年に3回と、かなりゆるやかなペースで(でもつくってる方はヒイヒイ言ってますが……)出している『デザインのひきだし』。今年出す最後の1冊『デザインのひきだし20』が発売となりました。わーわーわー。
今回は「専門印刷を転用して、コスト省・少部数からのステキ印刷物をつくる 印刷ハック!」と題した特集を掲載しています。
これは例えば
「コースターに使われてる、フワッとしたいい質感の厚い紙を使った印刷物をつくりたい。でもいつもお願いしている印刷会社では『それはうちでは刷れないですね』とか『うちじゃ紙を仕入れられないですよ』などと言われて、結局使えなかったんですよね……(涙)」
とか
「チープで粗雑な黄色やピンクの更紙に印刷したいんだけど、紙が巻取でしか買えないって言われてしまって……(涙)」
などと、いろいろな理由で、自分がつくりたいと思っている印刷物が実現できないことがある。あるというか、そういうことは非常に多いのではないだろうか。
でもちょっと発想を転換してみよう。「コースターの紙が使いたいなら、いつもたくさんつくっている『コースター印刷屋さん』にお願いすれば、紙もいつも在庫してるし、印刷の慣れているはずだ!」「巻取しかないような紙でも、それを専門に使っている、例えば輪転チラシ印刷屋さんなら、巻取1本分すべて使わなくても、在庫紙で自由な部数で刷ってもらえるはずだ!」
そう、鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギスではなく、鳴かぬなら鳴くとこに行こうホトトギス作戦だ!(下手ですみません……)
そんな、ステキ印刷物がつくれて、かつ個人的にでも新規取引でも面倒見よく対応してくれる印刷加工会社をどどんとご紹介。そこでどんなことができるのか、どうやって頼めばいいのかなどなど、印刷物制作に携わっている人なら、必ずビビビとくる特集になっていると思います。
中でご紹介している印刷加工を少しだけご紹介してみよう。
まず、領収書や宅配便の伝票などでおなじみの「伝票印刷」。いくつかの手法があるが、それをデザイナーの三星安澄さんはフライヤーに使ったとのこと!(その詳細は本誌インタビューにてご紹介しています)上から書くと下の紙に転写される伝票印刷。意外と安く、またいろいろな加工や紙の枚数を変えるなど、組み合わせは自由自在。
これはおもしろい! と、今号の本誌表紙にも、伝票印刷を採用しました。ジャジャン。
これが表紙(1枚目)。
1枚目の表紙をめくったところ。おおお、1枚目の裏のカーボンが転写されている!
2枚目の表紙(ピンクの紙)をめくったところ。3枚目にも転写が!!
そして最後の(4枚目の)表紙。黄色いノーカーボン紙をつかっている。
重ねてはじめてその面白さが感じられるので、今回は表紙が4枚あるというイレギュラーな仕様になっています。そして、当然のことながら、伝票印刷しただけでは、次の紙になにか転写されるわけはない。実は伝票印刷したものを3枚重ねて、その上から箔押ししているのだ!
そうすると、箔押しの圧力が、上から書くということと同じ作用を加えるため、箔押しした部分が下に下にと転写されているというわけ。
じゃあ、4枚目の黄色いノーカーボン紙はなぜ転写されていないのか、という疑問は、また別の日にご説明します。
他の印刷加工もいくつか。
(左ページ部分)これは「圧着DM」を利用して、ページの一部を袋綴じページにしてみた、という実物綴じ込み付録。普段、DMでよく目にする圧着ハガキは、サイズを違えることも型抜きをすることもいろいろな仕様でつくることができる。また1枚ずつに違い情報を刷ることができる「可変印刷」もできるため、今回は7のゾロ目が出た人はあたり! という即席クジも付いています。
私が「7648」だったので、はずれ……。あと129冊後の人が当たりってことですね。
辞書の本文ページなどによくつかわれる薄紙。あれをフライヤーとかほかのものにも使えればな……なんてことも思いますよね。平判の紙にそれもフルカラー・高精細オフセット印刷ができる吉田印刷所で、その実力をガツンと見せつけてもらいました。イラストレーターの福田利之さんが描いてくださったすてきなイラストを全面に、これでもか!とインキを載せて刷ってもらいました。
この薄さ、写真でわかるかしら?
こちらは、折り込みチラシなどによくつかわれる、素朴でチープな風合いが魅力的な黄更紙やピンク更紙を使った印刷トライアル。チラシ専用の小さな輪転機なので小ロットからでもオーダーできるのがうれしい。加えて、新聞のような端がギザギザした状態にしてもらうこともできるのが、これまたうれしすぎる!
今回は、特集と連動した印刷サンプルが、綴じ込まれたものだけでなく、OPP袋にまとめて投げ込み付録としても付いています。
紙ナプキン印刷屋さんで、それを転用し、紙ナプキンのフライヤーをつくってもらいました。すてき!デザインは岡本健さん。
荷札タグ加工機をつかって、荷札タグのようなハトメや玉紙がついたカードをつくったり。デザインは名久井直子さん。
あと、海外でよく見かける「ロール状のタグ」。これはどうやってつくっているんだろうと長年思ってきましたが、今回、なんとシール印刷機を使えばかんたんにつくれる! ということが実験の末、判明。コスモテックさんにお願いして、トライアルしてみました。
他にもさまざまな印刷加工を、実物綴じ込みと共にご紹介しています。
ふぅ。本当は他の特集や連載もご紹介しようと思ったのですが、長くなりすぎるのでまた明日以降でご紹介します。
早いところでは今日あたりから書店店頭に並んでいますので、ぜひ現物をお手に取ってごらんください。
amazonでは10月5日発売となってますね。今予約していただければ、発売日にすぐ発送していただけるかと。
今号も、どうぞよろしくお願い致します!
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『デザインのひきだし20』
第1特集
専門印刷を転用して、コスト省・少部数からのステキ印刷物をつくる
印刷ハック!
コースター原紙を使ってDMをつくりたいけど、少量だと紙も買えないし、いつもお願いしている印刷会社は「刷ったことないんですよね……」なんて言われてしまう。でもそんなときは、コースター専門印刷会社に発注すればいいのだ! 自分とは縁がないと思いがちな、各種専門印刷。でも実はだれでも頼むことができ、特殊な紙や印刷加工が手軽に使うことができる。本特集では、そんな専門印刷を別に転用して使う、つまり印刷をハックするテクニックをご紹介。コースター印刷・伝票印刷・新聞印刷・チラシ印刷・薄紙印刷・紙ナプキン印刷・ダンボール印刷・荷札タグ加工・シール印刷・軟券印刷・ソノシート加工などなど、今まで知らなかった印刷を試してみよう!
第2特集
食べられる印刷加工
デパ地下で見られる、かわいい印刷が入ったお菓子の数々。オンリーワンの写真入りバースデーケーキ。そんな「食べられる」印刷のあれこれを大特集。なんと個人的にインクジェットプリンタでも食べられる印刷ができる!
巻末特集
エコな印刷物ってどんなもの?
「エコな印刷物」にしてほしい、なんて言われても、どうしたらいいのか……。そんな悩みにズバリお答えします!
連載・記事
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初版限定実物見本
超薄紙印刷+A3コート&色更紙印刷+圧着ハガキ+偽造防止印刷+コースターでDM+紙ナプキンのフライヤー+荷札タグのしおり+ダンボールのハガキ+軟券印刷でチケット+タブロイド+光源変化印刷+新しい紙・モフル全11色
グラフィック社編集部編 2000円+税