Photo: Ken Ishii / Getty Images

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ニューヨーク・タイムズ(米国)

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Text by Carlos Aguilar

宮﨑駿の引退を報じるニュースは、信用できたためしがない。

日本のアニメーション界の巨匠である宮﨑駿が、アニメ映画制作から引退すると繰り返し宣言する理由。それは、手描きによる新たな世界を創造することに伴う負担への反動である──。

少なくとも、スタジオジブリの設立者の一人で、これまで40年にわたり宮﨑の右腕を務めてきた鈴木敏夫(75)はそう考えている。

「彼は映画を完成させるたびに疲労困憊して、次回作のことなど考えられなくなります」と鈴木は言う。

「肉体的にも精神的にも、エネルギーを使い果たしてしまう。だから頭を空っぽにするための時間が必要なんです。それと、新たなアイデアを思いつくための真っさらなキャンバスも」

2013年の『風立ちぬ』が宮﨑の最後の作品になるといわれてから10年、82歳になる彼の最新作『君たちはどう生きるか』はこの夏、日本で大ヒットし、12月には米国でも公開された。

監督自身はこの最新作について取材に応じていないが、熟練プロデューサーでもある鈴木と、長年にわたり宮﨑映画の作曲を担当してきた久石譲(72)がそれぞれ米紙「ニューヨーク・タイムズ」のインタビューに応じ、最新作や巨匠との共同作業について語ってくれた。


鈴木敏夫が最新作を見て「面白い」と感じたこと


鈴木はラフな身なりで、トトロの刺繍が入ったクッションの横に座り、日本から通訳を介して気さくに話してくれた。

鈴木によると、最新作は宮﨑の最も個人的な作品だという。第二次世界大戦末期を舞台にした本作は、火災で母を亡くした11歳の眞人が田舎に疎開し、そこで異世界に導かれるというストーリーだ。

「このプロジェクトが始まったとき、宮﨑が僕のところに来て、『これは僕の物語になるんだけど、大丈夫かな?』と聞いてきたんです。僕はただ頷きました」。宮﨑の意向に逆らっても仕方ないと達観した者らしく、鈴木は淡々と当時を振り返る。
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