黒部ダムとは (クロベダムとは) [単語記事]

概要

特徴

標高1470mの黒部峡谷奥地に建設された黒部川のダムで、富山県を代表する観光スポットである。北陸地方にあるが、関西電力が管理している。
黒部川に作られた4番目のダムであることから「黒部川第四ダム」、通称「黒四(クロヨン)」とも呼ばれている。

貯水量2億トン、堤の高さは186mあり、日本一の高さとなっている。黒部ダムの形状は、アーチ式ダムと重力式コンクリートダムの複合型となっている。これは、運び込む建設資材をなるべく省きたかったことが背景にあり、アーチ式ダムはこの条件に適合していた。しかし、建設の際にアーチ接合部の山の背後が谷になっていることが判明。計画を変更し、両端部のみ重力式コンクリートで施工した。また、アーチの形状を前傾姿勢にし、耐水圧より強力にした。これにより、前にせり出したようなフォルムのコンクリートダムとなった。

黒部ダムの水力発電所はダムから約10km先の山中地下にあり、ダム湖右岸にある取水口から水を取り込み、545mの落差を利用して発電機を回している。この発電で最大出力335,000kWもの電力を創出することができる。
対して一般的に観光放水で知られている下流への放流は、水流を霧状にして放出している。これは、放流した際に水圧で浸蝕を防ぐためである。

歴史

第二次世界大戦後、高度経済成長に伴う急速な復興で関西地方では深刻な電力に悩まされていた。関西電力ではこれを打開するため、富山県の黒部川上流にある黒部峡谷に水力発電ダムを建設することを決定。黒部峡谷を選定した理由としては豊富な水量であること、大きな落差で莫大な電力創出を期待できることが決定打となった。

ダムは1956年に着工。約1000万人の作業員を動員し、約7年の歳月をかけて1963年に竣工。総工費は約513億円となった。

ダム建設にあたり、まず長野県大町側から資材運搬に使用される大町トンネル(現関電トンネル)の掘削が鳴沢岳で行われた。積雪が多い厳冬期も休まず掘削作業が続けられ作業は順調に進んでいた。
しかし1958年 5月、大町トンネルの掘削工事にとって最難関の区間に突入する。トンネル入り口から1691m地点で地下水と土砂が勢いよく吹き出しました。この地点がかの有名な「破砕帯」呼ばれる地点である。破砕帯は地下水を含んだ軟弱な地盤層のことで、トンネル工事にとっては天敵とされる部分である。破砕帯は660m/秒の勢いで地下水と土砂を噴き出していた。水圧に換算すると、水深40m地点相当となる。

破砕帯の突入で工事は熾烈を極めた。漏れ出る水温4℃の地下水に打たれながら、作業員は手をかじかませ決死の掘削作業を続けた。そして7ヶ月の格闘の末、約80mの破砕帯を突破したのであった。

1958年 2月、大町トンネルが開通。そして、ダム建設が本格的に始動したのであった。ちなみに、この大町トンネル掘削作業の模様はのちに「黒部の太陽」で作品化、及び幾度もテレビドラマ化されている。また映画化もされており、三船敏郎や石原裕次郎らが出演している。さらに「プロジェクトX～挑戦者たち～」では工事関係者が実際に出演し、当時の様子を語っている。

そして黒部ダムは1963年 6月5日に竣工を迎えた。犠牲者171名を出した世紀の難工事となったのであった。