「自殺は3年前から予測できる」──精神疾患の未来を切り拓く「予測医学」の最先端

医療データをコンピュータに取り込み、解析させる。コンピュータがパターンを特定し、「この症状が多く表れているのは、この疾患のリスクが高まっているサインかもしれない」と予測する。

人工知能はこのように、医師が診断を下し、問題を特定し、患者の未来を予測するのを手助けする方法を学習している。ここまでは、何も驚くことではない。

けれども、医療データを解析することで、人間の心のなかで何が起こっているかがわかるとしたら、どうだろうか。精神疾患の初期症状を特定し、だれかに自殺する可能性があることを、その人が自殺を考える前に知ることができたとしたら──？

これがまさに、ハーバード大学医学部・予測医学グループ長であるベン・ライス教授の研究テーマだ。ライス教授は、自殺するリスクが高いことを、実際に自殺してしまう3年前に探知するツールや、身体的虐待を受けている人を見つけ出すツールを開発している。

そんな彼の最新のプロジェクトは、精神疾患を早期に診断するシステムの開発だ。

「はじめて精神疾患の症状が表れるのは、普通は思春期か20代の初めにかけてです。しかし、多くの人は、もっと年をとってからしか精神科にかかりません。それでは貴重な時間が無駄になってしまいます。というのも、精神疾患の治療は、始めるのが早ければ早いほど良いからです」

そう話す彼に、イスラエル紙「ハアレツ」がインタビューした。

どうやってコンピュータが精神疾患を見つけるのか？