世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック。
依然として各国厳しい状況が続くなか、在宅時間の急増が要因のひとつとして、家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス・以下、DV)や児童虐待が増えているようです。COVID-19が生み出した裏被害のひとつであるDVは、世界にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。DVへの対処法とともに紹介していきます。
STAY HOMEが連れてきた「影のパンデミック」
COVID-19の世界的流行により、都市封鎖や行動自粛規制が発令されてから、各国で家庭内暴力が増加しています。
2020年4月上旬にはアントニオ・グテーレス国連事務総長が、また同月に国連機関の一部であるUN womanのプムズィレ・ムランボ=ヌクカ事務局長が世界的なDVおよび児童虐待の急激な増加を指摘。国連事務総長がYoutubeでジェンダーに基づく暴力とCOVID 19に関するメッセージを送るなど、この状況をCOVID-19がもたらした「影のパンデミック」と警笛を鳴らしました。
これに対し各国政府は、女性のための緊急保護施設(シェルター)の設置やヘルプライン、心理社会的サポートなど、DVへの人道支援の強化を行なっています。
急増する被害件数
TIMEによると、フランスではロックダウン開始1週目で国内の家庭内暴力が36%以上増加。DV相談件数昨年対比数は、イギリスでは65%増(BBC NEWS)、中国ではなんと4倍(NHK)にも膨れ上がっています。
日本でも緊急事態宣言が発令された4月には、昨年より30%増の1万3272件の相談が全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられていると、橋本聖子男女共同参画担当相が明らかにしました(毎日新聞)。如実に被害の増加の一途をたどっています。
疫病と暴力の関係
COVID-19の世界的流行と暴力事件の増加にはどのような関係性があり、なぜ各機関が警笛を鳴らすまでになってしまったのでしょうか。
それは歴史的背景から紐解くことができます。
近代の代表的な疫病といえば、2013年から2016年にアフリカを中心に猛威を振るったエボラ出血熱や中国を中心に流行したSARSウイルスなどがありますが、これらが蔓延した際にもDV件数が増加したことが確認されています。
普段の生活様式を変化させる疫病は、身体的にも精神的にも人の心を貪っていき、その矛先が社会的統制の効力がおよびにくい家庭内に向かってしまい、残念ながらそのストーリー展開を止めることは難しい現実があるようです。
特に今回のCOVID-19のパンデミックによるSTAY HOME政策は、家庭で過ごす時間の増加、さらには就職難や減収などの経済不安によるストレス、またストレス発散方法の物理的制限という環境を生み出し、世界的な家庭内暴力被害件数の爆増という結果をもたらしました。