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大統領選から新商品の開発まで、市場を使って予測する、衆知を集める動きが加速している。ビジネスにおいてはオープン・イノベーションとも呼ばれ、グーグル、モトローラ、マイクロソフト、GE、イーライリリーなどが続々採用しているという。まさに「集合知」を体現する世界の事例を紹介した書籍『普通の人たちを予言者に変える「予測市場」という新戦略』の一部を、本日より5回にわたって紹介する。
経営者が付いていけないほど、テクノロジーや市場が急速に変化している現代、もっとも鋭い洞察を提供するのは、企業の上層部ではなく、ごく普通の人々だ。だからこそ、われわれは集団の英知を取り入れるための市場を構築したのだ。
──ジム・ラヴォワ(ライト・ソリューションズ社CEO)
トップダウンで起こるイノベーションは、型どおりでつまらないものが多い。一方、ボトムアップで起こるイノベーションは、めちゃくちゃだが絶妙なものが多い。
──カーティス・カールソン(SRIインターナショナル社CEO)
「市場は個人よりも賢い」という原則を掲げ、予測市場という民主主義の力で問題を解決しようとする組織とは、いったいどのようなものだろうか? 上級管理者なら誰でも、製品の欠陥や競合他社の戦術について真っ先に知るのは、顧客と直接やり取りをする従業員だということを知っている。経営者たちはみな、貴重な情報が組織に点在していることを知っている。彼らが知らないのは、その情報をどう収集するかだ。
いちばんの問題は、組織のピラミッドの頂点にいるCEOや上級管理者が、組織の中でもっとも賢く、常に正しい答えを握っていると期待されていることだ。中間管理職の人々はスキルを持っているが、組織の全体的なビジョンは理解していないと考えられている。そのため、新製品の評価、テクノロジーの選択、戦略の決定に従業員の知恵を利用するというと、〝保守的〟な人々は驚き、口ごもってしまうかもしれない。
予測市場という民主主義のシステムを取り入れている組織では、従業員が毎日の朝食後に社内のイントラネットにログオンし、ブルームバーグ端末に似たインターフェイスを使って、出勤前にいくつか予測的な取引を行なう。ある女性従業員は、前日に購入した証券をチェックし、朝食をとりながら読んだウォール・ストリート・ジャーナルの記事の影響を考え、社内開発の支援が検討されている5つの技術的イノベーションのうち、ひとつに投資することを決める。さらに彼女は、昨四半期に発売されたある製品の販売台数の予測が少なすぎると判断すると、1万7500台という販売予測に売り注文を出し、2万1000台という予測に買い注文を入れる。
彼女の画面には、新製品の発売、競合他社の戦略、地域展開に関する予測市場もある。彼女はこれらの情報には疎いので投資は控えるが、顧客の要件や市場の動向に詳しい従業員たちは投資を行なうだろう。「自分の詳しいものにのみ投資できる」というのが、予測市場のメリットのひとつなのだ。アンケートとは異なり、予測市場が収集するのは意見ではなく知識だ。従業員たちの取引結果によって、企業がどのような行動を取るのか、日々のビジネス環境の変化にどう対応するのかが決まる。役員室にいる経営者は、提案された予測市場のトピックを確認し、既存の市場の進捗を監視しながら、もっとも投資家の支持が高いプロジェクトに資金を割り振るというわけだ。
現実離れした話に思えるが、そのような企業はすでに存在する。それはライト・ソリューションズというITエンジニアリング会社だ。予測市場は、企業の経営方法に革命を巻き起こす可能性を秘めている。ライト・ソリューションズはいわばその革命のパイオニアともいうべき存在だ。