『崖の上のポニョ』のワンシーン © 2008 Studio Ghibli・NDHDMT

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Text by J. Andrew Deman

日本人には馴染み深い「癒し系」作品の人気が、海外でも高まっている。英国の研究者である筆者が、海外の視点から癒し系の魅力を語るとともに、物語によって実際に人を癒す試みについて、興味深い例を紹介している。
The Conversation

西洋の伝統とは相容れない


日本研究者のポール・ロケットによると、「癒し系」とは穏やかさの美学を通じて、疲れた読者を癒すことを目的に作られた日本の物語ジャンルだ。彼が述べているように、この目的を達成するため、それらはプロットに衝突や対立というものがほとんど、あるいはまったくない物語として提示される。

だが、このシンプルなアイデアは、対立こそが物語を展開する鍵だと考えられてきた西洋の物語の伝統とはいくぶん対照的なものだ。脚本家であり、世界で最も人気のあるシナリオ講師のロバート・マッキーは、「対立を通じてしか物語は前進しない」と述べている。

しかし、教育者でジャーナリストのパトリシア・タンが指摘するように、癒し系は対立ではなく、通常、「ふわふわの靴下を履いて、一杯のお茶とともに大きな毛布にくるまるような、あたたかさと居心地のよさ」を与えてくれる。

ロケットは、癒し系の出現を1990年代の日本の経済不況と結びつける。日本では、この頃から、アニメや漫画だけでなく、文学、CM、映画などで、幅広い癒しの表現が生み出されるようになった。


日常の「小さな幸福の図」


癒し系作品は特に漫画に多い。世界的に有名な日本の漫画は、2023年の推定市場価値が140億ドルに達しており、多くの癒し系漫画がアニメ化されている。

人気のある癒し系漫画には、『ゆるキャン』、『おじさまと猫』、『ふらいんぐうぃっち』、『少女終末旅行』、『ARIA』、『ミイラの飼い方』などがあり、これらの作品は、タンが言うような「ふわふわの靴下」的体験を読者に提供してくれる。

たとえば、『おじさまと猫』を見てみよう。これは、つぶれた顔で買い手のいない猫を引き取った、孤独な中年男性のシンプルな物語だ。この漫画には明確な対立がまったくないため、読者はただ、一人と一匹の主人公の間に芽生える愛情と、両者が孤独と孤立を経て一緒に人生を築いていく過程を追体験することになる。

作者の桜井海は、あるインタビューで次のように述べている。

「『おじ猫』という物語の根底にあるのは、日常生活のどこにでもある、そんな思いやりのやり取り、小さな幸福の図なんです」

物語では、おじさま(神田冬樹)が飼い猫(ふくまる)にぴったりのおもちゃを選んだり、ふくまるが神田が演奏するピアノを聞く喜びを発見したりする場面が、心地よい絵柄で表現されている。

北米で「癒し系」を広めた作品

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