ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナでのロシア軍の苦戦を予期していたのか?Photo: Kremlin Press Office/Handout/Anadolu Agency via Getty Images

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナでのロシア軍の苦戦を予期していたのか?
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Text by James Stavridis

米海軍大将、NATO欧州連合軍の最高司令官を歴任したジェイムズ・スタヴリディス提督が、ウクライナ侵攻で見えてきたロシア軍の3つの問題を指摘し、この先の展開を予測する。

「ロシア軍の何が間違っているのか?」という質問をこの頃くりかえし受ける。

西側の多くの人は、ロシアの軍事機構を北大西洋条約機構(NATO)とほぼ互角と誤解してきた。だから、そんな巨大な軍隊がそれよりはるかに小さく軍備も劣る隣国のウクライナを制圧するのにこれほど難儀していることに驚くのだ。

私がNATOの軍事司令官を務めていた頃、ロシア軍と当時その参謀総長だったニコライ・マカロフ将軍と面談する機会があった。

親しみやすい人柄のマカロフは、ロシアの軍隊を現代化するための努力について私に話してくれた。その手始めは、軍隊を専門化し、残酷な徴兵制をやめるということだった。サイバー攻撃能力や精密誘導の兵器、無人航空機・車両を改良する計画もあった。

マカロフはロシア軍が進歩することを確信しているようだったが、ウクライナでの事態を見る限り、そうした長年の努力は報われておらず、徴募兵だらけだ。ハードウェアが改良された証もない。ロシア軍は、洗練された21世紀の軍隊ではなく、むしろ第二次世界大戦風の無骨な軍隊然としている。

ロシア軍が実動していたものの本格的な常備軍との戦闘がなかったシリアとは違い、今回のウクライナでの戦闘はロシア軍の訓練や装備、組織の仕方にあるいくつもの裂け目を示しているのだ。

ここで強調すべき重大な問題が3つある。どれも即座には解決しえないものであり、となればロシア軍はウクライナでの軍事作戦をずるずると続けることになろう。

3つの重大な問題とは?


第一の問題は明らかで、兵站(へいたん)の失敗だ。素人は戦略を学ぶが、玄人は兵站を学ぶと軍人のあいだではよく言われる。

銃弾、燃料、食糧、熱源、電源、通信機器を部隊に送り込むことは極めて大事だ。とくに燃料を前線へ送るのにロシア軍が非常に苦労していることがわかってきたが、これは西側の軍隊にしてみれば兵站の基本だ。

キエフ郊外でロシア軍の戦車と輸送トラックが集団で立ち往生して60キロメートル超の列をなしている光景は、無能さの好例だ。現代の西側の軍隊なら、これほどのおびただしい攻撃兵器がおそろしく無防備な地帯に何日も留まることなどないよう詳細な計画を立てるだろう。
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