平均身長187cmの選手が揃うUFJの階級に、身長173cmの安西選手は、レスリング技術で相手を倒し、倒した相手をパンチでKOする「タックル&パウンド」を必殺技に、チャンピオン獲得を目指す。その安西選手に格闘技の世界で戦う魅力について話を聞いた。
■総合格闘技に格闘家としての活路を見出した
---:格闘技の世界を目指す前に、ご自身は何をスポーツをされてたのですか。
安西選手(以下敬称略):私は、もともとレスリングをやっていました。
---:格闘技の世界に飛び込んでみようと思ったきっかけていうのは?
安西:小学校ぐらいのときに、テレビでK-1がやっていて、そこでピーター・アーツという選手がK-1グランプリの決勝戦で張り切っていて、豪快なKOしてるのを見て”格好いいな”って感じたのと同時に”そういう舞台に立ちたいな”と思ったのが始まりです。
---:K-1に出ることを目指していた?
安西:最初は僕もそう思ったんですけど、自分の手足が短いこととか、体のサイズを考えると、打撃一つでやる世界でやっていけるのかなって思っていたときに、総合格闘技というものに出会いました。総合格闘技では打撃だけじゃなくて、全ての組み技とか関節技も使えるので、それなら身長も小さい自分にもチャンスがあるかなと、僕にはこっちのほうが向いてるということで、すぐにこっちにシフトしました。
■アスリートから格闘家へ、違いは「ダメージ」
---:元々やられていたレスリングはアスリートの世界にあると思うのですが、格闘技の世界と違いはありますか?
安西:やっぱり格闘技の世界には、相手にダメージを与えるということがあることです。アスリートというのは、基本的に体の身体機能を高めて、瞬発力とかスタミナとかそういうものを駆使して競うんですけど、格闘技には他のスポーツとは違って、ダメージというものがあるんです。
相手を弱らせることで試合の展開も変わる、そこが他のスポーツにはない違いだと思います。もちろん、格闘技の中にもアスリートタイプのファイターもいて、本当に身体能力がすごくて何でもできる選手は、もちろん強いです。一方で、本当に相手を殴って殴って仕留めるような、そういう闘争本能を丸出しにした選手もいるんで、そういうのが混在してるところがやっぱり面白いですね。
---:格闘ゲームのように、相手のキャラクターを考慮しつつ、弱点を狙っていくというイメージですか?
安西:そうです、それですね。
---:”鉄拳”的な世界があるんですね(笑)。
安西:鉄拳、僕もやったことあります、あります(笑)。僕も鉄拳好きで、大学時代よくやってましたけど、格闘ゲームとしてよくできてますよ、やっぱり。登場するキャラもいっぱいいるじゃないですか、キャラによって体格も違って、使う技も違えば、ダメージも違う、間合いも違う。バックボーンの違うキャラが登場して戦いを繰り広げる、そういう世界があるところが、やっぱ格闘技の面白い部分だと思います。
---:ポテンシャルの低いキャラで相手をやっつけると、うれしいですよね。
安西:そうです。一発逆転になったりとかっていうのがあるんで、もちろん現実の戦いの中でもそういう選手は居るんです。
■男だったら強いのが一番だろう
---:その世界観を現実の世界でやっているのがUFCともいえる。
安西:簡単に言ってしまうと、そうですね。
---:今、目指してるタイトルはあるんですか。
安西:今僕が出てるUFCのウェルター級のチャンピオンです。UFC(Ultimate Fighting Championship)というのは、アメリカの総合格闘技界の中で、一番初期の段階で旗揚げされた団体で、開催回数も行われてる規模もおそらく世界で一番大きい団体です。なので、UFCは世界で一番強いファイターが集まってるので、そこでチャンピオンになるのが今の目標です。
---:格闘技の世界で戦う魅力というのはなんでしょうか。
安西:僕なりの表現でいいますと”生命力”ですね。金網の中に2人っきりで、やるかやられるかの戦いをする、単純にもう混じりっ気なしの世界観にあると思います。
男の魅力にもいろいろあるわけですが、例えば、お金を持ってるとか、体が大きいとか、女にもてるとかおしゃれだとかって、何かそういういろんな要素の中で、僕はただひたすら”男だったら強いのが一番だろう”っていう、そのぐらい純粋なものを戦いの世界に感じています。
多分、どんな男でも強さって絶対欲しいと僕は思っていて、お金持ってても、すごいおしゃれでも、女にもてる男だろうと、絶対に強くなりたいはずなんです。だから、僕は他のものが無かったんですけど、ここだけは極めたいと思ったんです。それがあれば、別に他に何があってもなくても”俺は強い!”って言って胸張って生きていけるかなと思っています。
---:動物としての強さを見せたいと。
安西:そうです。そこに魅力があります。多分、このことを分かってもらえない人って山ほど居ると思うんですけど。でもやっぱり、僕が試合を続ける中、見に来る人がだんだん増えてきて、共感してくれる人もいるんだと感じています。
最初、試合を見に来てくれるのは、2人だったんですが、それが4人になって、15人になって、60、80になって。で、今では試合のときに200人見にきてくれるんです。その200人、全員知り合いかっていうとそうじゃなくて、試合を見に来た友達が”面白いのがあるから”と言って、どんどん誘ってきてくれての200人なんです。
試合の感想も”この試合、いい試合だった”、”強かった”とかじゃなくて、見にきてくれた人の中で一番多く聞いた”感動したよ!”っていうものが一番印象的でした。その声を聞くまで全然思ってなかったんですけど、こうやって自分が魅力を感じてやってることが、みんなに伝わるんだなっていうのを肌で感じています。
■試合は自分だけのものではない
---:格闘家として、観客に伝わるものが必要ということですね。
安西:そうですね。だんだん格闘技が自分だけのものではなくなってきているというのを感じています。”会場で見ると伝わるものがすごいある”って友達に言われて、伝わるものがあれば多分、何でもいいんだと思います。僕はただそれが格闘技だったんです。はい。
---:2015年にかける意気込みを聞かせてください。
安西:テクニックやパワー、今のままの自分であると、この先同じところで勝ち抜いていくこと難しくなってくると思うので、今までできたことにプラスして新しくできることを増やし、試合で勝てるように自分を鍛え上げ、変化することを恐れずに強くなっていきたいです。
---:これからのスケジュールは?
安西:ちょっとまだ僕自身の怪我が治ってないので、次の試合がいつになるかわからないのですが、3月までのどこかで出場することを目指します。
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