L3とは、戦間期にイタリア軍が開発、WW2まで運用した豆戦車である。
概要
イギリスのカーデンロイド豆戦車をベースにイタリアにおいて設計・製造された豆戦車である。総生産数は2000両を超え、数的問題だけで言えば大戦を通してイタリア「戦車」の圧倒的多数派となっている。
開発の経緯
カーデンロイド豆戦車を購入したイタリア軍は、さらにその拡大改良型を求めていた。偵察・戦闘車両として使うにしろ、牽引車として使うにしろ、カーデンロイド豆戦車は小さすぎることが明白だったのである。
カーデンロイド豆戦車と同寸でほぼ同設計のタイプをC.V.29、車体を拡大して乗員の全身を保護できるようにしたタイプをC.V.33、イタリアの技術では困難で生産に時間を要した溶接を廃して退化したリベット接合にしたタイプをC.V.35、さらに量産向きに改修し武装を13.2mm機関銃に強化したタイプをC.V.38と呼称している。
ちなみにC.V.とは「カルロ・ヴェローチェ」、要するに「○○年式快速戦車」の意。当時のイタリア軍の他の装甲車両がルノーFT17やフィアット3000といった路上最高速20km/h程度の車両だったことを考えると、その倍の速度で路上走行ができるこれらの車両を「快速戦車」と呼ばずしてなんと呼ぶ。
この快速戦車ファミリーは後に全部ひっくるめて、C.V.○○→CV3/○○→L3/○○というふうに呼称が変更されている。二番目のCV3/○○は「○○年式3トン快速戦車」の意、L3/○○は「○○年式3トン軽戦車」の意。同じ装備でも軍の中での位置づけによって名前が変わるというひとつの例である。
構造
基本構造はカーデンロイド豆戦車MkⅥの拡大と言っていい無砲塔並列着座の小型装甲車両である。カーデンロイド豆戦車では無防備だった乗員の肩から上を防護するためにC.V.29は半球型のハッチを追加していたが、C.V.33では戦闘室を上に延長して全身を防護できるようになった。武装も当初の6.5mm機関銃1丁からC.V.33で8mm機銃2丁に、そしてC.V.38において13.2mm機銃にと地道に強化されている。そうそう、装甲厚もC.V.29の最大9mmからC.V.33になったときに最大14mmに強化されているのも忘れちゃいけない。
それに伴って重量もC.V.29の1.7トンから最終型のC.V.38では3.2トンに増加している。ほぼ倍増というと聞こえはいいが、元が元なので結局アレ。要するにちょびちょびと小手先の改良を繰り返したものの、豆戦車としての本質は何ら変わっておらず性能も相応のモノにとどまっているということである。ま、そりゃそうだ。
配備と運用
上述の通り、シリーズ通算で2000両以上が生産されたこのL3シリーズだが、戦車の代替として投入されたエチオピア戦争(1935)・スペイン内戦(1936)での評価は高くない。
まあ当たり前の話で、最大装甲厚14mm、火力も榴弾撃てない8mmだか13.2mmだかというレベルでは、既に37mm級の対戦車砲の普及が始まっている1930年代なかばでは危なっかしくて運用できたものではない(防御力のみならず、榴弾が撃てないのでは対戦車砲の制圧も困難である)。エチオピア陸軍の装備する旧式火砲ですらL3の破壊には充分すぎる威力であり、いくらなんでもこれを最前線に戦闘車両として投入するのは無理がありすぎたのである。ましてスペイン内戦で相対したソ連製BT戦車やT-26はさらに一ランク上の45mm戦車砲を搭載しており、もうお話にもなんにもなりゃしない。
そういうわけで1940年にイタリアが崩壊状態のフランスに火事場泥棒的に宣戦布告した際には、最前線で戦闘車両として用いられるL3シリーズはほとんどない状態だった。……はずなのだが現実的に2000両もあったL3シリーズをまるごと戦闘車両として用途廃止したくともその後継車両が2000両もあるわけもないというか、L3シリーズに小さな砲塔載せて装甲強化したL6シリーズもまだ数百両しか存在しておらず本格的な中戦車であるM11シリーズに至ってはレアモノ状態。
結局、20mm対戦車ライフルを現場改造で装備してみたり火炎放射戦車に改造してみたりといった努力が続けられることとなるが、まあ結局のところWW2においては後方警備や連絡車両、牽引車両として用いられることが大半であった。このクラスの車両の至極妥当な使い道であり、まあ居るべき所に戻ってきたと言うべきではないだろうか?
大戦前に東欧諸国に数十両単位で販売が行われており、またイタリアの降伏後にはドイツ軍に接収されて運用が続けられている。地味に中華民国も購入しており、日中戦争で実戦に投入されている。
関連動画
2012年秋アニメ「ガールズ&パンツァー」、世界各国を模した諸高校との戦車戦&美少女アニメ。7話はイタリアを模したアンツィオ高校との試合……だったはずなのにどうしてこうなった。
0:38~ 数秒ほどだけどL3軽戦車の実車映像あり。軽快に走ります。
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香港の模型メーカー、ブロンコモデル社の製品。近年のAFVモデルはアジアメーカーの奮闘を抜きにしては語れません。
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関連項目
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