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青春金属バット■2006/ビスタサイズ/96分
■制作:ステアウェイ
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史/原作:古泉智浩
撮影:橋本清明
照明:大坂章夫
編集:張本征治
音楽:赤犬 主題歌:野狐禅
出演:竹原ピストル、安藤政信、坂井真紀
   上地雄輔、佐藤めぐみ、江口のりこ
   若松孝二、寺島進


 27歳の難馬は、高校野球で万年補欠、今も冴えない毎日を
送っている。究極のスイングを目指して、日々バットの素振
りは欠かさないが、偶然で出会った呑んだくれで傍若無人な
女・エイコに振り回され、いつしか「バット強盗」として追
われる身になってしまう。そんな彼らに目をつけた不良警官
の石岡は、かつて難馬と一緒に野球に打ち込んだ仲だった…



 かなり理不尽な毎日の状況の中で、内側に悶々と溜まって
いく抑圧された感情、それを振り払おうとするかのように、
フルスイングでバットを「振る」ことが難馬のアイデンティ
ティ。そんな彼と暴力的なエリコとの予期せぬ出会いは、二
人の人生のボールをイレギュラーバウンドさせる。地べたに
転がり、這いつくばり、グダグダとうごめく二人の、高さ地
上30センチの咆哮と彷徨。登場人物たちのもやもやした感
情が、絡みつくような映像と渾然一体となって、蒸し暑いく
らいに生々しい。
 ストーリーは暴投に次ぐ暴投、空振りに次ぐ空振り、度重
なるデッドボールと乱闘を経て、一発逆転のハデさもないま
ま、しかし晴れやかなノーゲームとして、青春のゲームはそ
の第1試合を終える。無理矢理火をつけた不完全燃焼の青春
は、もうもうと煙が立ちこめるばかりで目にしみる。これほ
ど爽やさに欠けた野球映画もないのではないかと思うが、人
生の試合はこれからまだまだ続くのであった。
(2010/12/10 天動説)
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