幕之内一歩
まくのうちいっぽ
「強いって、いったいどういうことだろう?」
本作品の主人公。1973年11月23日生まれ、身長164㎝。
鴨川ボクシングジム所属のプロボクサー。元ジャパンフェザークラスチャンピオン。
現時点の戦績は26戦23勝(23KO)3敗、WBC世界ランキングは7位。
普段は温厚で控えめ・気弱な性格で争い事を全く好まないが、ボクシングに対しては誰よりも真摯な姿勢で取り組んでおり、ボクシングや彼自身が懇意にしている人間(特に、鴨川源二・宮田一郎)を侮辱すると怒りを露にする。また、集中すると周りのことが目に入らなくなる。
宮田とは、鴨川ジムでの2度なスパーリング以来自他共に認めるライバル同士。
腕力は高く、一撃で店のネオン看板を破壊したこともあるほか、青木村との腕相撲対決でも完勝していた(鷹村にはさすがに負けたが、その際に台座にしていた机が壊れた)
鷹村でさえも敵わないと言わしめるほどの巨根の持ち主であり、以後作中であそこはヘビー級と鷹村から散々ネタにされている。また小橋建太との試合の際も鴨川会長がインターバルで緊張をほぐすために氷で冷やした際も「お前のデカすぎて氷が足りない」と言われている。
短髪に太い眉をした顔が特徴。文庫版4巻の巻末おまけページによると、元々担当編集者に難色を示されていたデザインに太い眉を足したらOKが下りたという。
実家は釣り船屋だが、早くに父の一男が海難事故で帰らぬ人となり、母の寛子と共に店を切り盛りしていた。
小学校から高校時代までいじめられっ子だったが、高校時代、同級生の梅沢らにいじめられていたところを、ロードワーク中に通りかかった鷹村守に助けられたことがきっかけとなり、彼と同じ鴨川ボクシングジムに入門し、ボクシングを始める。
仕事の手伝いで幼少期から培った筋力が素地となり、練習の中でボクサーの才能を開花させた。その後も絶え間ない努力で着々と実力をつけてプロデビューを果たし、東日本新人王決定戦で優勝。そして西日本王者・千堂武士を下し全日本新人王の座に輝いた。
翌年、日本王座を伊達英二と争うも敗北を喫する。続く11月の再戦で新王者となった千堂を再び下して遂に念願の日本フェザー級チャンピオンの座を獲得。
その後も8回の防衛に成功し、海外へ打って出るためにタイトルを返上している。
ファイトスタイル
強靭な下半身から生み出される爆発的なダッシュ力で相手との距離を詰め、クリンチ寸前の至近距離で相手と殴り合うことを得意とする、生粋のインファイター。釣り船屋の手伝いの中で自然と鍛えられた筋力や足腰及び体幹バランスを元に、鴨川会長の指導の下柔軟でタフな肉体を作り出した。
フェザー級としては破格のハードパンチャーであり、ジャブですら対戦相手に「まるで石でもぶつけられているようだ」と評され、まともに当てれば相手を一撃で昏倒させる威力の拳を持つ。分厚いスパーリング用のグローブとヘッドギアを装着した上位階級の選手でも、一撃当てればダウンをあっさり奪うほどである。一方で、その破壊力が仇となり自身の拳を痛めてしまうことも。
効果の発揮が遅く、何発も積み重ねなければ効果が出にくいはずのボディーブローですら、一撃で肋骨をへし折り、ダウンさせてしまうことさえある。その桁外れの破壊力は、対戦相手から心底恐れられる。10cmほどの隙間さえあれば、鍛え抜いた足腰と重心移動により全身の力を拳に集約し、フルパワーでパンチを叩き込めてしまうため、一歩相手にはクリンチ(組み付いて体力の回復を図る技術)が事実上不可能。
しかし、ボクサーとしてはかなり不器用であり、技術面では相手に後れを取ることもしばしば。特に、キャリアがまだ少ない時代は、アウトボクサー特有の距離を取る戦法を取られると苦戦することが多かった。近代ボクシングにおいてはインもアウトもこなせる万能型が主流であるが、一歩は不器用なためインファイトでしか戦えない(防御に集中すれば、足を使ってのアウトボックスもそれなりにこなせるが、パンチを撃とうとするとリズムがバラバラになってしまう)。
性格
性格は基本的に温厚かつ内気。気の弱さが祟って、クセの強い鴨川ジムの面々のノリに振り回されてしまうこともたびたびある。一方でボクサーとしての胆力や向上心、闘志は素晴らしいものがあり、練習には非常に真摯かつ真面目に取り組む。鴨川会長から休養を命じられても、休むのが苦痛に感じてしまうほどの練習の虫である。
素直かつ真面目な性格で、練習中は鴨川らに言われた事をひたすら懸命に取り組むため吸収が非常に早いほか、観察力と思考力に優れ、言われた以上のことを体得できる。一方で試合中は頑固な一面を覗かせ、鴨川の指示を聞かずに自分がしたい事を優先する事もままある。それでも勝てるのは一歩の天才的センスが成せる技か、何度も周囲が思い至らない発想で逆転劇を展開した。
その一本気な性格と強靭な根性によって、地力で上回る相手を土壇場からねじ伏せたことも多々ある。しかし元々の内気で生真面目な性格は、翻ってボクサーとしての欲の無さに繋がっている。元は「宮田との再戦」を目指して努力していたが、その一戦が流れてしまってからは目標を喪失した状態に陥っており、そのことを鷹村からも指摘されている。
奥手かつボクシングバカな性格のため、ほぼ両思いの状態にある間柴久美とは、未だに正式な恋人として付き合っておらず、そのじれったさから周囲にも呆れられている。ただ非常に一途であり、板垣菜々子や飯村真理から時に言い寄られているが、(本人がとんでもなく鈍感で、相手からの好意に気づいてない事もあるが)紳士的に誘いを断ることが多い。
ボクサーとしての実績
そのフェザー級離れしたとんでもないパンチ力もあり、一歩の勝ち星はすべてKOないしTKO勝ち。勝ち星の中の苦戦も一撃の重さを活かした一発逆転が多く、判定勝ちは一切ない。その迫力とメリハリのある戦いぶりからファンも多く、タイトル戦では会場を満員にできる人気ボクサーとして成長している。
ただし、その実直な性格とタフな肉体と被弾を厭わず真正面から打ち合うスタイルの副作用として、相手からの強打をほとんど毎試合当たり前のように受け続けており(必殺パンチの直撃も少なくない)、肉体の頑健さだけではカバーしきれない慢性的ダメージ(アルフレド・ゴンザレスとの試合後、パンチドランカーの疑いがかけられている)の蓄積懸念がある。そのため、家で試合からの帰りを待つ母や、トレーナーである鴨川会長や八木さん、ガールフレンドで看護師の間柴久美、主治医の山口先生にも体調を心配されている。
主な必殺技は鍛えに鍛えた足腰のバネを利用して、カモシカの跳躍めいて相手を下から打ち上げる「ガゼルパンチ」、天性のパンチ力を人体の急所である肝臓に叩き込んで相手の勢いを寸断する「肝臓打ち(リバーブロー)」、そして古きアメリカンボクサーであるジャック・デンプシーのそれと同じ原理に行き着き体得した必殺ラッシュ「デンプシーロール」など。
フェザー級日本王者になった千堂武士とのタイトルマッチではこの三つの技全てを一つの連続技として千堂に叩き込みフィニッシュ、KO勝ちしている。
一瞬で懐に切り込む爆発的な脚力、渦を巻くようなデンプシーロールの姿、空を切る様子さえ戦慄を覚えさせる程の剛打から、付いた二つ名は「風神」。永遠の憧れでありライバルである宮田の「雷神」とは対を成している。
一人称 |
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二人称 |
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口調 | |
口癖 |
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呼称 |
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関連人物の呼称と変遷だよ!
※対面時/対面外、モノローグ時
関連人物 | 呼び方 | 呼ばれ方 |
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鷹村守 | 鷹村さん | 一歩 |
青木勝 | 青木さん | 一歩 |
木村達也 | 木村さん | 一歩 |
板垣学 | 板垣くん⇒学くん | 先輩/幕之内一歩 |
鴨川源二 | 会長 | 小僧 |
八木晴彦 | 八木さん | 一歩くん |
篠田 | 篠田さん | 幕之内 |
宮田一郎 | 宮田くん/宮田選手 | おまえ/アイツ、幕之内一歩 |
千堂武士 | 千堂さん/千堂選手 | 幕之内(一歩) |
間柴了 | 間柴さん/間柴選手 | 幕之内 |
伊達英二 | 伊達さん/伊達選手 | 幕之内 |
沖田佳吾 | 沖田さん/沖田選手 | 幕之内 |
ヴォルグ・ザンギエフ | ヴォルグさん/ヴォルグ選手 | マクノウチ |
今井京介 | 今井くん/今井選手 | 幕之内さん |
沢村竜平 | 沢村さん/沢村選手 | 幕之内 |
ブライアン・ホーク | ホーク選手 | ボーイ |
デイヴィッド・イーグル | イーグル選手 | ボーイ |
リチャード・バイソン | バイソン選手 | 不明 |
リカルド・マルティネス | リカルド選手 | デンプシー・ロールの少年 |
アルフレド・ゴンザレス | ゴンザレス選手 | マクノウチ |
梅沢正彦 | 梅沢くん | 一歩 |
藤井稔 | 藤井さん | 一歩くん、幕之内くん |
飯村真理 | 飯村さん | 一歩くん |
間柴久美 | 久美さん | 幕之内さん |
板垣菜々子 | 菜々子ちゃん | 一歩さん |
幕之内一男 | お父さん | 一歩 |
幕之内寛子 | お母さん | 一歩 |
以下、ネタバレ注意
復帰第1戦にて、フィリピン王者アントニオ・ゲバラと対戦。はじめてのサウスポー相手に戸惑う中、ゲバラを殺しかねないほどのハードパンチで一時的に圧倒するものの、普段と違う間合いでの苦戦、長期戦線離脱に伴うラグ、そして完成させた新型デンプシーロールで倒すという気負いすぎなどが重なり、共に2ダウンまで追い込まれ、遂に敗北。実際の所はデンプシーロールに拘り過ぎなけ得れば十分に勝てた相手であった事もあり、読者も大きな衝撃を受けた。
復帰直後の2連敗はあまりに重く、一歩は再度精密検査を受けることを打診される。
結果は良性であったが、パンチドランカー疑惑の払底という悪魔の証明は残り、一歩は重大な決断を下す。
それは自身の現役引退という決断である。
そして、幕之内一歩の選手生命は、8年目にして終止符を打たれた。
それから少し後。空位となったフェザー級選手たちの王位を今井京介が守り続ける中、彼はリング上でこう独白した。
「今自分が戦いたい選手は、宮田一郎と千堂武士、そして幕之内一歩である」と。
当の一歩が梅沢君のメインアシスタントになりつつある中、その言葉はいずれ帰って来る風神の再来を確信しているかのようであった。
その後、家業の釣り船屋の仕事や梅沢のアシスタントとして働く日々を過ごす中、釣り船幕之内を訪れた篠田トレーナーの要請により(ガールフレンドの久美は猛反対したが)、今度はセコンド要員として鴨川ジムの仕事に携わることに。
生真面目な気性や現役選手時代のノリが抜けきらないこともあり、気負いが過ぎるあまり鬼気迫るほどイス出しの練習に没頭したり、セコンドにつく選手の勝利祈願のお賽銭で小銭を使い切り紙幣に手を出すほど大散財したり、実際の試合でコーナーに戻ってきた木村のイス出しに失敗して倒れたイスの脚に腰を下ろさせてしまったり(観客席で見ていた鷹村達は「笑いの神が降りてきた」と爆笑)、板垣の試合では苦戦しつつも勝利して得意げな顔で戻ってきた板垣を「全然ダメ」とダメ出し&説教で出迎えたことで板垣のテンションを下げてしまうなど、選手時代とは勝手が違う慣れないトレーナーの仕事に悪戦苦闘中である。
それでも少しずつトレーナーとしての経験を重ねていき、ボクシングのやる気を失いかけていた木村達也を激励して勝利に導いたり、彼が減量に失敗しかけた時は僅かでも体重を減らすために身体中の毛を剃り、計量を突破した(その際に自分も負い目を感じて髪の毛を剃っている)。
現役は引退しているが、常に手枷や足枷をつけて生活しており、脚力と腕力は衰えておらず、ボクサー時代のトレーニングや練習を辞めてないことから、現役時代の頃とは実力は落ちておらず、更にセコンドの立場からボクシングを学んでいることや身体強化のトレーニングを積んでいることから未だに成長途中であり、ヴォルグが自身のタイトル戦の相手が一歩と似たインファイトスタイルであることから、ヴォルクとマススパーリングをした時には、かつてヴォルグが現役を引退してた時に沢村戦の前に自身に協力してくれたことから恩返しとして全力で応えようとして、ブランクを感じさせない現役の頃とは変わらない実力を見せ、ヴォルグが本気で警戒するほどの実力だけでなく現役の頃には使わなかった技術などを使い、マススパーリングや一歩の引退した理由などを忘れ、互いに本気のスパーリングとなり現役の世界王者のヴォルグの本気と互角にスパーをしている。千堂に詰め寄られたヴォルグによると、世界王者となって自身と実力をつけた今でも手に余り、更に細部にまでバージョンアップしていて、流しで付き合えるほどで無かったと述べている。更に最後に放とうとした現役の頃には無かった新型の縦回転のデンプシーロールに関しては、ヴォルグのセコンドの団吉によると、僅かに灯る光にかけて時を経て芽吹くように埋め込まれた儚き夢か妄執であり、一歩と鴨川会長が引き金に指をかけるのを躊躇う限り、芽吹くのは無いと述べている。
後に世界戦が決まった間柴から、本当に未練が無いのかと聞かれ、無いと即答するが、「宮田一朗と戦わないままで良いのか?」と聞かれる。間柴は自分たちの世代が世界路線の中で有望株だった宮田だけが亡霊の様にさ迷っていると言って、今の一歩の現役引退を宣言したのにウエイトを常に両手足に身につけていて練習を欠かさない現役選手の様な中途半端な姿を見せられると、宮田は浮かばれないと言われ、本根は根っこに心残りがあるから互いに成仏出来ないと言われる。一歩は2人が戦う機会は何度かあったが、縁が無かっただけの話と言うが、間柴が宮田戦で自分が反則をしなければ戦う機会はあったと、2人の約束の邪魔をしたのは自分だと言われ、すまなかったと謝られた。当時の自分は妹の久美のために保護者として世界一になる事しか考えられなく、どうしても勝ちたくて勝つためには反則をする以外選択肢がなかったと言われた。
なお、ゲバラ戦掲載時に出版されたムック本での作者コメントによれば、「これから一歩にも、そして読者の方々にも辛い展開になるかもしれません。でも、『はじめの一歩』の最終着地点は、ずっと前から決まっています。その日がいつか必ず来ることを待っていてください」とのこと。
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