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Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作

Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_1852052.jpg昨夜(3/13)、NHKスペシャルで「原発メルトダウン 危機の88時間」と題した特集番組を放送していた。先週(3/10)のNEWS23の特集報道と酷似した内容だった。どうやら、マスコミと政府とは深部で繋がっていて、5年前の事故を一つの物語にして上書きしている。歴史を製作(捏造)している。あの事故はこういうことだったという「ドキュメンタリー」を、年に一度の3.11のテレビ報道で見せ、国民の認識として定着させている。事故後、三つの事故調(国会、政府、民間)が立ち上がって調査検証をしたが、報告では真実は何も解明されなかった。事実を知る原子力村の内部関係者が、少しずつ、隠していた真相の一端を新情報として小出しにして、何やらその報道にスクープ性を演出し、この種の(視聴率目当ての)番組のマンネリズムと退屈を薄める役割を果たしている。真実を隠し、失敗を美談にスリ替え、責任者を免責する物語を仕上げて国民を教育(洗脳)している。TBSやNHKが特集で見せた中身は、とても真実を追求したジャーナリズムとは言えない。原子力村と政府による福島原発事故の「正史」の刷り込みだ。本当なら、広瀬隆や田中三彦が表に出てきて、番組のウソを一つ一つ指弾し暴露する必要がある。そうでないと、原子力村の手による偽りの物語が「真実」に化けて固まってしまう。



Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_18521647.jpg昨夜(3/13)のNHKの番組の中で、悪質で作為的な情報工作ではないかと不審に感じた部分が冒頭にあった。それは、最初の1号機の水素爆発の後、飛散した放射能が福島の地に降り注いだ地図を示した映像である。この地域が高濃度汚染されたと黄色や黄緑で塗っていたが、その地域が、まさに出回っている福島の汚染地図と同じなのだ。すなわち、福島第一原発から北西方向にベルトで伸びるところの、国道114号線に沿う回廊周辺であり、浪江町津島地区から飯舘村にかけての細長い長円形の地域である。この高線量の汚染地図は、われわれは繰り返し見ていて頭にこびりついている。だが、この一帯が汚染されたのは、少なくともこれまでの情報と記憶では、1号機が爆発した3月12日ではなかった。この左斜めのベルト地帯が汚染されたのは、3月15日に起きた2号機の放射能大量放出によるものなのだ。そのことは、2014年のNHKの特集でも報道されている。この日、2号機からの放射能大量放出時に北西に風が吹き、浪江町住民が避難する津島地区を含む一帯が強烈に汚染され、さらに、その風が反転して南南西の方向に吹き始め、中通りから那須塩原を汚染、さらに遠く三郷、柏、松戸まで飛来した。大規模汚染は3月15日の出来事で、犯人は2号機だった。そういう認識だったはずだ。

Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_18524593.jpgその事実を、昨日(3/13)のNHKスペシャルは伝えてない。素人でも覚えている事実を隠し、3月12日の1号機の放射能拡散地図を見せ、恰も、福島の放射能汚染が3月12日の1号機の仕業のように見せていた。どうしてそのような奇妙な詐術をNHKはしたのか。おそらく、理由として考えられるのは、SPEEDIの存在を隠蔽するためだ。渡辺格と鈴木寛と細野豪志と枝野幸男の所業、すなわち不作為による業務上過失致傷の犯罪を隠匿するためだ。報ステの2011年末の特集で暴露されたように、地震発生直後からSPEEDIは法令規則どおりにマニュアルモードで稼働していて、何時何分にどの核種がどの方面に拡散し、どの範囲がどの程度汚染されるか正確なシミュレーションを出力させていた。事故が起きた3月11日から、政府は約5000枚の試算図をSPEEDIで出力し、被曝予測をして各方面に内密に伝達している。実際に、文科省の出先職員と思われる怪しい男たちが、白い防護服姿で各地に出没して極秘に線量実測していた姿が目撃されていて、正体を訝しむ住民に「早く逃げてくれ」などと言った事実が証言されていた。つくばの理工系公務員はタクシーで西日本へ逃げていた。文科省と東電と官邸は、どこが汚染地域なのかSPEEDIで特定して把握していたのだ。

Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_18525817.jpgだが、その情報は避難する福島の住民には伝えられず、浪江町長の馬場有にすら開示されず、赤宇木地区集会所にとどまり続けた住民を深刻に被曝させた。昨夜(3/13)のNHKの特集は、SPEEDIの存在を完全に隠し、SPEEDIの問題を説明から捨象させていた。3/10のNEWS23と全く同じだ。SPEEDI隠蔽の件を再隠蔽するため、2号機が3月15日にベルト地帯を汚染した事実には触れず、その手前の時点(88時間)で線引きした報道にしたのである。SPEEDIは3月15日の2号機による北西ベルト地帯汚染も試算予測していて、その印刷図面が実際にあり、それと現在の汚染地図を重ねれば、SPEEDIを運用して事故対応に当たっていた政府の不作為責任が露わになる。だから、3月15日の2号機からの放射能拡散を番組の対象から外したのだろう。それから、3月15日未明の、現場から撤退しようとする吉田昌郎に「待った」をかけるべく、菅直人が東電に怒鳴り込んだ件も、周到に編集でオミットしていた。福島原発事故を検証する上で、あの場面は絶対に落とせない要点だ。事故発生から88時間後とは、3月15日の午前7時である。菅直人が東電本店に乗りつけたのが、3月15日の午前3時頃で、「88時間」の中に含まれる。NHKは吉田昌郎を英雄として美化するため、吉田昌郎が命惜しさに現場から遁走しようとした事実を隠したのである。

Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_18531413.jpg本来、福一所長の吉田昌郎がどうすべきだったかというと、現場の事故対応の実務を副所長に任せ、官邸とマスコミに向けての状況報告と説明責任に徹するべきだった。対政府と対マスコミの二つの通信チャンネルを開設し、現場責任者として、いま何が起きているか、どういう事故対応の作業をやっているか、何が問題なのか、すべて即時公開で報告と説明に専念するべきだった。あるいは、自分が事故対処の統括をやり、副所長を広報連絡担当として、官邸とマスコミの対応に集中させるべきだった。福一が4000万人の国民の命を預かっている現場なのであり、そこから発信される情報にすべてが懸かっているのだ。菅直人が、東電(武藤・武黒)や原子力委(斑目)や保安院(経産官僚)から正確な情報が入らないため、現場指揮官の吉田昌郎と直接にパイプを作り、情報収集しながら指示を出そうとした焦躁と動機はよく分かる。総理大臣は国民の生命と安全に責任を負っている。菅直人のように動くのが当然で、現場に任せるべきだったとか、介入すべきではなかったという認識は間違いだ。吉田昌郎には4000万人の被爆や避難の責任はとれない。当時の状況を振り返って正しく判定すれば、ディターブしていたのは、菅直人の失脚を狙って無用に騒ぎ、吉田昌郎に味方する形で菅直人を誹謗中傷していた右翼産経と安倍晋三だろう。

Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_18532973.jpg客観的に見たとき、吉田昌郎は現場責任者としてすべてを間違っていた。5年前に共産党の吉井英勝が津波による全電源喪失の警告をした国会質問に対して、それを無視して何も対策を施さなかった。この過失責任は重い。3月11日からの事故対応でも、初動ミスばかりだ。ベントを遅延させ、電源を復旧できず、挙げ句、消防車からの給水注入策も失敗し、1号機に続いて3号機、4号機、2号機と、5日間で連続して4基全部で事故を起こしている。2号機のメルトダウンは3月14日だ。非常用冷却装置が動いていた2号機は、注意深く対策をしていれば、3月14日までにメルトダウンを防ぐ応急手当が可能だっただろう。3月13日にメルトダウンした3号機も同様である。もし、3月12日朝に菅直人と協議した時点で、マスコミとの通信チャンネルをオープンにし、現場の進行をありのまま情報公開していれば、そこに田中三彦や広瀬隆の知見と助言が入り、有効な技術的補助が入っただろう。菅直人の強権による東工大人脈の動員で現場に適切な人員・機材のサポートが入り、3号機と2号機のメルトダウンを防止できた可能性がある。それにしても、こうして事故を振り返ると、原発事故というものがとても人知を超えた、人の手に負えないものであることが確信できる。5年経った今でも、事故の収束はおろか、事故の状況すら判明していない。全体の輪郭が把握できていない。格納容器の中の状態は不明で、廃炉計画は端緒も掴めてない状態だ。

ロボットが活躍すると言われたが、何も成果を上げていない。この1年、何か技術的な面で具体的な進捗があっただろうか。汚染水対策は、ただ右往左往の試行錯誤をアリバイ的にやっているだけで、とても科学的な原因分析ができた上での工学的な問題解決になっていない。5年後の今でも、事故を正しく説明することすらできず、何年経っても「真相スクープ」と称して責任逃れの情報工作ばかりが出てくる始末だ。


Nスペ「原発メルトダウン 危機の88時間」 - TBSと同じ捏造の情報工作_c0315619_18534724.jpg

by yoniumuhibi | 2016-03-14 23:30 | Comments(4)
Commented by kokoron at 2016-03-15 00:26 x
何らかの意図に基づいて編集されている可能性が高いため、鵜呑みにせず、自分に可能な限り事態の軸を見つめていこうという気持ちでこの番組を視聴しておりました。SPEEDIに全く触れていないことや、当時の菅総理介入の理由など、「ん?」と感じる箇所はいくつかありましたが、世に倦むさんのように明確に問題点をつかむことはできませんでした。放送後早い段階でこうしてお考えをお聞かせくださることに感謝しています。

自分は原子力については技術的にも政策的にも全くの素人ですが、しかしそんな自分でも、あの番組から見て取ったのは「事前の想定が全く足りていなかった」ことです。設計・整備面でも運営面でも、ああしたアクシデントを想定して備えることを本気でやっていなかった、という事実は、どうにも取り繕えないものなのだと思います。また、実際にああした事態が起こってしまうと、現場でできる手立てが非常に乏しい。あれだけ事態の進みが早いと住民の避難を間に合わせることも現実的には難しいでしょう。つまり、原発を稼働するならば備えが全て、と言ってしまってもいい位なのだと思います。
翻って現在、再稼働に向けた動きが各原発で展開されており政府もそれを後押ししていますが、最低でも福一クラスのアクシデントを防げる手立てを本当に取っているのか。少なくとも、自治体との連携による住民の安全の確保についてはどこも基準に達していないのではないかと思います。達するには相当に周到な計画の立案と、入念かつ複数回の訓練が必要になるからです。そんな動きは寡聞にして今のところ耳にしておりません。
吉田所長の対応についても、ご指摘を伺えば、機能的な対応体制を構築できていないこと、ドライベントを行うことについて身体を張れなかったことなど、疑問を感じた箇所が複数ありました。現場の事故対応についても想定と訓練が不十分であったことが露呈していたと思います。
私は無暗な反原発論者ではないと自負しておりますが、やはり原発に頼らない方向で舵を切るのが現実的なのだと、番組を身て改めて思いました。日本政府や経産省、技術者たちが原子力を使いこなす域に達していないのはもちろんなのですが、そもそも「人類は原子力を使いこなせる」と考えること自体が傲慢なのだと感じました。
Commented by 愛知 at 2016-03-15 00:55 x
核心を突かれたNスペ評(権力批判)のジャーナリズムに頭が下がります。今回の記事に接して、昨年、報ステに出ておられた名古屋在住の元日本兵(エノラゲイの動きを傍受されておられ、参謀本部に報告を上げておられた当事者のお方)のことを思い出し検索。その方は見つけられませんでしたが、行き当たったのが「広島の原爆投下も、長崎の原爆投下も日本軍は把握していた」というNスペ(2011年8月6日放送)。現会長の就任より2年5ヵ月前の放送。そこで使用されていた画像は、今では考えられないようなものでした。これもある意味、「隠していた真相の一端を新情報として小出しにして」いる情報なのでしょうが。

貴下記事に触れる度、懐旧の念に至りますが、遠い昔に読んだ吉村昭著『殉国~陸軍二等兵比嘉真一』を思い出し。米軍にニセ情報を流し、軍人を救い、民間人を犠牲に差し出したという一篇。読んだ当時は日昭丸という石油販社の頭文字を取った石油コンビナートで夜警のバイトを。前に記した暴動続いていた競輪場で警備のバイトをしていたときと同時期。当時はテロなどという思いもなく。夜釣りに入り込んでくる人の焚火を止めること、タンクからの油漏れを監視することが業務。近付いてから急に飛び立つ雉に驚くのどかな時代。

2011年の貴下Nスペ評を探していて、同年8月15日の記事に行き着きました。以下、引用―――つまり、今、生きている者たちは、ほぼ全員が戦前戦中世代になり、戦争で生き残れば、戦後世代になるはずだと思っている。日本が未来永劫に平和だと信じる態度は、原発の安全神話の信仰と同じだ。ある日突然、神話が崩れた現実に放り出されるのである。
Commented by 私は黙らない at 2016-03-15 01:56 x
おかしい。日本のマスコミは絶対におかしい。もうこうなると、テレビも新聞報道も、まず疑ってかからなくてはいけないと思う。私もNHKスペシャルをみた。この番組を見て、SPEEDIの存在を故意に隠蔽する意図まで見抜けるリテラシーのある人はどれだけいるだろうか。
Commented by matzとし at 2016-03-17 23:02 x
私はNスペは見ていないが,国会事故調査委員会などの記録や菅(当時)首相~東電の対応,安倍晋三氏のBLOG捏造事件,などの関連報道から,
 結局,それまでの原発安全対策,避難対策,緊急時のシステム整備や訓練など,すべて「神話」に寄りかかって,サボっていた尻拭いを,ときの政権,特に首相におっかぶせようとした,という気がしています.
 その影響が出ている,ということなのでしょうか? Nスペのオンデマンド配信をみて,再度考えたいと思います.


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