この記事の連載

 配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

 今回は『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』『with MUSIC』『おしゃれクリップ』 などに携わり、入社6年目にして『女芸人No.1決定戦 THE W 2024』のプロデューサーに就任した片岡明日香さんにお話を伺いました。(前後篇の前篇/後篇を読む)


「女性として見る気が起きない」「じゃあ、やってみろ」

――今年の『THE W』のプロデューサーに就任されました。片岡さんは入社6年目とのことですが、『THE W』にはいつから携わられているのでしょう。

 2021年からなので、4回目ですね。ずっとディレクターで、今年はプロデューサーと兼任です。

――お仕事としてはどういう違いがあるんですか?

『THE W』のディレクターの主な業務は、各ファイナリストを担当することです。私の場合、加入2年目からファイナリストを担当していて、2年目でエルフさん、3年目でハイツ友の会さん、4年目の今年はまたエルフさんを担当してます。ほかにも記者会見の演出、事前番組やPRを作ったり、本編で流すVTRを作ったりという仕事もします。

――6年目で大型コンテスト番組のプロデューサーというのは結構な抜擢なのではないでしょうか。

 でも、DのときからPっぽい仕事をしていたんです。Dとしての業務にプラスアルファで、『THE W』が『キングオブコント』(TBS)や『M‐1』(テレビ朝日系)ぐらい知名度を上げるためには何をすべきか、自分から手を挙げて、宣伝戦略をやらせてもらっていました。

――具体的にはどんなことを?

 なんというか、以前の『THE W』はロゴからセットからCGワーク、テロップ、細かなパーツに至るまで、男性が考える“女性が好みそうなトーン”だったんですよね。演出が全員男性だったので。

――いわゆる“ダサピンク”的なものですかね。

 そうです。女性性を変に強調しすぎていて良くないと思ってました。賞レースとして『M‐1』や『KOC』に並ぶ、価値のある大会にならないと、女性芸人のためにもならない。そのために演出をもっと変えたほうがいいと思っていて、関わるようになった最初の年から、放送後の反省会でスタッフが提出する紙に「本当にダサい」「女性芸人を変に括っている」「女性として私は見る気がしない」って罵詈雑言を書き続けていました(笑)。

 さらに「『キングオブコント』や『M‐1』はこういうSNS戦略をやっているけど『THE W』はやっていない」「ビジュアルはこう変えたほうがいい」「こういうPRをしたほうがいい」って勝手に分析して、資料を作って提案もして。あまりにあれこれ言いすぎて、去年「じゃあ、やってみろ」ってことになったんです。

 それで去年からロゴもセットも変えさせてもらって、ファイナリスト1組1組がバキッと決めたポスターも作って、メインビジュアルをちゃんと打ち出すようにしました。

――たしかに一昨年までと比べるとガラッと変わっています。

 昔はファイナリスト記者会見の衣装も、全員が白シャツにピンクのスカーフで「なんの制服!?」って。それだと女性芸人の個性がわからないじゃないですか。大会として知名度が低いから、衣装で統一感を見せるという意味では効果的かもしれないですけど、出てくれる女性芸人たちからするとあんまり嬉しくはないですよね。

――今年の会見はそれぞれ個性的な衣装でした。

 スタイリストチームと直接話して「全体としてはこういうトンマナで」「この人はこういう衣装で」って、全部決めました。それぞれのファイナリストのネタ衣装から発想しています。ポスターに関しても、カメラマンもデザイナーも自分でアサインして、自分だけのチームを勝手に作ってやっています(笑)。ちなみに全員女性です。

2024.12.10(火)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖