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本と映画と政治の批評
by thessalonike5


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子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製
子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_1601739.jpg加藤智大に関するテレビ報道から派遣労働を問題にする議論がフェイドアウトしつつある。経団連やスポンサーからテレビ局に圧力や指図が入っているのだろう。捜査当局が派遣先での解雇をめぐるトラブルについて報道機関に情報を出さなくなったことも影響している。捜査当局が容疑者の仕事関係の問題を積極的に公表してマスコミに報道させたのは、事件発生からニ日間(6/9-6/10)ほどで、今週の水曜日(6/11)あたりからは別の方向へ視聴者の関心を向けさせている。事件の動機に絡んで捜査当局(警察と検察)がマスコミを使って世論を喚起した問題は三つある。すなわち、①派遣労働者の待遇問題、②軍用ナイフの規制の問題、③有害サイトの規制の問題である。今週半ばの二日間(6/11-6/12)は③有害サイト規制の問題が関連報道の中心になった。テレビ局は、とにかくこの事件をネタにワイドショーやニュース番組を埋めると視聴率が取れるので、懸命に警察にぶら下がって新しい情報提供をせがみ、捜査当局の方がそろそろそれを面倒で負担に感じている様子がうかがえる。



子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_1602916.jpg今週、事件に関連して注目を集めたのがモバイルサイトの問題で、加藤智大のサイト依存症が言われ、自虐言動の集積(不細工・負け組・彼女がいない)に対して、マスコミから身勝手な責任転嫁とひがみ根性の欠陥人格だと糾弾されたが、私のようにサイトの独白内容の内面性や文学性に注目する者もいた。加藤智大は県立青森高校の出身で、先輩に太宰治や寺山修司などの偉大な文学者がいる。その情報が影響しているのかも知れないが、あの自虐モノローグに文学的な感性を嗅ぎ取る感覚を私は否定できない。薄暗い孤独な部屋の中で息を殺すように膝を抱え、バックライトに浮かんだ携帯電話の白く小さなスクリーンの宇宙に向かい、右手の親指を切なく動かして啄木の三行詩的なものを彫り刻んでいたのではないか。そういうイメージが浮かび上がる。東北の人間は文学的だ。太宰治、寺山修司、宮沢賢治、石川啄木、そして偉大な辺見庸。内面を彫り刻む文章を書く。文章(詩)が生きもののように読む者の心をグリップする。西日本の人間とは違う。独特の内面的な宇宙の深さと才能がある。

子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_1604143.jpg今度の事件を深刻な社会問題として捉えているのは、日本のマスコミよりも外国のメディアであるかも知れない。日本社会の異常なストレスと人間疎外に目を向けるBBCや格差問題に焦点を当てる中韓のメディアの態度は、テリー伊藤と香山リカと宮崎哲弥にわぁわぁ吠え騒がせて視聴率を稼いでいるだけの日本のマスコミとは関心のあり方が根底から違うように見える。彼らは真剣に自分自身の問題として考え、現代社会の歪みの問題として捉えている。一方、日本人の方は、「日本の格差なんか外国と較べれば大したことない」とか、「労働法制の規制を緩和した小泉改革によって景気が回復した」などとテレビと2ちゃんねる掲示板で言い続けている。先進国の中で日本以上に格差社会の歪みが病的に噴出している国はないのだ。これほど極端に新自由主義の弊害が社会を蝕んでいる国はないのだ。英国人から見ても、米国人から見ても、今の日本社会は異常で正常ではないのである。しかも、恐らく彼らから見て最も不可解なのは、この惨劇に福田首相が国民に向かって何も発言をしていないことだろう。民主党も何も発言していない。社民党も共産党も何も国民に言っていない。何も言わなくて済む問題なのか。

子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_1605299.jpgテレビ報道で少しずつ出てきている問題に加藤智大の家庭環境の問題がある。私は、前の記事でも書いたが、今度の加藤智大の犯行の動機には真の目的が二つあり、一つは格差社会に対する復讐であり、もう一つは両親に対する復讐があったと考えている。狙いは二つ。両親に対する復讐については、あまり詳しい情報に接しておらず、高校時代に母親に家庭内暴力をふるっていたという情報と、子どもの頃に親から虐待されていたという情報と、高校時代に成績が落ちて親から見離され、両親の期待と愛情が弟に集中したという情報をネットの中で垣間見ただけである。万世橋署に連行された後、加藤智大は警察の取り調べの中で動機を聴かれ、関東自動車工業の待遇・解雇の問題と両親に対する憎しみとを言葉にしたはずである。それらは、例のモバイルサイトの書き込み履歴で確認がとれ、マスコミにも警察から情報提供されたが、派遣問題の方が比較して分りやすく、裏取り(事実確認)も容易だったために事件の構図としていち早く紹介された。だが、恐らく加藤智大は、派遣労働の不満以上に延々と両親と家庭に対する怨恨を口にし続けたはずなのだ。警察は今週初めに青森まで行って両親に対する事情聴取を行っている。

子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_161545.jpgこの事件の鍵の一つは加藤智大と両親との関係にある。私の想像だが、加藤智大は、これまで誰にも聞いてもらえなかった両親への恨みつらみを、警察の取調担当者に向かって、何時間も何時間も、あれもこれもと堰を切ったように溢れ出させたのに違いない。それは加藤智大が聞いて欲しかったことであり、誰かが加藤智大のカウンセラーになったときは、膨大な時間をかけて聞きほぐさなければならなかった鬱屈の山塊である。取調担当者が加藤智大のカウンセラーになったのだ。幼少期から小学生時代の虐待、親自慢のエリートの卵だった中学生時代、不和になり家庭内暴力を起こした高校時代、捨てられたそれ以後。延々と延々と喋りまくっただろう。警察は、その記録を調書にして、青森の両親のところに確認に行ったのである。起訴状(構成要件)における犯行動機を確定させるために。テレビ報道では出てないが、おかしいとは思わないか。県立青森高校は青森県下の最優秀校である。よほどのドロップアウトでなければ、岐阜の自動車短期大などへ進学する生徒はいない。単なる成績不良とか努力不足ではなく、深刻な親との確執があり、家庭内での葛藤と孤立があったはずだ。私の推測だが、彼はその進路選択を親に止めて欲しかったのではないか。

子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_161174.jpgそういう甘えと言うか、最後の親への期待の気持ちを、逆の行為を見せることで示威して、子である自分を人生の転落から救出してくれるように、救いの手を差しのべてくれるように、必死で親にすがり求めていたのではないかと思われてならない。加藤智大は何度も転職を繰り返している。そのたびに何らかの形で親との相談と確執があったに違いない。一度は青森へも帰っている。だが、加藤智大が期待した親からの支援はなく、地元でまともな職に就かせるべく奔走するなり、大学進学に活路を開かせるなりの援助もなく、加藤智大からすれば見捨てられて放り出された気分だっただろう。これを甘えだと言うのは簡単だし、実際に甘えに違いないが、本人の主観からすれば、財力のある父親に親としてもう少し真面目に子供の面倒を見ろという思いが強く働いたのではないか。この両親と加藤智大の関係がどうだったのか、私はもう少し詳しく知りたい。成績が悪くなったから見捨てたというのが真実のように見える。そして、この父親という人物がよくわからない。青森の実家での記者会見を見ても、何か他人事のような口調で、7人の人命を奪った殺人鬼を育てた自分の責任や立場を自覚しているようには見えなかった。記者の質問には答えず、型どおりの逃げ口上で会見を切り上げた。

子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_1612797.jpg警察も、加藤智大から親に対する恨みつらみを聞かされながら、何がどう問題なのか家族の具体的真実については内在的には了解できなかったのではないか。もし家族像についての理解や把握があれば、それをマスコミ記者に詳しく説明しているはずだ。罪刑に配慮されなければならないような特段の事情は認められず、親への甘えと反抗、自立心の欠如、筋違いな反発という一般認識で理解を締めたのに違いない。加藤智大は復讐という目的を果たした。親の社会的立場を失わせ、弟の人生を壊し、三人を絶望に追いやった。殺人鬼の親、殺人鬼の弟にすることで、復讐の目的を遂げた。私は、この事件を惹き起こした責任は、加藤智大本人だけでなく両親にもあるのではないかと思う。両親は責任をとるべきで、法的責任がないからと言って社会的責任(道義的責任)から逃げられるものではない。社会的制裁を受けるべきだ。カメラの前に顔を晒すべきだし、本名も明らかにすべきだろう。本当なら、例えば父親は、自分に全て責任がある、自分が死刑を受けるから、この子の命は助けてやって欲しいと、そう言うべきではないのか。実際に責任の真実はそういうことではないのか。子供はこのように親に復讐する。次に起こる同じ惨劇を防ぐためにも、この一家で何があったのか詳らかにする必要がある。

キレやすい性格も、ひがみ根性も、自虐も、依存心も、社会に対する逆恨みも、すべて自分のDNAのなせる業ではないか。親たる自分の遺伝子の複製ではないか。自分が身代わりに死刑を受け入れ、子供の命を救え。
子供の身代わりに死刑になれ - キレやすさも自虐もDNAの複製_b0090336_1622261.jpg

【世に倦む日日の百曲巡礼】

1996年の米国映画 『トップガン』 のテーマで ケニー・ロギンス『Danger Zone』 を。

日本公開は1987年。バブルの頃。懐かしいですね。流行りましたね。この映画と曲。主演はトム・クルーズ。本物のF-14戦闘機と空母エンタープライズを使って撮影。インド洋上でソ連軍のミグ戦闘機と空中戦を演じて撃墜するシーンがありました。


この作品が、当時売り出していたパイオニアのレーザーディスクのキラー・アプリで、ハードを売っている秋葉原の電気店では、販促展示用に必ずこの映像が流されていました。レーザーディスクはVHDと規格競争を展開しましたが、ハードの値段が下がらないまま普及せず、結局、その後にDVDが登場して、技術も製品も市場からあっと言う間に消えてゆきました。

グローバリズムの席巻と日本のエレロニクス産業の衰退の始まりを予告する画期的で象徴的なインダストリの事件と言えます。


by thessalonike5 | 2008-06-13 23:30 | 秋葉原事件
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