『崖の上のポニョ』のワンシーン © 2008 Studio Ghibli・NDHDMT

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ル・ヌーヴェル・オプス(フランス)

ル・ヌーヴェル・オプス(フランス)

Text by Anna Topaloff

フランスでの爆発的な漫画人気はいま、食文化にも多大な影響を及ぼしている。「若い世代の想像力を拡大し、新たな生き方、そして食べ方の発見に寄与した」──仏誌「ロプス」はそう讃えながら、日本のアニメ作品に登場する食事の影響力を徹底分析する。

「ママ、ラーメン作れる?」

ある日曜日の午後、ソファで漫画を読んでいた12歳のリュバンは母親に尋ねた。

母は驚いた。彼女は料理が好きだったが、息子はマカロニグラタン以外のものは食べようとしなかったからだ。中学生の息子がたたみかける。「ナルトがいつも食べてるんだよ。すごく美味しそうなんだ!」

こうして母と息子は最高のラーメン屋を求めて、日本料理店が集まるパリ2区、サン・タンヌ通りに出かけた。

リュバンのケースは珍しいことではない。漫画のフランスにおける空前の大成功は、日本のグルメ人気も伴っている。

「当然のことです。食は日本文化をちょっと取り入れるのには最高の方法ですから。飛行機代もかかりませんし!」とティボー・ヴィラノヴァは断言する。

この30代の男性は事情通である。彼は「Gastronogeek(ガストロノギーク)」という名前で、ポップカルチャーにインスパイアされたレシピ動画を週に何本もYouTubeで配信し、30万人近いチャンネル登録者を持つ。

「漫画に出てくる料理のレシピはもっとも視聴者数が伸びます」。そう語る彼はすでに20冊以上のレシピ本を出版し、世界中で少なくとも60万部が販売されている。2023年6月にパリで開催された「ジャパン・エキスポ」にも特別ゲストとして招かれた。

この「自他共に認めるオタク」は、「クラブ・ドロテ」(註:『鉄腕アトム』や『セーラームーン』、『ドラゴンボール』など多くの日本アニメが放送されたフランスの子供向け番組)を観て育った。

いま、漫画にインスパイアされた料理「アニメ飯」が、料理本の一つのジャンルとして、それも有望なジャンルとしてみなされるまでになっている。専門書店ではなくとも、書店の棚を見てみれば納得できるだろう。主だったものだけでも『NARUTO -ナルト-』、『ドラゴンボールZ』、『ポケットモンスター』、あるいは宮崎駿のアニメ映画に登場する料理を勧める本で書棚はいっぱいだ。



星付きシェフも情熱を燃やした「アニメ飯」


ここで正確を期したい。フランスで使われる「マンガ」という言葉には、漫画本そのものだけではなく、「アニメ版」や「アニメ映画」も含まれる。そのなかには、グルメが物語の中心となる特別なジャンルがある。『深夜食堂』、『食戟(しょくげき)のソーマ』、『信長のシェフ』、『トリコ』などだ。しかし、料理は他のどんなジャンルの漫画でも際立っている。
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