概要
何かしらの攻略情報を書いた本のことである。
多くはテレビゲームやオンラインゲームなどビデオゲームのものが多いが、パチンコやスロットなどギャンブルの攻略情報を書いたものも攻略本とされる事が多い。
その他、特定のゲームの熱烈なファンが個人的にそのゲームの攻略情報を編纂して作成した評論・情報系の同人誌も、広義的には攻略本の一種といえる。
ゲームなどの内容が扱われている場合、その構成としてストーリーの流れ、マップ、データベースなどが書かれているのが特徴であり、90年代までは開発者インタビューや設定画などが掲載されることもあった。インタビュー、設定画は近年は資料集として別に発売される方向が多かった。一方で「設定資料集兼攻略本」と言う体裁で出ている物もある。
またプレイヤーが馴れていない新規のシステムやギミック、操作方法等がある場合、ゲームの説明書そのものが攻略本のような作りになっていることもある。(例としては初代ゼルダの伝説など
攻略情報は近年ではインターネット、特にwikiの急速な発達と普及により、攻略本よりも遥かに早くかつ膨大な情報が集まることも多いため、攻略本その物が登場しないタイトルも多い(スマホ向けゲームはこの傾向が特に顕著である)。
実際に2000年代に入ると、折からの出版不況も相まって攻略本の売り上げそのものは下がっている傾向にあり、そのため上述の開発者インタビューや設定画などのファン向けの情報や、開発者でしか知り得ないような詳細なデータ(アルティマニア等が良い例)、隠しキャラに代表される秘匿された要素の正確な出現情報を掲載してwikiなどとの差別化を図る動きもあるようである。
また、RPGなどでは「スタートガイド」や「最速攻略本」と題して発売日当日にゲームの中盤までを攻略したものを発売というケースも昔からあり、最近の傾向として挙げられるのはゲーム内で使えるDLCを購入特典として封入するケースも目立ってきている。
攻略本は一部を除けばゲームメーカーと出版社は別々の関係であり、メーカーからどれだけ協力が得られるかによって情報量等に差が出ることもある。
そのため、あまりメーカーから情報がもらえない場合には製作スタッフにとっては地道な検証とプレイが要求されることになり、場合によっては明らかに検証不足…というか誤情報が掲載されているケースさえある。
1980年代から90年代の攻略本華やかなりし時期は特にこの傾向が強く、様々な出版社から様々な攻略本が刊行されたが、メーカーからの情報量や攻略ノウハウの不足でデマ同然の情報を掲載してしまったり、変なお遊び企画でお茶を濁すなど迷走の痕跡がありありと見て取れるなど、粗悪なものも少なくなかった。
速度重視のためか誤字脱字も多かったり、ゲームやアニメ、漫画などのエンターテイメントに詳しくない者が書いているケースもありファンからは冷ややかな目で見られる物もあった。
また、資料を融通してもらっているような攻略本でも、近年においてROM内部の解析を行う者により実際の数値や装備品の効能が全く違う事が発覚したケースもあり、作品によっては長い間だまされていたプレイヤーも多かった(ロマンシングサガシリーズなど)。
このほか、当時の出版社や担当ライターによって独特のクセや奇妙なノリが散見されるものも多く(「スーパーロボット大戦」の旧シリーズのものが有名。特にコレとか)、シリーズ物や続編のゲームの攻略本の場合、前作をプレイしていること前提で文章を書いていて続編から入ったプレイヤーを置いてきぼりにしているものもあり、「粗悪ではないが読む人を完全に選ぶ」攻略本も少なくなかった。
…しかし、2000年代に入ると前述の通りネットの普及と長引く出版不況により攻略本業界も淘汰が進んだため、現在も「生き残って」いる出版社の攻略本は軒並み手堅く無難なつくりであることが大半である。一方でエンターテインメント的な読み物として物足りないという声もあり、バランスが難しい所である。
また、2010年代半ばに入るとアフィリエイト収入目当てに誤情報を平気で掲載する攻略サイトも増えたため、手堅い内容の攻略本が再評価されつつある。
本当かどうかはっきりしなかった仕様が攻略本で明らかになるケースも出てきており、一度逆転した攻略本とweb攻略サイトの地位がある意味では回帰した雰囲気もある。
中には、Wikiを運営しておきながら収益が見込めないとなるとゲーム情報の更新が滞るケースも多くネット上で検索しても情報が追えない事も多い。
また、有志によるWikiもゲームにより精度がばらつく傾向があり、プレイヤー人口が多ければ更新も多く詳細な情報が載っているが、あまりいないゲームは最低限の事だけが書かれている事もあり、マイナーなゲームほど攻略本需要がある状況と言える。
昔ながらのレトロゲームの攻略系ホームページも管理人の高齢化やゲーム離れなどで閉鎖されるケースが増え、そうしたことを受けて昔の攻略本が再評価される風潮もある。
また、攻略本の表紙を見てゲームを知ったり、スタートガイドなどは何をしたら良いのかわからない初心者向けにイラストや画像の分量を多くしてわかり易くしているので、プレイヤー数増加の導線としての効果も見込める。
レトロゲームの中でもマイナー作品の場合は攻略サイトすら存在しないということもざらなので、ある意味では攻略本が無いと基本操作方法すら把握できないといって良い。
取扱説明書付きソフトまで買う層はその限りではないが、余程専門的なショップでない限り取扱説明書まで付いた完品を扱う場所は少ない。
マイナーゲームの攻略本となるとそもそもまともに中古で流通していないことが珍しくないため、プレミア価格が付くことも普通にある。
特殊な需要としては、ゲーム実況者がゲームの公式放送などに呼ばれた際のことを考え、用語などの公式表現を勉強したい層が攻略本に手を伸ばす場合がある。
もっとも、今日では公式も非公式の擁護にあまり目くじらを立てない傾向にあるため、公式用語についてはそこまで神経質になることもないと思われる。
若者のパソコン離れによってスマートフォンによる通信制限や通信料高騰の問題も表面化し、それを避けられる紙媒体の攻略本の価値もある意味では上がった。
- ただし、これだとアップデートに対応しづらいというデメリットもある。実際に攻略本に「いつからのアップデートの情報は掲載しておりません」と記載される事も多い。現在はスマホを主流としたソーシャルゲーム以外でもパッチの配信などでデータが修正、追加される事も多いため、このデメリットは無視できない。パッチごとに攻略本を出す手もあるが、現実的では無いのが実情である。
なお、メーカーと出版社が正式に提携し、メーカーから出版社へ正式に情報を提供してもらって作られた攻略本は一般的に「公式」の名が入ることが多く(例として「公式攻略本」「公式ガイドブック」など)、現行の攻略本は大半がこの形式である。上記の「説明書」はこの分野の走りとも言える。
そのほか、同じゲームの攻略本を「上巻」「下巻」と分けたり、「ガイドブック」にはじまり「基礎知識編」「攻略編」「コンプリートガイド」など、小出しの情報を複数冊に分割してリリースし、多数を買わせようとする魂胆が透けて見える商法のものもあり、俗に「攻略本商法」などと蔑称気味に呼ばれることがある(とりわけ、「某竜探索」シリーズや「某最終幻想」シリーズのものが悪名高い)。
ただ、この商法は「ゲームの情報量の多さに対するページ制約の都合上、ある程度分冊しての刊行は致し方ない」と擁護する声もあるため、一概に悪質な商法とも言い切れない。
事実、ゲームハードの技術向上に伴うゲームそのものの情報量は現在進行形で増加の一途を辿っており、ファミコンの頃は「ポケットサイズの一冊の攻略本に、異なる複数のゲームの攻略情報が掲載されている」のも珍しくなかったのだが、今やたった一作のゲームに対し「タウンページや電話帳より分厚い500ページ越えで上下巻刊行」でないと情報を掲載しきれない代物も存在するため「分割もやむなしなゲームも存在する」のもまた事実ではある。
最終的には他の出版物と同様に、電子化の道を辿るのかもしれない。だが、攻略ブログや攻略サイトと異なり、紙のデータがいきなり消えて無くなる事が無いというメリットは揺るがないであろう。
主なシリーズ
- 任天堂公式ガイドブック(発行元:小学館)
- ワンダーライフスペシャル(発行元:小学館)
- ファミ通特別編集シリーズ
- 解体真書
- アルティマニア
- スクウェア・エニックスの産地直送公式ガイドブック
- エニックスオフィシャルガイドブック
- ハイパー攻略シリーズ(発行元:光栄)
- ザ・コンプリートガイドシリーズ(発行元:KADOKAWA)
- NintendoDREAM特別編集(発行元:徳間書店)
- Vジャンプブックスゲームシリーズ
- 完璧攻略シリーズ(発行元:双葉社)
- ゲーム必勝法シリーズ(発行元:ケイブンシャ ※同社の「ケイブンシャの大百科」シリーズにも攻略本に近いテイストのものがある)
- 完全攻略本シリーズ(発行元:徳間書店/ファミマガ編集部)
- ポケットモンスター公式攻略本(発行元:メディアファクトリー→オーバーラップ)
- オールアバウトシリーズ(発行元:電波新聞社)
など
その他の用法での攻略本
- アンメルツPによる鏡音リンの楽曲
関連タグ
公式ガイドブック 公式パーフェクトバイブル 公式コンプリートガイド
君の目で確かめてくれ!:ゲームクリアが目的である攻略本の読者を落胆させる言葉。
「攻略本」を駆使する最強の魔法使い:小説家になろうで読める追放ものの一つで、攻略本が作中で主人公が使用するキーアイテムとして登場している。