マジックワード
まじっくわーど
マジックワードとは、直訳すると「魔法の言葉」であるが、ネット上におけるマジックワードの意味は以下に分けられる。
- 何にでも使える魔法の言葉。(「定義が曖昧で都合良く解釈できる」「どんなものにも該当し得る」など)
- 宣伝や説得、煽りや叩きなど、他者の思考や感情を誘導・支配したい場面で力を発揮する言葉。「殺し文句」とも。
- MediaWikiにおける、特定の動作を表す「{{」と「}}」で囲まれた文字列。
- vpixiv対策に使うワード。『天安門事件』など。
1と2は悪徳商法や詐欺、デマゴーグやプロパガンダにも使われ、経済面や安全面、信用面での被害を受ける者も加害側に取り込まれる者も後を絶たない。
ここでは1と2に該当するものを取り上げる。
「○○してください」編
英語圏でいえば「please」、日本語でいえば「お願いだから」「良い子だから」「誠に恐縮ですが」など。
下手に出たり誠意を見せたり切実さをアピールしたりすることにより、話を断りづらい雰囲気を作る。
このように相手をコントロールするという意味では、「皆さんもう始めていますよ」「規則ですから」「やれば皆のヒーローですよ」といった相手の価値観を刺激するものや、「期間限定のお得なキャンペーン! 申し込むなら今!」といった時間制限で焦らせるものもマジックワードである。
文章編
例1:曖昧表現
占い師が客の境遇として、「あなたのお母様は、亡くなって、いませんね」と言ったとする。
この表現は「客の母は既に亡くなってこの世に居ない=死んだ」とも「客の母はまだ亡くなってはいない=生きている」とも取れる構造になっており、どちらに転んでも客が「自身の境遇を言い当てられた」と解釈できる。
客が冷静に「それってどちらの意味で言ってます?」と相手に確認できればいいのだが、実際には客自身の精神状態やその場の雰囲気に呑まれて相手にとって都合が良い方に転がされてしまうことも少なくない。
このように曖昧表現を提示して相手に解釈を委ね、手のひらの上で勝手に踊ってもらう言葉選びもマジックワードの一種である。
また、文節の繋がり以外では比喩表現で同じようなことが起きてしまう場合がある。例えば「Aは狼のような奴だ」という言い回しを用いた場合、「狼」は時代や地域によって「強く気高い」という意味でも「残忍で野蛮」という意味でも用いられるため、受け取る側によって解釈が分かれ、誤解から対立が生じたりする可能性がある。これを意図的に用いて相手が「反論」しにくい状態や内部分裂を作り、自身の立場を有利に運ぶようなら発話者はマジックワードを使っていると言える。
例2:文章の切り抜き
「Aはついに復讐を終えた。家族を殺したBに絶望を味合わせたのだ」という文章があるとする。
その文章の「ついに」から「殺した」までの文章を抜き取り、「AはBに絶望を味合わせたのだ」と書き換える。
編集後の文章だけを見ると、Bの落ち度が隠されAが犯罪的思考の人物のような印象になる。
このように文脈を無視した編集による印象操作は、マスメディアの偏向報道や、アフィリエイトブログ・YouTube収益動画の閲覧数稼ぎタイトルにありがちな手法で、自身の主張や目的に合わせて事物の印象を歪め閲覧者や聴衆の感情を誘導するという意味でマジックワードの生成法に含められる。議論の場で使えば詭弁の手法であるストローマン論法の一種にもなる。
また、SNSなどでもこのような形で他者の言動や作品を受け取り、自身の主張をぶつけたり他者を煽ったりするユーザーは多い。これは事実や相手の意図を捉えることよりも自己投影などの防衛機制が優先されている可能性がある。
要素編(箇条書きマジック)
印象操作の手法の一つとして、箇条書きを利用して発話者にとって都合の良いポイント(要素)だけを相手に印象付け、それ以外の部分を意識から弾こうとする論法を俗に「箇条書きマジック」と称する。
サンタクロースの特徴 | 布袋の特徴 |
サンタのおしごとbyあおいろきつね | 新年の始まり【申】byアノール |
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「これ程一致度が高いからにはサンタクロースが布袋のパクリであるか、両者が同一のルーツから生じた存在であるかのどちらかだろう(キリッ」
例2:FGOのレジスタンスのライダーは実質アガルタ編のヒロイン(レジライ板過去ログより)
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「ほら、ヒロイン要素の塊!(ガンギマリ)」
このように、大雑把に要素を拾い上げて一覧化した結果、一見根拠の正しい主張に見える。これが箇条書きマジックである。
対象の実態を知っていれば、挙げられた要素の裏やリスト外の要素から主張を否定する根拠を見いだし鼻で笑うことができるが、知らずにこの論法を突き付けられると何となく納得して乗せられてしまう危険性が十二分にある。
ネット上では「実質○○」というギャグや「○○のパクリ」という言いがかりに使われやすい他、「ナチスは実は良い事もしていた」等特定の事柄を美化・擁護したりするのに使われる。
レッテル貼り編
近頃のネット社会において、このマジックワードと呼ばれる代物は多用されている。
既存の言葉をマジックワード的な意味合いで使うだけではなく、新たなマジックワードを生み出す場合も多々見受けられるが、多くは明確な定義などは存在せず、ただ都合よく使えるだけの言葉となってしまう為、自分の嫌いな作品やキャラクター、人物に対する呼び方として使用される場合も見受けられる。
例えば「なろう系」は「『小説家になろう』で流行した異世界転生チートものにありがちな傾向」を意味する揶揄表現として誕生した単語だが、流行の変遷につれて範囲は「主人公無双の異世界もの」であれば「なろう」や「転生」が関わっていない作品でも指示範囲に含まれるようになり、使用者の主観による意味の拡大が行われ続けた結果マジックワードの一種と化した。
また、前述の曖昧表現に似たものとして「○○は『特定の作品の不人気キャラ・ネタキャラの名称』に似ている」などがあり、例えに使われたキャラクターが原作では悪役、ギャグキャラの設定ではなかった場合、読者の間でよく聞く意見と二次創作での扱いを知らない人には悪口だと気付きづらい。
同じくフィクションのイメージを使った発言で「女Aの声は高くて女Bの声は低い」「男Cの背は高くて男Dの背は低い」と一見二者を平等に扱っているような言い方をして、フィクションで不人気キャラ・不細工に使われやすい記号を持つ側を貶める手法もある。
単体で語ることはせずわざわざ比較し、「両方ともそれぞれここがいい」「2人の仲良さが好き」といったフォローは入れず、話題に出した人物への気遣いをせず、他人を玩具にして自分が会話で目立とうとするニュアンスを混ぜているため気付いた聞き手には嫌われる。また、この手の話法は貶めに使われた対象のファンが担ぎ上げられた対象を嫌いになってしまう副次効果が付きやすい。
実際の意図は、発言主の性格(第三者から見た印象)、場面と場面の前後関係、発言主が別の人物にかけた台詞との違い、発言主と相手の関係を長い間隔で見た時の印象(普段相手が好きなのが分かる言動ばかりしている人が、相手が冗談で受け止めると知りつつ、毒のある台詞を言うこともある)も関係してくるため、またややこしい。