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コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する

コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_14304051.png大阪府で感染指標がすべて基準値を超え、ステージ4の危機的段階となった。昨日(11/30)は重症者が21人も増え、全国で最も多い124人となっている。経路不明の率も63.3%と飛び抜けて多く、手がつけられない感染爆発の状況を呈している。大阪の首長は特にコロナに対して警戒が緩く、経済を回すことを優先した行政が特徴だった。一つの傾向として、コロナ禍の中で経済(資本主義のシステム)を回すことを至上命題に動いた国や地域ほど、感染拡大の勢いが甚だしいという点がある。それと重なって、指導者がウィルスの猛威を過小評価して侮り、非科学的な対処と発言で臨んでいた国や地域ほど、感染が急拡大して被害の度が厳しくなっていることが分かる。日本では大阪だし、世界では米国ブラジルがそうだ。英国のジョンソンもそうで、自身が3月下旬に感染するまでは「ちょっとした風邪」だと言って見くびっていた。このことは、重要な因果関係の所在を示唆する問題として社会科学的な考察の対象になってよく、意味ある仮説が立てられてよいのではないかと思われる。



コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_14303139.png大阪の吉村洋文、米国のトランプ、ブラジルのボルソナロ、英国のジョンソン、そして麻生太郎と、これらに共通しているのは、札付きの露骨な資本主義者(反社会主義者)で、資本の自由な市場活動を徹底して重視し擁護する姿勢である。政府が感染対策に注力し、庶民救済と医療充実に出動し、企業活動に規制をかけることを何より嫌う。なお、トランプには、若干、教科書的な新自由主義とは異質な一面があり、「大きな政府」の属性も漂わせるが、それは人気取りのポピュリズムの手法という範囲のものでしかない。麻生太郎と菅義偉も同様で、コロナ対策と称して膨大な国家予算を投入し、何やら「大きな政府」の見かけを演じているけれど、支出する税金は大資本と政商と富裕層のためにぶち込むのであり、庶民を救済しようというニューディール的な動機は微塵もない。コロナの問題はまさに政治思想と社会科学の問題であり、資本主義・新自由主義の弊害と、それによって困苦と厄災を押しつけられる多くの者との矛盾を深刻に考えさせられる。コロナ禍が格差を拡大し、富める者がさらに富み、弱者がさらに窮乏化したことは間違いない。


コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_14333071.png気づくこととして、特に秋以降、欧州と米国で急激に感染が拡大した事実がある。春の時点でWHOが最大の懸念を示していたのは、医療体制が脆弱で、狭くて不衛生な居住区に多くの貧困層が密集して生活するアフリカ地域での感染拡大だった。4月には、国連はアフリカで30万人が死亡するだろうと予測を出し、危機感を露わにしている。だが、意外にアフリカ諸国は感染対策に健闘し、予想されたほどの感染拡大の打撃を蒙らずに推移して現在に至っている。一方、逆に第2波で感染者数を劇的に増やしたのは、医療衛生体制が整備され、民度が高く、情報も十分で、検査態勢もよく構築されているはずの米国と欧州だった。秋以降、先進主要国での感染拡大が著しい。なぜこうなるのだろう。本来、米国と欧州の感染は減少してよいはずであり、先進国らしく対策が効を奏して成果を出してよいはずである。不思議なことに、コロナ禍の前で命の危険に晒されているのは、現在はアフリカの人々以上に米国と欧州の市民なのだ。この現象はどう説明されるのか。


コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_14354355.png資本主義の影響ではないか、リベラリズムの態度がそれを媒介しているのではないか、と私は直観する。個人の自由と私企業の利益を最高価値とする思想と、その思想に基づく政策と行動様式がそうさせているのはないか。コロナの増殖と棲息に快適な環境を作り出しているのではないか。まず、何より要因として指摘しなければならないのは、未だにアメリカではマスク着用を拒絶する者が多い事実である。そして、その態度を正当化するように、コロナはただの風邪だなどという迷信が蔓延り、マスクの効能を否定する無知がまかりとおっている。コロナ禍が始まって10か月も経つのに、アメリカではマスク論争が決着しておらず、何と、現在でもマスク着用率が50%を切っていると言う。マスクをめぐる対立が大統領選の争点に象徴的に構図化され、マスク派(バイデン)と反マスク派(トランプ)との政治闘争となった。奇怪きわまる絵だ。NHKの『ザ・リアル・ボイス』に登場したダイナーで食事する医師の話では、アメリカ人にとってマスクは馬の口輪と同じで、身体的精神的にこれ以上不快で苦痛な拘束と不自由はないのだと言う。


コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_15473257.pngマスクを着用しないこと、轡(くつわ)たるマスクの束縛から解放されることがアメリカ人の自由だと説明した。銃所持の論理もそうだが、アメリカ人は奇妙な理屈を言い立てて悪習を自己正当化し、自らを自業自得の危険な環境に追い込んでいる。とは思うが、建国以来ずっと黒人奴隷制を内包させて社会を経営してきた国民だから、かかる自由論の意識と主張もありなのかとも想像する。マスクを常用する日本人や中国人への偏見も、そういう自意識と倒錯した自由の信念の為せる業なのだろう。マスクを拒否し、コロナ感染症の脅威を軽んじるアメリカ人の非科学的態度は、トランプの米国第一主義の思想と結びついているに違いない。そうした人々が7000万人もいて、アメリカ人の半分がそうであることにパックンが呆れていた。アメリカが第一で、アメリカが絶対で、自分たちアメリカ人が思うことが正義で真実なのだ。反論は認めないのであり、科学や論理は二の次で、国際的客観的にどれほど異常でも、彼らは自己を正常と確信して開き直る。その心理の根拠は、世界を支配する超大国の軍事的・経済的な力だ。アメリカ人の自己中心的態度が感染を止めない。


コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_15474461.pngリベラリズム・自由主義とは、社会や体制の強制と束縛から個人の自由を求める思想であり、それを本質的契機とするから、どこまで行っても、個人のわがままや利己主義や私欲の無限追求という地平と結びついてくる。どれほどリベラリズムの理念性を強調し、思想として彫琢された範型の理論を語っても、そこに個人の欲望の解放と追求という本源性があり、それの肯定と是認のバックボーンがあることは否めない。リベラリズム・自由主義は、近代ヨーロッパで始まり、現代アメリカで繁栄して世界を席巻している思想である。グローバル時代の世界の標準的で普遍的な思想(宗教)だ。だから、やはり、本来的帰結として、どこまで行ってもアメリカの自由やヨーロッパの自由という結果に逢着する。自由と自由がぶつかるときは、アメリカやヨーロッパの自由が優先され尊重される仕組みになっている。自由で公正な市場競争と言いつつ、中国企業のファーウェイは難癖をつけられて排除される。とまれ、いずれにせよ、アメリカで感染拡大を止めるためには、マスクを轡と見なす認識を払拭し、個人の自由(エゴ)を我慢する自制心を涵養する戒めが共有され、そうした社会中心の価値観が根づき、個人中心の自由主義とバランスをとる必要があるだろう。


コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_15475691.png日本でも、街を歩いていて、マスクを着けている者と着けてない者がいる。全員が着用しているわけではない。不思議な光景だが、何が個人の態度と習慣を分けているのだろう。マスクを着けない不心得者はどうして発生するのか。その差の根源的理由を考えると、どうやら、11月下旬3連休にGoToトラベルで京都に遊興した無責任な観光客の論理や意識と通底しているような気がしてならない。そこに有害で危険な3密を作り出している。リベラリズムの精神態度と行動様式だ。欲望の満足を優先しているのである。そして、密集と密着の現場に入っても、マスクをしていればコロナに感染することはないと等閑しているのである。トランプが「ただの風邪だ」と言えばそれを信じて、支持者がマスクなしで集会で歓呼し絶叫するように、尾身茂が「対策していれば旅行自体で感染しない」と言って太鼓判を押せば、それを信じ、その専門家の「虚言」に依拠して、新幹線で嵐山や永観堂に繰り出すことができるのである。3連休にGoToで観光を享楽した者たちは、リベラリズムの思想的傾向が強く、自己責任主義を積極肯定する右派なのではないか。自民党支持が多いのではないか。皮肉や揶揄ではなく、思想の客観的な観察と分析としてそうした表象が念頭に浮かぶ。


コロナと新自由主義 - リベラリズムが感染拡大を助長する_c0315619_16242405.png誰がGoToを利用したのか、誰が何度も頻回にGoToを利用しているのかは重要な問題で、やはりプロフィールを調査して検証を試みるべきだろう。所得階層という側面も重要だし、支持政党という要素も見逃すことができない。私見ながら、街でマスクを着けずに歩いている者と感染拡大期にGoToを利用して観光地に密集する者とはイメージが重なる。ビヘイビア・モデルが同一だ。そして、5ch掲示板でトランプや麻生太郎の口真似をして、匿名をいいことに「コロナはただの風邪だ」を繰り返している者ともイメージが重なる。さらに言えば、この間ずっとトランプを応援し、トランプ勝利を無闇に喧伝し、米国における「選挙不正」を言い続けて悦に入っていた反共反中右翼の者たちともイメージが重なる。5ch特有の、弱者をひたすら侮蔑して悪罵し、弱者を呪詛し攻撃して吐き捨てる匿名右翼の憎悪の片言群ともイメージが重なる。麻生太郎や片山さつきや山口敬之や竹中平蔵の顔が浮かぶ。新自由主義は単なるシステムやストラクチャーではなく、またイデオロギーの堆積でもなく、意思と感情を持った生身の新自由主義者たちが存在する。新自由主義の社会をメンテナンスし、セメント化し、壊れないよう永続させる営みを続けつつ、そこから利益と恩恵を享受している階級主体がいる。


医療崩壊しても、損害を蒙るのはトリアージされる貧乏人で、富裕層の自分は大丈夫だと思っている者たちだ。リベラリズムの社会の支配階級である。



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by yoniumuhibi | 2020-12-01 23:30 | Comments(5)
Commented by 米帝大嫌い at 2020-12-01 20:19 x
https://www.wsj.com/articles/china-is-the-real-sick-man-of-asia-11580773677
ウォールストリートジャーナル、2月3日付。伝染病の爆発的流行で必死に苦闘中の国に向かって、「お前らは真の病人だ!」などという、19世紀の帝国主義者が野蛮な侵略を正当化するために使った醜語をわざわざ得意げにひけらかした、歴史に残ること間違いなしの醜悪記事です。
書いたのは外部の寄稿者で、WSJの記者じゃない。だが載せた以上責任はWSJにある。しかも、直後から米国内含めて凄まじい抗議があったにも関わらず、「言論の自由」を主張して居直った。よく見ると、コメント欄がものすごい数の抗議で溢れかえっていますが、連中が反省した様子は今に至るまでありません。
これから2ヶ月も経たないうちにWSJ編集局の近所がどうなったか知っている今の我々は、「こういう差別意識こそが被害を極大化したのだ」とはっきりわかりますが、こんな奴らを擁護した連中は、今も反省などしていないでしょう。「君子豹変」の対義語は「小人革面(小人は真実を理解できないので、上っ面を改めるだけで本性は変わらない)」だそうだが、上っ面さえ改めようとしない連中はなんと形容すべきでしょうか?
差別意識に凝り固まって、過ちに固執するということは、中国はもちろん他の分野に対しても、事実に反するデタラメを書き立てている可能性が高いということです。COVID19はあまりにも影響が巨大過ぎてあからさまになったが、他の件ではどれだけ嘘っぱちが乱舞しているのやら。
疫禍に打ち勝つためには、反科学カルトの撲滅が肝心でしょう。「JIN-仁-」を始め、タイムスリップした先で伝染病に遭遇した主人公が、病原体以上に迷信に凝り固まった人間特に権力者に立ち向かうように。
Commented by サン at 2020-12-02 10:07 x
旭川の吉田病院理事長がサイトにアップした文章が拡散されています。保健所は何もしてくれない、市長からは吉田病院に対する援助は公共性がないという理由で断られた、医大は非常勤の医師(医局のバイトのことか?)を引き上げていったと。
見捨てられたということですね。ただ、保健所や市長と同列に医大を非難しているように読めますが、医大の判断はやむを得ないでしょう。もし旭川医大にもコロナが蔓延したら、旭川の医療が陥落します。それはできないということですね。コロナ禍でも事故が起きれば解剖しなくてはいけない場合もあるでしょうし。
医師の引き上げという形で「選別」が始まっている。医療崩壊です。
その吉田病院ではDMATの皆さんが奮闘されている。良心を捨てられない方たちのお陰で、何とかもっているのです。
Commented by コスモス at 2020-12-02 22:02 x
奥尻島 12月1日まで21人感染判明。
12月2日、新たに10人以上感染確認。島にはコロナ病床がないため感染者は順次、船で移送、PCR検査の結果待ちのうち体調悪化が1名、航空機で移送。
島の高校野球部は、島にウイルスを持ち込まないために、秋季大会への参加も断念したというのに。
gotoは教科書に載るレベルの失策となるでしょう
Commented by 金を出すから感染が怖くても旅行しろと? at 2020-12-02 22:37 x
GoToというのは、コロナ感染が怖いから出掛けないという人に向けて、補助金出すから無理して旅行したり外食したりしてね、ということですよね。
つまり感染リスクをおかすことの見返りに、政府が金を出すという政策だ。
こんなことをしたら、感染者は増えるに決まっている。はじめからそういう政策なのだ。

そのうえ、旅行業者を通じて旅行しないと損しますよ、ネット予約じゃないと損しますよ、という仕組みになっている。

コロナに感染しなくても、経済的に追いつめられて命を失う人がいては、結局のところ意味がない。だから経済を止めるべきではない。しかし、GoToは、バカのやることだ。

玉川徹氏がずっと主張しているように、原理的には、全国民にPCR検査をし、陰性だった人は自由に活動すればいい。
なぜ、そういう方向に進まないのか。
医療崩壊させない仕組みを構築する時間も予算もあったはずだ。施設も人も増やそうとしてこなかった。GoToの予算を使えばよかったのだ。

安倍・菅自民党政権にとっては、今のやり方に、何かメリットがあるんだろうね。

Commented by なずな at 2020-12-03 18:45 x
3枚目の写真、女性の持っているプラカードにはherd immunityのことをheardと綴っている。意味もわからずに使っているのかも。なんだかアメリカの劣化をひしと感じてしまう。


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