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ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー体験、使い勝手などと表現されることが多い)には、五感への訴求、特定のアクションとの相性、情動の喚起など、実にさまざまな要素が含まれる。それらを総合的に考慮した「UXデザイン」の能力が、いまや企業の収益を左右する。UXを中核資産として育てるために、企業はどうUX能力を構築すればよいのか。GE、マイクロソフト、ビザ、シャープなどのUX戦略を支援してきたデザイン・コンサルティング会社フロッグのバイス・プレジデントが、5つの要諦を示す。
今日のビジネスでは、ユーザーエクスペリエンス(UX)が製品やサービスの全体的な質を代表するようになっており、エンドユーザーにとっての製品・サービスの妥当性や意義を決定づけるものとなっている。UXは見た目や触感から始まり、使用時にユーザーに対してどう反応するのか、人々の日常生活にどうフィットするのかというところまで、さまざまな要素を含む。また、UXが消費者とビジネスをつなげる手段として語られるのを耳にしている読者もいるだろう。これはマーケティングから商品開発、流通までのあらゆるタッチポイントが対象となる。
UXはファッション用語で言えば「流行色」であり、収益性に影響を及ぼすものでもある。企業資産としてのUXの価値は、もはや疑うまでもない。インスタグラムの主要資産は技術ではなく、写真を共有できる最も優れたUX(およびUX関連人材)であるが、フェイスブックは同社の買収に10億ドルという金額を費やした。また、アップル対サムスンの最近の裁判では、提起された侵害の93%がiOSのユーザーエクスペリエンスを規定するデザイン特許に関するものであった。
UXの価値をますます重視する動きは、消費者向けのテクノロジー企業――新たな統合デザインに取り組むグーグルや、ウィンドウズ8で斬新なデザイン言語「メトロ」を取り入れたマイクロソフトなど――に限られたものではない。私が勤めるデザイン・コンサルティング会社のフロッグでは、金融サービスやヘルスケア、インフラなどの企業の経営陣から同じようなことを耳にする。たとえばGEやブルームバーグでは、企業レベルでUXの組織能力を構築するためにトップデザイナーを積極的に採用している。こうした動きは我々の海外のクライアントも同様で、地域通信事業者たちはアップルのような「統合的ユーザーエクスペリエンス戦略」をステータスの証しと見なしている。
UXの重要性に対する認識は、企業文化にじわじわと浸透してきている――「ブランド」が10年前にそうであったように。経営陣が「300億ドルブランドの管理」について話をしても今日では不思議ではないが、少し前までは色眼鏡で見られていた。ブランドに対する考え方が確立され、根付くにつれて、経営陣はブランドに「資産」としての価値を持たせる方法を学んでいったのだ。
さて、もしあなたがスティーブ・ジョブズ以降の時代に生きる賢明な幹部であれば、このUXという新たな企業資産をどう管理し、成長させていくだろうか? 中核資産としてのUXの価値が高まるにつれ、一部の企業はデザイン会社への外部委託を見直し始めている。当社フロッグを含むデザイン・コンサルティング業界は近年、企業がUXの組織能力を社内に構築できるよう支援している。しかし、大企業はUX・デザイン関連の人材を社内に抱えようとしているものの、すべての製品開発チームにデザイナーを配置しようという企業は少数である(率直に言えば、そうしたくても人材が足りない)。そのため社内のUXグループは、年に数回の目玉製品の発売にのみ携わることになり、事業の大部分には(あなたが担当する製品の多くにも)関わらないままとなる。
では、経営陣がすべきことは何だろうか。大企業は、どうすればこの組織能力を全社的に備えることができるのだろうか。UXの人材・能力の不足を埋めるために、グーグルなどの先進企業では拡張性のある戦略を模索している。エンジニアであろうがMBA取得者であろうが、全社的に誰もが適用できるような戦略だ。その一部を以下に紹介しよう。