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エル・パイス(スペイン)

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Text by Marc Bassets

「格差」を専門とするフランスの経済学者トマ・ピケティ。著書『21世紀の資本』でも知られる彼は、現在の社会とフランス革命時代を対比する。かつて貴族が税金を払いたがらなかったように、現代では巨大な多国籍企業、富裕層が自分たちの利益を守ろうと策を凝らしているからだ。

私たちに、この不平等な体制を変えることはできるのだろうか?──スペイン紙がインタビューした。

トマ・ピケティ(50)は、これまでほんの一握りの経済学者しか成し得なかったことを実現した。自身の学術研究テーマを、政治的な議論や国際的な課題の中心に据えたのだ。そんな彼の研究テーマとは「格差」である。別の表現を用いるなら、「平等への歩みの長い歴史」と言ってもいいだろう。

ピケティは終末論者ではない。失敗や災難はあっても世界は良くなっていると信じており、データもそれを裏付けている。さらに、彼はこうも言う。

彼の考えを支持する政党が少数派で、フランスをはじめ多くの国で、労働者階級がナショナリズムやポピュリズムを提唱する政治家に投票しても、自分の主張が完全に無視されているわけではないと思う、と。

パリ経済学院の小さなオフィスで、ピケティはこう話す。

「2008年の金融危機以降、80〜90年代の金融規制緩和のいき過ぎを見直す風潮が高まっており、新型コロナもこれに貢献しています。状況は少しずつ、私が言う方向に進んでいるのです」

制度に亀裂が入ったとき、革命は起こる


──資本主義は結局、平均寿命や生活水準の向上、格差是正に役に立つことはなかったのでしょうか。

繁栄を可能にしたのは、「19世紀の資本主義」を富の一部が社会化された「混合経済」で和らげたことです。この動きは、継続させなくてはなりません。

私が望む「参加型で、民主的で、連邦的な社会主義」は、すでに起きている大変重要な変革の延長線上にあります。今日(こんにち)の西欧諸国に見られる社会民主主義的な混合経済のシステムは、1910年の植民地的で、家父長的で、権威主義的な資本主義とは大きく異なります。

私が思い描く未来のシステムと現在のシステムは、1910年の資本主義と現在のシステムほど違うものではありません。

──格差をなくすうえで、戦争や革命、そして自然災害は必要だったのでしょうか。

革命は常に災いであるとは限りません。実際、歴史をみれば、平等を促進した政治的な動きや運動が起きています。平等を求める動きはずっと昔からあるのです。

ときにそれは革命によって熱気が高まることもありますが、もっと一般的には、反乱や平等を求める声によって盛り上がります。

こうした動きは18世紀末、主にフランス革命とサン=ドマング(現ハイチ)の奴隷による反乱で始まりました。この2つの出来事は、特権階級と奴隷がいる社会の“終焉の始まり”になったのです。

──けれど、常に反乱や革命によって前進してきたわけではありませんよね。

もう1つの例はスウェーデンです。20 世紀初頭まで同国は欧州で最も格差が激しい国の1つでした。フランスのアンシャン・レジーム(旧体制)、そして選挙権を持つ人が限られていた19世紀のフランスやスペインの君主制よりも、さらに不平等な制度が敷かれていたのです。
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