大自然に囲まれた福島県の土湯温泉。2015年に温泉を利用した地熱発電事業を開始した Photo: Noriko Hayashi for The Washington Post

大自然に囲まれた福島県の土湯温泉。2015年に温泉を利用した地熱発電事業を開始した Photo: Noriko Hayashi for The Washington Post

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ワシントン・ポスト(米国)

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Text by Nicolás Rivero and Julia Mio Inuma

地熱発電に絶好の条件がそろっていながら普及が進まない日本で、いち早くその取り組みを始めたのが福島県・土湯温泉だ。米紙「ワシントン・ポスト」が同地を訪ね、震災後に客足が途絶えた温泉地を再生エネルギー開発によって復興しようとする住民の思いを取材した。

福島県福島市の近郊にある土湯温泉は、1400年前に開湯して以来、多くの旅人たちを魅了してきた。

長大な火山帯・吾妻連峰の山懐に抱かれた土湯温泉町の住民は、数百年にわたり、この地を訪れる旅行客をもてなし、土産物などを売って生活している。

だが9年前、国内の他の温泉地が二の足を踏む事業に同町はあえて乗り出した。貴重な温泉を再生可能エネルギー源に転用する、地熱発電所の建設だ。

土湯温泉は日本の温泉文化を守りながら、豊富なクリーンエネルギー源を活用する事業の先駆者となっている。

地熱発電を懸念する温泉産業


日本は世界第3位の地熱資源に恵まれた国だが、電力の大部分を化石燃料に依存する。専門家によると、地熱発電を推進すれば、日本の電力の10%を供給できる可能性がある。日本政府は地熱発電の割合を、2030年までに現状の0.3%から1%へ引き上げることを目指す。

この取り組みの最大の障壁が、温泉産業だ。日本に3000ヵ所ほどある温泉は、この国の文化と観光業の屋台骨でもある。公共温泉施設や旅館の経営者らは、地熱発電開発によって温泉の源泉が損なわれ、業界が打撃を受けるのではないかと懸念する。
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