Illustration: Jorm Sangsorn / Getty Images

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エコノミスト(英国)

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日本を含む東アジアの若者たちは、自国の目覚ましい経済発展を享受する一方、伝統的な家族観に固執する社会や法制度のせいで、息苦しい日々を送っている。

これまで日本、中国、韓国、台湾で変わりゆく家族の形態を取材してきた英誌は、いまこそ市民の声に耳を傾け、新しい家族観を受け入れるべきだと各国政府に提言する。

かつてアジア的な価値観は、同地域の指導者に広く支持されていた。だが、1997年のアジア通貨危機の後は顧みられなくなり、「東・東南アジア諸国の規律正しい政府には、退廃した欧米諸国より経済的に優位だ」という考えは説得力を失った。

現代の東アジアは繁栄を謳歌しているが、その一方でアジア的な価値観の「別の側面」が危ぶまれている。中国、日本、韓国、台湾で頑なに守られてきた、アジア流の保守的な家族のあり方が崩壊しつつあるのだ。

結婚は「時代錯誤」で「手の届かない贅沢」

同地域に暮らす数百万人の若者は気ままで孤独で、東アジア的な意味での「男性優位社会」を否定する生き方を選択している。世界人口の5分の1以上が居住する地域の社会経済的、人口動態的な変化の影響は甚大だ。それは同地域を不安定化させると同時に、多くの人の生き方に影響を与える可能性がある。

変化はまず日本で起こった。1980年当時の日本では、子供のいる世帯が42%で単身世帯は20%だったが、40年余りで逆転した。2020年時点で子供のいる世帯が25%なのに対し、単身世帯は38%に増えている。

日本の子育て世帯数の減少は止まる気配がない。2022年の出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)で、「一生結婚するつもりはない」と回答した18~34歳の日本人は男性17%、女性15%だった。1980年代前半のそれぞれ2%と4%から大きく上昇している。中国でも婚姻者数は史上最低を記録し、10年前と比べて半減している。

日本、中国、韓国、台湾で結婚する人が減っている原因は、1960~2010年に婚姻率が半減した欧州諸国と少なからず一致する。つまり、多くの人にとって結婚は時代錯誤で、「手の届かない贅沢」となりつつあるのだ。

また東アジア地域では、結婚したら女性は支配的地位にある男性に従うとする、儒教的な思想がいまも幅を利かせていることも一因だ。不動産価格も高騰しており、結婚して家を持とうとはとても思えない。


代わりに、単身世帯とはまた違う「新しい家族」の形態が受け入れられつつある。世代の垣根を超えたルームシェアや事実婚、同性カップルによるパートナーシップだ。一方、仕事に専念するため、結婚を先延ばしにする中産階級の女性も増加している。
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