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2011年にアップル社のCEOに就任したティム・クック。2021年9月期の報酬総額は9873万ドル(約112億円)に上ったというPhoto: Stephen Lam/Getty Images

2011年にアップル社のCEOに就任したティム・クック。2021年9月期の報酬総額は9873万ドル(約112億円)に上ったという
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フィナンシャル・タイムズ(英国)

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Text by Patrick McGee

米株式市場の今年最初の取り引きで、アップルの時価総額が一時3兆ドルを超えたニュースは世界を驚かせた。創業者のスティーブ・ジョブズからティム・クックがCEOの座を継いで10年。アップルをGAFAのなかでも抜きんでた存在に引き上げた彼の聡明なビジネスモデルを、英経済紙が取材した。

スティーブ・ジョブズが死去して2年後の2013年、オラクルのCEO(当時)ラリー・エリソンはこう言った。

「ティム・クックが率いるアップルの低迷は、避けられない。ジョブズを追放した1985年以降の同社を見ればわかる」

だが、この予想は的外れだった。クックはジョブズの後継者として空前の成功を収めている。アップルの時価総額は、クックが同社CEOに就任した2011年8月から2022年の年頭までに1日当たり7億ドル以上増え、今年の1月3日には一時3兆ドル(約343兆円 )を突破した。

だが、クックのCEO就任当初、エリソンと同じように考える人は多かった。アップルの10年を回顧した近刊書『アフター・スティーブ』(未邦訳)の著者トリップ・ミクルは、「あの頃は懐疑論が蔓延していた」と述べる。

「ウォール街も、iPhoneの熱烈なファンも、テック関係の友人や同僚も、クックがCEOに就任したときは誰もが、固唾を呑んで椅子を握り締めていました」


ジョブズは「ビジョナリー」、クックは「経営のグル」


アップルの市場価値の驚異的な上昇は、ジョブズが端緒を開いた巨大なスマートフォン市場の果実だ。とはいえジョブズを最も敬愛する人たちでさえ、供給網の専門知識や外交術など、クックならではの経営手腕を過小評価したり、誤解したりしていたと認めている。

1997~2011年にかけてのアップルは、「ジョブズ復帰」によって息を吹き返した。そして、単一の製品群で産業を根底から覆す破壊的イノベーターとしてのビジネスモデルを確立した。iMac、iPod、iPhone、iPadといった製品を次々と世に送り出し、それらは映画の題材にもなった。

しかしながら昨年、1億ドル近くをほとんど株式報酬で稼いだクックのビジネスモデルは違う。彼の能力は、大衆から見れば評価はおろか、真の意味では理解できない領域にあると言える。

シリコンバレーに本拠を置くリサーチ企業「コンステレーション・リサーチ」の会長レイ・ワンは、ジョブズとクックの違いを次のように話す。

「スティーブは扇動的なヴィジョナリー。かたやティムは効率化の専門家で、会社経営のグルです。人々を熱狂させるすばらしいアイデアを考え出す人間と、そのアイデアを市場に大々的に送り込む人間──どちらのタイプも企業には必要です」

IT企業の歴史を研究するマーガレット・オマラは、「もしジョブズがCEOを続投していたら、これほどうまくいかなかったかもしれない」と話す。(続く)


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