ニアークティック(Nearctic)とは、1954年生まれのカナダ産の競走馬。牡・黒鹿毛。
世界的大種牡馬ネアルコを父に持ち、競走馬としてカナダを中心に走り活躍した。
種牡馬としてノーザンダンサーを送り出したが、息子が世界を塗り替えたせいか今一知名度が低い。
名前は生物地理の区分で、北アメリカ大陸とグリーンランドを示す「新北区」を意味する。
父Nearco、母Lady Angela、母父Hyperionという血統。
父は14戦14勝無敗のイタリアが誇る名馬であり、ナスルーラやロイヤルチャージャーなど大種牡馬の父、サイアーオブサイアーズの代表格。母父ハイペリオンは英ダービー馬にして英愛リーディング6回の大種牡馬。
母親は一大牝系の祖・プリティーポリーの一族に属している。本馬以外にもステークス優勝馬を何頭か出しており、*ノーザンテーストは孫世代にあたる。良血馬である。
本馬が活躍していた当時、ネアルコ×ハイペリオンの配合はあまり良くない(ネガティブニックス)と言われていた。実際にはこの配合が意識的に避けられていただけで、勝ち上がり率は悪くはなかったのだが。
カナダの実業家にして名馬産家、エドワード・テイラーの手によって生産された本馬はカナダでキャリアをスタートさせ、通算47戦21勝。アメリカへ遠征してコースレコード勝利を収めた事もあり、主に短距離からマイル戦でその快速を遺憾なく発揮した。4歳時にはカナダの年度代表馬に選ばれている。
なお、北米の同世代はボールドルーラー、ギャラントマン、*アイアンリージ、ラウンドテーブルなどがいる黄金世代である。彼らとの対戦は実現しなかったが。
1960年(6歳)から種牡馬入り。当初テイラーが保有していた牧場で種牡馬生活を送っていたが、後にアメリカでシンジケートが組まれ、アメリカに腰を据える事となった。
1961年に初年度産駒が生まれたが、その中にかのノーザンダンサー(Northern Dancer)がいた。ノーザンダンサーがカナダからアメリカ二冠を達成。種牡馬入りすると、文字通り世界の血統地図を塗り替えた。ノーザンダンサー以外にも活躍馬がおり、主に英2000ギニーやジャック・ル・マロワ賞を優勝した*ノノアルコがいる。通算で7回のカナダリーディングサイアーとなった。
1973年に慢性的なリンパ節炎により、安楽死の措置が執られた。享年19歳。遺骸は繋養地の牧場に埋葬され、死後の1977年にカナダ競馬の殿堂馬に選出された。
ニアークティックの代表産駒であるノーザンダンサーだが、種牡馬入りするとナスルーラが30年くらい掛けて世界中に広まったのに対し、その倍のスピードで世界中にその血を広めた。2018年現在でもヤバいくらい血が広まっており、欧州はサドラーズウェルズ、北米はストームキャット、豪州では*デインヒルが主流を占める。日本でもマルゼンスキーや*ノーザンテースト、*モガミなどが流行していた。
ノーザンダンサーが主流から陥落することは多分無い。ニジンスキーやヌレイエフの直系が衰えつつあっても、サドラーズウェルズやストームバード、ダンジグ、ヴァイスリージェントが活発です。
ノーザンダンサーが早い時期から活躍したため、ニアークティック系≒ノーザンダンサーと考えられる事もあるが、どっこいノーザンダンサー以外も健闘している。
代表例はアイスカペイド(Icecapade)である。競走馬としてはそこそこといった所だが、種牡馬入りすると第1回BCクラシック優勝馬ワイルドアゲインを輩出。そのワイルドアゲインも種牡馬として活躍し現在でも父系は存続している。日本では*ワイルドラッシュ・トランセンド父子がダート戦線で一定のニッチを確保している。
他にも2000ギニー優勝馬*ノノアルコ(Nonoalco)が英1000ギニー優勝馬ケイティーズを送り出し、その牝系子孫にヒシアマゾンやアドマイヤムーンがいる。渋いところでは有馬記念優勝馬ダイユウサクを輩出。父系は今でもオーストラリアに残っている。
決してノーザンダンサー一辺倒な種牡馬ではない。それだけは言いたかった。
近年の研究ではミオスタチン遺伝子を調べることにより距離適性の傾向がわかってきたが、その中でも短距離型を示すC型の遺伝子はこのニアークティックから発現したと推測されている。つまり近年活躍しているスプリンターはこのニアークティックの影響を強く受けているのである。
Nearco 1935 黒鹿毛 |
Pharos 1920 黒鹿毛 |
Phalaris | Polymelus |
Bromus | |||
Scapa Flow | Chaucer | ||
Anchora | |||
Nogara 1928 鹿毛 |
Havresac | Rabelais | |
Hors Concours | |||
Catnip | Spearmint | ||
Sibola | |||
Lady Angela 1944 栗毛 FNo.14-c |
Hyperion 1930 栗毛 |
Gainsborough | Bayardo |
Rosedrop | |||
Selene | Chaucer | ||
Serenissima | |||
Sister Sarah 1930 黒鹿毛 |
Abbots Trace | Tracery | |
Abbots Anne | |||
Sarita | Swynford | ||
Molly Desmond | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Chaucer 4×4(12.5%)、St. Simon 5×5×5(9.38%)、Canterbury Pilgrim 5×5×5(9.38%)
Nearctic 1954
|Northern Dancer 1961 →ノーザンダンサーの記事参照
|Icecapade 1969
||Clever Trick 1976
|||Phone Trick 1982
||||Favorite Trick 1995
||Wild Again 1980
|||*ワイルドラッシュ 1994
||||トランセンド 2006
|*ノノアルコ 1971
||Katies 1981
||ダイユウサク 1985
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最終更新:2024/12/27(金) 21:00
最終更新:2024/12/27(金) 21:00
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