PHOTO:AKIO KON / BLOOMBERG / GETTY IMAGES

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クーリエ・ジャポン

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Text by David Atkinson

日本の「おもてなし」は世界一だ、「ものづくり」は高く評価されている──これらはすべて妄想だ。バブル絶頂期に不良債権問題をいち早く予見した伝説のアナリストが、日本人の「自画自賛」体質を一刀両断する。

「クールジャパン」なんて、相手から言われることであって、自分から言うものではありません。そもそも、これは「クールブリタニア」から来た表現です。

大英帝国時代に、英国が世界を支配するということで「ルールブリタニア」という表現があった。それを皮肉って、もっとクールになろうよ、ということでクールブリタニア戦略ができたのです。

これは、食事がまずいとか、英国の良くないところをいろいろと変えていくための目標としての「クール」だったのです。表面の言葉だけ持ってきた日本は、変化しないことを良しとした、自画自賛の「クール」。全然違いますね。

本当にクールジャパンは残念です。アニメやアイドルが好きな人ばかりを日本に集めていいのですか? 自動販売機や四角いスイカを目当てに世界から観光客が来ると、本気で思っているんですか? もちろん、本当にクールなものが日本にあることはわかっています。でも現在のところは、単に日本人がクールだと考えているものを外国にむかって押しつけているだけです。

こうした思考法に日本の「弱み」が表れています。すなわち、真剣に分析しないで、一方的な思い込みだけで戦略を立てる、というところです。

最近の日本人を見ていて不思議なのは、外国から批判されると「日本のことなんかわかってないくせに」と頭から否定するのに、褒められたら一転して、すべて真に受けるところです。

「外国人はお世辞を言わない」とでも思っているのでしょうか。どの国の人でも、社交辞令は言うし建て前でもしゃべります。たとえば米国人はプラス思考の国民性だし、相手を傷つけてはいけないと考える人たちだから、お世辞ばっかり言いますよ。

「一番だ」「ブームだ」と思い込む


だから、京都は世界一の観光地だ、と思い込んでしまう。たしかに、米国の旅行雑誌がおこなった「来た人」に対する調査結果ではそうなっています。

でも、その数は多くありません。客観的な事実では、183万人しか宿泊していません。これは世界で96位だそうです。

つまり、「これから来る人」を呼ぶための観光戦略はまったく機能していない。高いのは潜在能力だけであって、実行されたものではない。そこで自慢されても違うでしょ。96位という現実を真剣に分析して、対策を冷静に考えるべきではないのですか。

実際、京都を世界一とした口コミにもいろいろな改善点があげられているのに、そこは見ないで「素晴らしい」と身内で言い合っている。一番だから改善する必要はないと思っているのでしょう。従ってホテルは増えないし渋滞もなくなりません。

あるいは、「和食が世界でブームだ」と言う人がいますが、これも思い込みです。証明してみましょう。「ぐるなび」で調べると、東京23区で洋食店は5618軒あります。これを基準に、ヨーロッパで和食店を東京と同じくらいの普及率にするには何軒必要か計算してみると、18万7257軒となります。

ですが現実は、農水省の推計によると、わずか5500軒です。たしかに和食はおいしいですが、それを実際に海外で浸透させるような大規模な動きは存在していないのです。にもかかわらずブームと言っている人は、何の数字の裏付けもなく語っていたわけですね。

自己中心的な国に観光客は来ない


思い込みの良くないところは、数字を見ないことだけではありません。相手の立場を考えていない、という問題もあります。

日本人を対象にした「日本のどのようなところを世界にアピールしたいか」というアンケート調査の結果によると、マナー、治安、サービスといったものが上位にきています。

でも考えてみてください。あなたが海外旅行の行き先を考えるときに、その国のマナーや治安が旅の目的になりますか? ならないですよね。だったら、なぜ日本人にとって観光の動機にならない特徴が外国人になら通用すると考えてしまうのでしょう。
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PROFILE

David Atkinson デービッド・アトキンソン
1965年生まれ。オックスフォード大学で日本学を専攻。ゴールドマン・サックスを経て小西美術工藝社社長。『新・観光立国論』で山本七平賞。著書に『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』など。

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