ハーバード・ビジネス・レビューの最新号では、いま話題の「人工知能」を特集。新しい技術が社会や人の生活をどのように変えるか。この問題を考える上で人工知能は恰好の材料である。

 

新しい技術が生み出す期待と不安

 IT技術の発展により、社会は日々変わっていく。新しい画期的な商品やサービスが生まれるというニュースに胸躍る一方、新しい技術が入ってきたことで生活や仕事が急速に変化することへの不安も生じています。

 新しい技術が生み出す期待と不安――この現象の象徴ともいえるのが人工知能(AI)の登場ではないでしょうか。

 もともと道具や機械は人間を助けるために生まれてきました。その機械が、人間を超えるとどうなるか。レイ・カーツワイル氏がコンピュータの能力が人間の能力を超えるタイミング、すなわち「シンギュラリティ」が2045年に起こると提唱したことなど、機械の発展に対する不安がさらに顕在化した感があります。

 そんななかいま話題を集めているのが人工知能です。コンピュータが発展して、非常に高度なアルゴリズムが開発されてきたことから、多くの知的労働を機械が代替してくれる社会が訪れようとしています。

 新しい技術が社会をどう変えるか。今回、ハーバード・ビジネス・レビューの最新号では「人工知能」を特集しました。企画から編集に半年ほど費やしましたが、その間、人工知能のメカニズム以上に、「人間とは何か」「知性とは何か」を考えることとなりました。

 人工知能と言わずとも、電卓ですら数字の計算能力はすでに人間を圧倒的に超えています。パソコンのハードディスクには人間の記憶力をはるかに凌駕した量の情報が蓄積されています。インターネットの検索機能を使えば、知らない単語や言葉を瞬時に調べることができます。このように、人間の知的作業の一部である、計算、記憶、調査などの分野が、いま現在でも機械が相当上回っています。

 これらの現象に脅威を感じる人はいないのですが、人工知能の発展には脅威論が堪えません。それはなぜか。