つ上の代の先輩(卒業生)。明るく賑やかな振る舞いや頭の回転の速さなど似通った点が多い。
新南中カルテット - 上石弥生、針谷佳穂、義井沙里とのカルテット(4人組)タグ。
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