ブルームバーグ(米国)

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次から次と不正が明るみになっている神戸製鋼のデータ偽装スキャンダル。この不祥事は日本企業に共通する問題点を浮き彫りにした。

株式持ち合い、社外取締役ゼロ……。いまこそ日本的な「なれ合い」経営を捨てて、コーポレートガバナンスの改善を図るべきだ。


東芝、トヨタ、タカタに続いて…


また日本企業の不祥事である。鉄鋼大手の神戸製鋼所が製品データを組織ぐるみで改ざんしていた問題だ。新幹線や自動車から米国製の航空機まで、影響を受ける製品は多岐にわたる。

もちろん今回のスキャンダルによって、品質の高さで世界的に評価されている日本の製造業の名声が、長期にわたって没落するということはないだろう。どの国のメーカーであっても、この手の問題を起こすことは往々にしてある。

ただ神戸製鋼のスキャンダルは、多くの日本企業に共通する問題点を浮き彫りにした。コーポレートガバナンス(企業統治)の改善の必要性だ。

東芝をはじめとする不正会計、トヨタの大規模リコール問題、タカタによるエアバッグの試験データ改ざん……。これらと同様に神戸製鋼の事件も、なるべく早い段階で問題に気づく体制づくりが急務だという現実を示している。手遅れになってから平謝りしても後の祭りだ。

記者会見で謝罪する神戸製鋼の川崎博也社長
Photo: Tomohiro Ohsumi / Bloomberg / Getty Images


日本企業がコーポレートガバナンスを改善しなければならないのは、不祥事や経営的な失敗を避けるためだけではない。生産性を向上させるためでもある。

高齢化や人口減少が進む日本が経済成長を維持するには、企業の経営体質を刷新しなければならない。その改革を日本の経営者たちに迫るのに最も適した存在は、投資家と社外取締役だ。

ぬるま湯につかる経営者


東京工業大学の井上光太郎教授(経営工学)、池田直史助教らの研究論文でも、その必要性が示されている。井上たちは「平穏な生活仮説」という企業の傾向について研究。株主からの圧力がなければ、経営者は重大な決定を先送りにし、大きな変化を嫌い、結果として企業の停滞を招く傾向にあるという。

この仮説は目新しいものではない。古くは1930年代の偉大な経済学者ジョン・ヒックスにまでさかのぼる。さらにノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモン(行動経済学の分野で初の受賞者かもしれない)はこれを「満足化」と呼び、多くの経済モデルに採用されている合理的な「最適化行動」とは別物であるとした。

政府による規制や高い市場シェアなどに守られて、企業が激しい競争を回避できている場合、経営者は収益性を追求せず、ふんぞり返っているだけでいい、というわけだ。

井上らの研究は、現在の日本企業においてこうしたケースが多数みられると指摘する。多くの日本企業は互いに株式を持ち合っており、それによって暗黙の了解が生まれる──「そちら様が厳しい要求をしなければ、こちらも悪いようにはしませんよ」。
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From Bloomberg (USA) ブルームバーグ(米国)
Text by Noah Smith

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