誹謗中傷というのはあくまでも一般用語であり人によってある程度判断基準は変わってきますが、「他人の悪い点を指摘すること」という部分は共通しているかと思います。そういった意味では質問文の例は間違いなく誹謗中傷にあたる行為です。そのため、少なくともマナーやモラルといった観点からは褒められた行為ではありません。 一方で、それが法律的な責任を負う行為になるかは別問題です。 法的責任を追及するには、相手を特定できることが必要です。つまり、誰の話をしているかが分からない形であれば問題はないということです。但し、これは読み手が対象を判断できるかという点から判断されますので、伏字にしたからといって必ず責任を免れられるわけではありません。身内以外なら分からないけれども身内なら分かる、という場合も対象を特定できると判断されます。 次に、特定の対象への誹謗中傷行為が法律的にどのように責任を問われるかですが、これは大きく刑事と民事の責任に分かれます。刑事責任は犯罪のことで、国が刑罰を与えます。対して、民事責任は当事者同士(質問文の場合は誹謗中傷をした妻とその対象となった夫)で金銭などによる解決を図るものです。 刑事責任の場合は、名誉毀損罪と侮辱罪の2種類があります。 名誉毀損罪は具体的な事柄を用いて誹謗中傷を行った場合に適用されます。「○○は前科持ち」「○○は××と不倫している」といったものです。逆に、侮辱罪は具体性がない悪口に適用されます。「ハゲ」「チビ」「デブ」などです。 但し、これらの犯罪行為が成立するには公然性が必要です。これは、不特定多数の人間がその発言などを見聞きできたかを意味します。そのため、見知った友人同士で他の人の悪口を言った程度では基本的に犯罪にはなりませんが、それが街中で通行人に聞こえると犯罪になる場合もあります。質問文の場合はSNSなので少し複雑ですが、フォロー人数は関係なく、あくまでもその書き込みを特定の友人など以外が見ることができたかが重要です。また、ネットだけの知り合いは不特定多数に含まれると判断される可能性もある点に注意が必要です。 一方で、民事責任の場合は刑事責任の場合ほど厳格に判断されるわけではありません。公然性は慰謝料に影響しますが、公然性がなければ責任を問われないというわけでもありません。内容、伝わった相手、それにより夫にどのような影響が出たか、などによって総合的に判断されます。勿論、誹謗中傷の事実やその損害額は夫側が証明しなければなりませんが、夫の仕事に支障が出て1億円の利益になる取引先を失ったなら1億円の損害賠償請求を受ける可能性もあります。それが2社あれば2億円、3社なら3億円というふうに、相手の損害の範囲内であれば上限はありません。 このように、誹謗中傷と法的責任の違い、刑事責任と民事責任の違い、名誉毀損と侮辱の違い、といった部分で話が変わってきますので、そういった違いが曖昧な情報を見て混乱されているのではないかと思います。 ですが、少なくとも法的責任についてはきちんと法律で定義されており、それに基づいた裁判という実例もあります。具体的な部分については事件ごとの事情によって変わりますが、大まかな部分については基本的に変わることはありません。