概要
『地獄でなぜ悪い』(Why don't you play in hell?)とは、2013年に公開された園子温監督の映画。
園が公開より17年前に書いていた脚本を改めて映像化した作品で、園のフィルモグラフィで初の完全娯楽映画を謳っている。特に2012年は東日本大震災を扱った『ヒミズ』『希望の国』が取り上げられたこともあり、社会派のイメージを覆すように今回はバカに徹したという。
大量の血しぶきが飛び交うバイオレンス描写があるが、コメディということでレイティングはR-12Gに留まった。血の表現にはCGではなくすべて血糊を使っている。
また、園作品の常連役者や、親交を深めた人物が大挙してカメオ出演している。
劇中に登場する《ファック・ボンバーズ》は、自主制作時代の園が実際に名乗っていた名であり、仲間たちと公園でブルース・リーの真似をしていたら子供にバカにされたというくだりも実話である。
星野源演じる公次の境遇も、園が若いころの実体験である。ある女性と遊んだところ、実はヤクザの娘だったその女性に、数年後に言いがかりをつけられて、ヤクザのビルに連行され、監禁されたことがあるという。
劇中に『仁義なき戦い』の音楽が使われており、深作警察署なるものが登場する。同じく劇中にあるマキノ通りは、マキノ雅弘に由来する。
あらすじ
「全力歯ぎしりレッツゴー!」と、子役のミツコがCMソングで人気を博していた十年前、すべては始まった。
高校生の映画小僧であった平田は、仲間たちと《ファック・ボンバーズ》という自主制作集団を作り、生卵をぶつけ合う突拍子もない映画を撮っていたが、ヤンキーの佐々木にアクションスターの資質を見出し、平成のブルース・リー映画を目指してアクション映画作りに転向する。そして神社の御神木に「永遠に刻まれる一本を撮りたい」という願いを込め、手紙を封入するのだった。
一方、ヤクザの《武藤組》組長・武藤大三の自宅が、抗争していた《北川会》のカチコミを受ける。しかし男数人で襲撃したにもかかわらず、組長夫人のしずえ一人に血祭りに挙げられてしまう。この事件で北川会の若頭だった池上は瀕死の重傷を負いつつも、その場にいた子供のミツコに一目ぼれする。ミツコは武藤組の娘だったのだ。しずえは過剰防衛で警察に捕まり、実刑を食らう。ミツコのCMは打ち切りになり、娘を芸能界で活躍させる大三の夢は散った。
そして、たまたまそのへんにいたミツコファンの高校生・公次は、報道を見てショックを受ける。
それから十年が経った。
相変わらず好きな映画の話ばかりして一向に芽が出ないボンバーズに、佐々木は愛想を尽かし、三行半を叩きつけて出て行ってしまう。
北川会は池上のものになり《池上組》となってからは、武藤組とは停戦状態にあったが、再戦の火種がくすぶり始めた。池上のミツコへの想いは相変わらずだった。
そのミツコといえば、大三の差し金で映画に初主演する予定だったが、クランクアップ十日前に男と逃げ出して、大三を激怒させた。もうじき刑期を終えて出所してくるしずえのために、娘の初主演映画を贈ろうと考えていたのだ。ミツコの降板を言い渡されたため、大三は自分たちでミツコ主演の映画を撮ろうと言い出す。しかし映画作りにはてんで素人のヤクザたちは、いっそのこと池上組との抗争をそのまま撮影してしまおうという結論に至る。
そして、たまたまそのへんにいた元ミツコファンの公次は、逃亡中のミツコに一日だけ恋人役をやってほしいと頼まれる。ミツコは自分を捨てた元カレをリンチするが、その後、二人とも武藤組に捕まって監禁される。ミツコはその場を切り抜けるためにとっさの嘘をつく。それは、公次が自分の選んだ映画監督というものだった。
しかし実際のところ、公次もヤクザたち同様、映画に関してはズブの素人。専門的な質問を次々された公次は錯乱して現場から逃げ出す――逃げた先には、神社の御神木があった。そしてそこにはボンバーズの連絡先が書かれた手紙が――。
十年間、変わらぬ夢を追い続けていたボンバーズに朗報が届いた。本物の抗争を撮影するという常軌を逸した依頼だったが、平田は大喜びで佐々木を連れ戻す。さらにはミツコファンの池上も撮影に承諾し、武藤組vs池上組の血を血で洗う映画撮影が始まった。
キャスト
ヤクザ
武藤大三(武藤組組長) - 國村隼
池上純(池上組組長) - 堤真一
武藤ミツコ(大三の娘) - 二階堂ふみ / 原菜乃華(幼少期)
武藤しずえ(大三の本妻) - 友近
マサコ(大三の愛人) - 岩井志麻子
ジュンコ(大三の愛人) - 神楽坂恵
池上の女 - つぐみ
ファック・ボンバーズ
平田純(監督志望) - 長谷川博己 / 中山龍也(青年期)
佐々木鋭(平成のブルース・リー) - 坂口拓 / 中田晴大(青年期)
御木(カメラマン) - 石井勇気 / 小川光樹(青年期)
谷川(カメラマン) - 春木美香 / 青木美香(青年期)
その他
橋本公次(ミツコの恋人役) - 星野源 / 伊藤凌(青年期)
吉村みつお(ミツコの元カレ) - 永岡佑
木村(ベテラン刑事) - 渡辺哲
田中(若い刑事) - 尾上寛之
交番のオマワリ - 水道橋博士
増田(看板業者) - 板尾創路
佐藤(看板業者) - 裵ジョンミョン
木下(大三の知り合いの映画プロデューサー) - 石丸謙二郎
小野(名画座「昭和座」の映写技師) - ミッキー・カーチス
大谷(名画座「昭和座」のモギリ) - 江波杏子
ボンバーズ行きつけ居酒屋のマスター - 深水元基
ボンバーズ行きつけ居酒屋のウェイトレス - ぼくもとさきこ
ヨシコ(平田の口説いている女) - 成海璃子
スタッフ
音楽 - 園子温 / 井内啓二
撮影 - 山本英夫
編集 - 伊藤潤一
製作会社 - 「地獄でなぜ悪い」製作委員会
配給 - キングレコード / T-JOY
データ
公開 - 2013年9月28日
上映時間 - 130分
製作国 - 日本
言語 - 日本語
主題歌
星野源「地獄でなぜ悪い」
本作に出演した星野が、園監督のオファーを受けて書き下ろした楽曲。
映画と同名の主題歌であり、映画の世界観を組み込んでいる。
星野の6枚目のシングルとして、2013年10月2日に発売された。
ジャケットイラストは、劇中で星野が演じた姿を金子ナンペイが描いたもの。
2024年のNHK紅白歌合戦では何故か本楽曲が披露されることとなり、ファンの間でも予想外だと話題に。
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外部リンク
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