ふりかえりにおいて参加者による投票で優先順位をつけるのは難しい

ふりかえりで課題や問題を洗い出し、メンバーの投票によって議論する順番を決める方法は、とても一般的だと思う。ただ、この方法が機能するかどうかはよーく考えたほうがいい。なぜなら、参加者の関心ごとは、人それぞれ違うからだ。

「投票結果 = 優先順位」なのか?

参加する人の役割によって、視点も変わってくる。よって関心ごとも人それぞれになる。様々な視点が集まるのはチームとして良いことだと思う。ただ、その軸が異なると判断がしにくくなる。たとえば、

  1. ビジネス側は、顧客の課題解決の話をしたい
  2. 開発側は、技術負債の話をしたい

場合、どれが優先順位が一番高いのだろうか? どれも、「その視点では」正しい優先順位付けができている。

さらに、アジャイルコーチやスクラムマスターの場合、チームを傍観して見ることで、チームでは気がつけない課題や問題に気がつくこともある。たとえば、先程の例に加えるとすれば、

  1. ビジネス側は、顧客の課題解決の話をしたい
  2. 開発側は、技術負債の話をしたい
  3. スクラムマスターとして、チームはスプリントゴールを達成できなかった話をすべきだ

というケースもある。しかし、チームが1や2を選択した場合、どうすればいいのだろうか?

これが「参加者の投票では優先順位を意識したふりかえりは難しい」理由だ。

優先順位付けを意識したフレームワークを活用する

優先順位付けは、人類が何度も立ち向かった課題のひとつなので、世の中には様々なフレームワークが存在する。そのなかでおすすめしたいのが、ベストセラーである『7つの習慣』に登場する「時間管理のマトリックス」だ。

最近になって、同じような課題にでくわすチームがいくつかあり、その現場で試してみたところ、初心者でもわかりやすく、比較的スムーズに使いこなしていた。

時間管理のマトリクスをつかったふりかえり

使い方は図にあるとおり。

  • ① 洗い出しと優先順位付け
    • 課題を洗い出したら、優先順位付けのため、時間管理のマトリクスに貼り付けていく。
  • ② 重要度が高く緊急度が高いものの対応
    • まず、ここで議論すべきかを疑う。朝礼や日々のSlackでのやりとりなどで解決できるなら、そこでやったほうがはやい。ふりかえりまで待てるなら、それは緊急ではない。
    • それでも②に課題などがあるなら、できるだけ早く潰していく。
  • ③ 重要度が高く、緊急度が高いものをふりかえりで話していく。

③については、複数あるならここで投票などを行なう。「これを絶対話したい!」という強い思いがある人がいれば、その人の思いを優先してもいい(これはある種のリーダーシップでもある)。

課題や問題をブレークダウンする流れ

あとは、KPTでもなんでもいいので課題を深堀りしてアクションにつなげる。前に紹介した「Miroを使った問題を掘り下げやすいふりかえりのテンプレート」を参考にすると、上記のような流れになる。

「なぜ?」という過去思考のやりかたより、「どうすればできるか?」という未来志向のほうが、今の時代にマッチする気がしている。

参考: 今回紹介したMiroはこちらからも見えるようにしています。

まとめ

慣れてくると上記のようなフレームワークは必要なくなるが、補助輪として活用するのもひとつの手だと思う。

大切なのは、安直に「投票して決めればいい」と考えることではなく、「本当にこれがチームで話すべきことなのだろうか?」と常に考える習慣をチームで持つことだと思う。

なぜなら、ソフトウェア開発は多数決ですべて決められるほど、簡単な仕事ではないから。

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