安倍晋三元首相。2022年7月8日、奈良市で演説中に銃撃されて死亡した Photo by Tomohiro Ohsumi / Getty Images

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アトランティック(米国)

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Text by Robert F. Worth

安倍晋三元首相銃撃事件から約1年半が過ぎたいまも、与党・自民党と旧統一教会の癒着の問題は解決の兆しが見えない。なぜこのカルト教団は日本で肥大し、政治家たちはそれを見過ごしたのか。米有力誌「アトランティック」に大きく掲載された長編記事を、全訳掲載する。

安倍晋三は人生最後の日の朝、奈良にいた。

五重塔で知られる古寺と、神の使いの鹿で有名なこの地方都市にやってきた目的はいかにも事務的で、市内の主要駅に面した街路の広い交差点で、地元選出の国会議員の再選を訴える応援演説をするためだった。

安倍は2年前に首相を辞任していたが、日本の歴代首相で最長の在任記録を持つ彼の名前には非常に大きな重みがあった。その日は2022年7月8日だった。

詰めかけた群衆が撮影した写真を見ると、後ろになでつけられた髪、チャコールの眉、気さくな笑みで安倍本人とすぐ認識できる男性が午前11時30分頃、急ごしらえの演壇に上がり、片手でマイクを握る姿がうつっている。

その周囲を自民党支持者の集団が取り巻いていたが、安倍の後方に立つ男に気づく者は誰もいなかった。グレーのポロシャツにカーゴパンツ姿で、黒いストラップを肩にかけていた。男は他の群衆が拍手を送るなか、ただ立ち尽くしていた。
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