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田南美緒

たなみみお

DTSパブリッシングより刊行された漫画『セルフ・ネグレクト』に収録されている「ひきこもりを30年続けた女」の主人公。作者は榎本由美。
目次 [非表示]

美緒

48歳


配偶者 なし

子供 なし

生活能力 なし



「美緒生きていけないよおおおお」


概要編集

年齢は48歳。1984年の時点で高校1年生の15歳だったので、誕生年は1968年か(早生まれなら)1969年であると思われる。


サブタイトル通り、なんと引きこもり生活を30年も続けている無職の女性。

元はごく普通の家庭である田南家の第一子であり、両親、妹の優香(ゆうか)、弟の祥吾(しょうご)の5人家族であった。


1984年に第一志望のI県区立S高等学校の入試に失敗。1986年に優香がその高校に合格したことをきっかけに自室に引きこもるようになり、進学も就職もせず、約30年間にわたってアニメやゲーム、パソコンでのインターネットに夢中になって家にある冷凍食品や菓子を貪る自堕落な生活を続けていた。

その結果贅肉が幾層にも重なる程の肥満体型となり(さらに糖尿病も発症している)、家族を含めた他人を全く信用できない不安定な性格となってしまった。


高校生の時点では年相応の少女らしい体型(本人は受験勉強で太ったのではないかと気にしていたが)であったことから、その容姿の変化は読者にも非常に大きなインパクトを与えた。


作中のモノローグでは、もともとは「普通」だったと書かれており、高校受験の失敗に加えて、妹の優香が自身が落ちた高校に合格したこと、また高校卒業後の進路の悩みなどが原因で、次第に心を閉ざしていったのではないかと考えられる。

さらに、母親が美緒に対して過保護気味で(優香は母と姉について「共依存」だと評している)、なんでも面倒を見てしまうこと自体が、美緒の自立心や生活能力などの人間的な成長を妨げたとも言える。

なお、父親については美緒の世話を焼く母親に不満を言うだけで、美緒と向き合おうとせず、弟妹達も引きこもる美緒を時折バカにしたような発言を繰り返していた(特に妹とは関係が悪化していったことが直接描写されている)。


もちろん美緒がこうなったのには、受験失敗や家族だけでなく、美緒の生まれ持った気質や、作中では描かれなかった何らかの出来事が関係している可能性が高いが、それぞれのエピソードは決して珍しいことではなく、また大きな出来事とは言い難い。

すなわち、誰もが何かしらの要因で引きこもりになり得るといった主張、メインタイトルの通り「セルフネグレクト」への注意喚起の意図が本エピソードにあると思われる。

実際、美緒のような境遇の人は現実にも存在し、高齢の親が中年の子供を養い続ける「8050問題」として社会問題にもなっている。


本編のオチはネタバレになるので下に記載するが、こちらのリンクからも本編を読めるため、その目で実際に読んで確かめて欲しい。なお、直接的なグロ描写等はないものの、引きこもり生活を続けた人物の悲惨な有様が非常に生々しく描かれているので、苦手な人は十分に注意して閲覧すること。


ネットミーム化編集

『セルフ・ネグレクト』が刊行された約6年半後の2024年の秋、なぜかこの美緒がネットミーム化されるという珍事が発生。『セルフ・ネグレクト』は本エピソードを中心に頻繁にネット広告で流されたことがあったが、「美緒48歳 配偶者なし 子供なし 生活能力なし」のテロップと共にぶくぶくに太った美緒がダンボール箱に囲まれて「美緒生きていけないよおおおお」と悲痛な叫びをあげるラストシーンが印象に残った人が多かったようである。


ネットでも主にこの場面が弄られており、テロップや美緒の台詞もよく改変される。

また、このシーンのみが切り出されているためか『まだ続きがあるかもしれない』と誤解した人、特にこれが冒頭で、以降は美緒の生活再建の様子が描かれていると思った人も少なからずいたようである。


「美緒48歳 ○○なし」というフレーズ、「美緒 生きていけないよおお」というセリフが印象的なためか、大喜利のお題として盛り上がりを見せ、また二次創作イラストについてもメイン画像のように美緒が某霊長類最強女子並みにムキムキになったり、宇宙空間にいったりと、引きこもりだった美緒本人とは全く異なるネタの広がり方をしている。


もっとも、先に掲載したリンク先を読めばわかるように、原作においてはまったく笑えるシーンではなく、むしろ読むだけでかなり憂鬱な気分になるものである。

このため、単にフレーズや美緒の外見のインパクトから「おもしろ画像」と捉えられたのもあるが「凄惨なシーンをあえてネタにすることで暗い気持ちを和らげようとする」という側面もあると言える。


なお、悲惨なラストではあるものの一切の希望がないわけではなく、二次創作の中には、美緒が社会復帰して前向きに生きているその後を描いた作品も多い。


ちなみに前年の2023年にも少しだけ流行していたため、第二次ブームとも言える。

また、テロップから、これを連想した人も少なからずいるようだ。


余談編集

実は作者の榎本由美はpixivユーザーでもある(アカウント


本作では30年の時間が経過しているという設定を反映して、1980年代~2000年代に主流だった機器が少し登場している。(フロッピーディスクやガラケー、Power Mac G4 Cube等)当時の文化に興味がある人にとっても(暗い話が嫌いでなければ)お勧めできるかも知れない。これも美緒が長い年月引きこもっていたことの証左であるが。


ネタにされているラストシーンは美緒はどこか雑味のある絵柄(ほぼラフ画も近い)で黒背景と崩壊しかけている面もあり、逆に美緒の壊れた精神性と「周りどころか神(作者)にさえも見捨てられた」する見方もある。1983年にも拘わらず田南家にはアルファードが存在しているが気にしてはいけない。


関連イラスト編集

ブルアカ漫画1955DIO 120歳

甘奈17歳まとめ




関連タグ編集

セルフネグレクト(セルフ・ネグレクト)

引きこもり

ニート

みんなのおもちゃ ネットミーム(meme)























ここから先は本編のネタバレかつトラウマ描写があるため、注意してスクロールしてください。















覚悟はいいですか?







結末

父親が定年退職から間もない2005年に脳梗塞で急逝し、美緒の弟妹たちは両親の遺産相続の話だけではなく母親がいないと何もできない美緒の世話を考えないとならないようになってしまった。

弟妹たちは渋々ながらも世話をする羽目になるが、人を怖がるため葬儀にも行けず、自分では何もできず散らかすことしかできない美緒に弟妹たちは危機感を覚え始めた。


そして父の死から12年経った2017年、美緒の世話をし続けていた母親もとうとう倒れ、そのまま亡くなってしまった。しかも美緒は倒れたところを目撃したのに「寝ているだけ」と思い込んで現実逃避して放置。結局介護サービスの人が母親の遺体を発見するが、美緒は母親が介護サービスを受けていた事さえ知らなかった。


母の葬儀のため弟妹たちに無理やり斎場に連れ出されたものの、母の死のショックと大勢の人(その中には成長した自分の甥と姪もおり、甥姪は美緒の存在さえ知らなかった)がいる恐怖心から美緒はパニックを起こし、なんとか自宅に帰ってきた後も冷蔵庫に食べ物がない(=自分で食べ物を調達できない)と妹に電話をかけたため、流石の弟妹もとうとう姉に愛想をつかしてしまった。


そこで弟妹たちは彼女の「両親の家に住みたい」という意思を無視、老朽化している上に働いていない美緒は毎年かかる固定資産税を払う能力が無いことから家を売却、美緒の部屋にあるものも含め家財道具は最低限の物を残して処分、勝手にアパートに移す手続きを進めてしまった

糖尿病で透析を受けているため障害年金こそもらえるが、母が残していた貯金や家の売却益などを合わせて財産分与で相当額の遺産を受け取るため、仮に生活保護を申請しようとしても受けられないことから、遺産を入れた通帳を渡し「一人で生きていってください」と美緒を見捨てて逃げていった。


一人になってしまった美緒は、荷物が入った段ボール箱を開けることもできず、食べ物をどうやって調達するかもわからない。美緒は母に助けを求めながら泣きわめく。


「美緒 生きていけないよおおおお」


『美緒48歳』

『配偶者 なし 子供 なし 生活能力 なし……』


黒背景に未開封の段ボール箱を背にし泣き叫ぶ美緒の場面で本編が終了する。


弟妹たちの美緒にした所業も後味が悪く、かつ美緒自身も救われないまま終了したため、本編を見た人達はとてつもないトラウマを抱えることとなる。

本編では描かれないが美緒の行く末は


………我々が知る由もなく、見る術もない。


弟妹たちの行動について

優香と祥吾が美緒を見捨てたことは一見すると非道な行いに見えるので、2人を非難する読者もある程度存在するが、彼らも自分たちと家族の生活を守らなければならないのに精一杯であるので、致し方がない部分があることは念頭に置くべきである。


また、美緒自身も……


  • 家庭内暴力を振るう(外に出るように促した母親に雑誌をぶつけたり、身籠っている妹に向けて包丁を投げつけたり等)。
  • まだ首も座っていない赤子である優香の息子(つまり、自身の甥)を払いのける。
  • 母親の遺体を結果的に放置する(下手をすれば死体遺棄の罪に問われた可能性もあり)。
  • 母親の葬式でパニック状態になり弟妹たちに赤っ恥をかかせる。
  • 上記のような問題を起こしていながら「冷蔵庫に食べ物がない」という理由だけで優香に電話をかける。

…等といった身勝手な問題行動を繰り返していたことも事実であり、正直なところ優香と祥吾が姉に対して良い心象を持てなかったのも無理はない。

むしろ姉の分の遺産を騙し取ったりせずにきちんと分配し、家と土地の売却や引っ越し作業、障害者年金の申請等、それぞれ煩雑な手続きを代理で行った2人を好意的に見る読者も多く存在する。


ただし、主人公に近いポジションで美緒からの「被害」についての描写が明確にある妹はともかく、弟に関してはそのような描写が希薄で、ラストまでは美緒をバカにしている、あるいは放置しているだけの場面が目立つため「便乗して逃げた」感は否めないという意見もある。


弟妹たちの扶養義務について

弟妹が(財産分与や障害者年金申請などの手続きは代行したが)美緒を見捨てた件に関して、法的な問題がないのかについて簡単に解説する。


確かに民法877条において「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と一応定められている。しかしこの規定に法的な強制力はなく、さらに「扶養義務者の余力のある範囲で」とされている。すでにそれぞれ家庭を持っている優香と祥吾の生活にそこまで余裕がないことは明らか(厳密には多少の余裕はあるかもしれないが、ごく一般的な経済状況であれば持病のある成人1人を完全に扶養するほどの余裕はないと見られる)なので、今回のケースでは2人が姉の扶養をしなくても決して違法とはならない。


また、美緒は両親からの遺産を受け取っており(金額は不明だが、当面の生活には困らない程度であると考えられる)、障害者年金を受給できることから経済的にもそこまで困窮してはいないと見られる。懸念事項となる糖尿病の状態についても「他者の介助がなければ生活が困難」という程度ではないと思われることから、扶養の必要性としてはそれほど高くない。


被扶養者が家裁に申し立てをして、扶養者に扶養義務を行わせる判断をさせるケースも存在するものの、美緒にそのような法律の知識はない、仮にあったとしてもそこまでのモチベーションはないと推測され、美緒が家裁に訴えて家裁が介入すること自体ないと思われる。


これらの事情を踏まえると、弟妹のどちらかが「美緒の生活のすべての面倒を見る」という意味での扶養義務は果たされなくても問題がなく、また美緒自身もその義務を求めることは(手続上も、心情的にも)おそらくないため、問題はないと言える。


法律は万事に自動的に行使されるものではなく、『司法や行政が事態を認識する』というプロセスを踏まない限り適用されない。その事態を認識させる手段が110ダイヤルや法律関係者への相談・依頼となるが、最低限の知識や自立心を持たない人間はそこをまず認識できなくなってしまうのである。


なお、本項は「美緒がその後再起しなかったら」という前提に基づいて述べられたが、そもそも作中では美緒が無事に立ち直って普通に生活を送れるようになる将来は否定されていない(例えば就労不可能な障害を負っている、財産を全て取り上げられホームレスになっているなどの展開ではない)ことも留意すべきである。名実ともに扶養の必要なく過ごせるようになる可能性も(高くはないにしろ)ある。



参考ページ


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